心臓
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42 巻, 3 号
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Open HEART
HEART's Selection(下肢末梢血管に対するインターベンション)
HEART's Original
臨床研究
  • 三好 恵, 角 俊一郎, 井上 裕紀子, 丸山 誠代, 古山 正大, 安藤 智恵, 久保田 和充, 東條 秀明, 山之内 良雄, 浦田 秀則
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 3 号 p. 312-320
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    福岡県筑紫野地区の実地医家で構成する臨床研究ネットワーク (Chikushi-JRN会員) を用いて,アンジオテンシンII受容体拮抗薬 (ARB)を含む降圧治療で十分な降圧効果が得られていない本態性高血圧患者に対し,ロサルタン/ヒドロクロロチアジド (HCTZ) 合剤への切り替えを行い,その有効性と安全性を検証する多施設共同前向き試験を行った.
    主要評価項目は血圧値,2次評価項目は電解質,尿酸値,糖代謝,脂質代謝などとした.
    切り替え前平均収縮期血圧 (SBP) は157±14mmHg,平均拡張期血圧 (DBP) は87±11mmHgであった.ロサルタン/HCTZ合剤へ切り替え後3カ月のSBP/DBP変化は−20/−9mmHgと有意な降圧を示した.
    また,3カ月後130/85mmHg未満に血圧管理できた患者は178例 (30%) であり,管理不十分となった要因を解析した結果,試験開始時SBP高値と男性が寄与因子であった.
    代謝面では糖代謝,電解質への有意な影響は認められなかったが,尿酸の異常値患者割合に有意な上昇が認められた.
    本試験結果より管理不良な高血圧患者において,ロサルタン/HCTZ合剤はさらなる降圧効果を示し,代謝面の影響も少なく安全な薬剤と考えられた.降圧薬物療法における第2選択薬として,ロサルタン/HCTZ合剤の役割が期待される.
Editorial Comment
臨床研究
  • —発作性心房細動例における検討
    安岡 良典, 安部 晴彦, 梅川 成子, 勝木 桂子, 田中 教雄, 服部 進, 野田 善樹, 足達 英悟, 入野 宏昭, 佐々木 達哉, ...
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 3 号 p. 322-328
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    背景:心房細動では心房の構造的および機能的リモデリングがその病態に深く関与しているとされる.また,持続し繰り返された心房細動では,その心房収縮能は低下しその組織性状も変化すると報告されている.近年,組織ドプラ法によって局所心筋の歪みの指標であるstrain rateを非侵襲的に計測することが可能となった.このstrain rateを用いて発作性心房細動例の心房収縮伝導の評価を試みた.
    方法:対象は恒久的ペースメーカー植え込み後の洞機能不全症候群42例 (平均年齢74.9±8.5歳),うち発作性心房細動合併例PAF (+) 24例,非合併例PAF (−) 18例.ペーシング心拍数を減少させて自己波出現時に心房strainを3点 (右房,心房中隔,左房) においておのおの計測,また,strain rateが収縮末期から拡張末期に最高血流速に達する時間を心拍数で補正したTSRcを計算し心房収縮伝導の指標として用いた.さらに3点のTSRcの最大値と最低値の差をΔTSRcとし両群間で比較検討した.
    結果: (1) 従来の経胸壁心エコー図諸指標に関しては左房径を含めて両群間に有意差なし,しかしFS,EFに関してはPAF (+) 群はPAF (−) 群に比し有意に低下していた (FS;35±8.8% vs 40±5.6%;p=0.03,EF;63±11.6% vs 71±7.0%;p=0.02).
    (2) ΔTSRcに関してはPAF (+) 群はPAF (−) 群に比し有意に増加していた (34.7±19.6 vs 17.7±9.1;p=0.001).
    総括:発作性心房細動合併例では,非合併例に比し左室収縮能は低下し心房収縮伝導は変化していた.Strain rateを用いた心房組織ドプラ法が心房機能の新たな評価法となり得る可能性がある.
臨床研究
  • —地域住民における横断研究 (IWATE-KENCO study)
    肥田 頼彦, 高橋 智弘, 瀬川 利恵, 田中 文隆, 小野田 敏行, 板井 一好, 坂田 清美, 川村 和子, 岡山 明, 中村 元行
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 3 号 p. 329-335
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    慢性腎臓病 (chronic kidney disease; CKD) は,心血管疾患の危険因子であるとされている.また,炎症はアテローム性動脈硬化症および腎機能障害に関与すると考えられている.しかし,わが国の一般地域住民における血清CRP値と糸球体濾過値 (GFR) との関連性についての研究はない.今回,われわれは岩手県北地域住民 (n=26,332,平均年齢=62歳) を対象に血清CRP値とGFRあるいはCKDとの関連を検討した.血清CRP値の上昇とGFRの低下は従来からの動脈硬化の危険因子で調整しても関連性がみられ (p< 0.02),CKDとの間にも明らかな関連性がみられた (p< 0.0001).結論として,炎症はGFR低下とCKDへの進行に寄与する重要な因子である可能性が示唆された.
Editorial Comment
症例
  • 加藤 拓, 全 完, 矢野 豊, 若菜 紀之, 深井 邦剛, 福山 恵, 上林 大輔, 立川 弘孝, 槙 系
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 3 号 p. 338-343
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は36歳,女性.母親が30歳代に急死 (原因不明).めまいと嘔気を主訴に当院を受診し,メトクロプラミド投与後に突然の頻脈やチアノーゼが出現した.胸部X線では著明な肺水腫を認め直ちに人工呼吸管理を開始した.心電図では洞性頻脈に加え広範なST変化が認められた.冠動脈造影は心筋の一部に造影剤の浸み出しを認める特異な造影所見を呈し,左室造影では心尖部の過収縮と中部から基部にかけての無収縮が認められ,いわゆる逆たこつぼ型左室壁運動障害の所見であった.CTでは両側副腎腫瘍と甲状腺腫瘍が確認され,家族歴からも多発内分泌腫瘍症候群に合併した副腎クリーゼが疑われた.血中カテコラミン類の濃度は著明に上昇していた.急性期は経皮的心肺補助循環装置などを用いた集学的治療を要したがその後劇的な改善を示し,後日両側副腎摘出術および甲状腺摘出術を施行し社会復帰となった.その後,遺伝子解析により多発内分泌腫瘍症候群2A型と診断された.
Editorial Comment
症例
  • 笠松 謙, 坊岡 進一, 野尻 庸功, 九鬼 新太郎
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 3 号 p. 345-349
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    発症後24時間以上を経過して入院した70歳代,男性の急性前壁心筋梗塞症例で今後の治療方針を決定するため,心臓MRIを行った.シネモードで前壁の一部に無収縮を認めた.薬物負荷心筋パヒュージョンで後側壁に心筋虚血を認め,引き続いて行った遅延造影で前壁に貫壁性心筋梗塞を認めた.同時に行った非造影whole heart coronary MR Angiographyでは対角枝の完全閉塞と後側壁枝の高度狭窄を認めた.後日行った冠動脈造影で同様の所見を認めた.MRIの所見より対角枝領域には心筋バイアビリティはないと判断し,心筋虚血を認めた後側壁枝のみに冠動脈インターベンションを行った.心臓MRIは冠動脈疾患の治療戦略を考えるうえで有用であると考えられた.
Editorial Comment
症例
  • 佐々木 理恵, 水口 一郎, 小堀 健一, 岩城 卓, 野末 剛, 三浦 元宏, 道下 一朗, 安田 保, 永峯 洋, 福井 一生, 野村 ...
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 3 号 p. 352-357
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,女性.頭痛,嘔気を主訴に近医受診.くも膜下出血の診断にて当院脳神経外科入院.脳血管造影において動脈瘤は認められなかった.入院中,CRPの上昇および発熱あり,血液培養にてグラム陽性桿菌を検出.心臓超音波検査施行し僧帽弁に径2cmの疣贅を認めたため感染性心内膜炎と診断した.当科入院後,原因菌はArcanobacterium haemolyticumと同定.Ampicillin,gentamicinによる治療を開始するも疣贅は縮小せず.外科適応と考え第32病日僧帽弁置換術を施行.その後,gentamicin,penicillin,erythromycinによる治療を継続し,第60病日軽快退院した.感染性心内膜炎に合併するくも膜下出血の原因はほとんどが感染性動脈瘤によるものだが,本症例では脳血管造影上,動脈瘤は認められず,後日の頭部MRIにて静脈洞血栓症が原因であると診断した.静脈洞血栓症によるくも膜下出血を契機に診断にいたった感染性心内膜炎の報告例は現在のところ認められていない.また,A. haemolyticumによる感染性心内膜炎は極めて稀であり,現在まで3例の症例報告を認めるのみであり,うち2例は診断後1週間以内に死亡している.今回,生来健康であった女性が静脈洞血栓症によるくも膜下出血を契機にA. haemolyticumによる感染性心内膜炎の診断にいたった貴重な1例を経験したので報告する.
Editorial Comment
症例
  • 眞野 唯, 武田 守彦, 近藤 正輝, 中山 雅晴, 伊藤 健太, 高橋 潤, 福田 浩二, 安田 聡, 加賀谷 豊, 下川 宏明
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 3 号 p. 360-364
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代,男性.自動車運転中の失神が原因で事故が発生し,当院へ搬送された.入院時心電図異常なし.連続心電図モニターで異常なし.神経学的異常なく,head-up tilt試験も陰性であった.冠動脈造影では有意な器質的狭窄を認めなかったが,右冠動脈へのアセチルコリン負荷時に,胸痛を伴うV1~3のcoved type ST上昇あり,血管造影上は円錐枝および右室枝の著明な攣縮を認めた.心電図波形からBrugada症候群の合併を疑い,電気生理学的検査を施行したが不整脈は誘発されず,ピルジカイニド負荷試験も陰性で,Brugada症候群は否定的と考えられた.以上の所見から冠攣縮性狭心症による失神が最も疑われた.本症例は,冠攣縮により生じた右室流出路の虚血によりBrugada様の心電図変化を呈し得ることを示したものであり,貴重な症例と考え報告した.
症例
  • 森住 誠, 権 重好, 平崎 裕二, 末松 義弘
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 3 号 p. 365-368
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性.咳および呼吸困難感を自覚し,緊急入院した.経胸壁心臓超音波検査にて,右房から右室にかけての心臓腫瘍を指摘された.腫瘍自体により右室流出路狭窄を呈し,右室不全および中等量の心液貯留をきたしていた.治療方針決定のために,胸腔鏡下腫瘍生検および心ドレナージを施行.迅速細胞診断にて悪性リンパ腫が疑われた.病理による最終確定診断まで,通常の半量でのCHOP化学療法を開始,化学療法は奏功し,腫瘍径は著明に減少し右室流出路狭窄は改善した.病理組織診断は心臓原発悪性リンパ腫であった.低侵襲で確実な方法をとることにより,迅速に治療方針を立てることができた.
症例
  • 西澤 信也, 中村 猛, 白石 裕一, 松室 明義, 沢田 尚久, 松原 弘明
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 3 号 p. 369-374
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,男性.2006年5月ころより嚥下時の違和感を自覚.上部消化管内視鏡検査の結果,下部食道癌を認めたため,治療法として化学放射線治療を選択した.2006年10月までに合計50Gyの放射線照射を終了し,再発なく完全寛解を維持していたが,2008年3月ころより息切れが生じ,同年11月には心膜液と胸水貯留の増悪を認めたため精査加療目的にて入院加療となった.経胸壁心エコー図検査では大量の心膜液貯留と右室壁の肥厚を認めたが,右心系の圧排所見はなく,心タンポナーデにはいたっていなかった.心膜ドレナージを施行したところ,悪性疾患,感染症,自己免疫疾患,甲状腺疾患などは否定的であり,病歴より放射線性心膜炎と診断した.胸水貯留も放射線縦隔障害によるものと考えた.ドレナージ後も短期間に心膜液,胸水貯留を繰り返したが,低用量のステロイド30mg (0.54mg/kg/日) を経口投与したところ,コントロールが可能となった.現在,外来にてステロイド漸減中 (20mg) であるが,内服開始後3カ月間,心膜液,胸水ともに増悪は認められない.再発を繰り返す放射線性心膜炎および胸水貯留に対して低用量ステロイド治療の有効性が示唆される.
Editorial Comment
症例
  • 八木 良樹, 筈井 寛, 頭司 良介, 森 敏純, 川上 真樹子, 西原 功, 小畑 仁司, 大石 泰男, 秋元 寛
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 3 号 p. 376-380
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,男性.勤務中に倒れている患者を同僚が発見し,胸骨圧迫を開始するとともに救急要請した.先着した所轄救急隊が心肺停止および初期調律として心室細動を確認し自動体外式除細動器にて除細動を施行したが心拍再開しなかった.ドクターカーである特別救急隊が現場に到着し,同乗医師が冷却輸液 (4℃) で静脈路を確保しエピネフリン1mgを静注したところ,最終目撃から30分で自己心拍が再開した.心拍再開するも深昏睡 (Glasgow coma scale 3) であり,脳低温療法を導入するため用手加圧による冷却輸液の急速投与を行った.病院到着までの7分間の輸液量は1,100mLで病院到着時の膀胱温は35℃であった.各種検査より急性心筋梗塞による心室細動と診断した.冷却輸液の急速投与は中止し,胃内への冷却水の注入を行いつつ冠動脈造影検査を施行した.左主幹部病変を含む多枝病変と判明し血栓溶解薬投与,大動脈バルーンパンピング留置後集中治療室 (ICU) に入室した.ICU入室後は冷却マットを用い体温管理を行い,目標体温は膀胱温で34±0.5℃に設定した.覚知から111分で目標体温に到達し,24時間脳低温療法を施行したところ明らかな神経学的後遺症なく回復した.目撃のない心室細動症例ではあるが,病院前より脳低温療法を導入し,満足のいく神経学的転帰を得ることができた症例であり報告する.
研究会(第3回 心不全陽圧治療研究会)
症例報告
  • —17例の初期成績
    蓼原 太
    原稿種別: 第3回心不全陽圧治療研究会
    2010 年 42 巻 3 号 p. 383-386
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    慢性心不全に合併する睡眠呼吸障害であるチェーン・ストークス呼吸 (Cheyne-Stokes respiration; CSR) が特徴的にみられる中枢性無呼吸症候群 (Cheyne-Stokes respiration with central sleep apnea; CSR-CSA) に最も有用と報告されているadaptive servo-ventilation (ASV) が本邦でも使用可能となった.ASVのタイトレーションの指標は「CSRの消失」と考えられるが,高い圧設定はときに覚醒を誘発し,睡眠の質とコンプライアンス低下の原因の1つである.
     当院では2007年5月から2009年1月まで慢性心不全患者にポリソムノグラフィを施行し,CSRを伴う睡眠呼吸障害のある17例の患者にASV療法を導入した.17症例は全例NYHA 3以上の心不全で年齢67 ± 10歳 (男性;14名,BMI;23.4 ± 3.2kg/m2),左室駆出率 (LVEF) 38.7 ± 19.2%であった.ASV導入前の無呼吸低呼吸指数 (apnea-hypopnea index;AHI) 38.6 ± 19.5/時間,最低酸素飽和度83.2 ± 6.2%であった.われわれはコンプライアンスを重視する目的でマニュアルタイトレーションを行わず,ASVの圧を低めに設定した.その結果,呼気時気道陽圧 (expiratory positive airway pressure;EPAP) は4.5cmH2O,吸気時気道陽圧は最小 (IPAPmin) 5.7cmH2O,最大 (IPAPmax) 8.5cmH2Oで導入したが,AHI 8.7±5.4/時間に改善し,LVEF 43.0±18.2%と有意 (p<0.05) に改善した.
  • 加藤 雅彦, 衣笠 良治, 井川 修, 久留 一郎, 重政 千秋
    原稿種別: 第3回心不全陽圧治療研究会
    2010 年 42 巻 3 号 p. 387-391
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    呼吸困難,下腿浮腫を主訴に来院した60歳代の男性.以前当科にて心臓カテーテル検査を受け,拡張型心筋症と診断されていた.1週間で体重が10kg増加し,安静時にも呼吸困難が認められるようになり来院.慢性心不全の増悪と診断され入院となった.入院時心拍数は134/分で,体動にてさらに頻脈を呈した.胸部X線写真では心拡大,うっ血を認めた.心エコーではび漫性の壁運動低下と拡張障害を認めた.利尿薬によるうっ血の改善後,β遮断薬を少量より開始したが,うっ血が再燃し,β遮断薬の心抑制効果に不耐であった.また夜間の非持続性心室性頻拍も散見されていたため,アミオダロンの投与を開始.心抑制を強くかけずに心拍数のコントロールを施行したところ反応が良く,β遮断薬の再投与が可能となった.心不全のコントロール後も日中の倦怠感が続き,ベッド上での臥床が多いため,睡眠時無呼吸の存在を疑い終夜ポリソムノグラフィを施行.結果,AHI 41.8/hourの中枢性無呼吸と診断された.次にASV (adaptive servo ventilator) による心不全治療を追加するために,マニュアルタイトレーションを行った.本症例ではIPAPmax,IPAPmin,EPAPの設定に微妙な調整を要し,マニュアルタイトレーションの重要性を再認識した.ASV導入によるその後の心不全経過は良好であり,著明なQOLの改善が得られた.
  • —ASVの導入から離脱まで
    吉嶺 裕之
    原稿種別: 第3回心不全陽圧治療研究会
    2010 年 42 巻 3 号 p. 392-398
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    慢性心不全患者の多くが睡眠呼吸障害を合併しているが,閉塞型無呼吸 (obstructive sleep apnea; OSA) と中枢型無呼吸 (central sleep apnea; CSA) とが混在してみられることが多い.心不全の増悪期にはCSAが優位となるが,心不全の改善とともにCSAは減少・消失する.この時,OSAが出現する場合とそうでない場合がある.CSAの主因となる心機能の適切な評価とOSAの主因となる顎顔面形態や軟部組織の量によって規定される形態の評価を考慮しながら,適切なタイミングで,適切なマスク換気 (PAP療法) を選択していく必要がある.当院で経験した2症例を通じて,ASVの導入やCPAPへの移行のポイントについて考察する.
研究発表
  • —Japanese trial to assess the effect of adaptive servo-ventilation in chronic heart failure (JASV) の結果から
    葛西 隆敏
    原稿種別: 第3回心不全陽圧治療研究会
    2010 年 42 巻 3 号 p. 399-403
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    慢性心不全 (chronic heart failure; CHF) に睡眠呼吸障害 (sleep disordered breathing; SDB) の合併が多いことが知られている.このようなSDBを合併するCHF患者の予後は不良であるものの,SDBに対する治療で心機能や生命予後の改善も期待できるという報告がなされている.このようなSDBとして,上気道の閉塞に起因する閉塞性睡眠時無呼吸 (obstructive sleep apnea; OSA) と,中枢性無呼吸と過呼吸を繰り返すチェーンストークス呼吸 (Cheyne-Stokes respiration with central sleep apnea; CSR-CSA) があげられ,CHF患者ではこれらが混在することが多い.OSAの場合は,continuous positive airway pressure (CPAP) が有効であると考えられるが,CSR-CSAが混在する場合,SDBのすべてを改善させるのは困難である.しかしながら,これらの両者を治療可能な新しい陽圧治療であるadaptive servo ventilation (ASV) の有効性が報告されている.ここでは,これまで報告されたCHF患者に対するASVの有用性のまとめとともに,われわれのグループで行ったCPAPとASVを比較した臨床研究の結果を報告する.
教育講演
  • 木原 康樹
    原稿種別: 第3回心不全陽圧治療研究会
    2010 年 42 巻 3 号 p. 404-407
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    慢性心不全に対するさまざまな臨床知見に基づき,それに対する薬物療法のガイドラインが提唱されるにいたった.しかしながら,いまだ根本的治療には程遠く,それを補足したり,患者のQOLを高めたりするために多角的な非薬物療法が開発・検討されている.同じ慢性心不全患者でも,無自覚な症例から切迫した苦痛に直面している症例までさまざまであるため,個々の患者に即してこれら多角的な治療手段を提供してゆかなければならない.しかもそれは一貫性と持続性を必要とする.広島大学では,この目的にかなう内科・外科・救急・リハビリ,それにコメディカルと一体となったユニットとしての心不全センターを確立しようと試みている.その概念についても説明を加える.
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