症例は,67歳の男性.平成12年9月,後下壁急性心筋梗塞を発症し当科入院,保存的に治療された.同年10月右冠動脈seg.3へ橈骨動脈遊離グラフトを用いた冠動脈バイパス術が行われ,軽快退院した.平成13年5月頃より歩行時の呼吸困難感,6月下旬より夜間臥床時の咳嗽,呼吸困難を自覚するようになり,7月6日当科外来を受診.下肢の浮腫,胸水貯留を認め,うっ血性心不全の診断で当科へ再入院した.心エコー図および胸部CTで,左房,右房の拡大と,左室後壁側の心膜肥厚像を認めた.安静および利尿薬治療によって浮腫の改善と胸水の減少を認めたが,心臓カテーテル検査にて,両心室の拡張末期圧上昇とdip and plateauパターン,W型の右房圧波形,心係数低下を認め,開心術後収縮性心膜炎と診断した.内科的治療としてindomethacinを開始したが効果なく,副腎皮質ステロイド(prednisolone 30mg)を開始した.Prednisolone投与後,自覚症状の改善と心膜肥厚像の改善,右心カテーテル検査での圧および心係数の改善を認めた.
開心術後収縮性心膜炎は開心術後症例の0.2-0.3%に生じ,治療抵抗性のことも少なくない.収縮性心膜炎の根治的療法は心膜切除術であるが,本症例のごとく病態が完成していない可能性がある場合は,副腎皮質ステロイドを中心とした内科的治療を考慮すべきである.
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