心臓
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36 巻, 5 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 栗栖 智
    2004 年 36 巻 5 号 p. 329-333
    発行日: 2004/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 左室駆出率低下の有無による相違
    宮城島 賢二, 平光 伸也, 岩瀬 正嗣, 植村 晃久, 大槻 眞嗣, 加藤 茂, 加藤 靖周, 杉浦 厚司, 石川 志保, 杉本 邦彦, ...
    2004 年 36 巻 5 号 p. 334-339
    発行日: 2004/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心不全は多種多様な心疾患の結果として生じる予後不良な症候群と考えられ,急性増悪の病態は個々の症例により様々である.今回我々は,慢性心不全の急性増悪で入院した連続448例を調査し,左室駆出率低下の有無による心不全の病態の相違について検討した.
    対象はこの中から弁膜症92例,原発性肺高血圧症1例,二次性肺高血圧症5例,入院時の左室駆出率が正確に測定できなかった4例を除いた346例であり,左室駆出率が50%以上の78例(EF良好群)と50%未満の268例(EF低下群)に分類して,その基礎心疾患,心症状,血中BNP値などの臨床像を比較した.年齢は両群間で有意差は認められなかったが,基礎心疾患を比較すると,EF低下群には虚血性心疾患(56.7%)と拡張型心筋症(19.8%)が多く,EF良好群には高血圧性心不全(29.5%)が高率に存在した(p<0.0001).入院時NYHA心機能分類,血中BNP値はEF低下群が有意に高値であった(p<0.05,p<0.001).強心薬,β遮断薬の内服の使用率は,EF低下群で有意に高率であった.慢性心不全急性増悪症例を左室駆出率低下の有無により比較すると,患者背景には諸外国の報告と類似した相違があり,また,NYHA心機能分類および血中BNP値,心不全治療薬の使用頻度は,EF低下群がより高値であった.
  • 大手 信之
    2004 年 36 巻 5 号 p. 340-342
    発行日: 2004/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 石川 和徳, 高梨 秀一郎, 山本 晋, 三原 和平, 福井 寿啓, 細田 泰之
    2004 年 36 巻 5 号 p. 343-346
    発行日: 2004/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.胸部X線写真上の異常陰影の精査にて胸部下行大動脈に最大径60mmの嚢状動脈瘤が指摘された.さらに,冠動脈造影検査にて左前下行枝(LAD)に90%狭窄を認めたため,一期的手術を施行した.左第5肋間拡大開胸下に,心拍動下に左内胸動脈をLADに吻合(OPCAB)し,次いで左上肺静脈脱血,胸部下行大動脈送血による左心バイパス(LHB)法を補助手段として,胸部下行大動脈瘤切除および人工血管置換術を施行した.
    左開胸下に行った動脈瘤手術と冠動脈バイパス術の同時手術の報告は少ない.特に,今回のOPCABとLHBを用いた人工血管置換術の組み合わせによる同時手術は,現在までその報告例はなく,その低侵襲性の点から有用な選択肢となりうると考えられたので文献的考察を加えて報告する.
  • 岡田 義信, 兼藤 努, 今井 洋介
    2004 年 36 巻 5 号 p. 347-352
    発行日: 2004/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    原発性心アミロイドーシスは多発性骨髄腫に類似して,異常形質細胞によるモノクローナル免疫グロブリンの軽鎖の過剰産生が原因で生ずる.現在,有効な治療法がないため予後不良であり,心不全症状を有すると余命は6カ月以下と報告されている.このたび,心不全症状を有した本症にメルファランの大量化学療法が奏効し,3年間以上生存中である1例を報告する.
    症例は47歳男性.労作時の息切れ,失神および著明な起立性低血圧を主訴として入院した.心エコー検査では,壁厚15mmのび漫性左室肥厚や左室壁のgranular sparkling appearance,左室流入血流波形のrestrictive patternなどが認められた.左室および消化管からの生検にて,アミロイド沈着が証明された.治療は,まずVAD(ビンクリスチン,アドリアマイシン,デキサメタゾン)を4コース施行した.その後,メルファラン200mg/m2の投与と末梢血幹細胞輸注を施行した.以後は無治療だが,徐々に症状ならびに心エコー検査などの所見は改善した.現在,元の職場に社会復帰している.
    原発性心アミロイドーシスに対して,VAD療法後の末梢血幹細胞輸注を併用した大量化学療法がきわめて有効であった.本例は本邦において,原発性心アミロイドーシスに対して,大量化学療法を施行した第1例目である.
  • 中屋 豊
    2004 年 36 巻 5 号 p. 353-354
    発行日: 2004/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 福岡 正平, 小田 基之, 坪田 秀樹, 御厨 彰義, 武内 俊史, 村田 眞司
    2004 年 36 巻 5 号 p. 355-359
    発行日: 2004/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,女性.主訴は息切れ.拡張型心筋症による心不全増悪のため入院.胸部X線によるCTRは77%,心電図はQRS幅200msの完全左脚ブロックを示し,心エコーではLVDd/Ds98/88mm,LVEDV 474ml,MR III度,前壁から中隔のakinesisを中心としたdiffuse hypokinesisであった.血圧,尿量を維持するためにもカテコールアミンから離脱できない状態となったため,乳頭筋,弁尖は全て温存した僧帽弁置換術を施行.また,双極心筋リードを使用し,左室心筋電極(マイナス極)を回旋枝#12付近に固定.右室心筋電極(プラス極)は右室前壁に固定し,永久ペースメーカを植え込んだ.術後心電図では,QRS幅が180msに減少.術後すぐに,両心室ペーシングのみで心拍出量は1割増加し,血圧も上昇した.更にAV間隔を120msとすると,心拍出量は更に1割から2割増加した.術後1カ月時の心エコーでは,LVDd/Ds73/65mm,LVEDV 283mlに減少した.
  • 本荘 晴朗, 神谷 香一郎, 児玉 逸雄
    2004 年 36 巻 5 号 p. 362-369
    発行日: 2004/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    近年,肺静脈起源の異常興奮が心房細動の発生・維持に重要な役割を果たすことが示され注目を集めている.肺静脈入口部ではmyocardial sleeveと呼ばれる心筋線維が肺静脈の周囲を取り囲んでおり,異常興奮はこの心筋層から発生する.肺静脈myocardial sleeveの心筋細胞では静止電位が不安定で,一部の細胞では自動能(automaticity)による自発興奮を生じることが報告されている.また,肺静脈myocardial sleeveの心筋細胞は細胞内Ca2+過負荷や,それに伴う膜電位の脱分極が生じやすく,撃発活動(triggered activity)が発生しやすい.更に,肺静脈myocardial sleeveの活動電位は持続時間が短く,立ち上がり速度が遅いことに加えて,心筋線維の走行が乱れた錯綜配列を呈するなどリエントリーの基質を有することも示されている.このように肺静脈myocardial sleeveの心筋は様々な機序により不整脈原性を示すが,これらが心房細動の発生,維持にどのように関わっているかについてはいまだ十分解明されていない.
  • 岩崎 雄樹, 山下 武志, 関口 昭子
    2004 年 36 巻 5 号 p. 370-374
    発行日: 2004/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肺静脈起源の期外収縮を契機に心房細動が発症することから,肺静脈内には通常の心房筋とは異なった電気生理学的特性を有する細胞が存在すると考えられる.そこで,ラット肺静脈を用いて心筋イオンチャネルの分子生物学的背景をmRNA分布の視点から検討した.ラット心房筋を洞結節分界稜周囲,右心耳,左心耳,左肺静脈に切り出し,RNase protection assayによりerg, KvLQT1, Kv4.3, Kv4.2, Kv2.1, Kv1.5, Kv1.4, SUR2A/B, Kir6.2, Kir3.4, Kir2.2, Kir2.1,α1G,α1C, HCN4のmRNA定量を行った.HCN4は洞結節周囲で最も多く,左心耳と比較して8倍多く発現していた.肺静脈では左心耳と比較して,Kv1.5およびHCN4がそれぞれ3.5倍および2.6倍多く発現していた.さらに肺静脈内におけるmRNA分布を検討するため,HCN4とKv1.5についてinsitu hybridizationによりその遺伝子発現分布を検討した.HCN4は,右心房の洞結節領域近傍に多く発現していると同時に,肺静脈遠位端より肺静脈入口部で多く発現していることが確認され,肺静脈内でもその分布様式が不均一であった.Kv1.5の発現様式は全体的に不均一であった.肺静脈で洞結節近傍組織と同様にHCN4mRNAが増加していたことは,洞結節と類似した背景を有する細胞が存在する可能性を示唆する.
  • 山田 功, 村上 善正, 外山 淳治
    2004 年 36 巻 5 号 p. 375-382
    発行日: 2004/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心房細動(AF)の多くは,肺静脈内近位部に伸展した心房筋に起源を有する心房性期外収縮(APB)をトリガーとして生じる.そして,このAPB起源に対する局所焼灼によりAFの根治が可能である.しかし,肺静脈内マッピングの困難さ,複数起源の存在により局所焼灼の有効性は決して満足できるものではなかった.その後,肺静脈入口部の一部あるいは全周を高周波通電により焼灼し,肺静脈を左房から電気的に隔離する電気的肺静脈隔離術が考案され,現在,AFに対する最も有効なカテーテル治療法と考えられている.我々は,AF患者において,バスケット型多極カテーテルとコンピューター解析装置を用いた肺静脈内三次元マッピングと高周波カテーテル・アブレーション治療を施行した.これまでに我々のマッピング法によって得られた肺静脈電位と心房細動についての知見を報告する.
  • 山根 禎一
    2004 年 36 巻 5 号 p. 383-389
    発行日: 2004/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    従来治療が困難とされていた心房細動が近年カテーテル手技により治療可能となってきている.多くの心房細動が肺静脈起源の期外収縮を引き金として発生することがまず明らかとなり,肺静脈内の異常興奮発生部位を標的とした巣状アブレーションが開始され,その後左房肺静脈間の電気的交通を切断することによる電気的肺静脈解離法へと大きく発展した.肺静脈は心房細動の維持機構に対しても寄与していることが明らかとなりつつあり,治療適応が徐々に拡大している.最近では電気生理学的アプローチだけでなく,解剖学的アプローチによる肺静脈解離術も各種開発され,今後の治療効果の向上が大いに期待される.
  • 平岡 昌和, 井上 博
    2004 年 36 巻 5 号 p. 390-398
    発行日: 2004/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 品川 香
    2004 年 36 巻 5 号 p. 399-406
    発行日: 2004/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    慢性心不全では心房細動(AF)の発症がしばしばみられるが,心不全に伴う心房のリモデリングが近年明らかになってきている.イヌ心室高頻度刺激心不全モデルでは,著明な心房の線維化が生じ,局所伝導障害を生じることによりAFが促進される.また,心不全では,心房Na+-Ca2+exchanger電流の増加が遅延後脱分極,撃発活動を生じてAFの開始に関与する可能性や,圧や容量負荷に伴う心房の伸展や拡張,伸展活性化チャネル,神経体液性因子の変化がAF基質をもたらすと考えられている.心不全の増悪と回復に伴いAF基質は経時的に変化するが,心房線維化は可逆的であるため,治療に際しても早期から心不全に伴うリモデリングを予防することが望まれる.
    ACE阻害薬は心不全でのAFの抑制に有効であることが臨床的に知られているが,ACE阻害薬はangiotensin IIを介する線維化促進のsignal transduction mechanismを抑制するためと解釈されている.また,心不全における心房Na+-Ca2+ex-changer電流の増加に基づく遅延後脱分極,撃発活動の抑制や伸展活性化チャネルの抑制も治療の標的となる可能性がある.
    このような心不全に伴うリモデリングの病態が解明されるにつれ,リモデリングを抑制する治療の重要性が認識されてきており,更なる研究の進展と臨床応用が待たれる.
  • 辻 幸臣, 安井 健二, 因田 恭也, 竹村 春起, 丹羽 統子, 盧 智波, 李 鍾国, 本荘 晴朗, 神谷 香一郎, 児玉 逸雄, St ...
    2004 年 36 巻 5 号 p. 407-412
    発行日: 2004/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    完全房室ブロック(AVB)による著しい心拍数の低下が続くと,心電図のQT延長とTorsades dePointes(TdP)タイプの多形性心室頻拍が発生することがあり,後天性QT延長症候群のひとつとして知られている.しかし,AVBにおけるQT延長とTdP発生のイオン電流機序については,まだ解明されていない部分が多い.
    イヌを用いた実験では,AVB作成後数週間で明らかなQT延長が生じ,薬物やプログラム刺激によるTdP誘発が可能となる.この実験モデルでは,容量負荷に起因する両心室の肥大と心筋活動電位持続時間(APD)の延長が示されており,APD延長の原因として遅延整流K+チャネル電流(特にIKs)の減少が観察されている.我々が作成した家兎AVBモデルでは,イヌモデルよりもさらに著しい心電図QT延長と自然発生のTdPが観察された.心室筋細胞のAPDも大幅に延長し,遅延整流K+チャネル電流(IKrとIKs)の電流密度が明らかに低下した.Ca2+非感受性の一過性外向き電流(Ito1)は,いずれのAVBモデルでも変化しなかった.イヌのAVBモデルでは,IKsのチャネルサブユニットであるKCNQ1とKCNE1のmRNA発現,蛋白発現が低下することが示されている.我々の家兎AVBモデルでもIKsのチャネルサブユニット(KCNQ1)とIKrのチャネルサブユニット(KCNH2)の蛋白発現低下が観察された.慢性AVBに伴う心筋の電気的リモデリングでは,先天性QT延長症候群(LQTS)に類似したイオンチャネルの発現変化が起こることが判明した.
  • 熊谷 浩一郎
    2004 年 36 巻 5 号 p. 413-420
    発行日: 2004/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    実際に不整脈が起こってしまった場合の治療戦略をダウンストリーム治療というのに対し,不整脈の発生をもたらす病態そのものの進行を抑える治療戦略をアップストリーム治療という.心筋梗塞であれば不整脈の基質となる梗塞巣の拡大,線維化や心室の拡張を抑制することによって,慢性期の心室性不整脈の発生を予防するという考えである.そのためには,早期の血行再建術やβ遮断薬,ACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬が用いられている.一方,心房細動の発生する背景を考えた場合,心房筋に器質的異常がなければ心房細動の持続は短いが,これが数時間持続すると,イオンチャネルを構成する蛋白にも変化が生じてくる.これらの変化が心房筋の不応期の短縮をもたらし,それ自体がさらに心房細動の持続を容易にする(心房の電気的リモデリング).さらに心房細動が持続すると,これらの電気生理学的変化に加えて,心房の拡張や線維化などの構造学的変化も加わり,最終的に慢性心房細動に移行すると考えられている.
    不整脈の治療には通常抗不整脈薬が使用されるが,抗不整脈薬のみで不整脈の発生をもたらす病態そのものの進行を抑えるのには限界がある.ACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬は心房の電気的・構造的リモデリングに対し予防効果をもつため,心房細動慢性化予防のアップストリーム治療のひとつとなりうることが期待される.
  • 児玉 逸雄, 笠貫 宏
    2004 年 36 巻 5 号 p. 421-431
    発行日: 2004/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
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