心臓
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36 巻, Supplement3 号
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
  • 佐々木 玲聡, 中里 祐二, 河野 安伸, 飯田 洋司, 戸叶 隆司, 安田 正之, 中里 馨, 代田 浩之
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 5-10
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は44歳男性.主訴は失神発作.現在まで2回,失神発作の既往あり,いずれも回復まで数十秒間を要し,うち一度は失神に伴い転倒,頭部外傷を起こしている.
    外来で施行したホルター心電図で3.6秒の洞停止が記録されており,精査目的で入院となった.
    入院後心臓電気生理学的検査(EPS)を施行.大腿静脈穿刺の際,気分不快を訴えた後に洞性徐脈となり,その後12秒以上持続する洞停止を来し失神に至った.硫酸アトロピンの静注および心臓マッサージにより洞調律に復し,その後意識も回復した.EPSを行ったが,オーバードライブ洞抑制試験による洞結節回復時間の延長は認めず,迷走神経過緊張によると考えられるA-H Wenckebach rateの低下を認めたのみで,器質的な刺激伝導系の異常は確認されなかった.
    入院経過中にHead up tilt test(HUT)も行ったが,baseline tilt およびisoproterenol 0.01γ 負荷下でのtilt いずれも陰性であった.
    本症例は心抑制型の神経調節性失神と考えられ,長時間におよぶ心停止が確認され,外傷の既往もあることからRate drop response(RDR)機能を有するDDDペースメーカーの植え込みを行った.退院時に生活指導もあわせて行い,外来経過観察中であるが,RDR機能が適切に作動し,発作予防に有用であることも確認された.
  • 土井 孝浩, 酒井 孝裕, 西山 慶, 岩淵 成志, 横井 宏佳, 野坂 秀行, 延吉 正清
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 11
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    突然死を来した若年者特発性心室頻拍の症例を経験したので報告する.
    症例は17歳男性.10歳時に意識消失発作を繰り返し,近医にて心室頻拍(VT)と診断,β-blockerにて加療されていた.加療後はVTの改善は運動負荷・Holter心電図上認めなかったが,運動制限を加え,投与開始後は意識消失発作は出現しなかった.
    本年2月アブレーションを含めた精査加療目的に当科を紹介された.
    入院後β-blocker中止.EPSの事前にNeurally Mediated Syncopeの検索目的にてHead Up Tilt Testを施行,徐脈・血圧低下を伴う失神発作が誘発された.Holter心電図上はLBBB+RAD,HR 150のVTを認め,RVOTを起源とするVTが示唆された.次にEPS・アブレーションを施行,Isoproterenol負荷下にてLBBB+RAD,RBBB+NADの2種のVTが誘発された.これに対しclinical VTとしてRVOTを標的とし,PaceMappingガイド下にて焼灼した.
    退院後の治療方針については本人・家族の内服薬への拒否感強く,すべて中止として経過観察となった.退院後は定期的に外来受診,特に症状もなかったが,4カ月後に心肺停止状態で家人に発見され,緊急搬送の上蘇生術施行も反応なく死亡が確認された.
  • 千代 満, 紺谷 真, 池田 孝之
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 12-17
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,男性.生来健康で失神の既往歴および突然死の家族歴はない.平成15年5月17日地域の祭りがあり,昼より飲酒.同日夜,祭り会場で花火遊びをしていた中学生数人に注意をした際に中学生1人に顔面を殴打された.30メートル程歩いたあと意識消失を認めた.心室細動による心肺停止にてby stander による心肺蘇生術を行いつつ当院救急外来に救急搬送された.
    心肺蘇生術と200Jおよび300Jの直流除細動にて自己心拍に復帰.頭部CTは正常.アルコール血中濃度は138mg/dl.急性期の体表面12誘導心電図から急性冠症候群が疑われ,緊急冠動脈造影を行ったが,右冠動脈,左前下行枝の近位部に25%の狭窄を認めるのみで,左室造影も正常であった.無酸素脳症を合併し,現在人工呼吸器および経管栄養中.
    入院後は心室細動,心室頻拍の再出現なく,経過の中でBrugada型様の波形も認められたが,QT延長の所見は見られなかった.
    心停止の原因およびアルコールと顔面殴打の因果関係は不明であり,アルコールと情動ストレスを背景とした冠動脈スパスムが原因として疑われたが確定診断は困難で,また器質的心疾患のない特発性心室細動との鑑別も困難であった.
  • 福田 有希子, 高月 誠司, 三田村 秀雄, 大橋 成孝, 家田 真樹, 三好 俊一郎, 小川 聡, 坂本 宗久, 茅野 眞男, 鈴木 亮, ...
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 18-23
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は35歳の男性.失神,突然死の家族歴はない.平成15年4月1日午前9時3分頃,通勤途中の電車内で,突然意識消失.駅員が午前9時7分救急隊を要請した.モニター上心室細動(VF)で,救急隊により午前9時15分電気ショックを施行,午前9時24分再度VFとなり,2回めの電気ショックを施行した.その後洞調律を維持し,午前9時45分他院救急救命センターに搬送された.到着時意識レベルは,昏睡状態,JCS300,血圧135/82mmHg,心拍数116/min,洞性頻脈で,瞳孔は3mm大,対光反射を認めず,脳保護のため低体温療法を開始した.復温とともに意識状態は回復し,神経学的にも後遺症を認めなかった.心臓超音波検査,冠動脈造影,アセチルコリン負荷検査を行ったが,異常所見は得られず,当院へ紹介入院した.トレッドミル運動負荷試験,pilsicainide負荷試験では異常所見を認めなかった.6月10日に行った心臓電気生理検査で,Baselineでは不整脈は誘発されなかったが,isoproterenol負荷後の右室期外刺激(400/200ms)で,VFが誘発され,特発性VFと診断し,ICD(植え込み型除細動器)を挿入した.本症例は,医師の指示なく,救急救命士の判断で行った電気的除細動によって一命をとりとめ,さらに社会復帰し得た本邦第1例目の症例であった.
  • 岸 良示, 中沢 潔, 小川 竜一, 松本 直樹, 高木 明彦, 長田 圭三, 桜井 庸晴, 宮津 修, 渡邉 義之, 松田 央郎, 村野 ...
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 24-28
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    突然死(以下SD)の家族歴の多い家系を経験した.発端者は75歳男性.兄2人は生直後SD,甥もSDだった.発端者は失神の原因検索から肥大型心筋症(以下HCM)と診断され,Holter心電図の42連の非持続性VTと心室プログラム刺激により持続性心室細動が誘発されたため,植え込み型除細動器の植え込みを受けた.その妻(69歳)の父は33歳でSDしていた.発端者には息子と娘が1人ずついた.息子は非持続性VTのあるHCMだった.娘は健康であった.その娘に3人の息子があった.長男は4歳時にSDした.現在19歳の次男は,13歳のSDの蘇生歴があるHCM患者で,蘇生後脳症で通院中である.三男は健康である.異常はないと思われた発端者の妻,娘,およびその三男にpilsicainide負荷を試みた結果,娘でBrugada症候群の心電図波形が誘発された.SD危険性の高いHCMとBrugada症候群の家系だった.
  • 清水 亜希子, 篠崎 毅, 遠藤 秀晃, 佐藤 公雄, 多田 博子, 深堀 耕平, 広瀬 尚徳, 高橋 孝典, 大友 淳, 若山 裕司, 沼 ...
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 29-34
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は26歳男性.母方の祖父と叔父に突然死の家族歴がある.23歳から重労作で息切れや脈を強く感じることはあったが,日常生活に支障はなかった.26歳時に健診で心雑音を指摘された.心エコーで心室中隔壁厚31mm,左室中部に圧較差60mmHgを認め,閉塞性肥大型心筋症と診断された.心臓カテーテル検査では左室中部の圧較差は90mmHgであり,AV sequential pacingにて圧較差が0mmHgとなったことから,DDD型ペースメーカー植え込みの適応と考えられた.また,突然死の家族歴,30mm以上の左室壁肥厚,高い安静時左室内圧較差に加えて,造影遅延MRIで心筋の線維化巣を表す高信号領域を心室中隔で広範に認めたことから突然死のハイリスク群と判断し,Dual chamber ICDを植え込んだ.AV sequential pacingにプロプラノロール60mgとシベンゾリン300mgを併用することにより安静時左室内圧較差は10mmHgに低下した.シベンゾリン開始後,心室性不整脈の増加は認められていなかった.ICD植え込み手術後6カ月目に発生した初回心室細動に対して,ICDが正常に作動し,突然死を回避することができた.
  • 藤田 聡, 池主 雅臣, 鷲塚 隆, 古嶋 博司, 田辺 靖貴, 渡部 裕, 小村 悟, 広野 崇, 杉浦 広隆, 相澤 義房
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 35-41
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    68歳女性.拡張型心筋症(左室駆出率20%)による心不全増悪にて入院.安静時心電図は洞徐脈で,通常型と非通常型心房粗動および心房細動発作をも認めた.粗動時に1:1房室伝導のためにショック状態となった.通常型心房粗動にはカテーテル焼灼術を行った.その後も非通常型心房粗動は繰り返し出現し,持続すると心室頻拍を誘発し直流除細動を要した.ニフェカラントおよびソタロールを用いたが効果は充分でなかった.本例は高度の心機能低下を伴う拡張型心筋症で,頻発する心房粗動に心室頻拍を伴うため,房室ブロック作成と植込み型除細動器植込みの適応があると判断したが,本邦の現状をふまえ,両心室ペースメーカー治療を優先させた.治療後,心房粗細動および心室頻拍の合併はみられなくなった.今後,植込み型除細動器と房室ブロック作成の治療をどのように展開していくかが重要と考えられた.
  • 櫻井 聖一郎, 鵜野 起久也, 永原 大五, 西里 仁男, 吉岡 拓司, 藤井 徳幸, 野田 亮輔, 土橋 和文, 島本 和明
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 42-48
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性.左室駆出率27%,全周性収縮力低下を伴う拡張型心筋症例.1年前に持続性心室頻拍(VT)に対しICD植え込み術を施行.経過中にelectrical stormとなり当科緊急入院.心電図上,複数種類のfast VTを認めβ遮断薬・アミオダロンの投与下の鎮静・調節呼吸管理によりVTは消失.覚醒に伴いVTが再出現するためカテーテルアブレーション(RFCA)を施行.イソプロテレノール投与下の右室連続刺激にて血行動態の破綻を伴うfast VTが容易に誘発された.Electro-anatomicalmappingによるvoltage mapではscar部位は同定されず,左室側壁起源のfast VTに対し洞調律下のペースマッピングを指標にRFCAを施行しVTは消失.以後ICDの作動は認めていない.カテコラミン感受性心室頻拍に対するICDのappropriate shockが引き金となりelectrical stormを来したと考えられた症例を経験したので報告する.
  • 鈴木 順, 山崎 恭平, 上小澤 護, 伊藤 篤, 阿部 秀年
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 49-54
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例1は37歳男性.1カ月前より動悸を自覚するも放置.00年2月健診受診時,心電図にて1度房室ブロック,完全右脚ブロック,左軸偏位を認めた.心エコーにて心室中隔の菲薄化を認め精査目的で入院.同日のモニター心電図にて間歇的な完全房室ブロックを認めた.心臓カテーテル検査では冠動脈は正常.左室造影では,前壁の壁運動低下を認め,心筋生検にて心サルコイドーシスと診断.電気生理学的検査で持続性心室頻拍が誘発され,ICD植込みを行った.症例2は41歳男性.健診で左軸偏位を指摘されていた.02年8月健診にて期外収縮頻発を指摘され受診.心電図にて左軸偏位,右室起源の2種類の期外収縮頻発を認めた.心臓カテーテル検査で両室の軽度壁運動低下を認め,右室中隔より心筋生検施行し,心筋の脂肪変性を認めた.電気生理学的検査にて左脚ブロック型の持続性心室頻拍が誘発され,late potential陽性とあわせて催不整脈源性右室心筋症(ARVC)と診断し,ICDの植込みを行った.
  • 坂本 一郎, 小池 城司, 下川 宏明, 樗木 晶子
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 55-60
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシスは,その5~10%に心病変を合併することが知られている.さらに心サルコイドーシスの終末像として25~65%は突然死をきたすが,その多くが心室性不整脈または伝導障害によるものと考えられている.そこで,これまでに当科で突然死もしくはそれに類似する臨床経過をとった4例について検討したので報告する.症例1は51歳・男性.完全房室ブロックを発症後,突然心室細動による心肺停止となり,心肺蘇生後に植え込み型除細動器を植え込み,ソタロールを併用しながら経過観察中である.症例2は59歳・女性.完全房室ブロックに対して永久ペースメーカーを植え込まれたが,のちに薬剤抵抗性の心室頻拍・細動を繰り返すために入院となったが,救命しえなかった.症例3は79歳女性.心サルコイドーシスの活動期に心室頻拍を認めたが,活動期にプレドニゾロン増量・ソタロールの投与を行い著効した.症例4は80歳女性.入院中突然生じた完全房室ブロックのため,急性肺水腫となり,ペースメーカー植え込みにより改善した.心サルコイドーシスの場合はこのような重症不整脈発症の予知が困難であり,それが突然死につながるものと考える.活動期にはサルコイドーシスに対する積極的な治療が必要と考えられる.
  • 川戸 仁, 一杉 正仁, 仁平 裕久, 黒須 明, 上村 純子, 長井 敏明, 徳留 省悟
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 61-64
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    原発性肺高血圧症で突然死した小児の1剖検例を報告する.
    事例の概要:症例は7歳の男児.4歳時に呼吸困難を主訴に近医を受診.精査の結果,原発性肺高血圧症と診断され,近医へ通院し内服加療を受けていた.5月の某日,自宅トイレで心肺停止状態で倒れているところを家人に発見され,まもなく死亡が確認された.死因究明のため,翌日,法医解剖がされた.
    剖検所見:肉眼所見では肺動脈主幹部の拡張,硬化,心重量の増加および右心系の著しい拡張性肥大を認め急性死の所見を伴っていた.組織学的所見では,原発性肺高血圧症に特徴的な肺動脈叢状病変に加え,心筋の狭小化,左室内膜側の虚血性変化がみられた.以上より,本例の死因は原発性肺高血圧症に起因した両室心不全と診断した.
    考察:原発性肺高血圧症は,わが国で小児期に年間15人前後発症するといわれ,しばしば突然死する.本例は,肺動脈圧上昇から右心不全を,肺循環血流量の低下などから左心不全をきたしたと考えられ,剖検で突然死の病態が解明された貴重な1例と思われた.
  • 原田 敬, 大江 春人
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 65
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心肺停止(CPA)で来院した破裂大動脈瘤,急性大動脈解離症例の臨床像について検討した.当院では,CPAほぼ全例に全身CT検査を行い,原因確定に努めている.
    平成9年1月から5年間の全CPA616例(男:女=379:237,年齢64±21歳)中,外傷性を除く急性大動脈解離(DA)は25例,嚢状動脈瘤破裂は16例(計41例;全体の7%)であった.DAは男性,動脈瘤破裂は女性が多く,70歳以上で,過半数に高血圧,心筋梗塞,脳梗塞の既往を認めた.11例が発症前に動脈瘤を指摘された.
    DA中24例はA型解離.心停止目撃例は18例で,胸痛発症は6例,発症直後の目撃者による心停止確認(瞬間死)は12例であった.13例は心タンポナーデを合併,3例は心嚢穿刺後に心拍再開した.
    動脈瘤破裂は,大動脈弓部6例,腎動脈下部5例が多く,初発症状は胸部動脈瘤では意識障害か瞬間死,腹部動脈瘤では疼痛が多かった.3例が心拍再開した.
    心拍再開6例中,DA3例が1週間以上生存したが,最終的に全例死亡した.
    なお,同時期のCPA以外の症例は,A型DA28例(手術26例,死亡4例),B型23例(手術1例,死亡0例),動脈瘤破裂3例(手術3例,死亡1例)で,全体を通じてもB型DA以外は予後不良で,従来の見解とも一致していた.
    大血管破綻症例は,発症直後から急速に血行動態が不良となるため,予後は極めて不良であった.
  • 河野 浩章, 神田 宗武, 小出 優史, 馬場 健, 戸田 源二, 瀬戸 信二, 矢野 捷介
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 66-70
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は56歳男性.主訴は胸痛.既往歴として1999年糖尿病.家族歴は母親に肝臓病.現病歴:2003年5月24日午後10時,排便中に胸痛出現.午後11時に救急車にて近医に搬送され,心電図上I,aVL, V1-4のST上昇により急性心筋梗塞と診断され,5月25日午前0時に当院到着.ベッドに移動後心肺停止.心肺蘇生術後,slowVTとなり大腿動脈の拍動が触知される状態で心カテ室に移動.心カテ直前に心停止となり心臓マッサージ下に冠動脈造影施行.左冠動脈主幹部の完全閉塞を認め,経皮的冠動脈形成術を施行し50%狭窄に改善したがno-reflow現象により末梢まで造影されず,5月26日午前4時50分に死亡.剖検上,左室前壁中隔から側壁にかけて出血性梗塞を認め,梗塞部位の心筋内細動脈障害と,ce11 debrisとフィブリンによる内腔の閉塞がみられた.非梗塞部位にこれらの所見はみられなかった.以上より,no-reflow現象に細動脈傷害と内腔閉塞の関与が示唆された.
  • 村松 崇, 坪井 直哉, 吉田 幸彦, 小椋 康弘, 鈴木 博彦, 山下 健太郎, 海野 一雅, 嶋野 祐之, 松下 邦洋, 七里 守, 竹 ...
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 71-77
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性.慢性腎不全,下壁心筋梗塞の既往あり.慢性心不全の増悪で入退院を繰り返していた.2002年徐脈性心房細動のためVVIペースメーカー植え込み術を施行された.その後2003年3月から心不全が再増悪し,ドブタミン持続点滴から離脱困難となった.来院時BNPは1560,心エコー上LVDd78mm ,LVEF26%であった.両室ペーシング(BiV)の急性効果を検討したところ右室ペーシングと比較して,LVdP/dt maxが約41%改善した. 後日BiVへのupgrade手術を施行. 術後心不全は著明に軽快しドブタミンから容易に離脱可能となった.術後6日目にCL320msの非持続性心室頻拍(10連発)が1度のみ認められた.メキシレチン200mg/日を開始したところ以後心室頻拍は認められないため退院となった。退院後心不全症状はなく経過良好であったが2カ月後自宅で午睡中に突然心肺停止状態となり死亡した.経過から致死的不整脈が死因と考えられた.うっ血性心不全に対するBiV治療においてはICD機能付き両室ペースメーカーを必要とする症例が存在するが,その鑑別が重要と考えられる.
  • 森田 みどり, 間仁 田守, 落合 出, 飯島 徹, 山内 康彦, 佐々木 豊志, 金澤 紀雄
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 78-82
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は52歳男性.平成14年12月よりニフェジピン40mg/日を開始したが,過度の降圧のため,1週間後にはカンデサルタン8mg/日に変更した.3月25日,降圧不十分のため,ドキサゾシン1mg/日を追加した.3月27日,朝8時,胸部不快感を訴えた後,意識消失し,当院に搬送された.心室細動を認め,種々の抗不整脈薬投与と頻回の電気的除細動にて洞調律に回復した.冠動脈造影では有意狭窄は認めなかった.集中治療室入室後,ST上昇後に心室細動に移行する所見を繰り返し認めたため,繰り返す冠攣縮に伴う心室細動と考え,亜硝酸薬を投与したところ,以降ST上昇および心室細動の出現は認められなくなった.冠攣縮は突然の心停止や致死性不整脈の原因疾患であるが,本例のように治療抵抗性の心室細動では繰り返す冠攣縮によるものも念頭において治療する必要があると考えられた.
  • 古賀 徳之, 井上 敬測, 加世田 繁, 川副 信行, 佐渡島 省三, 益田 一敏
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 83-86
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性.糖尿病性腎症でH9年より維持透析中.H14年2月不安定狭心症を呈し,当院にて右冠動脈近位部に緊急カテーテルインターベンション(PCI).その後再狭窄を繰り返し2回PCI施行.H14年10月9日再び不安定狭心症となり緊急入院となる.入院時血清カリウム7.4meq/Lと高カリウム血症を呈し,心室性期外収縮の頻発,連発を認めた.ニトログリセリン,グルコン酸カルシウム,炭酸水素ナトリウム,キシロカインを投与し,緊急カテーテル検査の準備をしていたが,持続性心室頻拍となり,ショック状態となる.上記薬剤を再投与しつつ,計3回の電気的除細動を行い一時的には洞調律に復すも十数秒後には再び心室頻拍となる.このため塩酸ニフェカラント17mgを静注したところ心室頻拍,心室性期外収縮は速やかに消失した.引き続きニフェカラントを0.4mg/kg/時間で点滴.高カリウム血症は持続するも,心室頻拍の再発はなく,引き続き安全にPCI,血液透析を施行しえた症例を経験したので報告する.
  • 阿部 芳久, 門脇 謙, 寺田 健, 庄司 亮, 熊谷 肇, 佐藤 匡也, 三浦 傅
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 87-91
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Brugada症候群に特徴的な心電図所見を有し,心室頻拍と心室細動が出現したものの,その成因が急性心筋虚血であった症例を報告する.
    症例は62歳の男性.胸痛,めまいや失神の出現なし.突然死の家族歴なし.大腸癌の手術を目的に某総合病院に入院.麻酔導入,開腹直後に,II誘導でのモニター上でSTの上昇に続いて心室頻拍と心室細動が発生し,計11回のDCショックを含む90分に渡る蘇生術にて回復した.この間,リドカイン,Mg,パルテプラーゼとニコランジルが投与された.後日行われた冠動脈造影で,右冠動脈(AHA#1)に99%狭窄がみられた.12誘導心電図で,V1誘導にcoved型の,V2とV3誘導にsaddleback型のST上昇が認められたため,心室細動との因果関係の有無を調べるとともに,冠動脈治療の目的で当センターを紹介された.
    右冠動脈の狭窄に対して,冠動脈形成術とステント植え込み術を行った.なお,壁運動異常は認められなかった.慢性期に,再狭窄や冠攣縮誘発がみられないことを確認した後に行ったピルジカイニド負荷では,II誘導でcoved型への変化とともに,最大0.22mVのST上昇が生じた.プログラム刺激では心室頻拍や心室細動は誘発されなかった.
    Brugada型心電図を有するということだけで,生じたイベントを特発性と判断すべきではなく,多角的な検討が必要であることを本症例は示している.
  • 小川 正浩, 熊谷 浩一郎, 野口 博生, 安田 智生, 三好 恵, 山之内 良雄, 朔 啓二郎
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 92-96
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.深夜,自宅で安静時に意識消失発作をおこし,救急車で搬送された際,心電図上心室細動を指摘され直流除細動で回復した.病院搬入時の12誘導心電図では,心房細動と左脚ブロック+上方軸の心室期外収縮から自然発生する心室細動が記録された.また無投薬下の安静時12誘導心電図では,右側胸部誘導で有意なST変化を認めず,下壁誘導(II,III,aVF)でJ型ST上昇を認め,pilsicainide 50mg静注で右側胸部誘導(第3肋間)にcoved type ST上昇,また下壁誘導においてもJ点の電位高はそのままに軽度ST上昇を認めた.
    経胸壁心エコーで異常所見を認めず,冠動脈造影ではアセチルコリン負荷で冠動脈攣縮が誘発された.また心臓電気生理学検査では右室心尖部からの期外刺激2連発(600/250/200)で心室細動が誘発された.以上よりBrugada症候群を診断し,ICD植え込み術施行ののち経過観察中である.
    下壁誘導にJ型ST上昇を伴う特発性心室細動・Brugada症候群が報告されているが,未だ不明な点も多い.今回我々は,心室細動自然発生時の心電図所見など興味深い所見が得られたので報告する.
  • 常田 孝幸, 藤木 明, 阪部 優夫, 水牧 功一, 井上 博
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 97-103
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は51歳男性,夜間の失神発作を主訴に来院しBrugada症候群と診断された.ICDを植え込み1年後,小走りした際の洞頻脈時にICDショックを生じた.心内R波高が2mVと減高,T波高が2mVと増高,ICDはT波をR波と誤認し心室頻拍の診断のもとショック治療を行った.リード先端の位置は植込み時と変わらず,右室径,右室壁運動にも変化は認めなかった.そこで心室のR波とT波の判別が良好な心尖部のICDリードよりやや上方のR/T比6:1の部位へ新たにリードを挿入した.またQT時間が0.26秒と短縮し,quinidine300mg/日投与によりQT時間は0.38秒(QTc0.42)に,bepridil 200mg/日では0.40秒(QTc0.41)に延長し,心内T波電位の波高も低下した.本例のT波過剰感知によるICD誤作動にはQT時間の異常な短縮が関与し,リード挿入部位を変更し薬剤を併用することで誤作動は消失した.
  • 若林 公平, 東 祐圭, 若月 大輔, 柳澤 史子, 下島 桐, 堤 健, 嶽山 陽一
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 104-109
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    今回われわれはARVC(arrythmogenic right ventricular cardiomyopathy)に類似した所見を示したBrugada症候群の1例を経験し,興味ある症例と考えられたので報告する.症例は23歳,男性.生来健康.夕食後安静時に前兆なく失神をきたし,心電図所見からBrugada症候群が疑われ当科紹介入院した.身体所見,心臓超音波検査,心臓カテーテル検査等で器質的な異常を認めなかった.12誘導心電図では,右脚ブロック,V1からV3誘導にかけてSTの上昇,V2誘導ではcoved型のST波形を認めた.心室遅延電位は陽性であった.心臓MRIで右室前壁にlow intensity area,心筋生検で右室のみに脂肪浸潤が認められた.電気生理学的検査(EPS)では,右室流出路単回期外刺激で多形性心室頻拍,心室細動(VF)が再現性をもって誘発された.また左脚ブロック型の非持続性単形性心室頻拍が繰り返し誘発された.Pilsicainide負荷では右胸部誘導でST上昇の増強を認めた.埋込型除細動器(ICD)植込み術1カ月後にVFによるICD作動があり,塩酸quinidine, cilostazol内服にて経過観察中である.本例は単形性心室頻拍が誘発され,かつ形態学的にARVCに類似する所見を認め,興味深い症例と思われた.
  • 網野 真理, 吉岡 公一郎, 杉本 篤彦, 岩田 理, 相川 実, 臼井 和胤, 出口 喜昭, 田邉 晃久, 安井 健二, 本荘 晴朗, 神 ...
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 110-115
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    体表面からの心室遅延電位(LP:late potential)の単回測定は基礎疾患の重症度と無関係に,致死的不整脈の独立した予後規定因子の一つとされる.しかし単回測定によるLPの再現性の問題や連続記録の検討は十分でない.今回ホルター心電計を用いて,無症候性Brugada症候群例にLPの経時的変化が認められるか否かを観察し,(1)LP変動とEPSによる誘発性との関連性,ならびに(2)LP変動とV1,V2誘導心電図変化との相関を検討した.方法は対象男性4例にホルター心電計を装着し,日中の塩酸ピルジカナイド(Pil)負荷試験時と夜間就寝時の連続6時間のLPをハイリゾリューション(HR:2.5mikuroV,1000Hz)記録した.心電図でQRS-T波を200回加算平均し20分毎にLPを判定した.判定基準はLPのスコア化による独自の方法を用いた.4例中3例にLPの経時的変動が認められ,この3例では電気生理検査(EPS)で心室細動が誘発された.一方,夜間におけるV1,V2誘導のST変化波形異常とLP陽性との関連は認められなかったが,Pil負荷試験時の両指標間には相関があった.無症候性Brugada症候群におけるLPの経時的変化の観察は,予後と関連する可能性があり,今後LPの変動と臨床的意義についての検討が必要と考えられた.
  • 渡辺 則和, 小林 洋一, 三好 史人, 三上 慶乃, 勝又 亮, 河村 光晴, 劉 俊昌, 安達 太郎, 浅野 拓, 宮田 彰, 中川 陽 ...
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 116-123
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】Brugada症候群の特徴の一つに心電図ST部分の日内変動があるが,従来のHolter心電図では前胸部誘導のST変化を評価できない.そこで,24時間12誘導ホルター心電図を用い右前胸部誘導のST変化について検討した.
    【方法】Brugada症候群の4症例(すべて男性.平均年齢40歳)に対し12誘導ホルター心電図(フクダ電子社製FM-700)を施行した.2例は心肺停止例(心停止群:CPA群),他2例は失神症例(失神群:SYN群)であった.同症例における12誘導ホルター心電図の24時間ST変化を検討したコントロールとして,同時期に12誘導ホルター心電図をおこなった15例(男性10例.平均年齢43.2歳)を用いた.
    【結果】Brugada症候群の4症例はコントロール群に比べ有意にV2のST高および変動(標準偏差)が大であった.SYN群に比較しCPA群でV2のST高および変動(標準偏差)は,大であった.CPA群の2症例で心拍によりcoved型ST高が変動する所見が認められた.
    【総括】12誘導ホルター心電図は,Brugada症候群の特徴であるST変化を24時間経時的に記録可能であり,その変化を検討することによりBrugada型心電図の心事故発生予測の可能性が示唆された.
  • 高村 和大, 五十嵐 正樹, 岡野 喜史, 正林 浩高, 小林 建三郎, 大塚 崇之, 山崎 純一
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 124-129
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    19歳男性.家族歴に突然死なし.以前より運動時に脈の不整や動悸を自覚していたが放置していた.バスケットの試合中に胸部不快感が出現し失神,当院救急搬送となる.冠動脈造影では有意狭窄病変を認めず,アセチルコリン負荷試験陰性であった.心筋生検では炎症所見や心筋症を示唆する所見や,心臓MRIでの異常所見を認めなかった.心臓電気生理検査を施行.コントロールでは心房,心室刺激ともに頻拍は誘発されず,イソプロテレノール持続点滴下に右室心尖部からの早期刺激により心室細動が誘発された.Pilsicainide静注によりBrugada症候群に類似する右側胸部誘導のcoved型ST上昇を認めた.特発性心室細動としてICD植え込み術を施行した.Naチャネル遮断薬負荷によりBrugada症候群類似の心電図変化をみた特発性心室細動を経験し報告する.
  • 大久保 公恵, 渡辺 一郎, 奥村 恭男, 山田 健史, 杉村 秀三, 高木 康博, 脇田 理恵, 橋本 賢一, 中井 俊子, 斎藤 穎, ...
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 130-135
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【症例1】72歳女性,シャワー浴中失神.翌日胸部不快感出現し近医受診,心電図上QT間隔754msと延長し多形性心室頻拍(PVT)を認めた.精査目的にて当院入院.高血圧,高脂血症,徐脈性心房細動のためサイアザイドおよびプロブコール内服.内服中止後もQT間隔が560msと延長していたため電気生理学的検査(EPS)を施行した.ニフェカラント(Nif)を静注したところQT延長からtorsadesde pointes(Tdp)を認めたためICD植込みを施行した.【症例2】48歳女性.会話中失神し救急車にて当院に搬送.到着時CPAで心室細動(Vf)に対し電気的除細動を施行,洞調律時QT間隔が740msと延長していたため一時ペーシングを開始.K1.9mEq/lと低K血症を認め補正した.血清K補正後もQT640msと延長を認めた.冠動脈造影,左室造影は正常.EPS中Nif静注後,QT間隔が100msec以上延長したがVT,Vfは誘発されなかった.洞性徐脈(45-50/min)を常に呈していたため,ICD植込みを施行した.
  • 森田 宏, 中村 一文, 大田 恵子, 森田 志保, 三浦 大志, 斎藤 博則, 草野 研吾, 江森 哲郎, 大江 透, 幡 芳樹, 水尾 ...
    2004 年 36 巻 Supplement3 号 p. 136-141
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    発端者は12歳男性で,小学校時の検診にてQT延長を指摘されたが,無症状のため経過観察されていた.12歳の時,運動中に意識消失をきたし,近医に入院した.先天性QT延長症候群を疑われ当科紹介となった.心電図でQTc O.46秒と延長を認め,T波は幅の広い振幅の高いT波を示した.運動負荷にて負荷後QT間隔の延長を認めた.Isoproterenol負荷を行ったところ,負荷時に著明なQT延長とT波極性が交互に変化するT wavealternans(TWA)および心室性期外収縮の多発を認めた.先天性QT延長症候群と診断し,atenolol内服を開始した.81歳の祖父は脳梗塞にて近医入院し,誤嚥性肺炎,低カリウム血症で加療中であった.心電図で右脚ブロック,QT延長(QTc-0.64秒)を認めた.低カリウム血症時にT波極性が変化るTWAをきたし, Torsadesdepointesが出現した.発端者の遺伝子検索でLQT1の家系と診断した.
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