心臓
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42 巻, 8 号
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Open HEART
HEART's Selection (動脈の硬さと心血管疾患(基礎と臨床))
HEART's Original
臨床研究
  • 山口 普史, 駒村 和雄, 芳川 敬功, 橋本 真悟, 高森 信行, 田村 克也
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 8 号 p. 1041-1047
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    背景: 血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide; BNP)は心不全の存在, 重症度, 予後を評価するために広く使われている. ガイドライン上も血漿BNP値を慢性心不全の重症度判定・治療効果評価のために使用することが推奨されている[慢性心不全治療ガイドライン(2005年改訂版)]1). 慢性心房細動を合併した心不全患者と慢性心房細動を合併していない心不全患者の血漿BNP値を比較し, BNP値の解釈に関する臨床上の問題点について検討した.
    患者と方法:外来通院治療中の93例の慢性心不全患者に対し, 血漿BNP濃度測定, 心エコー図検査を施行した. 93例のうち, 慢性心房細動を合併した心不全患者は53例, 慢性心房細動を合併していない心不全患者は40例であった.
    結果: 年齢, 性別, 虚血性心疾患と肥満を除いた背景因子は両群で同様であった. BNP, log BNPは2群間で差はなかったが(219.4±134.4 vs 177±100.6pg/mL, 2.26±0.27 vs 2.19±0.23), ニューヨーク心臓協会心機能分類(New York Heart Association; NYHA)は, 心房細動非合併群は心房細動合併群よりも重症であった(1.22±0.46 vs 2.15±0.70, p<0.0001). NYHA I~II度または左室収縮能が保たれているサブグループ(左室駆出分画率≥50%) における血漿BNP値は心房細動合併群で心房細動非合併群よりも有意に高値であった.
    結論: NYHA I~IIまたは左室収縮能が保たれている心房細動合併軽症心不全例においては, 心不全の診断や重症度判定を行う場合には, BNP値のみならず臨床症状やそのほかの指標も参考に総合的に判断すべきである.
臨床研究
  • 馬渡 耕史, 春田 弘昭, 大野 朗
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 8 号 p. 1048-1056
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    たこつぼ心筋障害の中には, 通常の心尖部の壁運動異常(無収縮)と異なり, 心尖部に収縮を認める非典型的な壁運動異常を呈する症例も報告されている. 従来の典型例と非典型例は同じ疾患と考えてよいのかという点を検証するため, それぞれの臨床像を比較検討した.
    1997年6月から2005年3月までに経験した, たこつぼ心筋障害40例のうち, 非典型例は7例(男性1例, 女性6例)であった. 両群での性, 年齢, 高血圧や糖尿病の有無に差はなかった. 急性期の冠動脈造影施行例中, 典型例の27. 7%, 非典型例の42. 9%が有意狭窄病変を有する例であったが, 両群に差を認めなかった. アセチルコリンによる冠攣縮誘発率にも差を認めなかった. 発症の誘因として多いと報告されている精神的ストレスや身体的ストレスについても差を認めなかった. 両群とも, 壁運動異常はほぼ全例3週間以内に回復した. 死亡例は典型例で, 4例認めたが全例基礎疾患によるもので, 非典型例の死亡例はなく予後に関しても両群間で差を認めなかった. 心筋シンチグラフィの所見は, 両群とも壁運動異常領域での201Tlの所見はわずかな集積の低下のみで, 123I-BMIPPでは局所壁運動異常に一致して異常所見を認めたが, 123I-MIBGでは壁運動の保たれている心尖部を含めて広範囲な欠損像を認めた. たこつぼ心筋障害の一部には, 左室心尖部の壁運動異常が認められない例があるが, 左室心尖部の壁運動異常の有無で臨床像に差は認められなかった.
Editorial Comment
Editorial Comment
症例
  • 三阪 智史, 中里 和彦, 水上 浩行, 安藤 勝也, 待井 宏文, 義久 精臣, 坂本 信雄, 泉田 次郎, 国井 浩行, 斎藤 修一, ...
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 8 号 p. 1059-1065
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    症例は70歳, 男性. 狭心症のため左前下行枝#6の慢性完全閉塞に対して経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention; PCI)を施行した. #6にシロリムス溶出性ステント(sirolimus eluting stent; SES)を留置することに成功し, 血管内超音波(intravascular ultrasound; IVUS)でもステントの拡張は良好であった. その後, 腰部脊椎症のため整形外科で手術の方針となりSES留置6カ月後の確認も含めて術前に冠動脈造影を行った. ステント内再狭窄などを認めなかったため, 抗血小板薬2剤を中止とし, 腰椎後方固定術が施行された. 術後2時間より胸痛が出現し, 急性心筋梗塞の診断で緊急冠動脈造影を施行したところ, #6 SES内で完全閉塞していた. 血栓吸引後のIVUSでは血管壁の著明なpositive remodelingの所見があり, late acquired incomplete stent apposition(ISA)の所見を認めた. ステント血栓症の原因として, 抗血小板薬中断のほかにlate acquired ISAの関与も示唆され, 興味深い症例と考えられた.
Editorial Comment
症例
  • 平井 康隆, 大橋 壮樹, 吉田 毅, 岡 藤博, 大吉 希, 景山 聡一郎, 坂倉 玲欧, 古井 雅人, 児島 昭徳, 南木 浩二
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 8 号 p. 1067-1071
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    今回, われわれは, 急性大動脈解離に対する上行大動脈人工血管置換術後に吻合部仮性動脈瘤を形成し, それによる肺動脈穿孔を合併した比較的稀な症例を経験したため報告する.
    症例: 67歳, 女性. 既往歴; 来院9年前に急性大動脈解離を発症し, 他院で中枢側末梢側吻合部の断端形成にgelatin-resorcin-formalin(GRF)グルーを使用した上行置換術を施行された. 現病歴; 来院1カ月前よりの呼吸苦の増悪で来院した. CT所見では, 上行大動脈部の人工血管の左側に仮性動脈瘤を認め, 肺動脈を圧排し, 一部仮性動脈瘤と肺動脈に連続性を認めた. 手術は右大腿動脈送血, 右大腿静脈脱血により体外循環と全身冷却を開始し超低体温下に再開胸した. 中枢側と末梢側吻合部の左側に10mmの裂孔と, 仮性動脈瘤が穿孔していたと思われる肺動脈壁に10mmの孔を認め, 上行大動脈人工血管再置換術と肺動脈修復術を施行した. この吻合部合併症は, GRFに起因することが示唆された. 術後経過は良好であり第28病日に退院となった.
    まとめ: GRFグルーに起因したと考えられる, 上行大動脈人工血管置換術後の肺動脈穿孔を伴った吻合部仮性瘤の1症例を経験し, 良好な結果を得た.
症例
  • 義久 精臣, 杉本 浩一, 三阪 智史, 安藤 勝也, 佐藤 崇匡, 金城 貴士, 小林 淳, 國井 浩行, 高野 真澄, 斎藤 修一, 石 ...
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 8 号 p. 1072-1078
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    症例は37歳, 女性. 6歳時, 房室中隔欠損症(atrioventricular septal defect; AVSD)と診断され, 心房中隔形成および僧帽弁形成術施行. 37歳時, 健診にて心拡大を指摘され, 当科受診. 心エコー, 心臓カテーテル検査にて重度僧帽弁閉鎖不全, 左室—大動脈圧較差160mmHgの孤立性大動脈弁下狭窄症(discrete subaortic stenosis; DSS) を認め, 僧帽弁置換術, 左室流出路心筋切除術を施行した. AVSDは胎生期の心内膜床の形成不全により房室弁の形成異常と心房間短絡および心室間短絡をきたす疾患で, 先天性心疾患の4~5%にみられるが, AVSD術後のDSSは比較的稀であり報告する.
Editorial Comment
症例
  • 堀込実岐 堀込実岐, 山崎 恭平, 若林 靖史
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 8 号 p. 1081-1086
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy; DCM)で加療中の42歳, 男性. 38歳時に持続性心室頻拍を指摘され, 植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator; ICD)を挿入後, 同時期より塩酸アミオダロンの投与が開始された. その後, 定期的な内分泌学的検査にて, 甲状腺機能異常は認めていなかった. 2007年(42歳)7月より頸部圧迫感あり, 当院外来を受診. 甲状腺のび漫性腫大を認め, エコーでは内部不均一な甲状腺両葉の腫大を認めた. 血液検査ではTSH 5.5µIU/mL, fT3 3.7pg/mL, fT4 1.0ng/dLと正常で抗TSH受容体抗体(TRAb)や抗サイログロブリン抗体(TgAb), 抗ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)は正常範囲内であり巨大な単純性のび漫性甲状腺腫と診断した. アミオダロンによるものと考え, アミオダロンを中止したところ甲状腺腫は徐々に縮小傾向を認めた. しかし, その後アミオダロンを中止した約10カ月後より8kg/月程度の著明な体重減少を認めたため, 甲状腺機能を測定したところfT3 17.2pg/mL, TSH 0.003µIU/mLと著しい甲状腺中毒症を認めた. 破壊性甲状腺炎の診断でプレドニゾロンとチアマゾールを投与し約半年で甲状腺機能の改善を認めた. アミオダロンにより甲状腺中毒症や機能低下症を発症することは知られているが, 今回の症例では, アミオダロンによると思われる単純性甲状腺腫を認め, アミオダロン投与中止の10カ月後に甲状腺中毒症を呈した, 非常に稀な症例と考えられた.
Editorial Comment
症例
  • 早瀬 太一郎, 荒川 宏, 江崎 裕敬, 中田 麻登里, 北井 敬之, 中島 淳, 葉山 泰史, 坂田 芳人, 大鈴 文孝
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 8 号 p. 1088-1093
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    重症大動脈弁狭窄症(aortic stenosis; AS) による慢性心不全の急性増悪で84歳女性が入院となった. 鎮静し人工呼吸器管理下でカテコラミン製剤, 利尿薬と心房性ナトリウム利尿ペプチドを併用して心不全治療を行った. 心エコー図で大動脈弁口面積は0.38cm2, 最大左室大動脈間圧較差81mmHg, 左室駆出率20%と低左心機能のため, 覚醒すると心不全の悪化をきたし, 鎮静薬の投与が必要であり, 人工呼吸器管理からの離脱困難であった. そこで経皮的大動脈弁形成術(percutaneous transluminal aortic valvuloplasty; PTAV)を行ったところ人工呼吸器管理から離脱でき, また鎮静薬を必要としないで血行動態も安定した. 内科的治療に難渋した重症大動脈弁狭窄症の心不全例に対して, PTAVを行うことで心不全コントロールに成功した. 大動脈弁置換術への橋渡しとして有効な治療法と考えられたので報告する.
Editorial Comment
症例
  • 長尾 強志, 伊藤 一貴, 坪井 宏樹, 井出 雄一郎, 鶴山 幸喜
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 8 号 p. 1096-1100
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    症例は突然の胸痛を主訴とした70歳代の男性で, 心電図ではV1~4誘導でST部分の上昇, 断層心エコー検査では左室および右室の壁運動異常, 胸部CTでは右肺の緊張性気胸が認められた. 胸腔ドレナージ後の冠動脈造影では有意な狭窄病変はなく, 左室造影では心室中部, 右室造影では心尖部が無収縮であった. このため, 緊張性気胸による痛みを契機として, たこつぼ心筋障害を発症したと考えられた. 約4週後の心臓超音波検査では両心室の壁運動異常は改善した. 本症例は左室中部および右室心尖部の一過性壁運動障害を呈しており, このような特異な壁運動異常が認められた症例の報告はなく, 非常に稀な病態と考えられたため報告する.
症例
  • 入江 寿光, 木山 宏, 垣 伸明, 黒木 崇文, 菅原 裕, 芝崎 太郎, 荒巻 和彦, 川俣 哲也, 飯田 隆史, 池 信平, 長谷川 ...
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 8 号 p. 1101-1105
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    今回, 左上肢より大動脈内バルーンパンピング(intraaortic balloon pumping; IABP) を挿入した4例を経験した. 1例は, 心室中隔穿孔による心原性ショック, 3例は, 低左心機能に対する予防的適応のため開心術前にIABPの挿入を行った. IABPは, 下肢からの挿入が一般的であるが, 本症例では腹部大動脈閉塞症(abdominal aortic occlusion) や閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans; ASO) により下肢からの挿入が不可能であった. 左上肢の上腕動脈や腋窩動脈からのアプローチを行ったがそれぞれに問題点があった. 1例目は, 上腕動脈からの挿入を行ったが,IABPの有効長が足りなかったため, 腋窩動脈から再挿入した. 2例目では, IABPの有効長不足を考え, 有効長が1例目よりも長いものを上腕動脈から挿入した. 有効長が長くなり留置可能な部位には達したものの, バルーン長も長くなり位置決めに慎重を要した. 3例目では, IABPを挿入する際にガイドワイヤーがたわんでしまい, IABP本体が上行大動脈へ向かってしまった. そのためガイドワイヤーを強度の高いスティッフタイプに換え, 下行大動脈に誘導した. 4例目は, シースを下行大動脈へ挿入した際にシースの折れが生じたために, シースを屈曲に強い蛇行血管用のシースに換え, IABPを挿入した. 4症例それぞれに問題点があったが, これらの解決策を参考にすることで上肢からのIABP留置は容易になると思われる. 今後, IABPのディバイスの改良も必要だが, 下肢からのIABP挿入が困難な症例に対して左腋窩動脈からのIABP挿入が第1選択になり得る方法と考えられた.
症例
  • 下平 雅規, 手島 保, 田辺 康宏, 北條 林太郎, 高野 誠, 仲井 盛, 弓場 隆生, 小宮山 浩大, 辰本 明子, 深水 誠二, 櫻 ...
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 8 号 p. 1106-1112
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 31歳, 男性. 主訴は, 左下肢全体の腫脹と疼痛. 血液検査で血小板減少, D-dimerとFDPの上昇を認めた. 造影CT検査では右肺動脈, 左大腿静脈と下腿の血栓を認めたほか, 脾梗塞も疑われた. 急性期の深部静脈血栓症(deep venous thrombosis; DVT)と診断し, 回収可能型下大静脈フィルターを留置して, ワルファリン内服とウロキナーゼの経静脈的全身投与を開始した. しかし, 第6病日の造影CTでは肺動脈の血栓は消失していたものの, 左大腿静脈の血栓は入院時と変化を認めなかった. そのため第7病日にカテーテル血栓溶解吸引療法を施行した. まず, ガイディングカテーテルで血栓を吸引し, その後, パルススプレー法を用いて血栓内に直接ウロキナーゼを注入して, 残存血栓を可能な限り吸引した. 治療直後から血流は著明に改善し, 左下肢の腫脹は劇的に回復した. 第10病日に下大静脈フィルターを回収した際に, フィルター内に捕獲血栓を認めたことから, フィルターが肺塞栓予防に有効だったと考えられた. 入院中の検査で, 抗カルジオリピン抗体およびループスアンチコアグラント陽性が判明し, 抗リン脂質症候群(APS)に起因するDVTと診断した. APSによるDVTに対してパルススプレー法を用いたカテーテル血栓溶解吸引療法が非常に有効であり, フィルターの永久留置を回避し得た症例を経験したので報告する.
Editorial Comment
Meet the History
  • —河合忠一先生に聞く(1)
    河合 忠一, 松森 昭
    原稿種別: Meet the History
    2010 年 42 巻 8 号 p. 1115-1122
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    今でこそ心筋症の研究が進み, さまざまな診断や治療法が行われるようになりましたが, その心筋症の原因と病態の解明に大きな足跡を残されたのが河合忠一先生です.
    本日は, その河合先生をゲストに, そして京都大学で河合先生に師事し, 心筋症研究をさらに発展させている松森 昭先生をホストに, 心筋症との出合いから心筋炎との関係, 感染・免疫説などさまざまな研究の現在に至るまでの進展について, そのときどきのエピソードを交えながらお話しいただきました.
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