子宮肉腫摘出後8年目に右心室内転移をきたし,右室流出路狭窄による右心不全を呈した47歳の稀な症例を経験した.
全身倦怠感,全身浮腫が出現して受診し,心エコーにて右室腔内に腫瘤を認めた.入院後,急速な右心不全の進行,全身浮腫および肝うっ血の増悪を認めたため,腫瘤摘出術を緊急で行った.腫瘤摘出により右室流出路狭窄は解除されたが,術後に無尿,溶血性貧血,血小板減少,発熱,譫妄を認め,血栓性細小血管障害の合併が疑われた.術後第1日目より持続的血液濾過透析を開始,術後第10日および18日目に血漿交換を行い,腎機能障害を残すのみで軽快した.
悪性腫瘍の心転移は,剖検例では7.6-18.3%と比較的多く報告されているが,症状を伴い生前に診断される例は少ない.とくに子宮肉腫の心転移は稀であり,検索し得た範囲で10例の報告があるのみである.
血栓性細小血管障害は,血管内皮細胞障害および血小板の活性化により発症し,様々な臓器障害を呈する予後不良な症候群である.本症例では,子宮肉腫の心転移および手術侵襲に伴う腫瘍関連因子の放出が誘因と考えられた.
血栓形成促進因子の除去,血管内皮細胞機能を賦活化する因子および抗血栓性因子の補充という観点から早期透析,血漿輸注,血漿交換等の治療法が行われ,救命率は改善している.本症例でも,発症早期からの持続的血流濾過透析および血漿交換が有効であった.
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