学校心臓検診の目的の一つに致死的不整脈の発見がある.今回われわれは,学校心臓検診で看過され,torsadede pointes(以下,TdP)の発症を契機として診断された先天性QT延長症候群を経験した.
症例は12歳,女児.発症前の学校心臓検診では異常を指摘されなかった.けいれんを主訴に近医に救急搬送され,心電図モニターでTdPを認めた.硫酸マグネシウム静注によりTdPは消失し,当院へ救急搬送された.来院時の心電図所見からQT延長症候群に伴うTdPと診断し,メキシレチン,プロプラノロールを投与した.これによりTdPは良好にコントロールされ,QT間隔の短縮も認めた.
患児の小学校4年生時の心臓検診における心電図を再検討してみたところ,自動解析ではQT間隔384msec,QTc間隔442msecでIII誘導の陰性T波のみを異常所見と判読してボーダーラインと判定しており,医師の確認の結果は正常心電図と判定されていた.しかし,実際の心電図をマニュアルで計測すると,QT間隔は0.39sec,QTc間隔は512msecと2次精査が必要な症例であった.心拍数の早い心電図ではT波終末が不明瞭で,自動解析所見が正確でない場合もある.QT間隔が延長していると思われる症例では,判読者自らQT間隔を計測し,T波の形態を評価する必要があると考えられた.
抄録全体を表示