最近,大規模試験で重症心不全の治療にACE阻害薬とspironolactoneの併用が患者の生命予後を著しく改善することが示されたが,高カリウム血症や男性患者の女性化乳房などの副作用が強く,欧米ではその使用が制限されることが明らかにされた.そこで,アルドステロン受容体に選択性の強い新しい拮抗薬,eplerenoneが開発されたところである.一方,わが国ではspironolactoneが欧米に比してより多くの患者に使用されていると推測される.今回,静岡県内でspironolactoneを使用している全医療機関を対象にアンケート調査を行い,わが国の患者における本薬の忍容性を調査した.回収率は診療所で32.7%,病院で46.9%であった.Spironolactoneはわが国の循環器専門医には高頻度に使用されており,その目的は心不全患者を対象にしたものが最も多く,その用量は承認されている量よりはるかに少量であった.心不全の治療には,病院ではRALES試験(Randomized Aldosterone Evaluation Study)の結果を受けてACE阻害薬との併用が多いが,診療所ではこの傾向は少ない.副作用の発現は病院,診療所ともに女性化乳房と高カリウム血症が多かったが,その頻度は多くなく,わが国におけるspironolactoneの忍容性はそれほど悪くないと考えられた.医師の大半(診療所88%,病院78%)がその使用に満足している.Eplerenoneは確かに副作用が少ないが,わが国では医療経済的な見地からもspironolactoneの使用が優先されるべきで,eplerenoneと上手に使い分ける必要があると思われる.
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