心臓
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36 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 小野 正道, 澤 芳樹, 松本 邦夫, 中村 敏一, 金田 安史, 松田 暉
    2004 年 36 巻 2 号 p. 87-94
    発行日: 2004/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】 近年,冠動脈および末梢動脈疾患に対して,肝細胞増殖因子(HGF)の遺伝子導入により治療的血管新生が起こることが報告されている.本研究ではHGFの経肺動脈遺伝子導入により正常ラット肺に血管新生が起こるか否かを検討した.
    【方法】 雄性Wister系ラットに対して,左開胸下に,HVJリポソーム法を用いて経肺動脈的にヒトHGF遺伝子プラスミドを遺伝子導入した.対照としてcontrol vectorを導入した.遺伝子導入後,4,7,14,21,28日後に犠牲死させ,ヒトHGFの発現,組織学的血管新生,左肺組織血流量の変化,左肺血管抵抗の変化を評価した.
    【結果】 HGF遺伝子導入4日後にELISA,免疫組織染色にてヒトHGFの発現を認め,組織学的な血管密度は対照群に比し有意な増加を認めた(15.0±1.3versus8.0±1.7/mm2,p<0.01).Laser Doppler imagerによる左肺組織血流量の右肺に対する比は遺伝子導入14日後より対照に比し有意に増加した(1.12±0.09versusO.91±0.11,p<0.01).右肺動脈遮断時の右室圧変化はHGF遺伝子導入7日後より対照に比し有意に低下した(8.6±3.5versus15.3±2.8mmHg,p<0.01).
    【結語】 肺動脈からのHGF遺伝子導入は肺血管床に対して血管新生効果を有すると考えられた.
  • 新岡 俊治, 黒澤 博身
    2004 年 36 巻 2 号 p. 95-96
    発行日: 2004/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 岡田 武哲, 坂本 丞, 鈴木 俊示, 斎藤 淳志, 櫻本 博也, 村田 武臣, 冨澤 宗樹, 松尾 美也子, 松尾 武文
    2004 年 36 巻 2 号 p. 97-101
    発行日: 2004/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肺高血圧症を合併したSLE患者にヘパリンを投与したところ,中止後6日目にdelayed onset typeのヘパリン起因性血小板減少症(HIT)による急性心筋梗塞を発症した.HIT抗体の推移を含め経過を詳細に観察できたため報告する.
  • vWF特異的切断酵素活性を経時的に測定し得た1例
    前川 清明, 飛岡 徹, 高垣 健二, 角田 和歌子, 林 恭一
    2004 年 36 巻 2 号 p. 103-106
    発行日: 2004/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    患者は66歳の女性で主訴は出血斑.狭心症で2002年11月14日当院へ入院し,同日よりチクロピジン200mg/日の投与を開始した.11月15日左冠動脈前下行枝(#7)の99%狭窄に対して冠動脈ステント(BX Velocityステント3.0×23mm)を留置した.12月7日より点状出血が出現するようになり血小板減少(7000/mm3)を指摘され,紹介入院となった.入院時身体所見では体温38.3℃ と上昇し,意識レベルは混濁し,体幹に点状出血を多数認めた.1)血小板減少症,2)破砕赤血球を伴う溶血性貧血,3)発熱,4)中枢神経症状の存在より,血栓性血小板減少性紫斑病を疑った.チクロピジンを中止し,4日間血漿交換療法を施行したところ,意識レベルの改善と血小板数の増加を認めた.近年,TTPの病因としてvWF特異的切断酵素(vWFcleavingprotease:vWF-CP)活性の低下とvWFCPに対する抗体の出現が報告されているが,本症例でも血漿交換前のvWF-CP活性は3%未満と著減しており抗vWF-CP抗体が陽性だった.血漿交換によってvWF-CP活性は増加し,抗vWF-CP抗体の出現が本症例のTTPの病因であることが示唆された.
  • 近江 三喜男, 澤村 佳宏, 清水 雅行, 中目 貴彦, 高橋 通規
    2004 年 36 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 2004/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    動脈管動脈瘤はまれな疾患であるが,近年の大動脈外科の発展に伴い報告が増加している.しかし,一般的には本疾患は十分には理解されていない.
    症例は70歳の男性で,高血圧と狭心症の既往がある.平成14年7月29日,胃癌に対し胃切除術を受けた.術後,嘔気,嘔吐が持続し,8月20日以降は絶食のもとに高カロリー輸液を受けていた.9月26日,精査目的で当院に転院となった.10月2日,持続する胸痛を訴え,胸部X線像で心縦隔陰影の拡大と左胸水を認め当科紹介となった.胸部CT像で"triplestarsign"を認め,最大瘤径は60mmであった.DSA所見ではaortic windowに突出する嚢状瘤を認めた.以上の所見より,成人型動脈管動脈瘤の切迫破裂の診断のもとに緊急手術を行った.手術は胸骨正中切開で行い,選択的脳灌流を用いた脳分離体外循環下に,完全弓部大動脈置換および弓部分枝再建術を行った.術後は呼吸不全が遷延し,出血性残胃潰瘍などで長期間の入院を要したが,12月26日に元気に退院した.
    本症の症状は嗄声,呼吸困難,咳嗽,胸痛,嚥下障害など,瘤の拡大による圧迫症状が主である.破裂などの重篤な合併症も高率に発生することから,瘤径3cm以上が手術適応とされる.今回は胃切除術後の通過障害で発症したが,上部消化管症状の鑑別診断上重要な疾患の一つであることを認識すべきである.
  • Ernesto L. Schiffrin
    2004 年 36 巻 2 号 p. 117-127
    発行日: 2004/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    高血圧における抵抗血管の構造および機能の変化は,血圧上昇および心血管合併症の原因となる.細動脈の変化は,高血圧における標的臓器障害の初期病変といえる.アンジオテンシンII(AII)は,血管壁の酸化ストレスを亢進することにより,細動脈の構造および機能変化をもたらすメカニズムに,一部関与している.src-依存性に活性化されるNADPHオキシダーゼは,高血圧患者由来の培養血管平滑筋細胞の増殖をもたらす.ヒトの本態性高血圧において,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は,臀部皮下組織の生検から得られた細動脈の構造および機能における高血圧性変化を正常化したが,他方,β遮断薬は何一つ改善をもたらさなかった.ACE阻害薬は内皮機能も改善した.AIIタイプ1(AT1)受容体拮抗薬とβ遮断薬を用いて1年間同程度に血圧をコントロールしたところ,ATl受容体拮抗薬は高血圧患者の細動脈の構造と内皮機能を正常化したが,β遮断薬は何ら有意の改善をもたらさなかった.β 遮断薬からAT1受容体拮抗薬に切り替えた患者では血管の構造や機能の改善を示した.AT1受容体拮抗薬は重要臓器の血管床においても抵抗血管構造の同様な改善を生じると推測され,それにより心血管系合併症予防効果を発揮する可能性がある.実際,LIFE研究では,AT1受容体拮抗薬ロサルタンがβ遮断薬アテノロールよりも優れた効果を示すことが明らかにされた.しかしながら,最近の無作為化臨床試験のメタアナリシスおよびALLHAT臨床試験では,利尿薬,Ca拮抗薬およびACE阻害薬が同程度の有用性を示し,ACE阻害薬自体に血管保護作用があるという見解は支持されなかった.しかしながら,もう一つの大規模臨床試験であるNBP2においてはACE阻害薬が優れているという結果が報告された.3~5年以上の長期にわたるR-A系抑制薬投与による血管リモデリング改善作用の有用性はいまだに明確ではなく,実証が困難であると思われる.
  • 下川 宏明
    2004 年 36 巻 2 号 p. 128-139
    発行日: 2004/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    血管内皮は,プロスタサイクリン(PGI2)・一酸化窒素(NO)・内皮由来過分極因子(EDHF)の3種類の弛緩因子を産生・遊離して,血管機能の恒常性の維持に重要な役割を果たしている.EDHFは,特に微小循環で重要な役割を果たしている.EDHFの本体については長年不明であったが,我々は,最近,内皮由来の過酸化水素(H202)が少なくともその有力な候補の一つであることを同定した.
  • 安東 克之, 藤田 敏郎
    2004 年 36 巻 2 号 p. 140-147
    発行日: 2004/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    アンジオテンシンII(AII)は動脈硬化因子として知られており,これには酸化ストレスの関与が考えられている.酸化ストレスは種々のメカニズムにより血管障害を促進するが,そのうちの一つは近年になって発見された内皮型酸化LDL受容体であるレクチン様酸化LDL受容体(LOX-1)であると考えられる.
    我々はAII投与モデル動物の大動脈においてLOX-1の発現亢進を示した.LOX-1の発現はAII受容体拮抗薬により降圧に伴って正常化するが,抗酸化物質(スーパーオキシド様物質)tempo1は降圧を生じない量でも部分的にLOX-1の発現を低下する.このことから,AIIによるLOX-1亢進の機序として機械的刺激のみでなく,酸化ストレス亢進も重要であるものと考えられた.また,AII投与により,インスリン抵抗性が亢進するが,この際に酸化ストレスが亢進しており,tempo1により酸化ストレス改善とともにインスリン抵抗性は正常化する.すなわち,AIIによるインスリン抵抗性亢進にも酸化ストレスの関与が示唆された.
    これらの機序で,AIIは酸化ストレス亢進を介して血管障害的に働くと考えられるが,これに対して,内因性抗酸化物質がAIIの作用に拮抗しており,その代表としてアドレノメデュリン(AM)がある.実際,AM欠損動物ではAIIのこれらの作用が亢進していた.
  • 金 勝慶, 光山 勝慶
    2004 年 36 巻 2 号 p. 148-156
    発行日: 2004/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    レニン-アンジオテンシン系(RA系)は,活性ペプチドのアンジオテンシンII(AII)を介して,高血圧のみならず心臓血管リモデリングに直接的に関与している.AIIによる心臓血管リモデリングの機序については分子レベルでの研究が盛んに行われている.我々は,心肥大,心リモデリング,血管リモデリングにおけるMAPキナーゼファミリーや転写因子AP-1の関与について検討してきた.MAPキナーゼファミリーやAP-1の優性抑制型変異体遺伝子導入や,MAPキナーゼキナーゼキナーゼのASK1の遺伝子欠損マウスを使った研究から,アンジオテンシンIIによる心血管リモデリングにMAPキナーゼファミリーやAP-1が重要な役割を演じていることがわかった.
  • 堀内 正嗣
    2004 年 36 巻 2 号 p. 157-166
    発行日: 2004/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    AT1受容体とAT2受容体の発現バランスが,血管リモデリングを調節している可能性を,AT1a受容体欠損マウス(AT1KO),AT2受容体欠損マウス(AT2KO),野生型マウス(WT)大腿動脈にポリエチレンチューブをカフとして巻き付けることで内膜肥厚が得られる血管障害モデルを作製することにより検討した.
    血管障害に伴いAT1受容体とともにAT2受容体が特異的に上昇しており,AT2KOではWTに比べ,血管平滑筋におけるDNA合成能が増強,アポトーシス減少,内膜肥厚が増加しており,AT1KOでは,逆に血管平滑筋におけるDNA合成能が低下,アポトーシス増強,内膜肥厚が減弱していた.この血管障害モデルでは,ケモカインMCP-1,TNF-α,IL-6,IL-lβ等の炎症性サイトカインが産生され,傷害血管への白血球,マクロファージの浸潤が認められるが,これら炎症性変化はAT2KOで亢進しており,AT2受容体は抗炎症作用を有することが示された.更にAT2受容体刺激による抗炎症作用には,IkBの脱リン酸化によるNFkBの活性化阻害が,関与していることが示唆された.
  • 東口 治弘, 鄒 雲増, 小室 一成
    2004 年 36 巻 2 号 p. 167-174
    発行日: 2004/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    AT1は心肥大の形成ばかりでなく,心筋梗塞後の左室リモデリングやアドリアマイシン心筋症の発症にも重要な役割を果している.また,新しいAT1活性化機構として,アンジオテンシンII非依存性にメカニカルストレスにより直接AT1が活性化される可能性のあることを示した.
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