直腸癌を合併したStreptococcus bovisを起炎菌とする活動期感染性心内膜炎による大動脈弁輪部膿瘍を伴う大動脈弁閉鎖不全の1手術例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
症例,58歳,男性.主訴,発熱.1996年6月17日頃より感冒様症状が出現,8月上旬より40℃ の発熱を認め近医へ入院し抗生剤の投与を受けたが改善せず,当院循環器内科へ転入院した.血液培養検査にてStreptococcus boivsが検出された.心臓超音波検査で大動脈弁尖の疵贅の付着とIII度の大動脈弁閉鎖不全と診断された.また,前医より入院中に下血が認められたため,大腸内視鏡検査を施行したところ直腸癌の合併もみられた.それゆえ,大動脈弁置換術(以下AVR)時に下血の増量を危惧し,AVRに先行して同年8月27日全身麻酔下に姑息的に直腸癌の出血部位を部分切除した.引き続いて同日型のごとく体外循環を用い,上行大動脈を遠位側で遮断し,上行大動脈を斜切開した.大動脈弁を切除し,弁輪部膿瘍腔を郭清後,Gelatin-Resorcin-Formol biologicalglue(以下GRF-glue)で充填し,膿瘍腔を直接縫合閉鎖することにより大動脈弁輪を再構築し,St.Jude Medical(R)弁21mmによりAVRを施行した.術後第58病日に直腸癌に対しマイルズ手術を行い,術後第119病日に軽快退院した.
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