大動脈四尖弁(quadricuspid aortic valve; QAV)は, 稀な先天性弁膜症であり, 大動脈弁閉鎖不全症や狭窄を伴うことが多く, 心不全を契機に発見され, 手術適応となる例もある. われわれは, 循環器症状がなく, 経過観察と術前心機能評価で施行した心エコーで偶然にQAVと診断し得た2例を経験した.
症例1: 73歳, 男性. 3年前に高血圧と労作時の息切れの精査で紹介受診となった. 中等度大動脈弁閉鎖不全症があったが, 血圧コントロールで症状は軽快した. その後は, 1年ごとの経胸壁エコー法(transthoracic echocardiography; TTE)を行っていたが, 当科の心エコー機を最新機器(iE-33; Philips, Eindhoven, NED)に買い換えた後で施行したTTEでQAVが疑われ, 引き続き施行した経食道心エコー(transesophageal echocardiography; TEE)で, QAVと確診し得た. 心エコー機を最新機器に買い換えたことで容易に診断が可能となった.
症例2: 58歳, 女性. 外傷による右橈骨骨折のため手術を受けることとなり, 当院整形外科から術前精査目的で紹介された. 心電図の左胸部誘導でST低下があり, TTEで大動脈四尖弁による中等度大動脈閉鎖不全があることが判明した. 初回TTEから最新型心エコー機でQAVとの診断が容易であった.
まとめ: 検査者の経験や技能もさることながら, 心エコー機器の進歩により, これまでは診断できていなかったQAVの正確な診断が可能となり, 過去の報告よりも頻度が増加する可能性がある.
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