心臓
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41 巻, 9 号
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Open HEART
HEART’s Selection(心疾患に対する抗血栓療法)
HEART’s Original
基礎研究
  • 下高原 理恵, 小林 幸恵, 島田 和幸, 島田 達生
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年 41 巻 9 号 p. 999-1002
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    ヒト心臓における中隔縁柱の分枝構造を解明するために, その起始と付着部位および組織構造について検索した. 試料は, 系統解剖学実習に供されたヒト心臓38例(男21例, 女17例)である. HOPA染色した切片を光学顕微鏡下で観察・撮影を行った. その結果, 今回観察した試料の約8割に中隔縁柱からの分枝が確認され, 分枝様式は7つに分類することができた. 分枝は末梢側からだけでなく, 中枢側1/2からも複数見られた. また, 光学顕微鏡による観察で, 試料とした4例の分枝すべてに特殊心筋が認められた. これらのことより, 中隔縁柱の分枝は右脚の通路としての機能を有していることが考えられた. また, これまで右脚は前乳頭筋に達するまで分枝しないといわれてきたが, 中隔縁柱の中枢側からも複数の分枝を出していることが明らかとなった.
Editorial Comment
臨床研究
  • 富田 英春
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年 41 巻 9 号 p. 1005-1010
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    非弁膜症性心房細動(nonvalvular atrial fibrillation; NVAF) における心原性脳塞栓症の発症予防へのワルファリン(warfarin; WF) 療法の有効性は確立しているが, 臨床への応用は十分ではない. 脳梗塞を発症したNVAF症例における脳梗塞の発症前の抗凝固療法の実態およびNVAF症例のWF量調節におけるINR値変動を調査することでNVAFにおける抗凝固療法の現状と問題点を明らかにし, その改善を意図したわれわれの取り組みを紹介する.
    方法: 研究1; 2006年1月から2年間に脳梗塞で当院に入院した136例中NVAF38例の発症前の抗凝固療法の実態を調査した. 研究2; 2007年10月からの1年間にINR 1.6~2.6を目標に当院外来で継続治療したNVAF WF内服41例のINR値の変動を調べた.
    結果: 研究1; 脳梗塞で入院したNVAF38例中入院前に心房細動が診断されていた症例は23例(61%)で, WF服用は11例(29%)にとどまり, 入院時のINRが治療域であったのは4例(11%)のみであった. 研究2; INRが安定化した後のINR値(総数363回)の平均は1.93で治療域範囲内(INR 1.6~2.6)は73%であり, 1.6未満が20%, 2.61以上が7%であった.
    総括: 脳梗塞発症前にNVAF症例に十分なWF療法が行われていなかったこととINR 1.6~2.6を目標としたWF用量管理は73%で可能であったことから適切なWF療法の実践が急務と考えられた. NVAFからの心原性脳塞栓症の発症予防には, 心房細動の早期診断と抗凝固療法のさらなる啓発, 定期的なINR測定とWF量の調節が重要と考え, われわれは患者の啓発活動, 連携パスなどによる連携医を交えた心原性脳塞栓症の発症予防への取り組みを開始した.
Editorial Comment
症例
  • 森久 健二, 山部 浩茂, 榎本 耕治, 上村 孝史, 田中 靖章, 松澤 泰志, 永吉 靖央, 海北 幸一, 河野 宏明, 角田 等, 杉 ...
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年 41 巻 9 号 p. 1012-1017
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    症例1: 69歳, 女性. 胸痛, 嘔吐の後, 意識消失し救急車で近医に搬入. 心電図は心拍数180/分のwide QRS tachycardiaでありlidocaine 100mg静注で頻拍は停止. 心エコーで左室後基部に菲薄化, 壁運動の低下を認め, 精査目的で当院に転院. Ergonovine負荷を含めた冠動脈造影で有意な所見はなく, 左室造影で後壁基部に瘤を認めた. 電気生理学的検査(EPS) では心拍数260/分, 210/分および200/分の3種類の心室頻拍が誘発され, 頻拍により血行動態が破綻したためカテーテルアブレーションは施行せず, 植込み型除細動器(implantable cardioveter defibrillator; ICD) 植え込みを行った.
    症例2: 68歳, 男性. ソフトボールの試合中に守備についていたところ突然意識消失. 救急車を要請し, 救急隊到着時の自動体外式除細動器(automated external defibrillator; AED)で心室細動が確認され, 除細動を施行し洞調律に復した. 冠動脈造影では有意狭窄はなく, 左室造影では後壁基部に瘤を認めた. EPSでは心室頻拍, 心室細動は誘発されなかったが, 運動負荷検査で心拍数220/分の持続性心室頻拍が誘発された. 致死性不整脈の2次予防目的でICD植え込みを行った. 2症例とも心臓カテーテル検査, 血液検査, 心筋シンチグラフィなどからは心室瘤の原因は特定できず, 特発性心室瘤が原因で致死性不整脈をきたしたものと考えられた.
症例
  • 中村 知史, 白井 康大, 鈴木 麻美, 大坂 友美子, 大西 健太郎, 栗原 顕, 小野 裕一, 澤田 三紀, 清水 茂雄, 大友 建一郎 ...
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年 41 巻 9 号 p. 1018-1023
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,男性.抜歯を契機として大動脈弁位に感染性心内膜炎を発症.血液培養にてStreptococcus intermediusが検出された.ガイドラインに準じた抗生物質投与にて感染のコントロールは良好となったが,加療後も径約1cmの疣腫と高度の大動脈弁閉鎖不全が残存したため第30病日に大動脈弁置換予定とした.術前のスクリーニング脳CT血管造影(CT angiography) では明らかな瘤は認めなかった.しかし第28病日にクモ膜下出血を発症した.直後の脳血管造影でも動脈瘤は見つからなかった.明らかな後遺症を得ることなく保存的療法にて軽快した.状態改善後改めて大動脈弁置換予定であったが,第55病日に突然気分不快から呼吸停止となり,蘇生術に反応せず死亡した.病理解剖では脳底槽へのクモ膜下出血の再発を認めたが,動脈瘤は認められなかった.感染のコントロールが良好であったにもかかわらずクモ膜下出血を繰り返した珍しい1例として,病理学的検討と若干の文献的考察を含めて報告する.
症例
  • 西堀 祥晴, 蒔田 直記, 松尾 清成, 塩野 泰紹, 立石 健人, 松尾 あきこ, 井上 啓司, 田中 哲也, 藤田 博, 北村 誠
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年 41 巻 9 号 p. 1024-1030
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    塩酸ドネペジルはアセチルコリンエステラーゼを阻害することにより脳内アセチルコリン量を増加させ, 脳内コリン作動性神経の神経伝達を賦活するアルツハイマー型認知症の治療薬である. 冠攣縮性狭心症の既往のない患者が, 最近になり軽度の記銘力低下を認めたことから塩酸ドネペジルを投与され, その後より冠拡張薬抵抗性の胸痛を頻回に訴えるようになった. エルゴノヴィン負荷を行うと, 冠動脈はエルゴノヴィンわずか10µgの冠注で完全閉塞となる易攣縮性の状態であった. 胸痛は最終的に塩酸ドネペジルを中止するまで継続した. 今回, 塩酸ドネペジルにより誘発された冠攣縮性狭心症の1例を経験したので報告する.
症例
  • 佐藤 秀明, 村田 直隆, 永尾 正, 小堀 裕一, 生天目 安英, 新井 富夫, 内山 隆史, 山科 章, 高橋 長裕
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年 41 巻 9 号 p. 1031-1036
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    症例は73歳, 女性. 以前より完全内臓逆位を指摘されていたが, 心疾患の診断はついていなかった. 労作時呼吸困難を主訴に来院した. 胸部X線で著明な心拡大, 下腿浮腫があり入院となった.
    入院時の画像診断により, 完全内臓逆位に伴う修正大血管転位症と診断された. 病態は体循環房室弁(形態学的三尖弁) 逆流, および体循環心室(形態学的右心室) 機能不全による心不全であり, 肺高血圧, 両心不全の状態であった. 内科的治療に比較的よく反応し, 状態が改善した段階で待機的に体循環房室弁置換術を行い, 良好な結果が得られた.
    完全内臓逆位, 修正大血管転位症が73歳という高齢で初めて診断され, 治療により良好な結果が得られた稀な症例を経験したため報告する.
症例
  • 茂庭 仁人, 岩井 慎介, 湯藤 潤, 望月 敦史, 進士 靖幸, 永原 大五, 高橋 亨, 佐藤 直利, 林 学, 鹿野 泰邦
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年 41 巻 9 号 p. 1037-1044
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    症例1: 52歳, 男性. 2007年9月, 意識消失し救急車にて当院搬入. 来院時は無脈性電気活動(pulseless electrical activity; PEA) でただちに蘇生治療が行われた. 心拍再開後の心電図でI, II, aVL, V5, 6誘導のST上昇とV1~4誘導のST低下を認めた. 冠動脈造影では右冠動脈の攣縮と左前下行枝, 左回旋枝の血栓閉塞を認めた. 右冠動脈の攣縮は硝酸イソソルビド(isosorbide dinitrate; ISDN) の冠動脈内投与にて解除され, 左回旋枝は血栓吸引により末梢の造影が得られたが, 左前下行枝の血栓は治療抵抗性であった. 大動脈内バルーンパンピング(percutaneous old balloon angioplasty; IABP) などを用いて治療したが同日死亡した.
    症例2: 70歳, 男性. 2007年11月, 胸痛を主訴に当院受診. 心電図上II, III, aVF, V6誘導のST上昇とaVL, V1~4誘導のST低下を認めたが冠動脈造影では有意狭窄無し. 冠攣縮による下壁の急性心筋梗塞と診断しニフェジピン徐放錠内服, ニコランジル持続静注を開始した. その後, 順調に回復に向かっていたが, 第6病日朝, 再び胸痛発作が出現. 再度冠動脈造影を施行したところ右冠動脈の攣縮と左前下行枝, 左回旋枝の閉塞を認めた. カテーテル検査中に心停止したため経皮的心肺補助法(percutaneous cardiopulmonary support; PCPS)などを用いて治療をしたが翌日死亡した. 心臓突然死の中には, これらの症例のごとく多枝冠攣縮に起因するものが存在すると考えられる.
症例
  • 正井 博文, 諸井 雅男, 原 英彦, 脇屋 桃子, 高澤 洋介, 福田 宏, 古橋 龍彦, 原 久男, 鈴木 真事, 中村 正人, 杉 薫
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年 41 巻 9 号 p. 1045-1051
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    症例1: 78歳, 男性. 13年前に不安定狭心症にて左前下行枝(left anterior descending artery; LAD) にステントを連続して3個(Palmaz-Schatz 2個, ACT-One 1個)留置している. 労作時の前胸部痛のため64列マルチスライスCTによる冠動脈造影(64-CTCA)を施行した. LADのステント内にlow density area(LDA)を認め, また, 同部はLAD近位部と比較して低CT値を示し, ステント内狭窄と診断した. カテーテルによる冠動脈造影(coronary angiography; CAG)を施行したところステント内に90%の狭窄を認めた.
    症例2: 27歳, 男性. 急性心筋梗塞でLADにCypherステントを留置した. 再狭窄評価のため64-CTCAを施行した. ステント内にLDAを認めず, 同部のCT値はLAD近位部よりも高かったことからステント内狭窄はないと診断した. CAGにおいて再狭窄は認めなかった. ステント内狭窄の視覚的評価は画像設定条件が重要で本例はウィンドウ幅900, ウィンドウ中心400で評価した. 64-CTCAによるステント内狭窄評価には主観的評価(ウインドウ幅, ウインドウ中心の最適条件の設定) および客観的評価(連続した内腔のCT値の測定) が重要である.
Editorial Comment
症例
  • 関塚 宏光, 明石 嘉浩, 龍 祥之助, 三宅 良彦
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年 41 巻 9 号 p. 1053-1059
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    症例は29歳, 男性. 2008年7月上旬, 冷汗を伴う腹痛と38℃の発熱が出現, 2日後に解熱したが, 腹痛に加え労作時呼吸困難も出現したため, 当院を受診. 胸·腹部CT検査で胸·腹水および心液貯留を認め, 心筋逸脱酵素上昇, 心電図変化, 心臓超音波検査で著明な壁肥厚を伴うび漫性左室壁運動低下所見から, うっ血性心不全を合併した急性心筋炎と診断した. 第1病日よりカルペリチド, 免疫グロブリン投与を開始した. 第5病日より血液検査で好酸球が上昇し始め, 第14病日には好酸球数は6,120/µLまで増加した. 左室収縮能は正常化していたが, 第21病日に診断確定のための心臓カテーテル検査を施行. 心筋生検の結果より好酸球性心筋炎と判明した. 組織診断確定後にプレドニゾロン30mg/日の内服を開始し, 第26病日には好酸球数は正常範囲内にいたった.
    急性心筋炎に対するステロイド投与に関して一定の見解がいまだないが, 好酸球性心筋炎はステロイド治療が有効との報告が多い. 本症例のように心筋炎の臨床所見と末梢血好酸球数との間に解離が見られたこともあり, ステロイドによる治療開始時期が遅れることもあり得るため注意が必要である.
Editorial Comment
Editorial Comment
症例
  • 板谷 英毅, 荒木 正, 末石 通暁, 小池 裕之, 山本 雅人, 針谷 明房, 出川 敏行
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年 41 巻 9 号 p. 1062-1065
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    症例は62歳, 女性. 失神発作を伴う洞機能不全症候群に対して1998年12月にDDDペースメーカー植え込みが行われた. 術後の経過は良好であったが, 1999年3月になりペースメーカーポケット部の腫脹が出現した. 外来にて2度穿刺排液を行ったところ, いずれも漿液性で細菌培養は陰性であった. その後状態は落ち着いていたが, 1999年7月に熱感を伴うポケット部の発赤腫脹が出現した. 繰り返すポケット部トラブルの原因として金属アレルギーの関与を疑い, 入院のうえpolytetrafluoroethyleneシート(ゴアテックスシート)による被覆を併用してジェネレーター交換を行った. その後外来にて経過をみていたが, 2006年12月に再びポケット部の発赤腫脹が出現した. 2007年1月に待機的にポケット部開放を行ったところ, ゴアテックスシート内に多量の膿を認め, 細菌培養の結果Staph capitis subspecies capitisが確認された. ポケット部はそのまま開放とし, 一時的ペースメーカーを装着して治療を継続した. 炎症所見消失およびポケット部の培養陰性化を確認後に, ポケット部閉鎖および胸部反対側にペースメーカー植え込みを行った. 術後の経過は良好で, 再感染の徴候なく退院させることができた. 今回われわれは金属アレルギーが疑われゴアテックスシート併用下にペースメーカー植え込みを行い, 7年後にポケット感染を起こした1例を経験した. 金属アレルギー症例において, しばしばゴアテックスシートが用いられるが, 遠隔期にも注意が必要である.
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