目的:抗アルドステロン作用を有するトラセミドは,スピロノラクトンと同様に心保護作用がある.本研究はフロセミド+スピロノラクトン併用中で,安定した慢性心不全患者を対象とし,トラセミド切り替えの影響を検討した.
対象と方法: フロセミド+ スピロノラクトンを6カ月以上服用し, 全例NYHA分類クラスII相当の慢性心不全患者23例(男性17例,女性6名,平均年齢69±12歳)で,フロセミド+スピロノラクトンからトラセミドに切り替え,3カ月以上経過した時点で,NYHA分類,体重,血圧,血漿中脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)濃度,電解質濃度,心エコー図による心機能を切り替え前後で比較した.トラセミドへの切り替え量はフロセミド20mg+スピロノラクトン25mg(14例)はトラセミド4mg,フロセミド40mg+スピロノラクトン25mg(9例)はトラセミド8mgとした.
結果:NYHA分類は変更後もクラスIIのままで, 体重, 血圧, 心機能も有意差はなかった. また,BNP値(pg/mL)は132.7±116.9から147.2±121.2,カリウム値(mEq/L)は4.6±0.4から4.5±0.4と有意な差は認められなかった.
結論:トラセミドは安定した軽症の慢性心不全患者では,フロセミド+スピロノラクトン内服からの切り替えによる自覚・他覚的所見に大きな影響を与えなかった.その際トラセミド4mgは,フロセミド20mg+スピロノラクトン25mg,8mgはフロセミド40mg+スピロノラクトン25mgとほぼ同等の効果の可能性が示唆され,服薬コンプライアンスの面からも好ましい効果が期待される.
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