心臓
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37 巻, Supplement3 号
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  • 丹野 郁, 伊藤 啓之, 小貫 龍也, 三好 史人, 松山 高明, 渡辺 則和, 河村 光晴, 劉 俊昌, 浅野 拓, 小林 洋一, 片桐 ...
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 5-10
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:日本の現状における心臓性突然死の実態を明らかにし対策を検討する.
    対象と方法:2001年1月から2003年12月までに,当院救急センターに搬送された内因性心肺停止患者528人のうち,心臓性突然死(SCD)と診断された患者299人を対象とした.男性198人,女性101人,平均年齢68±13歳である.器質的心疾患(OHD)を持つ症例が110例(37%),器質的心疾患はないが冠動脈危険因子を有する症例79例(26%),医療機関受診歴のない症例110例(37%)であった.OHD群の内訳は虚血性疾患56例(心筋梗塞33例,狭心症23例),非虚血性心疾患54例(原因不明の心不全13例,心臓弁膜症11例,不整脈疾患10例,拡張型心筋症7例,肥大型心筋症7例,先天性心疾患3例,その他3例)であった.SCDの発生場所は222例(74%)が自宅,職場が21例(7%),公共の場所が56例(19%)であり,目撃者のあるSCDは192例であった.目撃者のあった192例中最初の心電図が心室細動(VF)であった症例は68例(35%),Pulseless Electrical Activity(PEA)は44例(23%),心静止(asystole)が80例(42%)であった.一方,目撃者のない症例は107例で,VFは7例(6%),PEA1O例(9%),asystole90例(85%)で,統計学的に有意にasystole症例が多かった.目撃者があり最初の心電図がVFで,直流除細動を行った症例68例中洞調律を回復した症例は14例,PEAとなった症例が7例,VFが停止しなかった症例4例,asystoleとなった症例が43例であった.このなかで蘇生され生存退院できた症例は13例であった.
    結語:心原性心肺停止患者の救命率は低い.突然死の予防には心疾患を有する患者だけではなく,健常者も含めた対策が必要である.
  • 小菅 宇之, 田原 良雄, 外山 英志, 豊田 洋, 松崎 昇一, 中村 京太, 岩下 眞之, 森脇 義弘, 鈴木 範行, 杉山 貢, 戸田 ...
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 11-14
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は70歳男性.自動車運転中,意識障害を来し交通事故を起こした.救出した通行人は心肺停止を疑い,事故2分後より心肺蘇生を開始した.7分後,救急車,院外救急医療班が到着した.モニター上,心室細動(VF)を認め直ちに電気的除細動を3回行ったが無効であった.現場医師は状況からVFによる内因性心肺停止と考え,ACLSを行いつつ搬送した.当院では難治性VFによる心肺停止という情報よりニフェカラント,PCPSの使用を想定していた.来院後,VFのアルゴリズムに沿って蘇生を行い来院8分後には自己心拍が再開した.心拍再開後の12誘導心電図から原因として急性心筋梗塞が疑われ,緊急冠動脈造影を行い,右冠動脈#4PDに完全閉塞を認めた.その後の経過は良好で,17病日には社会復帰している.
    医師院外派遣による的確な状況判断は診断・治療を早め,傷病者の早期社会復帰に有用と考えられる.
  • 松田 央郎, 岸 良示, 加藤 陽, 金城 永幸, 足立 久信, 石川 由香子, 藤田 禎規, 西尾 智, 宮津 修, 渡邉 義之, 長田 ...
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 15-19
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    植込み型除細動器(以下ICD)では,頻拍感知周期(以下TDI)の設定が重要である.複雑な頻拍基質をもつも患者や抗不整脈薬により頻拍起源の伝導性が変化する患者では,予測できない周期長の心室頻拍(以下VT)を起こす可能性がある.抗不整脈薬によるVTの徐拍効果がICDの感知不全を招来した突然死(以下SCD)ニアミスの1例を経験した.症例はSCD既往のある69歳男性(陳旧性心筋梗塞:駆出率15%).ICDとアミオダロン200mg/日で治療されていたが,頻発するVT(心拍数約200bpm)のため入院した.アミオダロンを300mg/日に増量し,VT頻度は激減したが, 増量後2 週間目にSCDを起こした.その時の心電図モニターは,持続性VT(心拍数150bpm)で,ICDのTDIよりも周期長が長かったためにICD治療が行われなかった.慣習的に設定したTDI周期をこえたVT周期の延長がまれに致死的となることがあるので注意が必要である.
  • 河野 浩章, 深江 学芸, 冨地 洋一, 小出 優史, 戸田 源二, 矢野 捷介
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 20-26
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,男性.主訴は胸背部痛,片麻痺.既往歴として胃十二指腸潰瘍.家族歴は父親に解離性大動脈瘤.現病歴:2003年12月7日午前5時,胸背部痛出現.救急車にて近医に搬送.胸部CT上異常なく,片麻痺もあるが頭部CTで出血等なし.心電図上I,aVL,V1~4にST上昇を認め急性心筋梗塞および脳梗塞と診断され,当院に転送.入院時現症:血圧;78/43mmHg,脈拍;88/分,整,心音;心雑音(-),呼吸;肺副雑音(-),腹部;肝・脾触知せず四肢;浮腫(-).左片麻痺あり.入院時検査所見:WBC18,300/μL,AST354U/L,ALT111U/L,LDH748U/L,CK3,705U/L,CKMB306U/L,CRP2.54mg/dL.入院後経過:直ちに冠動脈造影施行するも狭窄なく,心電図上ST上昇も消失.引き続き施行された脳動脈造影で中大脳動脈分枝に狭窄あり脳神経外科に入院.しかし,午後5時心不全症状出現.心拍出量低下したため,気管内挿管し人工呼吸管理および,PCPS導入.12月8日午前11時ころ突然心停止.ペースメーカ挿入するも反応なく,12月9日死亡.病理解剖の結果,Stanford A型の大動脈解離で,解離は左右冠動脈起始部にまでおよび,それによる急死と診断された.
  • 外山 英志, 田原 良雄, 豊田 洋, 小菅 宇之, 荒田 慎寿, 松崎 昇一, 天野 静, 下山 哲, 中村 京太, 岩下 眞之, 森脇 ...
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 27-30
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の男性,狭心症の既往はなし.冠危険因子は高脂血症と家族歴があった.2週間前から発熱,咳嗽などの感冒様症状が出現し内服薬を処方されていたが改善しなかった.突然の呼吸困難にて発症し救急隊を要請したが,現場到着時には心静止であった.当院搬送後,心肺蘇生処置を継続したが効果なく死亡確認となった.病理解剖を行ったところ,肉眼的には,漿液性の心嚢水が貯留,両心室腔・右房の拡張,左室壁の肥厚を認めた.左室壁はほぼ全周性に心筋の混濁が認められたが,心筋の梗塞巣や線維化は認められなかった.組織学的には両室心筋に全層性の炎症細胞浸潤,巣状壊死,変性,脱落を認めた.臨床経過と合わせて劇症型心筋炎と診断した.
    一般に「突然死」と呼ばれている死亡原因には,急性心筋梗塞,狭心症,不整脈,心筋疾患,弁膜症,心不全などの心臓病によるものが6割を占め,そのほかに脳血管障害,消化器疾患などがある.突然死の中でも心臓病に起因するものが「心臓突然死(SCD)」と呼ばれているが,現在米国では心臓突然死によって毎年40万人もの人が命を落としており,その数は肺がん,乳がん,エイズによる死亡者の合計数よりも多いとされている.心臓突然死における急性心筋炎の頻度は不明であるが,しばしば可逆的な病態であり,急性期の積極的な補助循環治療により,完全社会復帰された症例も散見されるので,鑑別診断として重要である.
  • 大久保 公恵, 渡辺 一郎, 奥村 恭男, 杉村 秀三, 進藤 敦史, 高木 康博, 橋本 賢一, 中井 俊子, 斎藤 穎, 小沢 友紀雄
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 31-36
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:68歳,女性,2004年2月2日,友人宅の玄関先で意識消失,家人が救急隊を要請,救急隊到着時に心室頻拍を認め,電気的除細動後蘇生され当院救命センターに搬送された.心電図上洞調律でQT間隔400ms,V1~6で陰性T波を認めた.低体温療法を行い意識状態の改善後精査目的にて当科へ転科.心エコー図にて左室流出路に明らかな閉塞は認めないが心室中隔は全周性に肥厚しており特に中部で著明な肥厚を認められた.入院経過中,頻脈性心房細動発生時には血圧が低下し,心室細動を数回生じている.心臓カテーテル検査上,冠動脈に有意狭窄は認めず,左室造影では収縮期に左室中部の閉塞を認め,中部肥大型心筋症と診断した.電気生理学的検査では右室心尖部からの3連早期刺激にて心室細動が誘発された.右房刺激にて容易に心房細動が誘発され血圧低下するため房室ブロック作成後,植込み型除細動器(ICD)植え込みを施行した.その後約6カ月の外来通院中ICDの作働は認めていない.
  • 森谷 尚人, 吉田 泰之, 那須 博司, 遠藤 昭博, 長谷川 純一
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 37-42
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性,慢性心房細動あり.平成16年6月頃より失神発作を繰り返し近医受診し慢性骨髄性白血病(CML)の急性転化と診断.当院内科入院.入院中失神発作出現.意識なく脈拍触知せず呼吸停止も認め,心臓マッサージの処置にて数分後に回復した.発作直後の心電図モニター上徐脈はみられず比較的短い連結期の心室性期外収縮(PVC)からTorsade de Pointes(TdP)を反復していた.QT延長は認めず,血中のK,Mg値の低下も認めなかった.同日施行した心カテ・心臓電気生理学的検査(EPS)にて器質的異常はなく3連までの右室心尖部・流出路からの期外刺激にて頻拍は誘発されず,ISP負荷・エドロホニウム負荷下にても同様であった.一時ペーシングを施行後発作の再発はなく,ICD植え込みを行った(rate75/minにてpacing).ICD植え込み後ATP負荷を行ったがTdp/PVCの誘発はみられず,Nifekalant負荷にてもQT延長は認めなかった.以後発作なく経過している.
  • 伊藤 晋平, 酒井 毅, 岡崎 英隆, 小泉 章子, 本郷 真紀子, 小宮山 浩大, 辰本 明子, 谷井 博亘, 水澤 有香, 永島 正明, ...
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 43-48
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Fallot四徴症では根治手術後にも慢性期に心室頻拍/細動(VT/VF)を起こすことがあり,右室高血圧,肺動脈弁閉鎖不全(PR),心電図でのQRS時間延長などがリスクとなることが知られている.今回,2例のFallot四徴症根治術後遠隔期に心室頻拍を起こした症例を経験した.2症例ともに加算平均心電図の心室遅延電位(LP)は陽性であり,Fallot四徴症においても陳旧性心筋梗塞例と同様に加算平均心電図が心室頻拍の予測に有用である可能性が示唆された.LP陽性であるFallot四徴症根治術後例では電気生理学的検査を含めたリスクの評価を行うことが望ましいと考えられた.
  • 櫻木 悟, 大河 啓介, 徳永 尚登, 垣下 幹夫
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 49-54
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,女性.家族歴および既往歴はない.平成16年3月22日に労作時呼吸困難を主訴に当科を受診,うっ血性心不全と診断され入院となった.入院時12誘導心電図にて心拍数130/分の心房細動を認め,QTcは580msecと延長していた.入院時血液検査では,著明な甲状腺機能の亢進と血中カテコールアミン濃度の上昇も認めた.入院5時間後,,家家人入と面会中に心室細動が出現した.200Jの直流除細動を行い心室細動は消失したが,除細動直後の心電図ではQTcが610msecと入院時よりもさらに延長しており, また血液検査では低K血症を認めた. その後も頻回に心室細動が出現するため,静脈麻酔により鎮静し人工呼吸管理とし,リドカインの持続点滴およびメトプロロールの投与を開始,同時に血清K値の補正も行った.翌23日にも体位変換時に心室細動が出現,心電図上QTcは540msecと依然として延長していた.甲状腺機能亢進およびそれに伴う交感神経活動の亢進がQTc延長および心室細動発生に関与していると考え,チアマゾール,ヨードおよびステロイドの投与を開始した.その後は心室細動の出現なく経過し,freeT3濃度も次第に低下,甲状腺機能亢進の改善に伴いQTcの延長も改善した.甲状腺ホルモン濃度の上昇によるQT延長が心室細動発生の原因と考えられた.
  • 谷本 耕司郎, 高月 誠司, 田中 知子, 萩原 陽子, 家田 真樹, 三好 俊一郎, 副島 京子, 三田村 秀雄, 小川 聡
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 55-60
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    患者は50歳,女性.46歳時,意識消失発作を認め,近医入院.完全房室ブロック,心室頻拍(VT),び漫性の壁運動低下を認め,血液検査所見および心筋生検より全身性エリトマトーデス(SLE)による二次性心筋症と診断された.ペースメーカ植え込み,抗不整脈薬,ステロイド,免疫抑制薬投与により心機能に著明な改善を認め,以後,VTは認めなかった.50歳時よりアミオダロンを含めた多剤に抵抗性のVTが出現,電気的カルディオバージョンを要した.カテーテルアブレーションおよび植込み型除細動器(ICD)植え込み目的で当院を紹介された.右室造影で右室流出路と心室中隔の瘤状拡大を認め,プログラム刺激で計7種類のVT(左脚ブロック型)が誘発された.安定したマッピングが可能であったVT(2種類)に対し,Electro-anatomical mappingを施行し,右室流出路および心室中隔瘤起源のVTと診断,アブレーションを施行した.アブレーション後は持続性VTの再誘発は不能となった.二次性心筋症の低心機能を伴うVTであり,ICD植え込みを行った.二次性心筋症のような進行性疾患では病態の進行により,新たな治療抵抗性の不整脈が発生することがあり,注意深い観察・治療が必要と思われた.
  • 田邊 靖貴, 池主 雅臣, 真田 文博, 岡村 和気, 小村 悟, 渡部 裕, 古嶋 博司, 藤田 聡, 鷲塚 隆, 相澤 義房
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 61-66
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    59歳,男性.失神歴あり.心不全とwide QRS頻拍のためアブレーション目的に入院した.頻拍性心房細動(233,899拍/日)と偽性心室頻拍があり,心拡大とLVEFの低下(EF=47%)を認めた.BNPは378.9pg/mLと上昇していた.プロカインアミド(PA)1g/日の投与でデルタ波は消失し,内服の翌日には洞調律に復した(全投与量1,2g).この時点でQTc間隔は625msecに延長しており,TdPが頻発した.しかしPAの血中濃度は0.5μg/mLと低値であった.心室ペーシングを行うもQT間隔の短縮は認めず,MgとメキシレチンでTdPは抑制された.後日EPSで左室側壁のKent束を焼灼した.ペーシングレートとQT間隔の短縮効果を心機能が改善する前後で比較したところ,QT間隔およびその短縮率ともに心機能改善後には正常化していた.頻拍依存性心筋症では心筋カリウムチャネルの発現変化などから低用量の抗不整脈薬でも過剰なQT延長を生じたと考えられた.
  • 西村 敬史
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 67
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心房細動は特殊な場合を除いて心臓性急死を来す疾患ではないが,ときに治療目的に投与された抗不整脈薬による心臓性急死が発生することが知られている.しかしリズムコントロールを行った自験218例(平均年齢68.9歳,平均観察期間17.6カ月)において1例の心臓性急死も発生せず,心室細動,持続性心室頻拍,TdPも認めなかった.3例を失ったが,その死因は急性心筋梗塞,肺炎,腎細胞癌であった.
    心臓性急死のみられなかった理由として,リズムコントロールを行う症例の選択,抗不整脈薬の投与量,併用薬の選択,外来における心電図記録や電解質検査を適切に行うことが重要であると考えられた.さらに洞調律維持が困難な症例を“深追い”せず心拍数コントロールへ変更する判断も重要であると考えられた.
    心房細動に対するリズムコントロール治療は,それを適切に行うことで治療に伴う心臓性急死は予防可能であり,多くの症例に対する第一選択の治療となり得る.
  • 渡邊 敦之, 森田 宏, 草野 研吾, 角田 和歌子, 伴場 主一, 西井 伸洋, 永瀬 聡, 中村 一文, 斎藤 博則, 大江 透
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 68-72
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    47歳,男性.早朝に意識消失発作があり近医を受診,心電図で右脚ブロック・coved型ST上昇を呈するBrugada型心電図を認め当院紹介となった.Pilsicainide負荷でST上昇が増強,電気生理学的検査で心室細動(以下VF)は誘発されなかった.入院後に失神発作はなく,失神の原因の確定ができなかったが,典型的な心電図,発作時の状況,負荷に対する反応からBrugada症候群による失神と判断し,植込み型除細動器(以下ICD)植え込み術を行った.経過中にVFからICDが作動し,20日間で計6回の発作がみられた.12誘導ホルター心電図でVFに先行する心室性期外収縮(以下PVC)がとらえられ,これに対するカテーテルアブレーションも試みたが,検査中に期外収縮が出現せず,不成功に終わった.硫酸キニジン400mg/日で内服を開始し,右側胸部誘導のST上昇は改善を認め,頻回に認めた心室細動も全く出現しなくなった.現在13カ月経過観察中であるが,VFの再発は認めていない.
    Brugada症候群に対しての薬物療法は,ICDの補助療法として重要な役割を担っている.Isoproterenol(以下ISP)の静脈内投与,また,Ia群薬剤,特にキニジンの有用性の報告は多数認められる.本例においても,2種類の薬剤を併用することで頻回な心室細動を抑制することができた.上記薬剤の作用機序を含めて文献的考察を加えて報告する.
  • 沖重 薫, 仲村 健太郎, 馬屋 原伸, 宮城 直人, 上原 裕規
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 73
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:致死性不整脈は全身状態不良例に起こることが多く,抗不整脈薬(AAA)投与に際して副作用発現や催不整脈作用が懸念される.本研究はAAAの全身投与に対する心外膜腔内投与の有用性および安全性につき検討することが目的である.
    方法:成豚を用いて,調節呼吸-全身麻酔下に実験施行.subxyphoid領域から18Gの硬膜外麻酔穿刺用針を用いて心外膜腔ヘアプローチし,同腔内に薬剤注入用シースを挿入.また,体表心電図,観血的血圧をモニターし,心室の有効不応期(V-ERP)も適宜測定した,使用薬剤はaminodarone, nifekalantを用いた.
    結果:薬剤投与後,洞周期およびQT間隔,VERPはいずれも有意に延長を示したが,血行動態の有意な変化は認めなかった.薬剤を回収後再び同じパラメータを測定したが,ほとんどの数値が薬剤投与前に復していた.
    結語:抗不整脈薬の心外膜投与は比較的安全に施行可能であり,有意な薬剤効果が発現しえた.この効果は可逆的であり,全身状態不良例にも本方法は有用である可能性が示唆された.
  • 大宮 俊秀, 大村 昌人, 山縣 俊彦, 中尾 文昭, 森谷 浩四郎, 清水 昭彦, 松崎 益徳
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 74-79
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は20歳,女性.自宅でトリカブトを服用.知人の要請により近医へ救急車で搬送された.胃洗浄施行したが,心室頻拍(VT)を頻回に認めるため当院へ救急車転院.車内で心室細動(VF)が出現.ニフェカラント靜注,電気的除細動(DC)を2回施行し,心肺蘇生(CPR)を行いながら当院に到着.CPRを継続しつつ,DCを頻回に施行,アトロピン,リドカイン,プロプラノロールを静注し,血管内バルーンパンピング(IABP)を施行するもelectricalstorm(ES)は持続.ピルジカイニド50mg静注後にESは抑制傾向を示したため,さらに50mg追加投与したところslow VTへ移行.依然循環動態は不安定であったため,経皮的心肺補助(PCPS)を挿入され集中治療室(ICU)へ入室.この間に再びESが出現してきたため,ICUにてリドカイン50mg,ピルジカイニド12.5mg静注後,slow VTとなり,以後ESは認めなかった.また8時間後には完全にsinusrhythmとなった.トリカブト中毒による致死的不整脈に対し,DCが無効であった場合,迅速な補助循環の導入下でのNaチャネルブロッカーの使用は,循環動態の安定化に有用であると考えられた.
  • 岩本 譲太郎, 藤木 明, 阪部 優夫, 西田 邦洋, 菅生 昌高, 常田 孝幸, 水牧 功一, 井上 博
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 80-84
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性.7年前にベラパミル感受性心室頻拍に対してアブレーションを受けた.その後経過良好であったが,心室頻拍が再発したため再度アブレーション治療を目的に2004年4月入院した.前回入院中に発作性心房細動を認め,フレカイニドを投与したところBrugada型心電図変化を呈した.今回は持続性心房細動の状態であった.アブレーションは左脚後枝領域の心室頻拍に先行するPurkinje電位を指標に通電を繰り返した. アブレーション翌日は起床時よりQT時間の短縮とレートの早い非持続性心室頻拍が頻発し,昼ころ廊下を歩行中に突然心室細動となった.当科におけるベラパミル感受性心室頻拍11例の検討ではII,III,aVF誘導でJ波を2例に認め,そのうち1例はフレカイニド投与でST上昇が増強した.ベラパミル感受性心室頻拍の一部に心室細動を伴う危険性のある症例が存在する可能性を示唆する.
  • 矢野 佳, 鈴木 篤, 畔上 幸司, 平尾 見三, 大友 潔, 倉林 学, 稲垣 裕, 櫻井 馨, 岡田 寛之, 鈴木 淳一, 安達 進, ...
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 85
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.高熱を契機に動悸発作が出現し某院を受診.心拍数270/分,左脚ブロック左軸偏位を呈するwide QRS頻拍が認められ,血行動態の破綻を来していたためDC通電による治療を要した.洞調律時のQRS波は頻拍中と類似した左脚ブロック左軸偏位を示し,基礎心疾患として肥大型心筋症の存在が疑われた.精査加療の目的に当院紹介入院となりEPSを施行.HV時間56msecと軽度延長.心房刺激による頻拍誘発はみられず.ISP投与下に右室2連発早期刺激により,発作時のwide QRS頻拍と同一のQRS波形態を示す非持続性の頻拍(CL=245msec)が再現性を以って誘発された.頻拍はVH時間の延長にともない誘発され,房室解離を示し,His束電位が心室波に40msec先行していた.以上より脚枝間リエントリー頻拍と診断.右脚のアブレーションを実施し頻拍は誘発不能となった.退院2週後,同じく高熱を契機に右脚ブロック型のwideQRS頻拍が出現.EPSを施行しveraparmil感受性の左室頻拍と診断.左脚後枝に対するアブレーション治療を実施した.致死的な頻拍の発生に高体温が関与したと考えられる稀有な症例と思われ報告する.
  • 吉田 充里, 生天目 安英, 高橋 英治, 荒田 宙, 吉田 雅伸, 小林 裕, 内山 隆史, 高澤 謙二, 池田 寿昭, 山科 章
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 86-91
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は13歳,女性.1999年検診時に心電図にてQT延長を指摘され,近医を受診した.心電図上QTc O.53秒と延長しQT延長症候群と診断された.症状がないことから経過観察となり,以後年1回経時的に心電図を施行するも変化は認められていなかった.2004年8月3日朝,電車に乗車中,気分不快を訴えた後意識消失.発症より4分後,救急隊到着時には心肺停止状態であった.心肺蘇生術を施行しつっ当院搬送となった.人工呼吸器管理下に強心剤・昇圧剤などの薬物療法,閉胸式心臓マッサージを行うも心拍再開みられなかった.体外式一時ペースメーカ,IABP,PCPSを挿入し加療を行った.1時間後に心拍再開みられるも意識状態改善せず,血圧も保つことができずに死亡確認となった.
    今回,初回発作にて突然死したQT延長症候群の症例を経験した.若年QT延長症候群の初回失神発作の心停止は約9%にみられるとの報告もあり,今後若年QT延長症候群に対する統一した治療管理指針の確立が望まれる.
  • 内藤 直木, 船騎 俊一, 渡辺 智, 長崎 治能, 柴 正美
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 92-96
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,女性.狭心症の精査加療目的に入院.これまでの心電図,運動負荷試験,ホルター心電図でQT間隔の延長はなかった.冠動脈造影上正常冠動脈のため,アセチルコリン(Ach.)20μgを20秒で左冠動脈に冠注した.最大QT間隔,そのdispersion(disp.)と最大Tp-e間隔(T波頂点から終末まで)は,おのおの410msから670ms,50msから170ms,130msから310msへと延長し,V1~4のSTは最大2mm上昇した.これらの値は1分で前値に復した.50μgの冠注により,徐拍化と血圧低下に伴ってU波が出現した.最大QTU間隔,そのdisp.と最大TUp-e間隔は,おのおの880ms,170ms,440msまで延長し,V1~4のSTは最大2.5mm上昇した.30秒後に心房細動に移行したがU波は消失し,STも基線に復した.1分30秒後の冠動脈造影ではSeg.7と13で75%狭窄を認めた.3分後の最大QT間隔,そのdisp.と最大Tp-e間隔はおのおの480ms,80ms,120msで,冠注前の値に回復した.
    QT聞隔の延長,そのdisp.の増大とV1~4のST上昇はAch.の作用と考えられた.Ach.の冠注により初めてQT間隔の延長とそのdisp.の増大が顕在化する例はまれで,臨床的意義については今後の検討課題である.
  • 中野 誠, 篠崎 毅, 深堀 耕平, 多田 博子, 若山 裕司, 大友 淳, 福田 浩二, 馬場 恵夫, 苅部 明彦, 沼口 裕隆, 三浦 ...
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 97-101
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    49歳,女性,平成15年肥大型心筋症(左室拡張末期圧32mmHg)と診断.平成16年1月19日発作性心房細動にてホルター心電図装着.翌日,眼前暗黒感と持続性心室頻拍(VT)を認め,当科入院.電気生理学的検査でVTが誘発され,ICD植え込み術を施行.術後2週目に1回の25Jショックにて心室細動の除細動に成功し,作動確認を終了した.静脈麻酔からの覚醒後, 急激に泡沫状の痰, 呼吸困難, 低酸素血症が進行し,心拍数と収縮期血圧はそれぞれ,130/分と184mmHgまで上昇.胸部X線上肺水腫を呈した.心臓超音波検査はrestiricitve patternを示したが,EF低下は認めなかった.除細動20分後にはニトログリセリン静注下に人工呼吸器管理となった.除細動90分後には心拍数と収縮期血圧はそれぞれ80/分と105mmHgまで低下,restiricitve patternも消失した.収縮機能の維持,左室流入波形から,急激な左室拡張末期圧の上昇に伴う拡張不全と判断した.この病態の発症には後負荷の増大,不完全弛緩,および心室細動に対するICDショックが関連していると考えられた.左室拡張末期圧が高い症例において,この病態はICD植え込み後突然死の原因のひとつになり得る.
  • 宮永 哲, 小山 達也, 岩野 圭二, 久保田 健之, 香山 洋介, 久能 守, 今本 諭, 武田 聡, 横溝 絵里子, 佐藤 周, 山崎 ...
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 102-106
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,男性.2週間前から連日,夜3時ころに胸部不快で目覚めるようになり,日中にも同様の胸部症状が出現したため救急外来を受診した.来院時の心電図は頻脈性心房細動(心拍数130/分)であり,rate control目的でビソプロロールが処方された.同日夕方内服後に胸部不快が出現し,意識消失,痙攣に至ったため近医へ救急搬送となった.頭部CT,神経学的所見上異常なく,当院へ転院搬送中より胸部不快が再発し,搬入時には心房細動,完全房室ブロック,II,III,aVFの著明なST上昇を認めた.処置中に心室細動へ移行したため,電気的除細動を行い除細動に成功し,ST変化は基線へと復した.
    連日の胸部不快は狭心症発作であり,新たに投与されたβ遮断薬で右冠動脈のspasmが誘発され完全房室ブロック,心室細動に至ったと考え,硝酸薬,カルシウム拮抗薬での加療を開始し,以後症状は出現しなかった. 後日行った冠動脈造影では器質的な有意狭窄を認めなかった.心室細動の既往があるためアセチルコリン負荷は行わなかったが,BMIPP心筋シンチで下壁に著明な取込み低下があり,右冠動脈領域の一過性の高度虚血が示唆され,Spasmに一致する所見と考えた.β遮断薬がspasmを誘発する可能性があることを改めて認識させられた1例を経験した.β遮断薬をrate controlや降圧目的で投与する際には,冠攣縮性の狭心症状がないことを確認するべきである.
  • 阿部 敦子, 池田 隆徳, 中村 健太郎, 柚須 悟, 信太 研二, 宮山 和彦, 楠田 哲, 加地 英生, 四倉 正之, 吉野 秀朗
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 107-114
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は28歳,男性.生来健康で既往症はなし.疲労・不眠が続いていた週の朝,起床後に意識消失に至る,救急隊到着時の心電図で心室細動が記録され,電気的除細動後に当院へ搬送された.下壁・左側壁誘導で小さなJ波が認められたが,明らかな心電図異常は認められなかった.心拍変動解析では副交感神経活動が早朝で著しく亢進していた.冠動脈造影検査では異常はなく,アセチルコリン負荷が試みられた.右冠動脈内に初回量を投与した直後,ST-T変化を伴うことなく突然に房室ブロックが誘発され,引き続いて心室細動がelectrical stormのごとく発現した.電気的除細動が頻回に行われたが,反復性に出現し,発症35分後にようやく正常洞調律を維持した.10日後に植込み型除細動器の挿入を予定したが,その当日の早朝(睡眠中),再びelectrical stormをきたし,頻回の電気的除細動に反応することなく院内急死に至った.剖検では,心臓に器質的異常は認められなかった.副交感神経活動亢進に対する過剰反応として,心室細動によるelectricalstormを生じ,急死に至ったと考えられた.
  • 坂部 茂俊, 笠井 篤信, 仲田 智之, 坂井 正孝, 西山 敦, 説田 守道, 角田 裕, 藤井 英太郎, 大道 近也
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 115-118
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【症例1】51歳,女性.(家族歴)(1)兄:44歳時,某大学病院で心室頻拍を指摘され植込み型除細動器(ICD)植え込みを勧められた.(2)長男:25歳時突然死.〈現病歴〉33歳,43歳時いずれも軽労作時に数分間の失神.10数年前から1日に数回,数秒間の動悸を自覚することがあり,2003年11月に近医のHolter心電図検査で,非持続性心室頻拍が認められた.記録された心室頻拍は連結期264msecの心室性期外収縮から始まる多形性心室頻拍であった.心室頻拍出現直前に,RR延長,QT時間の延長はなかった.安静時の12誘導心電図,心エコー図で異常はなかった.心室早期刺激ではISP下に右室流出路からの3連刺激で,臨床像と類似した多形性心室頻拍(4.3秒)が誘発された.
    【症例2】57歳,女性.(家族歴)兄:47歳時突然死,(現病歴)大腸癌に対し,当院外科において全身麻酔下に横行結腸切除術を受けた.術後,心電図モニターで監視していたところ,連結期256msecで心室性期外収縮が頻発し,患者も軽い動悸を自覚した.最高2連までであった.2連の場合,二つめは一つめと形状が異なっていた.QT時間の延長はなかった.安静時の12誘導心電図,心エコー図で異常はなかった.後日,右室流出路からの3連刺激で多形性心室頻拍(2.2秒)が認められた.
    【考察】症例1はLienhaldt型の特発性心室細動と考え,ICDを植え込んだ.症例2は外来で経過観察中である.
  • 小野 晴稔, 五関 善成, 石山 泰三, Aburaite Abura, 森崎 倫彦, 山科 章, 相良 耕一
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 119-124
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Brugada症候群は特発性心室細動を呈する致死的不整脈疾患の一型として知られているが,Brugada症候群における不整脈の発生誘因のひとつに,自律神経系の関与が示唆されている.
    今回われわれは,意識消失発作にて来院し,Brugada症候群と診断され,かつHead up tiltt est(HUT)が陽性であった5例につき検討した.
    5例のうち2例は来院時が初発の失神であった.Late potentialは5例中3例が陽性であった.HUT陽性の内訳は血管抑制型3例,混合型2例で,うち4例はisoproterenol負荷後陽性例である.Pilsicnide負荷試験では低用量から右側前胸部誘導のST増高傾向を認め,全例がsaddle-back型からcoved型への変化であった.
    Brugada症候群患者における失神の原因として,神経調節性失神の存在も念頭におくことが必要であり,今後の症例の集積・検討が重要と考えられた.
  • 上山 剛, 清水 昭彦, 江里 正弘, 金本 将司, 亀谷 良介, 沢 映良, 鈴木 慎介, 松崎 益徳
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 125-129
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,29歳の男性.心肺蘇生後に約130拍/分の心房細動の状態で救命センターに搬送された,搬送時,心電図では明らかなST-T変化は認めず,心房細動は第4病日に洞調律に自然復帰した.転科時の安静時心電図は,洞調律で64拍/分,下壁および側胸部V5.6誘導でST上昇とJ波を認めたが,右側前胸部誘導には高位肋間誘導を含めBrugada様のST上昇所見はなかった.加算平均心電図は陽性,心エコー図,MRI,冠動脈造影検査には異常はなかった.Naチャネル遮断薬負荷試験で,下壁・側胸部誘導のSTは減高し,前胸部V1~3誘導のST上昇,特に高位肋間V2誘導のcoved型ST上昇が顕在化した,心臓電気生埋学的検査では心室細動が再現的に誘発,β刺激薬にて誘発は抑制,β遮断薬にて易誘発性を認めた.以上より,右側前胸部誘導に特徴的所見を示さずに下壁・側胸部誘導のST上昇およびJ波を認め,Brugada症候群と関係が問題となった1例を経験した.
  • 安田 正之, 中里 祐二, 土屋 洋人, 佐々木 玲聡, 山下 晴世, 河野 安伸, 飯田 洋司, 中里 馨, 戸叶 隆司, 代田 浩之
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 130-135
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,女性.失神発作のため当科受診.心電図上,基本調律は心房粗動で,左軸偏位・不完全右脚ブロックを呈した.心房粗動停止後,洞停止が持続し,洞結節回復時間の延長を認めたため,洞機能不全と診断,また,H-V時間も75msと延長しており,DDDペースメーカを植え込んだ.8カ月後,失神発作再発のため来院,V1~V3誘導でST上昇を示し,心室細動を認めたことから,Brugada症候群と診断した.除細動器植え込み後,20ヵ月間,再発作はない.Brugada症候群の原因として,右室流出路のイオンチャネル異常が指摘されているが,本例では心房粗動,洞機能不全,His束以下の伝導障害を合併していることから,右室のみならず,洞結節から心房にいたる病変の存在が示唆された.Brugada症候群で失神発作を伴う例では,洞機能不全による徐脈も念頭に置き, 慎重に対処・治療する必要があると考えられた.
  • 中野 由紀子, 尾木 浩, 三好 美和, 沖本 智和, 平位 有恒, 小田 登, 山本 佳征, 寺川 宏樹, 新宮 哲司, 吉栖 正生, 茶 ...
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 136-140
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    59歳,男性,夕方テレビを見ていて心室細動を発症.心電図上は完全右脚ブロックとV1~3にcovedtypeのST上昇とV4~6にストレインタイプのST低下を認めた.心エコーでは肥大型非閉塞型心筋症を認めた.冠動脈造影では有意狭窄は認めなかったがエルゴノヴィン負荷にて右冠動脈99%となった.電気生理学的検査では右室心尖部からの3連刺激により非持続性の心室細動が誘発された.高位右房ペーシングによる心拍数の増加,プロタノール負荷にてV1~3のST上昇は減弱し,ピルジカイニド12.5mg負荷にてST上昇は増強した.基礎心疾患として肥大型心筋症と冠攣縮性狭心症を認めたが,薬物に対するSTの反応からBrugada症候群を疑い,突然心停止を起こしているので植込み型除細動器挿入を行った.
  • 田中 靖章, 上野 一弘, 小島 淳, 坂本 知浩, 吉村 道博, 小川 久雄
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 141
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性.平成15年5月3日午前9時ころ,悪寒の自覚後に失神を来し近医を受診.来院時,発熱を認め心電図にてV1~V3でST上昇を認めた.臨床症状,心電図変化からブルガダ症候群が疑われたが,精査は行われず経過観察されていた.同年9月ll日午前1時ころ,同様に悪寒を自覚した後に再び失神.翌日,当院外来を受診し精査目的で入院となった.来院時,38.7℃ の発熱を認め,心電図にて不完全右脚ブロック,V1~V3でST上昇を認めた.肺炎による発熱と診断され抗生剤投与により解熱,寛解した.経過中,熱型の変化に伴いブルガダサインの改善,増悪を繰り返した.発熱時にブルガダサイン増悪を来し失神発作を繰り返したブルガダ症候群の1例を経験したので,電気生理学的検査結果,文献的考察を交え報告する.
  • 今木 隆太, 庭野 慎一, 佐々木 紗栄, 弓削 大, 脇坂 裕子, 平澤 正次, 佐藤 大輔, 佐々木 毅, 森口 昌彦, 和泉 徹
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 142-146
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】心室細動(VF)自然発作既往のない無症候性ブルガダ型心電図症例において,VF誘発性と他の臨床データを有症候性症例と比較し,その臨床的意義を検討した.
    【方法】対象は心電図で特徴的なST上昇を認め,当科で電気生理学的検査(EPS)を施行した36症例.うち有症候例(VF自然発作群)5例,VF誘発例(VF誘発群)15例,VF非誘発例(VF非誘発群)16例.
    【結果】観察期間中4例でVF出現を認めた(VF自然発作群2例,VF誘発群2例).各群の失神歴(%)はVF自然発作群:VF誘発群:VF非誘発群=100:13:25(P<0.05),突然死家族歴(%)は40:13:19(NS)であった.ピルジカイニド負荷時のcoved型ST上昇頻度(%)は100:93:63(NS),冠動脈攣縮陽性率(%)は50:64:25(NS),MIBG分布異常(%)は75:40:20(NS)と,VF自然発作群,VF誘発群に多い傾向のみ認めた.
    【結語】無症候例の経過観察中,VF誘発群でVF自然発作を認めた.高リスク例の指標は明らかでなかったが,冠動脈攣縮誘発率やMIBG分布異常などの重要性が示唆された.
  • 正木 克由規, 住吉 正孝, 峰田 自章, 田村 浩, 松永 江律子, 西野 顕久, 川村 正樹, 小島 諭, 諏訪 哲, 中田 八洲郎
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 147-151
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性.1年前より日中に3回の失神発作,夜間に2回意識がもうろうとした状態で覚醒し尿失禁を伴う発作があった.近医で心電図上V1~2にcoved型のST上昇を認めたため当院紹介.入院後の心電図モニターで夜間6.6秒の洞停止を認めるも無症状.心臓電気生理学的検査(EPS)では心室頻拍・心室細動(VF)は誘発されず,洞機能も正常.Pilsicainide静注でV1~2のST上昇はさらに増強した.以上よりBrugada症候群と診断,植込み型除細動器(ICD)植え込みを施行した.退院後の定期ICD外来で植え込み2カ月後の午前3時6分,VFに対しICDの作動を確認,この時,患者は睡眠中で自覚症状はなかった. 本例において失神の原因はVFと考えられ,再発性の失神,特に夜間の尿失禁を伴う発作がある場合,EPSの結果にかかわらずICDを植え込むべきと考えられた.
  • 寺田 健, 阿部 芳久, 門脇 謙, 庄司 亮, 熊谷 肇, 佐藤 匡也, 三浦 傅
    2005 年 37 巻 Supplement3 号 p. 152-156
    発行日: 2005/07/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の男性.2度の失神歴あり.突然死や心疾患の家族歴はなし.体調不良のため受診した近医にて,心電図を記録直後に昏倒.心室細動に対して5度の除細動を行い蘇生された.この際の直前・直後の心電図とも,さらに当センターでの1肋間上右側胸部誘導でも異常を認めず,心室遅延電位も陰性であった.冠動脈造影ではacetylcholine負荷試験で軽度の冠攣縮が誘発された.心臓電気生理学的検査では右室心尖部からの3連続期外刺激で心室細動が誘発され,pilsicainide負荷試験にて典型的なBrugada型心電図に変化したことからICD治療を行った.Brugada症候群では心電図所見のdynamicな変動があり,特に心室細動発生の周辺では典型的な変化をきたしやすいとされているが,本症例はpilsicainide投与後でのみ典型的な心電図となり,この負荷試験なしでは診断が困難であった.発作の出現状況や心電図所見からは本症候群と診断できない症例であっても,失神例においてはpilsicainide負荷試験を含めた検査計画の必要性が示唆される.
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