症例は49歳,男性.44歳ころより,高血圧症および糖尿病を指摘されていたが治療せず放置していた.その他,既往歴はなし.腰痛を主訴に近医を受診し,鎮痛剤の内服治療を行っていた.その約2週後より,発熱・全身倦怠感を自覚して他院を受診.血液検査にて,CRP 15mg/dLと高い炎症反応を認め精査加療目的にて入院となった.同院にて抗生物質の点滴治療を開始.開始2日後には解熱を認め,また血液検査上もCRPは5.8mg/dLと低下し改善傾向であったが,しだいに呼吸困難が出現するようになった.同時に,胸部X線写真にて心胸郭比の拡大と肺うっ血像を認めたため,心臓超音波検査を施行したところ,著明な心嚢液の貯留を認め精査加療目的にて当院CCUに転院となった.
CCUにて利尿薬・血管拡張薬による治療を行ったが心タンポナーデの状態となり,診断加療のため心嚢穿刺を行い,淡黄色・膿性の心嚢液を約1.2L排液し,心不全症状は改善した.なお,血液・腸腰筋膿瘍・心嚢液のすべての培養からメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)が検出された.その後状態は安定していたが,心嚢穿刺施行約1カ月後に,急性心不全状態となりCCUに再入院となった.
急性心不全の治療目的のため,スワンガンツカテーテルを挿入したところ,右室圧曲線にてディップアンドプラトーパターンを認め,心嚢穿刺後の心膜癒着が原因の収縮性心膜炎と診断した.その後,内科的治療は奏効せず準緊急手術となった.心膜剥離術にて血行動態は改善した.
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