はじめに: 冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting; CABG)を施行する症例の高齢化が進んでいるが, 術後リハビリテーション(リハ)の遅延に年齢が関与するかは報告により異なる. 今回, CABG症例のリハ経過を年代別に比較し, 80歳以上の高齢者の臨床的特徴を検討したので報告する.
対象と方法: 対象は, 2007年1月~2008年6月に当院でCABGを施行した症例97名で, 70歳未満: 54名(男/女49/5), 70歳代: 35名(男/女28/7), 80歳以上: 8名(男/女6/2)の3群に分類した. 術前から歩行が自立していない症例は除外した. 患者背景, リハプログラムの進行状況, 退院時運動負荷試験, 退院時運動指導, 転帰について比較検討した. 統計学的処理は, クラスカル・ワーリス検定, マン・ホイットニ検定, L×m分割表検定を行い, 危険率5%未満を有意とした.
結果: 左室収縮力は年代間で有意な差はなく, 腎機能は年齢とともに低下を認めた. 病棟リハプログラムの進行は, 年代間で有意な差を認めなかった. 80歳以上では, 歩行練習を必要とした症例が50%と多く, 退院時の歩行自立度も低いため, 日常生活における運動の取り組みについての指導が中心であった. リハ継続目的の転院は, 80歳以上で多かった.
考察: 80歳以上の高齢者では, 歩行能力の回復に時間を要するため, 術後早期から歩行能力および活動性の向上につながるプログラムを導入する必要があると考えた.
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