低心機能の虚血性心疾患を伴う慢性透析患者への冠動脈バイパス術施行後の薬剤抵抗性致死的不整脈に対して,植込み型除細動器を装着し社会復帰した2症例を経験した.
患者1は60歳,男性.血液透析歴23年.脳梗塞で入院中,血液透析後に心室細動となったが蘇生された.冠動脈造影にて前下行枝を含む石灰化の強い重度の2枝病変が認められ,緊急冠動脈バイパス術が施行された.術後も頻回に持続性心室頻拍や透析中の心室細動が発症し電気的除細動が施行された.
患者2は74歳,男性.血液透析歴2年.最大径85mmの腹部大動脈瘤,両側腸骨動脈閉塞,そして左主幹部病変を含む冠動脈狭窄が認められ,腹部大動脈瘤切除術および冠動脈バイパス術の同時手術が施行された.経過は良好であったが,術後14日目の透析終了後まもなく突然多形性心室性頻拍が頻発した.
2症例はともに陳旧性心筋梗塞を合併した透析患者で,左室駆出率40%以下の低心機能であった.冠動脈バイパス術後間もなく重症不整脈が出現したため,2症例ともアミオダロンが投与された.その後も薬物抵抗性の非持続性心室性頻拍を認めたため,植込み型除細動器が装着された.その後2症例とも退院し社会復帰したが,患者1は術後18カ月に腎臓がんで死亡した.
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