背景:心房細動では心房の構造的および機能的リモデリングがその病態に深く関与しているとされる.また,持続し繰り返された心房細動では,その心房収縮能は低下しその組織性状も変化すると報告されている.近年,組織ドプラ法によって局所心筋の歪みの指標であるstrain rateを非侵襲的に計測することが可能となった.このstrain rateを用いて発作性心房細動例の心房収縮伝導の評価を試みた.
方法:対象は恒久的ペースメーカー植え込み後の洞機能不全症候群42例 (平均年齢74.9±8.5歳),うち発作性心房細動合併例PAF (+) 24例,非合併例PAF (−) 18例.ペーシング心拍数を減少させて自己波出現時に心房strainを3点 (右房,心房中隔,左房) においておのおの計測,また,strain rateが収縮末期から拡張末期に最高血流速に達する時間を心拍数で補正したTSRcを計算し心房収縮伝導の指標として用いた.さらに3点のTSRcの最大値と最低値の差をΔTSRcとし両群間で比較検討した.
結果: (1) 従来の経胸壁心エコー図諸指標に関しては左房径を含めて両群間に有意差なし,しかしFS,EFに関してはPAF (+) 群はPAF (−) 群に比し有意に低下していた (FS;35±8.8% vs 40±5.6%;p=0.03,EF;63±11.6% vs 71±7.0%;p=0.02).
(2) ΔTSRcに関してはPAF (+) 群はPAF (−) 群に比し有意に増加していた (34.7±19.6 vs 17.7±9.1;p=0.001).
総括:発作性心房細動合併例では,非合併例に比し左室収縮能は低下し心房収縮伝導は変化していた.Strain rateを用いた心房組織ドプラ法が心房機能の新たな評価法となり得る可能性がある.
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