胸痛を訴えて救急外来を受診した162例を対象に,3種の心筋マーカー:ミオグロビン(My),CK-MB,心筋トロポニンI(Tn I)を同時測定することによる急性心筋梗塞の迅速診断の有用性を検討した.最終的に急性心筋梗塞と診断されたのは53例(32.7%)であった.本システムにおける各種心筋マーカーの(1)カットオフ値,(2)有病正診率が80% 以上を示す発症経過時間, (3)感度, (4)特異度は, それぞれM y (107ng /mL ,3時間未満,88.7%,51.4%),CK-MB(4.3ng/mL,3-6時間,64.2%,75.2%),Tn I(0.4ng/mL, 6時間以上,35.8%,92.7%)であった.単項目の測定における検査後オッズおよび検査後確率は,My(0.89,47.0%),CK-MB(1.26,55.7%),Tn I(2.38, 70.4%)であり,単独では確定診断や除外診断には不十分であった.3項目同時測定では,3項目同時陽性のとき,その検査後オッズおよび検査後確率は11.21および91.8%であり,確定診断が可能なレベルにあることが示唆された.また,3項目同時陰性のとき,その検査後オッズおよび検査後確率は0.04および3.4%であり,除外診断が可能なレベルにあることが示唆された.
3項目同時測定する本法は,ベッドサイドでより正確な確定診断や除外診断が可能な,有用な方法であった.
抄録全体を表示