心臓
Online ISSN : 2186-3016
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43 巻, 10 号
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
Open HEART
HEART’s Selection(心臓突然死 最近の動向と対策)
HEART’s Original
臨床研究
  • 篠山 重威, 藤田 正俊
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 10 号 p. 1310-1318
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/01/19
    ジャーナル フリー
    心血管疾患の予防に向けた生活習慣病のより適切な治療を実現するには, 医師と患者がよく意思を通わせ, 共通の認識をもって治療に臨むことが必要である. そこで, 医療従事者によるさまざまな患者啓発の取り組みが患者にどの程度浸透し, 患者が医療従事者に対し, どのような要望を持っているかを調べるため, 全国の医療機関を通じてアンケート調査を実施した. 3,578例の回答を集計した結果, 生活習慣病患者の多くは自分自身の検査値を認知していたが, 自分自身の治療目標値を知らない患者が2~4割いることが明らかになった. また, 生活習慣改善の重要性を理解している一方で, その実現の難しさを自覚していた. 現在の治療に満足している患者は6割未満で, 患者は一般的な服薬指導や疾患の説明より, 自分に特化された個別の説明を望んでいた.
臨床研究
  • 矢野 秀樹, 堀中 繁夫, 家村 知海, 石村 公彦, 八木 博, 矢部 彰久, 石光 俊彦
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 10 号 p. 1319-1327
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/01/19
    ジャーナル フリー
    目的: 経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention; PCI)前と慢性期の血清炎症およびその関連マーカーについて薬剤溶出ステント(drug-eluting stent; DES)使用群とベアメタルステント(bare metal stent; BMS)使用群で比較検討し, さらにDES使用群については, パクリタキセル溶出性ステント(paclitaxel-eluting stent; PES)使用群とシロリムス溶出性ステント(sirolimus-eluting stent; SES)使用群で比較検討した.
    方法: 対象はPCIに成功したSES; 44病変, PES; 39病変, BMS; 36病変. 患者背景, PCI時のデータならびに心事故発生率を3群間で比較し, 血液生化学検査は, hs-CRP(high-sensitivity C-reactive protein), IL-6(interleukin-6), ネオプテリン, ICAM-1(inter-cellular adhesion molecule 1), VCAM-1(vascular cell adhesion molecule 1)をPCI前とPCI 6カ月前後に測定し比較検討した.
    結果: 患者背景は, 糖尿病罹患率がPES群で有意に高く, 病変背景は平均ステント長がSES群で有意に長かった. 定量的冠動脈造影解析(quantitative coronary arteriography; QCA)では, PCI前の最小血管内腔径がPES群で有意に小さかったことを除き, 3群間で病変長, 対照血管径, ステント本数, ステント長, PCI成功率に差はなかった. hs-CRPとIL-6の値はBMS群ではPCI前と慢性期で変化しなかったが, DES群ではPCI前に比べ, 慢性期に有意に減少した(log hs-CRP; BMS群PCI前3.05±0.57, 後2.98±0.58, p=ns, DES群PCI前3.12±0.61, 後2.81±0.50, p<0.010; IL-6, BMS群PCI前3.45±3.66, 後4.66±5.12, p=ns, DES群6.70±4.46, 後2.31±1.54, p=0.020). しかし, SES群とPES群間に差はなかった. また, ネオプテリン, ICAM-1, VCAM-1はBMS群, DES群いずれもPCI前後で変化しなかった.
    結論: 血清hs-CRPとIL-6の炎症マーカーがBMS群に比べDES群でのみ慢性期に有意に減少したことはPCI標的部位の炎症性変化を反映している可能性があり, 心事故や再狭窄の抑制効果の高いDESは病変局所の炎症反応抑制の役割を果たしているかもしれない.
Editorial Comment
症例
  • 大井 正也, 尾本 正, 飯塚 弘文, 近藤 泰之, 永野 直子, 宮内 忠雅, 石川 昇, 手取屋 岳夫
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 10 号 p. 1329-1332
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/01/19
    ジャーナル フリー
    淋菌(Neisseria gonorrhoeae)による, 大動脈弁逆流を伴った活動期感染性心内膜炎の1手術例を経験した. 症例は41歳, 男性. 発熱を主訴に近医を受診した. 内服抗生物質投与が開始されたが改善を認めなかったため, 2カ月後に当院内科に入院した. 心臓超音波検査にて大動脈弁尖に付着する疣腫と重度の大動脈弁逆流を認めた. 血液培養からはNeisseria gonorrhoeaeが検出され, 活動期感染性心内膜炎と診断された. 心不全兆候も認めていたため, 緊急手術を行った.
    術中所見にて大動脈弁輪部に膿瘍形成, および右室への穿孔を認めた. 同部をウマ心膜パッチにて閉鎖し形成した後, 生体弁を用いて大動脈人工弁置換術を施行した.
    本症例で検出された淋菌はペニシリン感受性が低かったため, IPM/CSを術後4週間投与した. 現在も感染の再発や弁逆流はなく, 外来通院中である.
Editorial Comment
症例
  • 三浦 慶一郎, 井上 寿久, 田永 幸正, 徐 基源, 中村 精岳, 石川 隆尉, 宮崎 彰
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 10 号 p. 1335-1340
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は, 49歳, 男性. 2007年11月ころより労作時呼吸困難感を自覚するようになり, 2008年2月の心電図にて高度房室ブロックを指摘された. 恒久的ペースメーカーを植え込むとともに, 心筋生検および皮下脂肪織生検を行い, 心アミロイドーシスと確定診断したが, すでに心不全をきたしており侵襲性の高い治療は困難であったため, 比較的低侵襲と考えられるデキサメタゾン大量療法を行った. 以後2年以上, 心不全の再発をきたすことなく良好に経過している. 本邦で心アミロイドーシスに対しデキサメタゾン大量療法を施行し, 良好な経過を得た報告は極めて稀であり, 若干の文献的考察をまじえて報告する.
Editorial Comment
症例
  • 加納 直明, 上村 佳大, 舟曳 純哉, 澤村 昭典, 向井 健太郎, 今井 元, 小川 恭弘, 川口 克廣, 近藤 泰三
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 10 号 p. 1342-1347
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は, 17歳, 男性. 特記すべき既往歴や冠危険因子, 家族歴はなし. 2010年1月, 生来初めて朝起床時からの胸痛を自覚し, 1時間程度で自然消失した. しかし, 夕方に再度胸痛が出現し近医を受診した. 心電図上前胸部誘導でST上昇, 採血にて心筋逸脱酵素の上昇, 心エコーにて前壁心尖部寄りの局所壁運動低下を認めたため, 急性心筋梗塞(acute myocardial infarction; AMI)を疑い, 緊急冠動脈造影を施行した. 冠動脈造影は異常所見を認めず, 左室造影ではsegment 2の局所壁運動低下を認めた. 感染徴候を認めず, 症状や検査結果から冠攣縮に伴う急性心筋梗塞と判断し, ヘパリンとニコランジルの持続点滴, アスピリンとベニジピン内服として保存的加療とした. クレアチンキナーゼ(creatine kinase; CK)は来院時の1,103IU/Lがpeakで, 第4病日には正常化した. その後も胸部症状なく経過し, 第7病日に退院となった. 退院後にアセチルコリン負荷試験を施行したが, 冠攣縮は誘発されず, 現在, アスピリン, ベニジピンは中止としてニトログリセリンの頓服のみとしているが, 胸部症状なく経過している.
    冠危険因子を持たない17歳発症急性心筋梗塞の1例を経験したので報告した.
Editorial Comment
症例
  • 竹内 庸浩, 三木 孝次郎, 藤田 幸一, 高田 昌紀, 西堀 祥晴, 丸山 貴生, 坂田 仁郎, 西田 悠, 野村 祐介, 牧野 哲哉, ...
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 10 号 p. 1350-1356
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/01/19
    ジャーナル フリー
    われわれは, 循環器疾患患者の治療経過中に著明な粘膜離(colon cast)を伴う虚血性大腸炎を発症した2症例を経験した. 1例目(75歳, 女性)は, 肥大型心筋症, 慢性心不全, 心房細動で加療中であったが, 脱水による循環血液減少性ショックおよび脳梗塞で救急搬送されCCUに入院となった. 経過中に下血にて著明なcolon castを伴う虚血性大腸炎を発症したが保存的に軽快した. 2例目(77歳, 男性)は, 急性心筋梗塞により心停止をきたし, 経皮的心肺補助装置, 大動脈内バルーンパンピングを使用することにより心原性ショックより救命することができたが, 同じくcolon castを伴う虚血性大腸炎を発症し, 腸管穿孔·汎発性腹膜炎で死亡した. 心血管系の疾患を有する患者において, 虚血性大腸炎は遭遇する機会の多い大腸病変の1つであるが, 内視鏡検査所見でcolon castを認めた場合には, 手術療法を念頭においた治療方針の決定が重要となる.en-copyright=
Editorial Comment
Editorial Comment
症例
  • 丸山 園美, 井上 健司, 成高 中之, 圓山 雅己, 韋 靖彦, 岡井 巌, 土屋 洋人, 山下 晴世, 岡崎 真也, 藤原 康昌, 松本 ...
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 10 号 p. 1359-1364
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/01/19
    ジャーナル フリー
    劇症型心筋炎の心筋検体を用いたポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction; PCR)法で, パルボウイルスB19(PVB19)を検出した症例を経験した. 症例は, 46歳, 男性. 今回の入院より4年前に, C型肝炎を指摘され, インターフェロン治療でウイルスは消失したが, 半年前から再燃を指摘されていた. 入院7日前から胸部圧迫感と発熱を自覚し, 軽快しないため当院救急外来を受診, 急性心筋炎の診断で緊急入院となった. その後, 血行動態は悪化し, 人工呼吸器, 大動脈バルーンパンピング(intra aortic balloon pumping; IABP), 経皮的心肺補助循環(percutaneous cardiopulmonary support; PCPS), 持続的血液濾過透析療法(continuous hemodiafiltration; CHDF), 一時的ペースメーカーでの集中治療を要した. しかし, 播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation syndrome; DIC)および急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome; ARDS) を併発し, 入院後第10病日目に死亡した. 心筋組織はリンパ球の浸潤が著しく, 同心組織のPCR法でPVB19が検出された. PVB19は, 近年のウイルス性心筋炎の原因としてドイツを主とする欧米から多く報告されているが, 本邦での報告は稀少であるため報告する.
Editorial Comment
Editorial Comment
症例
  • 村上 究, 中野 顕, 居軒 功, 下司 徹, 荒川 健一郎, 見附 保彦, 宇隨 弘泰, 李 鍾大, 田邉 佐和香, 高森 督, 山田 就 ...
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 10 号 p. 1367-1372
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は, 70歳, 女性. 急性冠症候群の診断で救急搬送となった. 来院時Killip IVで, 心尖部に収縮期雑音を認めた. 胸部X線写真では著明な肺うっ血, 心拡大を認め, 心電図ではV2~5でST低下を認めた. 経胸壁心臓超音波検査は, 肥満のため観察困難であったが, 重度の左室壁運動異常は指摘できず, 軽度の僧帽弁逆流を認めるのみであった. 血液検査では, トロポニンT陽性であったが, ほかの心筋逸脱酵素の上昇は認めなかった. 心原性ショックを合併した急性冠症候群と考え, 大動脈内バルーンパンピング(intra aortic balloon pumping; IABP)補助下に冠動脈造影を施行したところ, 高位側壁枝に完全閉塞を認めた. 引き続き, 経皮的冠動脈ステント留置術を施行し良好な再灌流を得た. しかしながら, 血行動態は全く改善せず悪化の一途をたどり, 経皮的心肺補助を導入せざるを得ない状態となった. この時点で, 乳頭筋断裂に伴う急性僧帽弁閉鎖不全を疑い, 経食道心臓超音波を施行したところ, 前乳頭筋の完全断裂による重度の僧帽弁逆流を認めた. 直ちに僧帽弁置換術が施行され, 以後, 良好な経過で退院となった. 後壁梗塞に伴う前乳頭筋断裂は稀な合併症であるが, 極めて重篤な経過をたどることが多く, 念頭に置くべき病態と考え, 報告した.
症例
  • 鈴木 将智, 余川 順一郎, 馬渕 智仁, 野路 善博, 山口 正人, 藤野 晋, 青山 隆彦
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 10 号 p. 1373-1378
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/01/19
    ジャーナル フリー
    背景: 薬剤溶出性ステント(drug eluting stent; DES)では留置1年以上を経過した後でも超遅発性ステント血栓症(very late stent thrombosis; VLST)を生じ得ることが知られている. しかし, ベアメタルステント(bare metal stent; BMS)留置後の超遅発性ステント血栓症は非常に稀な病態であり報告も少ない. BMS留置10年を経過した後にステント内での血栓性閉塞を生じた2症例を報告する.
    症例1: 63歳, 男性. 10年前, ST上昇型急性下壁心筋梗塞のため右冠動脈にBMSを留置した. 翌年の冠動脈造影検査では再狭窄を認めず, 以後, 近医に通院. 今回, 突然の前胸部痛を生じて救急搬送され, ST上昇型急性下壁心筋梗塞と診断した. 緊急冠動脈造影検査では以前留置した右冠動脈のステント内で血栓性完全閉塞を認め, 血栓吸引とバルーン形成術を施行した.
    症例2: 61歳, 男性. 11年前, 不安定狭心症のため左前下行枝にBMSを留置した. 翌年の冠動脈造影検査では再狭窄を認めず, 以後, 近医に通院. 今回, 突然の前胸部痛を生じて救急搬送され, ST低下型急性心筋梗塞の診断で緊急冠動脈造影検査を施行した. 左前下行枝のステント内で完全閉塞を認め, 血栓吸引を行った後に薬剤溶出性ステントを留置した.
    結論: BMSにおけるVLSTの発症機序はステント内に新たに生じた動脈硬化性病変のプラーク破綻が原因であると推測され, 生涯にわたるアスピリン内服と動脈硬化の進展抑制が重要であると考えられた.
Editorial Comment
症例
  • 宮本 哲也, 畑 憲幸, 工藤 健史, 小野 真義, 小野 雄一郎, 馬越 健介, 伊藤 岳, 高橋 晃, 佐野 秀, 高岡 諒, 当麻 美 ...
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 10 号 p. 1380-1385
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/01/19
    ジャーナル フリー
    症例は73歳, 男性. 主訴は呼吸不全, 網状皮斑であった. 右上下肢の麻痺と失語にて発症した脳梗塞に対して 近医でrt-PA(recombinant tissue plasminogen activator)を投与された. しかし, 症状の改善は認めず, rt-PA投与6時間より尿量低下, 呼吸促迫となり, 同時に下腿から腹部にかけて網状皮斑が出現し, コレステロール塞栓症が疑われ, 当センター紹介となった. ステロイドパルス療法, 持続血液濾過透析, および血漿交換を施行し, 皮疹は改善傾向となった. しかし, 腸管壊死による汎発性腹膜炎が生じたため, Treitz靭帯より80cmを残した広範囲小腸切除と全結腸切除を施行した. しかしながら, この時点で家族がこれ以上の侵襲的な集中治療の継続を拒否したため, second look operationや持続血液濾過透析を断念した. 患者は第11病日に敗血症性多臓器不全が進行し死亡した. 高度の動脈硬化, rt-PA投与後の急性発症, 四肢の網状皮斑, 網膜動脈内のコレステロール塞栓の存在, 摘出した腸管壁内の小動脈内コレステロール結晶塞栓の存在などより, 本例はrt-PA投与後にコレステロール結晶塞栓症を合併したと考えられた. 本例は血管内カテーテル操作後や血栓溶解療法後に合併する稀な疾患であるが, 近年の血管内治療の普及とともに報告例も散見される. しかしながら, 脳梗塞に対するrt-PA投与後に急性発症した症例は渉猟し得なかったため, 文献的考察を加え報告する.
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