心臓
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43 巻, 12 号
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Open HEART
HEART’s Selection(心疾患における非心筋細胞の機能)
HEART’s Original
臨床研究
  • 古川 陽介, 仲村 尚崇, 深田 光敬, 中司 元, 安田 潮人, 小田代 敬太, 丸山 徹, 赤司 浩一
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 12 号 p. 1515-1520
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/02/21
    ジャーナル フリー
    目的: 近年, ワルファリン(warfarin; WFN) とプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor; PPI)の併用による薬物相互作用が指摘されている. 今回, ラベプラゾールとランソプラゾールの抗凝固療法に対する影響を後ろ向きに検討した.
    対象と方法: 外来で安定した抗凝固療法が確認されておりPPIを追加投与された例をPPI投与群(n=19), PPIを併用せずにWFNの維持量を半年以上固定している例を対照群(n=12)とし, PT-INR値とその変化率, PT-INRをWFNの用量で補正した値(INR/WFN)および出血性イベントを評価した.
    結果: 対照群とPPI投与前のラベプラゾール群およびランソプラゾール群でWFNの維持量, 平均PT-INR値, INR/WFNに有意差はなかった. PPI投与前後の平均PT-INR値はラベプラゾール群で変化なく(p=0.137), ランソプラゾール群で増加した(p=0.002). この増加は対照群のINRの自然変動より有意に大きかった(p<0.001). INR/WFNはラベプラゾールの投与では変化なく, ランソプラゾールの投与で増大した(p=0.011). 臨床的にいずれのPPIも出血性イベントは起こさなかった. ランソプラゾール群の2名でWFNを減量した.
    結語: 今回, ラベプラゾールはランソプラゾールに比べて抗凝固療法下でのPT-INR値に影響を与えにくいことが明らかとなった.
Editorial Comment
Editorial Comment
症例
  • 野崎 直樹, 朴沢 英成, 福本 淳, 田岡 誠, 梅津 拓史, 金澤 正範, 丁 毅文, 丁 栄市
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 12 号 p. 1524-1528
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/02/21
    ジャーナル フリー
    症例は60歳, 女性. 1973年, 出産時に輸血. 1996年にC型肝硬変症と診断された. 2007年と2009年に呼吸苦および労作時の意識消失の既往あり, 他院救急外来を受診したが異常なしと診断された. 2009年3月, 階段昇降時の呼吸苦, 胸部不快および食思不振を主訴に当院を初診. 心臓超音波検査で著明な右心負荷所見を認めた. 肺血流シンチグラムや胸部CTで肺血栓塞栓症を疑わせる所見はなし. 心臓カテーテル検査上, 冠動脈造影で有意な異常所見はなし. 心内圧指標で肺動脈楔入圧は正常, 右心系圧および肺血管抵抗は著明に上昇していた. 門脈肺高血圧症(portopulmonary hypertension; POPH)と診断, 在宅酸素療法とベラプロストナトリウムの内服を開始し外来通院となる. 退院後6カ月, 心臓超音波検査で有意に右心負荷は軽減, Hugh-Jones分類VからIV度へ, WHO肺高血圧症機能分類IIIからII度へ改善, 18カ月後も状態は良好に保たれていた.
    POPHは, 予後不良なことが多いが, 肺高血圧症の良好なコントロール, 軽症で維持されている肝硬変, そして前医で施行されたシャントに対する逆行性静脈塞栓術がこの症例の状態を長期に安定させていると考えられた.
Editorial Comment
症例
  • 杉山 英太郎, 竹中 孝, 蓑島 暁帆, 武藤 晴達, 玉田 淳, 藤田 雅章, 佐藤 実, 別役 徹生, 井上 仁喜, 寺西 純一, 岡本 ...
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 12 号 p. 1530-1535
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/02/21
    ジャーナル フリー
    症例は88歳, 女性. 入所中のグループホームで意識消失したため救急要請した. 搬送中にも意識消失し, 心電図モニター上, 持続性単形性心室頻拍を認めたが自然停止した. 当院搬入時は洞調律で, 心電図上V1~3で軽度のST上昇を認め, 心エコー上前壁中隔の壁運動異常を認めた. 急性心筋梗塞を疑い, 緊急冠動脈造影を施行した. 冠動脈には有意狭窄を認めず, 左室造影では左室中部が無収縮であり, 駆出分画率(ejection fraction; EF)は36%であった. 急性冠症候群以外の左室壁運動異常に合併した心室頻拍と考え, 薬物療法を開始し, その後, 心室頻拍を認めなかった. 慢性期の心エコーでは左室壁運動異常は正常化し, その後も心室頻拍はみられなかった. 本症例は, たこつぼ心筋障害と類似した臨床経過をたどったが, 一過性の左室壁運動異常の部位が異なり(たこつぼ心筋障害の亜型), さらに超急性期に持続性単形性心室頻拍を合併した, 稀な症例と思われた.
症例
  • 白石 裕一, 畔柳 彰, 白山 武司, 丸山 尚樹, 大野 和則, 中村 猛, 山野 哲弘, 松室 明義, 沢田 尚久, 松原 弘明
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 12 号 p. 1536-1541
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/02/21
    ジャーナル フリー
    症例は53歳, 男性. 2008年, 徐脈指摘され精査目的で当院紹介. 安静時の心電図で接合部調律を認めたものの, 失神や著明な運動耐容能の低下症状はなかった. 心臓電気生理学的検査で洞不全の診断, また, 心拡大, 脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide;BNP)の上昇が認められたことから, 徐脈に伴う心不全と判断しペースメーカーの移植を行った.
    移植直後のエルゴメータによる運動負荷試験で50Wを超えた頃から接合部調律へ切り替わり, 以後, 負荷が強くなるに従い, 心拍応答を認め110拍/分程度まで上昇を認めた. 心拍応答を伴う接合部調律のため, 運動耐容能の低下を認めなかったと考えられた.
    以後, DDDR 60/130の設定で退院. 心房ペーシング, 心室感知が100%で推移した. 移植2年後に再度, 運動負荷試験を行ったところ, 前回と同様, 接合部調律に移行し110拍/分程度まで心拍応答を認めた.
    一般に接合部調律は, 十分な心拍応答を伴わないとされているが, 本例のように運動時の心拍上昇を認め, また, ペースメーカー移植後も2年間安定して速い接合部調律がみられる稀な症例と考えられた.
Editorial Comment
症例
  • 植松 庄子, 栗原 朋宏, 三谷 健一, 木村 吉雄, 村崎 理史
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 12 号 p. 1543-1549
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/02/21
    ジャーナル フリー
    症例は, 61歳, 男性. 2005年5月に下壁心筋梗塞で他院に入院した. 緊急冠動脈造影で#2: 100%, #6: 90%が認められ, 急性期に#2へ経皮的バルーン拡張術, 待機的に#6へシロリムス溶出性ステント(sirolimus eluting stent; SES) 留置術が施行された. 同年12月の確認造影で#2: 90%と再狭窄が認められSESを留置された. 2006年7月の確認造影ではいずれのステント留置部にも再狭窄を認めなかった. 高血圧, 高脂血症のコントロールは良好であり, アスピリンとシロスタゾール200mgの内服を継続していた. 2010年1月に下壁心筋梗塞を発症し当院に入院となった. 緊急冠動脈造影で#2のステント内の血栓性閉塞と#6のステント内血栓像を認め, #2の血栓吸引を行った後, ゾタロリムス溶出性ステントを留置した. シロスタゾールをクロピドグレル75mgに変更し経過は順調であった. 待機的な冠動脈造影では#6のSES内の血栓は消失していた.
    これまでに抗血小板薬中止後に超遅発性ステント血栓症(very late stent thrombosis; VLST) が発症したとの報告や, 単独病変での報告は多いが, 本症例のように抗血小板薬の内服を継続中で, 危険因子も比較的少ない中で多発的に出現したVLSTは稀であるため報告する.
症例
  • 西間木 彩子, 三輪 陽介, 鈴木 亮, 桑原 彩子, 横山 健一, 佐藤 範英, 高山 信之, 坂田 好美, 池田 隆徳, 佐藤 徹, 吉 ...
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 12 号 p. 1550-1554
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/02/21
    ジャーナル フリー
    特発性好酸球増多症候群(idiopathic hypereosinophilic syndrome; IHES)は, 全身臓器に好酸球浸潤を伴う疾患であり, レフレル心内膜炎合併は心不全の増悪や心筋症様変化を伴い予後不良である. われわれは, 心臓MRIで治療効果を評価し得たレフレル心内膜炎合併HESの1例を経験した. 症例は33歳, 男性. 紅斑, 下痢, 末梢神経障害を主訴に来院した. 来院時, 好酸球の増加が認められた. 入院時の心電図で前胸部誘導のR波が減高していた. 心臓MRIで左室壁運動障害と心筋中層から内膜側にかけて, 遅延造影像が認められ, 心筋生検で好酸球の浸潤が確認されたため, レフレル心内膜炎と診断された. 各種検査でIHESに起因して発症したと判断され, プレドニゾロン(predonisolone; PSL)の投与が開始された. 心臓MRIで遅延造影効果が強くみられた心室中隔基部で壁運動の低下が残存し, 淡く認められた部位や造影効果のない部位は壁運動低下が改善傾向であった. レフレル心内膜炎の心臓MRIに関する報告は散見されるが, 遅延造影効果についての報告はほとんどなく, 心臓MRIの遅延造影が心機能予後予測や治療効果判定に有用である可能性が示唆された, 興味ある症例と考えられたので報告する.
Editorial Comment
症例
  • 右心房瘻を伴った冠動脈拡張症の1例
    川島 理, 青野 豪, 阿部 秀樹, 高田 一男
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 12 号 p. 1556-1562
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/02/21
    ジャーナル フリー
    症例は43歳, 男性. 2010年6月から労作時の動悸および前胸部圧迫感が生じるようになった. 同年10月よりそれらが増悪したため, 他医院を受診した. 狭心症が疑われたため, 当院の外来に紹介された. 外来で施行した64列multidetector computed tomographyでは, 右冠動脈の冠動脈拡張症および冠動脈右房瘻, 左回旋枝の冠動脈右房瘻が認められた. 冠動脈造影では左前下行枝の血管径は正常範囲であったが, 左回旋枝は軽度拡張し, 右冠動脈は著明に拡張し最大径は10.9mmであった. また, 右冠動脈の末梢が右心房に直接開口する冠動脈右房瘻, および左回旋枝の末梢が右心房に直接開口する冠動脈右房瘻の合併も確認した. さらに, 血液サンプリングにて34~46%の左右シャントが判明した. 201Tl運動負荷シンチグラムでも心筋虚血が認められたため, 冠動静脈瘻閉鎖術を予定した.
Editorial Comment
症例
  • 西崎 祐史, 高木 篤俊, 横山 貴之, 土井 信一郎, 小松 かおる, 大村 寛敏, 代田 浩之
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 12 号 p. 1565-1569
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/02/21
    ジャーナル フリー
    症例は, 70歳, 男性. 皮膚生検にて全身性強皮症と診断されている. 起座呼吸を主訴に外来受診し, 心不全の診断で緊急入院となった. 心不全の原因としてmyocardial fibrosisに伴う心機能低下が考えられた. 強皮症の心疾患合併率は比較的高く, また, 心疾患合併例は予後不良であることが知られている. Myocardial fibrosisの病態は心筋の微小血管攣縮に伴う循環障害であり, 微小循環障害が生じた結果, 左室機能低下が生じると考えられている. 微小血管攣縮に対してニフェジピンが有効であるという報告があり, 通常の心不全治療に加え, ニフェジピンの投与を開始した. 入院後経過は良好で第17病日に退院となり退院後も外来にてニフェジピン投与を継続し順調な経過を過ごしている. 全身性強皮症にmyocardial fibrosisを合併し, ニフェジピンが有効であったと考えられた1例を経験したので報告する.
症例
  • 丸山 誠代, 久保田 和充, 山之内 良雄, 浦田 秀則
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 12 号 p. 1570-1573
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/02/21
    ジャーナル フリー
    症例は74歳, 男性. 2009年当院で膀胱癌に対し膀胱全摘および尿管皮膚瘻造設術を施行された. その後, 急性腎盂腎炎を発症し加療していたが, 心エコーで僧帽弁前尖に可動性を伴う疣贅を認め, 感染性心内膜炎と診断し, 手術目的で他院へ転院となった. 僧帽弁置換術(機械弁)を施行され, 血液および疣贅組織の培養からバンコマイシン低感受性黄色ブドウ球菌(MIC 4µg/mL)が検出されたのでリネゾリドが投与された. 術後リハビリ目的で当院に転院となった. 入院時, 汎血球減少を認めた. 前病院からリネゾリドが4週間投与されており, その副作用と考え中止した. その後, 徐々に汎血球減少は改善を認めた. しかし, 当科転院第16病日から発熱と炎症反応高値を認め, 第20病日から左下腿痛が出現したので, 血管造影CTを施行した. その結果, 左後脛骨動脈に動脈瘤を認め, 手術目的で他院へ転院となった. 動脈瘤切除術の結果, 仮性動脈瘤であり, 血液および組織の培養からは菌は検出されなかった. しかし, 臨床経過から感染性心内膜炎に続発した感染性後脛骨動脈瘤と診断した. 弁置換術後40日目に突然発症したことから, 一度細菌感染により傷害された血管壁が, 後になって脆弱化し動脈瘤を形成したと考えた. 本症例のように感染性心内膜炎治癒後に動脈瘤が形成されることがあるので注意深い観察が必要である.
Editorial Comment
Editorial Comment
症例
  • 大住 真敬, 松枝 崇, 来島 敦史, 大谷 享史, 福村 好晃, 藤井 義幸, 山下 理子, 宮 恵子, 角谷 佳昭
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 12 号 p. 1577-1580
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/02/21
    ジャーナル フリー
    症例は, 54歳, 女性. 25歳時に自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia; AIHA), 36歳時に全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus; SLE)の既往あり. 47歳時に胸部大動脈瘤を指摘された. 53歳時に肺結核を発症. その後, 大動脈瘤が急速に拡大したため, 手術目的で紹介された. CTで, 上行から弓部に巨大な動脈瘤が存在し, 最大径は遠位弓部で120mm. 心エコーで中等度ARを認めた.
    手術は, 中等度低体温循環停止, 選択的脳灌流下に, 上行, 弓部大動脈置換術を施行. 大動脈弁に器質的な異常なく, ST-junctionの縫縮で大動脈弁逆流(aortic regurgitation; AR)は消失. 術翌日に人工呼吸器より離脱し, 第19病日に軽快退院. 病理所見は, 弓部大動脈に陳旧性の血管炎を認めた.
    AIHA, SLEに肺結核を合併し, 急速に拡大した若年巨大胸部大動脈瘤に対する手術を経験した. 病理所見より自己免疫性疾患による血管炎が原因と考えられた.
研究会 (第5回 心不全陽圧治療研究会)
症例報告
  • 春木 伸彦
    原稿種別: 第5回心不全陽圧治療研究会
    2011 年 43 巻 12 号 p. 1583-1586
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/02/21
    ジャーナル フリー
  • 高間 典明, 倉林 正彦
    原稿種別: 第5回心不全陽圧治療研究会
    2011 年 43 巻 12 号 p. 1587-1590
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/02/21
    ジャーナル フリー
    背景: 心不全と睡眠時呼吸障害の関連が深いことは周知の事実である. Adaptive servo ventilation(ASV)は, 心不全, ならびに睡眠時呼吸障害の両者を治療することが可能なデバイスである. しかしながら, どのような効果があるのか, また, 治療後の臨床経過についてはいまだに多くの議論を要する余地が残る.
    目的: フィリップス·レスピロニクス社製のASV(BiPAP AutoSV)ならびにレスメド社製のオートセットCSを用い心不全治療を行い, 治療経過を比較検討した.
    方法: 心不全にて入院した287人を対象とした. ASV治療を行うにあたっては, 睡眠時呼吸障害の有無や重症度判定を終夜ポリソムノグラフィ(polysomnography; PSG)で検討した後に導入を行った.
    結果: 同意を得てASVを導入できた心不全症例は合計127症例であった. 年齢は71±11歳(男性67%)であった. BiPAP AutoSVを導入した症例は13症例(AutoSV群), オートセットCSを導入した症例は114症例(CS群)であった. 両群間に左室駆出率(LVEF)(AutoSV群: 48.3±17.8%, CS群: 43.7±17.9%)や心房性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)(AutoSV群: 822±1,067pg/mL, CS群: 559±579pg/mL)に有意差は認めなかった. PSGの結果はAutoSV群が有意に無呼吸低呼吸指数(AHI)が高値であった(AutoSV群: 63.2±29.7/時間, CS群: 42.8±26.4/時間, p<0.05). 退院後治療継続(6カ月)した結果, 両群ともにBNP値の改善を認めた(AutoSV群: 191±151pg/mL, CS群: 313±860pg/mL). また, 在宅での使用時間は両群ともに比較的長時間使用することができた(AutoSV群: 6.3±3.5/時間, CS群: 4.7±4.3/時間).
    結語: 両群ともに退院後在宅でも比較的長時間使用することができ, 治療継続することによってBNPの有意な改善を認めた.
  • 椎名 一紀, 高田 佳史, 臼井 靖博, 加藤 浩太, 西畑 庸介, 山科 章
    原稿種別: 第5回心不全陽圧治療研究会
    2011 年 43 巻 12 号 p. 1591-1596
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/02/21
    ジャーナル フリー
    心不全患者にはチェーン·ストークス呼吸(Cheyne-Stokes respiration; CSR)を伴う中枢性睡眠時無呼吸(CSR-CSA)と閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea; OSA)を高率に合併し, それらはともに予後を悪化させる因子である. Adaptive servo ventilation(ASV)は, CSR-CSAの治療目的に開発され, その有効性が報告されてきた. 日本循環器学会の睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing; SDB)の診断と治療ガイドラインに示されている, ASVのよい適応は, 心不全の標準的治療下にもCSR-CSAを合併し, CPAPに忍容性のない場合とされている. 一方で, OSA主体やSDBの合併しない心不全例でもASVの効果が得られる可能性も報告されてきた. また, ASVの導入時期においても, 心不全の至適な薬物治療後の導入から, 心不全の急性期からの使用まで, さまざまなバリエーションが出てきている.
    心不全に合併するCSR-CSAは, 心不全の状態の改善により, OSAへ変化したり消失することも少なくなく, ASVによる治療を導入する際には, SDBの十分な評価が必要である. その一方で, 標準的薬物治療を達成するために, より早期にASVの導入が効果的な場合も経験され, SDBがない(軽度の)症例においても有用性が報告されてきている. そのような症例へASVを適応することの有用性については, コンプライアンスも含め, 症例を重ねて慎重に検討していく必要がある. 現時点でのわれわれの施設での成績を報告する.
  • 小西 正三, 柏瀬 一路, 平田 明生, 西尾 まゆ, 浅井 光俊, 根本 貴祥, 松尾 浩志, 中西 浩之, 赤澤 康裕, 小林 勇介, ...
    原稿種別: 第5回心不全陽圧治療研究会
    2011 年 43 巻 12 号 p. 1597-1600
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/02/21
    ジャーナル フリー
    はじめに: 心不全患者がしばしば睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing; SDB)を合併することは以前より知られている. 心不全患者においてはSDBが予後予測因子の1つであるが, わが国の心不全患者において, SDBの危険因子に関する知見は少ない. そこで, われわれは心不全患者に対してSDB精査を行い, その臨床背景を検討することとした.
    方法: 2009年6月から2010年8月までの間に当院に入院した44例の心不全患者(急性冠症候群に伴うものは除く) に対して, 退院直前にSDB検査を行った.
    結果: 平均年齢は70±11歳, 無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index; AHI)は15.8±12.0/時間であった. AHI<5は10例(23.3%), 5≤AHI<15は11例(25.6 %), AHI≥15は22例(51.2%)であった. AHI<15群とAHI≥15群で比較検討を行うと, AHI≥15群において, BNP, 心房細動の合併率, 中枢性無呼吸指数(central sleep apnea index; CSA index)およびチェーン・ストークス呼吸(Cheyne-Stokes respiration; CSR)の合併率が有意に高値であった. 年齢や左室駆出率(left ventricular ejection fraction; LVEF), body mass index(BMI), 推定クレアチニンクリアランス(eGFR) などについては, 有意差は認められなかった.
    結語: わが国の心不全患者において, BNP高値や心房細動の合併は, SDBの危険因子となり得る.
教育講演
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