心臓
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43 巻, SUPPL.2 号
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第23回 心臓性急死研究会
  • 柳下 敦彦, 樋口 晃司, 中村 知史, 稲葉 理, 田中 泰章, 川端 美穂子, 蜂谷 仁, 平尾 見三, 磯部 光章
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_5-S2_10
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    高尿酸血症と脂質異常症のある59歳の男性. 失神歴や突然死の家族歴はない. 2009年7月, 中国で登山中(標高1,800m)に前駆症状のない失神を認めた. 現地医療機関では明らかな原因の特定にいたらず帰国した. 帰国後に当院を受診され, 心電図上, 洞調律, 不完全右脚ブロック, V1~2でのsaddle back型のST上昇を認め, 一肋間上ではcoved型を呈した. また, 心電図は日内変動を認め, 自発的にtype I型のBrugada型心電図への移行も見られた. Brugada症候群を疑い電気生理学的検査(EPS)を施行した. 基本刺激600ms, 240~210msの2連心室期外刺激で再現性をもって心室細動(VF)が誘発された. Brugada症候群とそれに伴ったVFによる失神と診断し, 冠動脈疾患の除外を目的として冠動脈造影検査(CAG)を施行した. ところが, CAGでは右冠動脈の完全閉塞と左下行枝と回旋枝の高度狭窄を認め, VF誘発への心筋虚血の関与を考慮する必要が生じた. そのため, 虚血を解除した後に再度EPSで評価する方針とした. PCIと薬物療法による虚血の解除を運動負荷心筋シンチグラフィで確認し, 再度EPSを施行した. EPSで基本刺激500ms, 240msの単発刺激で容易にVFが誘発されたことから, Brugada症候群と冠動脈疾患との合併例と判断し, 植込み型除細動器(ICD)植込み術を施行した. ICD植込み後は失神やICDの作動を認めず経過している. 本症例は誘発されたVFが心筋虚血とBrugada症候群のどちらによるか否かの鑑別を要した稀有な症例であった.
  • 船越 公太, 向井 靖, 竹本 真生, 井上 修二朗, 樗木 晶子, 砂川 賢二
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_11
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例: 80歳代, 男性. 失神の既往はなかった. 2010年2月, テレビ試聴中に一過性に失神し, 前医ICU入室後に突然心室細動が捉えられ電気的除細動にて蘇生に成功した. 冠動脈造影は正常で, 攣縮誘発試験も陰性, 明らかな器質的心疾患は認めなかった. 数年前の心電図では完全右脚ブロックおよびBrugada型心電図でなかったが, 今回, 心室細動発症前後の心電図では, 完全右脚ブロックと, V1のJ点-ST上昇を認めBrugada症候群が疑われた. サンリズム®負荷ではcoved型ST上昇が誘発された. ICD埋め込み後にバックアップレートを60拍/分とし, プレタール®内服を開始したところ右脚ブロックおよびJ-ST上昇は消失した. Brugada症候群はNaチャネル異常による右室流出路の心内膜/心外膜における再分極の時相のばらつきが本態であり, 今回, 完全右脚ブロックをきっかけに顕在化したと考えられた興味深い症例であり報告する.
  • 島田 博史, 深水 誠二, 西村 卓郎, 渡邉 智彦, 北村 健, 岩澤 仁, 石川 妙, 松下 紀子, 北條 林太郎, 林 武邦, 仲井 ...
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_12-S2_17
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は41歳, 男性. 39歳時の健康診断で心電図異常を指摘され, 来院した. 肋間上の心電図でtype1 Brugada心電図を認めた. 加算平均心電図では心室遅延電位陽性であった. その後, 経過中に間欠的なQRS幅の増大が認められたため, 心臓電気生理学的検査を施行した. 右室心尖部, 右室流出路からの心室プログラム刺激で再現性をもって心室細動(VF)が誘発された. 無症候性で明らかな家族歴もなかったが, QRS幅増大という伝導遅延の所見が認められたため, 予防的に植込み型除細動器(ICD)を植込んだ. その後の経過中の心電図記録では常時QRS幅は延長していた. ICD植込み24カ月後, 睡眠中の午前1時46分にICD作動を自覚した. ICDの心内心電図でVFによる適切作動を認めた. 本例では, 心室細動の発生に伝導遅延の関与が考えられた.
  • 大久保 公恵, 渡辺 一郎, 奥村 恭男, 小船 雅義, 永嶋 孝一, 真野 博明, 小船 達也, 中井 俊子, 国本 聡, 笠巻 祐二, ...
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_18-S2_22
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は25歳, 男性. 2010年1月9日飲酒中, 突然5分程度の意識消失を認めた. 同席者が心肺停止を確認している. 近医に搬送され, 診察中に動悸を訴え, 心電図モニターをつけたところ, 心室性期外収縮の散発から心室細動(VF)となり, 電気的除細動200Jで自己心拍再開し, 当院に搬送された. 既往歴に特記すべきことなし. 家族歴に母方の祖母の弟が30歳代でCPA蘇生歴あり. 心電図は洞調律でtype1 Brugada型心電図であった. 冠動脈造影では, 優位狭窄はみられず, アセチルコリン負荷によるspasm誘発では, 左冠動脈で, び漫性に狭窄し陽性と判断した. 心臓電気生理学的検査(EPS)では, 右室流出路より心室期外刺激600/240/230msで, 再現性をもってVFが誘発された. 植込み型除細動器(ICD)植え込みを施行し退院したが, 5月3日飲酒中に, VFでICDが4回作動していた. VFの出現は, いずれも飲酒中であり, Brugada症候群で飲酒が誘因となった報告は, 珍しく, 報告する.
  • 百名 洋平, 菊池 幹, 吉村 仁, 折口 秀樹, 毛利 正博, 山本 英雄, 坂本 一郎, 林谷 俊児, 山本 雲平, 宮田 健二, 野間 ...
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_23-S2_26
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    Ic群抗不整脈薬を投与することにより, Brugada型心電図を呈した2症例を経験した. 1症例目は80歳, 女性. 動悸を主訴に当院救急外来受診し, 心拍数が160bpm台の心房細動を認めたため, 除細動目的でピルジカイニド塩酸塩50mgの静脈内投与を行ったところ, 除細動されないままtype 1のBrugada型心電図を呈した. そのまま経過観察を行ったところ, 心房細動は停止し, 翌日には, Brugada型心電図は消失した.
    2症例目は85歳, 女性. 発作性心房細動に対し, 当院受診1カ月半前からピルジカイニド塩酸塩150mg/日を経口投与されていた. 発熱を主訴に当院救急外来受診時, type 1のBrugada型心電図を呈していた. 入院後ピルジカイニド塩酸塩を中止したところ, 発熱は持続していたにもかかわらず, 翌日にはBrugada型心電図は消失していた.
    今回, Ic群抗不整脈薬投与後にBrugada型心電図を呈するも, 致死的不整脈などを認めなかった高齢女性の症例を経験したため, 文献的考察を加え報告する.
  • 加藤 勲, 岩 亨, 鈴木 靖司, 伊藤 良隆, 伊藤 隆之
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_27-S2_32
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は, 83歳, 男性. 身長160cm体重48kg. 2010年4月19日両白内障, 両緑内障で当院眼科病棟入院.
    病歴: 2007年5月に発作性心房細動があり, その後, 近医よりピルジカイニド150mg/日処方. また便秘のため酸化マグネシウム900mg/日も処方されている. 入院時の心電図は正常であった. 4月23日ふらつきしゃがみこんでいるのを同室者が発見. 心電図は心室内伝導障害~促進心室固有調律であった. ピルジカイニドによる影響と考えwashoutを開始した. 心電図はV1, 2の著明なブルガダ型ST上昇とT波の交互脈を認め, 後日正常化した. その際の採血はK 4.5, BUN 19.8, Cre 1.25, CK 66, トロポニンT 0.1未満, Mg 2.7mg/dL, ピルジカイニド血中濃度3.34µgであった. ピルジカイニド血中濃度の上昇が薬剤性ブルガダ症候群様の変化をきたしたと考えられた.
  • 坂部 茂俊, 笠井 篤信, 森脇 啓至, 渡邉 清孝, 高村 武志, 大村 崇, 河村 晃弘, 世古 哲哉
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_33-S2_37
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    当院の特発性心室細動(IVF)症例の12誘導心電図における早期再分極所見を検討した.
    方法: 対象はBrugada症候群を除外したIVF6例(年齢32±21.6歳, 女性4例)で, うち1例はshort-coupled variant of torsade de pointes1)である. 早期再分極所見の基準は12誘導心電図の下方(II, III, aVF) 誘導, および側方(I, aVL, V4~V6) 誘導におけるQRS-ST接合部(J点) 0.1mV以上の上昇でQRS下行脚のノッチ(J波)の有無, 変動とあわせて評価した.
    結果: 6例中3例に早期再分極所見があった. 2例はII, III, aVF, V5, V6誘導に, 1例はIII, aVF誘導に日内, 日差変動の大きいJ点上昇があった.
    結論: 早期再分極所見はIVF患者の31~60%に認められるとされる. 当施設でも半数に認め, これらは早期再分極症候群に該当する可能性がある.
  • 高橋 尚彦, 篠原 徹二, 脇坂 収, 岡田 憲広, 油布 邦夫, 原 政英, 中川 幹子, 犀川 哲典
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_38
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例: 39歳, 男性. 以前からWPW症候群(間欠性)を指摘されていた. 2007年7月, 入浴後ソファーに座っていたところ失神し, 7分後に救急隊が到着, 心室細動を確認し数回の自動体外式除細動器で除細動できた. その後はデルタ波を認めず, 回復を待って心臓電気生理学的検査を施行した. 僧帽弁輪後壁に逆行伝導のみを示す副伝導路(不応期: 340ms)が存在しアブレーションで離断した. 心室頻拍/心室細動は誘発されなかった. 冠攣縮誘発も陰性であった. 当初, WPW症候群に合併した発作性心房細動からの心室細動が想定された. しかし副伝導路の順行伝導は弱く, 以前(2007年2月)のデルタ波のない心電図で, V1~V3のST上昇, およびII, III, aVFのJ波を伴うST上昇を認め, これらの波形には日差変動も認められたため, 早期再分極症候群(early repolariza-tion syndrome; ERS)による特発性心室細動の可能性が高いと判断した. デルタ波を伴う心電図には, II, III, aVFのJ波はなく, 逆にV3~V6で顕著なJ波を認めた. 植込み型除細動器植え込みを行い, 無投薬で現在まで心室細動は生じていない. WPW症候群とERSの合併は稀で心電図所見も興味深く, 貴重な症例と考え報告する.
  • 武 寛, 森田 宏, 西井 伸洋, 永瀬 聡, 中村 一文, 河野 晋久, 草野 研吾, 浩 伊藤
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_39-S2_45
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    筋緊張性ジストロフィの死因は, 呼吸筋低下による死亡が最も多いが, 心室細動や心室頻拍, 原因不明の突然死も約1/3ある. 今回, 筋緊張性ジストロフィの不整脈基質について検討を行った.
    症例1: 45歳, 男性. Mobitz II型房室ブロックにて入院. 心電図はI度房室ブロックを示し, 加算平均心電図では遅延電位陽性であった. 電気生理学的検査(EPS)では右室心尖部からの単回期外刺激で心室細動(VF)が誘発された.
    症例2: 49歳, 男性. 3年前に心房頻拍に対して心筋焼灼術施行した既往があった. I度およびMobitz II型房室ブロック精査のため入院した. 加算平均心電図では遅延電位陽性. EPSでは右室心尖部からの3連期外刺激でVFが誘発された.
    症例3: 49歳, 女性. 呼吸筋低下による人工呼吸管理中, 発作性2: 1房室ブロックを認め紹介となった. 心電図はI度房室ブロック, 完全右脚ブロックを示していた. Holter心電図では多形性の非持続性心室頻拍8連発を認めた.
    今回, 検討した3例はいずれも正常心機能で失神の既往歴はなかったが, II度以上の房室ブロックがあり, 1例では右脚ブロックも認めた. 遅延電位陽性でEPSを行った2例ではVFが誘発された. 筋緊張性ジストロフィでは房室ブロックの進行以外に心室性不整脈による突然死の可能性が報告されており, 1次予防として植込み型除細動器(ICD)植え込みを行った.
  • 西山 信大, 佐藤 俊明, 木村 雄弘, 福本 耕太郎, 相澤 義泰, 三好 俊一郎, 高月 誠司, 福田 恵一, 小川 聡
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_46-S2_51
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    心サルコイドーシスは房室ブロックだけでなく心室頻拍や心室細動を合併し, 突然死にいたることがある.
    症例1: 61歳, 女性. 2000年, 完全房室ブロックに対しペースメーカー植え込み. 術前, 左室収縮能軽度低下, Gallium-67citrateシンチグラムにて, 心臓への異常集積を認め, 心サルコイドーシスが疑われた. 他臓器のサルコイドーシス合併はなく, 当時の診断基準では, 診断にいたらずステロイド治療は行われなかった. 約3年後, 心不全の急性増悪とともに心室頻拍が頻回に出現し植込み型除細器(ICD)植え込みとなった.
    症例2: 58歳, 女性. 2007年, 完全房室ブロックに対しペースメーカー植え込み. 翌年, 心エコー上で心室中隔基部の菲薄化ならびにGallium-67citrateシンチグラムにて, 心臓への異常集積を認め, 肺病変も強く疑われたため, 心サルコイドーシスと診断された. ステロイド投与が開始されたが, 約1年後に心室細動を発症しICD植え込みとなった.
    完全房室ブロックにて発症し, ペースメーカー植え込み後, 約3年以内にICD植え込み手術が必要となった心サルコイドーシス疑いの2症例を経験した. 心サルコイドーシスに対する心臓植え込みデバイスの選択が, 困難な症例であり報告する.
  • 加藤 孝佳, 清水 昭彦, 上山 剛, 土居 正浩, 大宮 俊秀, 吉田 雅昭, 平塚 淳史, 福田 昌和, 松崎 益徳
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_52-S2_57
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は68歳, 男性. 慢性心外膜炎精査目的で近医に入院中に, 自然蘇生した2度の心肺停止をきたした. 2回目の心肺停止時, モニターにて高度房室ブロックによる約3分の心室停止を認め, ペースメーカー植え込みと精査目的で当院へ紹介となった. 冠動脈に有意狭窄を認めず, 左右頸動脈洞マッサージは陰性であった. 臨床電気生理学的検査では, 洞調律時のAA時間, AH時間は正常範囲であたったが, HV時間は70msであった. 房室伝導に関しては, Wenckbach rateは150ppm, ブロック部位はAHであった. 右房・右室からの期外刺激や頻回刺激, 同時刺激を種々試みたが, 発作性房室ブロックは再現できなかった. そこで, プロカインアミドを投与するとHV時間が約100msまで延長し, 最終的にHVブロックを生じた. 補充収縮が出現せず心停止状態となった. ペースメーカー植え込み後は, 意識消失の再発なく経過している. 発作性ブロックの誘発にプロカインアミドが有効であった1例を経験した.
  • 飛梅 威, 松本 万夫, エブル ゴルクック・スクリエ, 上西 正洋, 石田 仁志, 堀田 ゆりか, 原 幹, 加藤 律史, 西村 重敬, ...
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_58-S2_64
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は51歳, 女性. 主訴は動悸・息切れ. 頻脈性心房細動に伴う心不全(LVEF 33%)にて入院. 入院時, DCによる心房細動(AF)の停止を試みたが停止せず, 抗凝固療法開始するとともにDigoxin, Verapamilにてrate controlを施行. 心不全症状の改善を認めた入院7日目より, rhythm control目的にてBepridil 100mg分2を開始. 内服開始翌日, Bepridil計150mg内服後, AFながら, QT延長(QT> 500ms)を認め, R on Tの心室期外収縮(PVC)から心室細動(VF)となったため, 心肺蘇生術施行. Bepridil中止し, 入院24日目より, Aprindine 20mg分1を開始. 入院35日目にDC施行し, 洞調律に復帰(QT 480ms程度). 入院48日目に施行した冠動脈造影(CAG)では冠動脈に有意狭窄は認めず. 入院58日目に退院後も洞調律維持され, 6カ月後の心エコーでは心機能は正常化(LVEF 72%). また心電図上もQTc 418msと短縮し, 心室頻拍(VT)/VF出現の出現もなし.
  • 鈴木 紅, 金地 嘉久, 木田 夏子, 高木 崇光, 稲村 幸洋, 鈴木 麻美, 栗原 顕, 小野 裕一, 清水 茂雄, 大友 建一郎, 磯 ...
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_65-S2_72
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    57歳, 女性. 筋力低下, 針筋電図所見, 遺伝子検査(CTGリピート約330~450の増加)から筋緊張性ジストロフィ症タイプ Iと診断されている. 2010年某月, 転倒から頸髄損傷, 四肢不全麻痺をきたし入院した. 夜間せん妄に対し第15病日にペロスピロンの投与開始, 第29病日にブロナンセリンに変更となった. 第31病日に意識消失発作が出現しモニター心電図が装着された. 10時間後に2回目の意識消失発作が出現, その際にtorsade de pointes(TdP)が記録された. TdP停止後の12誘導心電図ではQTc560ms(入院時470ms)と延長していた. マグネシウムが投与されブロナンセリンを中止した. その後, TdPは発生せず, QTcは第41病日には470msに復帰した. 心エコー所見, 冠動脈造影, 左室造影は正常であった. 電気生理学的検査では洞結節回復時間, 房室伝導に異常なくHV時間は48msであった. エピネフリン負荷試験ではLQT1およびLQT2が存在する可能性は低いと判断した. 本症例のTdP発症には薬剤投与による一時的なQT延長の要因が強いと判断し, 投薬に注意することとして経過観察の方針となった. 後に先天性QT延長症候群に関する遺伝子検査の結果が判明し, LQT1およびLQT2は陰性, LQT3遺伝子に新規のミスセンス変異(LQT3 exon 28 c. 5348C> A p.T1783N)が明らかとなった. 本症例のQT延長およびTdPの発症には, 薬剤投与, 原疾患である筋緊張性ジストロフィ症タイプ I, LQT3遺伝子における異常など複数の要因が考えられ, 筋緊張性ジストロフィ症タイプ Iの心臓性急死の原因を考えるうえで貴重な症例と考えられた.
  • 椚田 房紀, 小松 隆, 橘 英明, 佐藤 嘉洋, 小沢 真人, 中村 元行
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_73
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例: 55歳, 女性. 主訴は失神発作. 突然死の家族歴なし. 2009年10月に運転中に急に具合が悪くなり, 駐車後に失神. 通行人の連絡で到着した救急車内で心室細動に対する電気的除細動がなされた. 入院時心電図では, 洞調律と心拍数130/分のlong R ‘P頻拍を認めたが, QT間隔ならびにST-Tに異常を認めなかった. 入院後の心臓超音波検査, 心臓CTならびにアセチルコリン負荷冠動脈造影に異常を認めず, 植込み型除細動器移植術を施行した. その後, トレッドミル運動負荷試験では上室性期外収縮に引き続き, 連結期が280~320msecの右脚ブロック上方軸型の心室性期外収縮が出現し, 多形性心室頻拍へ移行する心電図所見が観察された. β遮断薬単独, ならびにアミオダロンとの併用療法が無効であった運動誘発性short coupled variant of torsade de pointes を経験したので, 若干の文献学的考察を加えて報告する.
  • 山口 由明, 水牧 功一, 西田 邦洋, 岩本 譲太郎, 中谷 洋介, 常田 孝幸, 坂本 有, 井上 博
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_74-S2_80
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    今回, われわれは, 心房細動によるRR間隔不整に伴いtorsade de pointes(TdP)を発症した高齢QT延長症候群の2症例を経験した. 症例1は72歳, 女性. 僧帽弁置換術+Maze術施行後, 心房細動が持続していた. RR間隔の延長に伴いQT間隔の延長が増強し, TdPが頻発した. 低カリウム血症(3.1 mEq/L) の補正によりTdPは消失したがQT延長が持続し, ホルター心電図の24時間QT/RR slopeは0.30と高値でメトプロロール投与によりQT/RR slopeは0.18と低下しRR延長時のQT間隔が短縮した. 症例2は88歳, 女性. 発作性房室ブロック, 慢性心房細動でペースメーカー植え込み後(VVI 70/分)であった. 発熱時に自己QRSが頻発しRR間隔が不整となり, TdPを繰り返した. 低カリウム血症(3.2mEq/L)の補正とVVI 90bpmへ変更により, TdPは消失したがQT延長は持続した. 2症例とも低カリウム血症と心房細動によるRR間隔不整によりQT延長が助長され, TdPを発症したと考えられた. また, 低カリウム補正後のQT/RR(QT/HR)関係の解析から, 背景にQT延長の遺伝子異常が存在する可能性が示唆された.
  • 脇屋 桃子, 久次米 真吾, 伊藤 尚志, 榎本 善成, 森山 明義, 沼田 綾香, 熊谷 賢太, 酒井 毅, 坂田 隆夫, 野呂 眞人, ...
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_81-S2_85
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例: 14歳, 男性.
    経過: 12歳ごろより運動後に前失神症状を自覚していた. 運動後に心肺停止となり緊急搬送となった. 来院時は心室細動で, 循環動態は破綻していた. 直流通電施行後も, 持続性心室頻拍が頻回に出現した. 人工呼吸器管理下で体外補助循環, 低体温療法を施行したが, 低酸素脳症が残存した. 洞調律復帰後の心電図に経時的な異常は認めなかった. 心臓電気生理学的検査では, 無投薬下では病的不整脈は誘発されず, イソプロテレノール, ノルエピネフリンおよびエピネフリンを負荷した時点で, 単相性心室期外収縮が自然に出現するのみであった. 低酸素脳症のために運動負荷誘発試験は試行できなかった. QT延長症候群やBrugada症候群は否定的であった. 臨床経過よりカテコラミン誘発性心室頻拍が疑われ, 家族の強い希望で植込み型除細動器の植え込みを施行した.
    結語: カテコラミン誘発性心室頻拍と臨床的診断した1例であった. 若年の運動後, 意識消失の既往がある症例を診察する際には, 本症例を鑑別診断にあげる必要がある.
  • 貝沼 圭吾, 三谷 義英, 大橋 啓之, 淀谷 典子, 本間 仁, 駒田 美弘
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_86
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例: 心臓震盪は, 小児期から若年成人の競技, 遊戯などに伴って発生する外因性の院外心停止をきたす病態である. 欧米などでは主に球技により発症し, 自動体外式除細動器(AED)を用いた適切な心肺蘇生がなければ, 予後不良とされる. 今回, 本症を経験し, 発症時の映像, AEDファイルの心電図も含めて報告する.
    患者は14歳, 男児. 空手歴8年. 空手の試合中, 相手のパンチと膝蹴りが左前胸部に直撃した直後に, 心肺停止をきたした. 2分後に待機していた父親と医師による心肺蘇生, 4分後に3回のAEDによる除細動がなされ, 自己心拍が再開した. 発症13分後に救急搬送された病院で会話が可能であった. 以後, 後遺症なく経過良好であった. AEDファイルの心電図では, 心室細動が確認された. その後の精査により内因性の疾患は除外された. 以上から経過により心臓震盪と診断した.
    本症は, AEDを用いた適切な心肺蘇生が重要と考えられ, その対策について考察する.
  • 齋藤 友紀雄, 五関 善成, 荒井 悌子, 大滝 裕香, 山下 淳, 田中 宏和, 石山 泰三, 田中 信大, 山科 章
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_87-S2_91
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は42歳, 男性. 自宅で夜間就寝中に突然うなり声を発した後, 意識消失したため, 妻が救急要請した. 娘が心肺蘇生術(CPR)の講習受講者であったため, 確認したところ, 心肺停止状態で消防庁司令室の指示により協力して, 11歳の息子が胸骨圧迫を開始した. 救急隊現着時, モニター上, 心静止であったため, 救急隊がCPRを引き継いだところ心室細動(VF)波形となった. DC 200J施行し, CPR継続したところ心拍再開した(心停止時間16分). 当院救急センター搬送後, 低体温療法開始し, 神経学的な後遺症は認めなかった. 冠動脈造影上有意狭窄なく, アセチルコリン負荷は陰性であった. ピルジカイニド負荷試験では右側胸部誘導にST変化を認めなかった. 心臓超音波検査では心機能良好で, 器質的心疾患を認めなかった. 重度睡眠時無呼吸症候群を認めたが, CPAP療法は希望しなかった. 特発性心室細動の診断で, 第21病日に植込み型除細動器(ICD)植え込み術を施行し, 以後経過良好にて退院した. 現在までのところ, ICD作動は認めていない.
  • 米良 尚晃, 池田 隆徳, 星田 京子, 柳澤 亮爾, 宮越 睦, 三輪 陽介, 阿部 敦子, 石黒 晴久, 塚田 雄大, 柚須 悟, 吉野 ...
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_92-S2_96
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    近年, 自動体外式除細動器(automated external defibrillator; AED)の使用によって院外心停止患者の救命率が上昇している. 一方で, 除細動に成功した患者の心停止後症候群(post-cardiac arrest syndrome; PCAS)の問題が浮上している. 院外でAEDによる除細動が行われ, CCUで加療を受けた連続26例の予後と蘇生後脳症が評価された. AEDは, 現場(一般市民) 5例, 救急車内(救急隊) 16例, 他院(医師) 5例で使用されていた. AEDで除細動に成功したのは20例(77%)で, 残りの6例は搬送後の2次救命処置で除細動された. 院内死亡は4例(15%)で認められ, このうちの3例はAED不成功例であった. AED除細動後に意識障害を呈したのは13例(50%)であった. このうち12例(46%)で低体温療法が行われたが, 3例(全体の12%)では重度の蘇生後脳症が残存した. 低体温療法などの積極的なPCASに対する治療を行っても, AED使用患者では最終的に死亡もしくは重度の蘇生後脳症に至るのが27%いることが示された. 迅速なAED使用とPCAS治療法の確立が望まれる.
  • 石川 尚子, 庭野 慎一, 今木 隆太, 竹内 一郎, 桐生 典郎, 入江 渉, 豊岡 照彦, 栗原 克由, 相馬 一亥, 和泉 徹
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_97-S2_104
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    背景と目的: わが国では, 年間10万人を超える院外心肺停止(cardiopulmonary arrest; CPA)患者が報告されているが, その救命率は6.3%程度といまだに低い. CPA症例の救命率を規定する因子を検討するため, 当院における院外CPA患者データを解析し予後予測因子を検討した.
    方法: 対象は2009年1月1日から2010年6月30日の間に当院3次救命救急センターへ搬送された18歳以上の内因性CPA患者. 1カ月後の予後で生存群, および死亡群の2群に分類し, 虚脱から病着までの経過(プレホスピタル因子)および病着後の所見(インホスピタル因子)を両群間で比較検討した.
    結果: 観察期間中に789症例のCPA患者が搬送され, 外因死を除く連続581症例(平均年齢71±1歳, 男: 女 352人: 229人)について検討を行った. 各評価項目を多変量解析した結果, 以下の8つの項目が独立予後予測因子として統計学的に有意であった. (1)目撃あり(オッズ比12.8, 95%信頼区間1.6-185.0), (2)バイスタンダーCPR(cardiopulmonary resuscitation)あり(オッズ比10.9, 95%CI 1.9-107.6), (3)初回心電図が脈なし心室頻拍/心室細動(ventricular tachycardia; VT/ventricular fibrillation; VF) (オッズ比12.6, 95%信頼区間2.3-86.0), (4)病着前自己心拍再開あり(オッズ比60.6, 95%信頼区間7.8-524.0), (5)心原性CPA(オッズ比 17.5, 95%信頼区間4.4-119.4), (6)血中pH≥7.0(オッズ比14.5, 95%信頼区間5.1-49.3), (7)血中K+≤5.0mEq/L(オッズ比36.0, 95%信頼区間9.6-235.3), (8)血中CRP≤0.5mg/dL(オッズ比6.6, 95%信頼区間1.9-31.5). これらの8因子を各1点ずつで加算したものを予後予測スコアと定義すると, 生存のためには5点以上を要し, さらに6点以上のスコアは神経学的に良好な予後を得るための優れた指標となった(感度92.3%, 特異度88.8%).
    結語: 予後予測スコアは, 院外内因性CPA患者の予後予測に有用であり, 救命率向上に役立つ可能性が示唆された.
  • 山本 智彦, 古賀 徳之, 村上 昇, 石原 嗣郎, 加世田 繁, 藤島 慎一郎, 佐渡島 省三
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_105-S2_108
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は82歳, 女性. 2009年1月より熱発を繰り返していた. 同年2月, 心不全をきたし当院受診. 12誘導心電図でI, aVL, V2~6誘導のST上昇, 心エコーで心尖部を中心に広範な壁運動低下を認めた. 急性心筋梗塞疑いで緊急冠動脈造影検査を行った. しかし有意狭窄病変は認めず, 左室造影検査で心尖部を中心に広範なakinesis, 心基部の過収縮を認め, たこつぼ型心筋障害と診断した. 発熱の原因として左腎周囲膿瘍の存在が判明し, たこつぼ型心筋障害の誘因と考えられた. 第5病日に腎瘻造設術のため手術室で腹臥位としたところ, 突如ショックとなり心肺停止をきたした. CPR行うも心拍再開せず永眠された. 心エコーで著明な心· 液貯留を認め, 心タンポナーデの状態であった. 剖検は希望されなかったため, 死後CT検査を行ったところ, 心· 内に著明な血液を認めた.
    たこつぼ型心筋障害は, 比較的予後良好な疾患と考えられているが, 稀に心破裂症例が報告されており貴重な症例と考えられた.
  • 木内 俊介, 吉原 克則, 伊藤 博, 坪田 貴也, 藤井 悠一郎, 高村 和久, 山崎 純一
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_109-S2_114
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は75歳, 女性. 高血圧症, 耐糖能異常で通院中. また, III度房室ブロックのため, DDD pacemakerの植え込みを行っている. 2月上旬の20時ごろ前胸部絞扼感を自覚. ニトログリセリン舌下投与を行うも自覚症状が改善せず, 22時30分に救急車で来院した. 心電図上V3~V6でST上昇を認め, 経胸壁心臓超音波検査では前壁中隔中部から心尖部にかけて壁運動の低下を認めた. ACSを疑い施行した緊急心臓カテーテル検査では, 冠動脈には有意狭窄病変を認めなかった. しかし, 左室造影検査では心尖部の無収縮と対照的に心基部は過収縮を認め, たこつぼ型心筋症と診断した. 左室内には70mmHgの圧較差を認めた. 第2病日に循環動態が悪化し, IABPおよびPCPSを導入した. しかし, 全身状態は改善することはなく, 同日永眠された. たこつぼ型心筋症は予後良好な疾患と考えられているが, 致死的な経過をたどる症例も少なくない. 著明な左室内圧較差を認める症例では, 特に厳重な管理が必要と考えられる.
  • 猪俣 純一郎, 永田 義毅, 黒川 佳祐, 油谷 伊佐央, 丸山 美知郎, 臼田 和生, 谷口 陽子, 西田 哲也
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_115-S2_120
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は50歳代, 女性. 兄が50歳代で突然死. 自宅で飲食中に意識消失. 救急隊到着時に心室細動(VF)を認めた. 自動体外式除細動器(AED)により電気的除細動を3回行ったが, VFは停止しなかった. 蘇生処置を継続しつつ前医救急外来へ搬送された. 病院到着後, さらに5回の電気的除細動を行い蘇生された. 2日後に意識は清明となった. 心エコー図上, 心室中隔から心尖部に著明な壁肥厚を認めたが, 明らかな流出路狭窄は認めなかった. アミオダロン内服下でのトレッドミル運動負荷試験では不整脈は誘発されず, 心室遅延電位は陰性であった. 心臓カテーテル検査の結果, 冠動脈は正常で左室内圧較差は認めなかった. 右室心尖部への連続刺激にてVFが誘発された. 本例は植込み型除細動器(ICD)移植手術を施行し退院した. 突然死の家族歴を有する肥大型心筋症(HCM)のリスク評価について, 文献的考察を加えて報告する.
  • 佐々木 基起, 大場 豊治, 福井 大介, 馬渡 一寿, 松尾 優, 鍵山 弘太郎, 古庄 文, 田原 宣広, 植田 晋一郎, 竹内 智宏, ...
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_121-S2_124
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症の自然経過は, 一生無症状のものから, 急死する症例, 心不全へ移行する症例など多彩である. 一般に突然死のリスクは年間1~3%とされ, 致死的不整脈とされているが, その機序は不明であり予測は困難である. ハイリスク症例の致死的不整脈に対しては植込み型除細動器(ICD)植え込み術やアミオダロンの投与が検討される. しかし, そのエビデンスは十分ではなく, 現在臨床データが蓄積されている段階といえる. 今回, われわれは, 自動体外式除細動器(AED)使用により院外心肺停止から蘇生された閉塞性および非閉塞性肥大型心筋症の2症例を経験したので報告する.
  • 伊佐 泰樹, 原山 信也, 二瓶 俊一, 相原 啓二, 蒲地 正幸
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_125-S2_129
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は30歳代, 男性. 某日, 家族に倒れているところを発見され救急要請. 救急隊到着時, 心肺停止状態(asystole)であり, 心肺蘇生(CPR)を施行され当院へ搬送された. 来院直後に心室細動(VF)となり, アドレナリン投与, 電気的除細動を行うも心室細動が持続した. ニフェカラント投与し, 除細動を数回行ったがVF持続したため, 経皮的心肺補助装置(PCPS)を導入した. PCPS開始後にアミオダロンを投与しVFは停止した. 虚血性心疾患の鑑別のため, 冠動脈造影(CAG)を施行したが有意狭窄病変は認められなかった. 大動脈内バルーンパンピング(IABP), PCPSを使用したが, 循環動態が維持できず, 発症から約14時間後に死亡した. 病理解剖の肉眼所見にて左室壁肥厚と内膜下に全周性に梗塞巣が見られており, 経過中CK-MBは有意に上昇していた. 肥大型心筋症が基礎疾患として存在し, VFを生じ, 心肺停止となり, CAGで有意狭窄病変を認めないにもかかわらず, 全周性の心内膜下梗塞に陥ったと考えられる症例であった. 診断· 治療に苦慮した1例であり報告する.
  • 木村 義隆, 但木 壮一郎, 田丸 貴規, 山口 展寛, 尾上 紀子, 田中 光昭, 石塚 豪, 篠崎 毅, 鈴木 博義
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_130-S2_135
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は54歳, 女性. 高血圧の既往あり. 40歳時にうっ血性心不全のため入院した. 以後外来で内科的治療を継続していた. 52歳時, 定期検査のため記録した心電図においてQTcが568msecに延長し, V1~V4, II, III, aVFのT波が陰転化していたが, 症状を認めなかった. 原因精査のため, 冠動脈造影を行ったが正常であった. その後, 完全左脚ブロックが出現し, 進行性にQTcが延長した. 心臓超音波検査では左室拡張末期径の拡大, 左室駆出率の低下, 心室壁の菲薄化を認め, 胸水と労作時息切れが出現した. 平成22年5月, 夕食中に突然の心肺停止となり当院救急搬送となった. 心室細動を繰り返し, 電気的除細動, アミオダロン, マグネシウム静注にて洞調律へ復帰したが, 低酸素脳症より回復することなく第9病日に死亡した. 患者は長期間3~4L/日のビールを摂取していたことが家族の話から判明したため, アルコール性心筋症を強く疑った. 剖検によって心筋の錯綜配列や炎症細胞の浸潤, そのほか2次性心筋症に特異的な所見を認めなかった. 以上の所見からアルコール性心筋症と診断した. アルコール摂取歴の把握と断酒指導が重要であると考えられた.
  • 山崎 浩, 夛田 浩, 関口 幸夫, 青沼 和隆
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_136-S2_143
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    四肢および体幹の皮膚硬化を認める全身性強皮症にて加療中の38歳, 男性. 夕食後に数分間の失神発作を認め当院に緊急搬送された. 精査にて, 著明な右室拡大と壁運動の低下, 多源性心室性期外収縮の頻発および加算平均心電図にて遅延電位陽性であり不整脈源性右室心筋症類似の病態が明らかとなった. 電気生理学的検査にて血行動態の破綻する心室頻拍が誘発されたために, 1次予防目的で植込み型除細動器(ICD)を挿入, ならびにソタコール内服で経過観察としたが, 約4カ月後にelectrical stormによるICDの頻回作動を認め再入院となった. トロポニンTの持続高値, QRS幅の拡大, 右室壁運動のさらなる低下の所見から, 右室心筋障害の急速な進行が示唆された. 抗不整脈薬による頻拍のコントロールは困難と考え, 緊急のカテーテル焼灼術を施行した. 右室流出路近傍に認められた心室瘤を最早期とする非持続性心室頻拍が頻発しており, 右室内からの焼灼により, 頻拍は抑制された. 全身性強皮症の皮膚硬化に対するシクロフォスファミドによるパルス療法後に, 持続高値を示していたトロポニンTが正常化した経過より, 不整脈源性右室心筋症類似の心病変は自己免疫機序による慢性心筋炎が原因と考えられた. 本例は失神を契機に発見された不整脈源性右室心筋症類似病態を呈した全身性強皮症の稀な1例と考えられたので, 文献学的考察を加え報告する.
  • 佐藤 文子, 林 紀乃, 中村 俊彦
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_144
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例1: 生後1カ月12日, 男児, 在胎39週と5日, 体重2, 520g, 身長49cm, 帝王切開で出生. 1カ月検診で発育は順調. 母親が死亡者を肩から袈裟懸けにして外出. 帰宅後に冷たくなっているのに気づく. 心臓; 29g, 左室壁; 0.6cm, 右室壁; 0.2cm, 左室壁は肥厚. 心房中隔はスリット状に開口. 心筋の乳頭層は内腔に丈高く突出. 組織所見では, 緻密層と乳頭層の境界に強調すべき所見はない. ほかの心臓奇形はなし.
    症例2: 38歳, 女性. 意識消失発作の既往あり. 空の浴槽内で, うつ伏せで死亡していた. 心臓重量355g, 左室壁; 1.3cm, 右室壁; 0.3cm, 左室心尖部~中部までの乳頭層の肉柱が密に梁状に丈高く発育. 緻密層は比較的薄い. ほかの心臓奇形はなし. 組織所見で, 乳頭層では, 心筋線維の大小不同, 不規則な核緻密層では, 過収縮帯壊死を認める. 原因不明の急死であり, 死因究明のため行政解剖が施行された. 剖検により, 左室緻密化障害と診断された2例を報告する.
  • 宮永 哲, 柴山 健理, 角田 聖子, 鈴木 健一朗, 堤 穣志, 村上 彰通, 中田 耕太郎, 鈴木 輝彦, 仲野 陽介, 吉田 裕志, ...
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_145-S2_148
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例: 56歳, 男性.
    現病歴: 2010年6月, ウォーキング中に突然倒れbystander CPRと救急隊による自動体外式除細動器(AED)で心室細動(VF)から回復した. 心臓カテーテル検査では冠動脈に有意狭窄なく, 心臓超音波検査, 造影心臓MRIの結果と併せて, 当初は肥大型心筋症が疑われていた. 第18病日に植込み型除細動器(ICD)を植え込み, 後日, アミオダロン内服下でトレッドミルテストを行ったところ, ST変化と非持続性心室頻拍が誘発されたため, ビソプロロールを追加した. 再度の運動負荷試験では, さらに早い段階で同様の反応が出現したため, 運動誘発性冠攣縮性狭心症(CSA)を疑った. 左冠動脈はアセチルコリン20µg負荷で#6 100%狭窄を含むmulti spasmとなり, 運動誘発性CSAによりVFへいたったと考えた. 硝酸薬, Ca拮抗薬に変更してからは運動負荷試験でST変化やPVCが出現しなくなったことを確認した. 以後, 約5カ月の外来経過観察でも, 心室頻拍(VT)· VFの再発は認められていない.
    まとめ: トレッドミルテストで薬効評価を繰り返す中で, 運動誘発性CSAと診断できた症例を経験したので報告する.
  • 本間 英恵, 小谷 英太郎, 菊池 有史, 小杉 宗範, 加藤 活人, 進藤 朝子, 渋井 俊之, 岡崎 怜子, 吉川 雅智, 遠藤 育子, ...
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_149-S2_153
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は53歳, 男性. フィットネスジムでジョギング中に心肺停止となり, インストラクターによるバイスタンダー心肺蘇生法(CPR), 自動体外式除細動器(AED)にて蘇生され, 当院救命救急センターに搬送された. AEDの解析結果では, 心室細動(VF)に対して除細動が作動した後, 完全房室ブロックを経て洞調律に復帰した記録を認めた. 冠動脈に有意狭窄なく, アセチルコリン(ACh)負荷試験にて左前下行枝起始部に攣縮を認め冠攣縮性狭心症と診断した. 本例は, 突然死の家族歴があり, 心臓MRIにおいてガドリニウム(Gd)遅延造影効果を認めたため冠攣縮以外の不整脈原性基質の存在を否定し得ず, 植込み型除細動器(ICD)の植込みを行った.
    VFを契機に発症した冠攣縮性狭心症では, VFの原因が冠攣縮によるものとは限らず, ICDの適応に関しては, 冠拡張薬の有効性に加え, 心筋症などの冠攣縮以外の不整脈原性基質を考慮することも重要である. 当院で経験した類似症例7例の臨床経過を含め, 冠攣縮性狭心症を有するがそのほかの不整脈原性基質が否定できない症例に対するICDの適応に関して考察した.
  • 福永 寛, 櫻木 悟, 藤原 敬士, 藤田 慎平, 山田 大介, 鈴木 秀行, 宮地 剛, 川本 健治, 山本 和彦, 堀崎 孝松, 田中屋 ...
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_154-S2_158
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    Kounis症候群とはアレルギー反応に伴い急性冠症候群をきたす症候群であり, 冠攣縮に合併したタイプ1とプラーク破裂に伴う血栓形成に起因するタイプ2に分類される. 今回, われわれはKounis症候群により心肺停止をきたした2症例を経験したので報告する.
    症例1: 76歳, 男性. 腰部脊中柱管狭窄症の術中にセフォペラゾンを投与したところ, アナフィラキシーショックを発症した. 下壁誘導にてST上昇を認めたため急性冠症候群と診断, 緊急冠動脈造影にて右冠動脈#1に血栓および#4AVに完全閉塞を認めた. 血栓吸引療法のみで再疎通が得られた.
    症例2: 61歳, 男性. 起床時より四肢・体幹に蕁麻疹を認め, その後, 心肺停止となり, 当院へ搬送された. 心肺蘇生術にて心拍再開したが, その後, 心室頻拍が頻発, 急性冠症候群を疑い緊急冠動脈造影を施行した. 冠動脈に有意狭窄は認めなかったが, 心電図上胸部誘導で一時的にST上昇を認めたため, 左前下行枝の冠攣縮と診断した.
  • 大西 克実, 丹野 郁, 伊藤 啓之, 櫻井 将之, 李 慧玲, 浅野 拓, 濱嵜 裕司, 木庭 新治, 阿久津 靖, 酒井 哲郎, 小林 ...
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_159-S2_163
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は61歳, 女性. 主訴は意識消失. 2009年12月, 駅のホームで心肺停止となり, 自動体外式除細動器で心室細動(VF)が確認され, 除細動により洞調律化した. その後, 当院へ救急搬送された. 冠動脈に有意狭窄なく, acetylcholine負荷にて右冠動脈の攣縮が誘発され, また左室造影で左心室瘤を認めた. 電気生理学的検査では心室頻拍(VT)·VFは誘発されず, 冠攣縮によるVFと診断した. 植込み型除細動器(ICD)を植え込み, isosorbide dinitrate 40mg, nicorandil 15mg, diltiazem 90mg の内服を開始した. 内服4カ月後にVFによるICDの作動を4回認めた. 冠攣縮予防強化目的でnifedipine 40mg追加したが, 同日VF再発し再入院となった. 十分なCaブロッカー投与にもかかわらずVFを繰り返しており, 冠攣縮以外のVFの原因を検討した. 右室造影では右室の著明拡大, 遺伝子検索ではSCN5Aの遺伝子異常, CARTO voltage mappingでは右室, 左室前壁中隔に及ぶ, 冠動脈領域とは無関係な異常電位と広範な遅延電位を認めた. 心筋生検の結果, 非乾酪性肉芽腫を認め, 心サルコイドーシスと診断した. その後prednisolone内服により, 6カ月間VFは出現していない.
  • 武田 守彦, 高橋 潤, 円谷 隆治, 伊藤 愛剛, 高木 祐介, 中山 雅晴, 伊藤 健太, 安田 聡, 下川 宏明
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_164
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例: 40歳代, 男性. 労作性狭心症にて2004年9月に左前下行枝にシロリムス溶出性ステントを留置した. 抗血小板薬はアスピリンとチクロピジンを3カ月内服し, 以後はアスピリン単剤を継続した. 2007年8月に急性心筋梗塞を発症し冠動脈造影を施行したところ, 前下行枝のステント内閉塞を認め, 超遅発性ステント血栓症と診断し同部位に対し経皮的冠動脈インターベーション(PCI)を施行した. 3カ月後の冠動脈造影ではステント留置部位に著明な冠動脈瘤を認めた. 以降, アスピリン, チクロピジンに加えワルファリンの内服を継続し, 外来でイベントなく経過していたが, 2010年2月に院外心停止を発症し, 自動体外式除細動器(AED)により蘇生された. 冠動脈造影では狭窄病変はなく, ステント部の冠動脈瘤は残存し, アセチルコリンによる冠攣縮誘発試験にてステント前後に著明なスパスムを呈し, 心イベントと関連すると思われた. Rhoキナーゼ阻害薬の効果判定, 光干渉断層法(OCT)の観察もあわせ施行したので報告する.
  • 鈴木 進, 津田 卓眞, 光田 貴行, 早野 真司, 小川 一矢, 榊原 貴司, 三原 裕嗣, 青山 徹, 渡邊 純二, 金城 昌明, 一宮 ...
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_165
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例: 若年者の運動中の突然死の原因疾患において冠動脈奇形は, 肥大型心筋症に次ぐ疾病で, なかでも左冠動脈起始異常症は, 冠動脈奇形が原因の突然死の中で多くを占めるとされる.
    本症例は16歳の男性が, ランニング中に発生した心肺停止で救急搬送. PCPS, IABP下に冠動脈造影施行し, 左主幹部の血流途絶像·急性心筋梗塞と左冠動脈起始異常症と診断. 外科的根治治療の架け橋として, 左主幹部に冠動脈ステント留置術を施行した. そのIVUS所見では, 大動脈と肺動脈間で拍動性に圧迫され扁平化した奇形血管の左主幹部像, 奇形血管が大動脈から急峻に分枝し, その入口部狭小化像など, 特徴的な所見を観察できた.
    左冠動脈起始異常症は稀な疾患ではあるが, 若年者の突然死をきたす疾患として, その重篤な予後からも非常に重要なものであり, その特徴的なカテーテル所見, およびIVUS所見とともに報告する.
  • 黒須 明, 景山 則正, 松村 桜子, 畔柳 三省, 徳留 省悟
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_166
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例: 77歳, 女性. 腰痛で整形外科受診するほか病歴なし. 失神歴, 家族歴なし. 健康診断でも, 特に指摘されたことはない. 某年6月自宅居間で左側臥位で意識不明の本屍を発見, 直ちに救急車で病院搬送するも着院時心肺停止状態であり, そのまま死亡した. 死因不明とのことで検案後に行政解剖となった.
    死後約13時間で剖検. 身長156cm, 体重60kg. 心嚢内に暗赤色凝結を含む流動性血液300mLを容れる. 左冠状動脈は左バルサルバ洞より起始し, 前下行枝起始部直下に破裂動脈瘤を認める. 右冠状動脈は右バルサルバ洞より起始し, 前記, 左冠状動脈瘤と隣接して未破裂動脈瘤を形成するも, これらの動脈瘤には交通はない. さらに未破裂小動脈瘤を数個形成しつつ肺動脈弁直上に開口する. 冠状動脈の硬化は軽度であり, 心筋に明らかな異常を認めず. 肺のうっ血水腫, および諸臓器のうっ血を認め, 左右卵巣嚢腫を認めるほか, 明らかな異常を認めない.
  • 森谷 尚人
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_167
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例: 65歳, 男性. 2010. 3月6日下壁梗塞の診断にて右冠動脈近位部の完全閉塞に対し経皮的冠動脈インターベーション(PCI)施行. Filtrap挿入下にseg.1~2 distalまで計3本のBMSを留置した. Filter no reflow(FNR)を認め, 十分な吸引ののちにfiltrapを抜去したが, slow flowを呈した. その間にVFはstormの状態となり, 気管内挿管/IABP装着, Lidocaine/Nifekalant/Amiodarone 投与にてもstormは収まらず経皮的心肺補助装置(PCPS)を装着した. PCPS装着後はPVCs/VFは消失した. 亜急性期のカテーテルでは右冠動脈は開存し心機能も良好であった. 著明なFNRを認めたのは3本目のステントを留置した後であり, 病変長が長く血栓量の多い場合のdistal protectionの際には術中の頻回な吸引がslow folwの予防に有効なのでは, と推測している. VFは同波形のPVCsがtriggerとなっていたことから, PCPS装着後もVFがコントロールできなければPVCs へのアブレーションも検討していたが, 全く消失した. 虚血によるVF stormは虚血の解除が最も重要であると再認識した.
  • 佐藤 弘典, 藤井 洋之, 大坂 友希, 加藤 信孝, 一色 亜美, 鈴木 秀俊, 鈴木 篤, 清水 雅人, 山分 規義, 西崎 光弘, 久 ...
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_168-S2_174
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は62歳, 女性. 数日前から労作時胸部違和感を認め, 近医でHolter心電図検査を施行された. 検査日の23時半ごろから強い胸部圧迫感が出現し, 当院救急外来を自家用車で受診. 心電図上, I · aVL · aVR · V1~6のST上昇を示し, 急性心筋梗塞による心原性ショックと診断した. 緊急カテーテル検査を施行し, 左主幹部完全閉塞を認めた. 大動脈内バルーンパンピング(IABP)挿入下で左主幹部から左前下行枝にかけてステント留置術を施行し再灌流に成功したが, 血圧低下が遷延したため経皮的心肺補助(PCPS)を挿入した. PCPSは入院2日目, IABPは3日目に抜去しショックから離脱でき, 28日目に残存する左前下行枝の狭窄に対する血行再建術を施行した.
    急性心筋梗塞発症時のHolter心電図記録で, ST上昇· 低下に伴い多形性心室頻拍および約1分間の著明な心停止を認めた. 短い時間間隔の著明なST上昇には冠攣縮の関与が考えられたため, 5カ月後にアセチルコリン負荷試験を行った. 左冠動脈は50µ g投与で左前下行枝末梢が完全閉塞, 右冠動脈は♯4AV, ♯4PDでdiffuseに90%となり, II · III ·aVFでST低下を認めた.
    本例は過去の報告と異なり, 左主幹部閉塞時に徐脈 · 心停止が記録され, 冠攣縮が一部関与した極めて稀な症例であり, 示唆に富む病態と考えられた.
  • —どのような症例に緊急PCIを行うか—
    高橋 宗一郎, 梅谷 健, 吉崎 徹, 中村 政彦, 瀬戸 俊邦, 相沢 一徳, 小林 辰輔, 松田 潔
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_175-S2_181
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    心肺蘇生後状態の患者の生命予後, 神経学的予後改善のため, 急性期の冠動脈造影(CAG), 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)および低体温療法が有用とされている. 今回, われわれは当院での症例をもとに, 心肺停止蘇生後において低体温療法施行前のCAG, PCIについて後ろ向きに検討した.
    当院で心原性心肺停止蘇生後に低体温療法を行った症例は36例であった. 低体温療法施行前に緊急CAGを行った症例は左冠動脈前下行枝(LAD)病変が多く, 全例緊急PCIを行った. 緊急CAG非施行群と比較して, 左室駆出率(LVEF)は同等であったが, BNPは低い傾向であった. ST上昇のある急性冠症候群(ACS)の心肺蘇生例に対して, 緊急CAG/PCIを行った症例は院内生存率が高かった. また, ST変化のない症例は低体温療法を先行させても, 院内生存率は低下しなかった. 心肺蘇生後のACS患者に対して, 適切に低体温療法, 緊急CAGおよびPCIを行い, 生命予後, 神経学的予後を改善させることが重要である.
  • 清水 嘉人, 住居 晃太郎, 折田 裕一, 蓼原 太, 五明 幸彦
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_182-S2_186
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例: 60歳, 男性. アルコール性肝炎既往あり. 2日前から出現した右下腹部痛が持続し搬入. 来院時血圧70mmHg, まもなく心肺停止となった. PEAとVFが続きCPR施行. 心エコーにて右心系の拡大を確認. PCPSを装着し, 造影CT施行, 左右肺動脈中枢側の大量血栓を認め, acute PTEと診断した. アルコール多飲あり, 脱水が血栓形成に関与したと思われた. 血栓量は著明であり同日転院し, 緊急肺動脈血栓塞栓摘除術施行, 左右肺動脈血栓を摘除し得た. 全身状態は改善し, 第46病日退院した. 急変前には, 著明な下大静脈血栓が存在した可能性が示唆され, 主訴の右下腹部痛との因果関係が考えられた. 右下腹部痛が初発症状の重症acute PTEであり報告する.
  • — 救命のための治療戦略の検討
    長谷川 潤, 劔 卓夫, 林 克英, 岩瀧 麻衣, 渡部 太一, 鈴木 義之, 原田 敬, 太崎 博美
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_187-S2_191
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    急性広範型肺塞栓症は, その40~90%が発症より1~2時間以内に心肺停止をきたすとされる. さらに, 心肺停止をきたした肺塞栓症患者の院内致死率は, 60~70%となり, 極めて予後不良な疾患である. 現在, 肺塞栓症による心肺停止に対する治療法としては, (1)経皮的人工心肺補助装置(PCPS), (2)t-PA, (3)カテーテル治療, (4)下大静脈フィルターなどがあげられるが, 本邦やAHAのガイドラインにおいても, 治療法の選択や, その効果に対する評価は, 臨床で使用するにおいて十分確立されているとはいえない. 今回, われわれは, 肺塞栓症による心肺停止患者に対して, PCPS·カテーテル治療·t-PA投与による積極的な治療を行うも救命できなかった2例と, 保存的加療と下大静脈フィルター留置を行い救命が可能であった1例を経験した. これらの症例から検討することで, それぞれの治療法の是非と救命に成功した要因に関して, 文献的な考察をふまえ報告する.
  • 植島 大輔, 吉村 浩司郎, 三輪 尚之, 杉山 浩二, 志 吏左, 神田 孝茂, 青柳 秀史, 倉林 学, 畔上 幸司, 伊藤 敏孝, 武 ...
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_192
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例: 19歳, 女性, 他院の耳鼻科で鼻中隔弯曲症手術施行に際し, 全身麻酔導入後, 鼻腔内へ, キシロカイン, コカイン含有ガーゼの表面麻酔時, エピネフリン入りキシロカインの局注直後に急激な血圧上昇(200mmHg)および頻脈(150bpm)発生. その後, 改善したため手術開始するも, 開始約10分後, 急激な血圧低下(収縮期: 約50mmHg), 著明徐脈(50bpm以下)を経て, PEAとなったため, 当院へ緊急搬送された. 来院時の心電図では心室細動であった. 直流除細動後にPCPS, IABP治療導入. 緊急冠動脈造影で有意狭窄なく, 左室造影検査でEFは約10%で心尖部のみわずかに収縮. 上記, 維持療法継続により第3病日より心収縮能が徐々に改善し, 第4病日にはEF40%程度まで改善したため, PCPS離脱, 翌日にはIABP抜去, 人工呼吸器離脱となった. 第16病日に, 特に後遺症なく退院した. 原因として, 冠動脈攣縮が疑われた.
  • 阪部 優夫, 吉岡 良造, 藤木 明, 楠崎 滋, 東 茂樹
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_193-S2_196
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は81歳, 女性. 糖尿病性腎症による慢性腎不全のため週3回維持透析を施行されていた. 無症候性心筋虚血に対する経皮的冠動脈形成術中に心室細動となった. 電気的除細動150Jにより洞調律に回復したが, 非持続性心室頻拍が出現したためnifekalant 0.2mg/kg/hrを開始した. QTの延長を認め投与量を漸減したが, 投与開始8時間後に心室細動が再発した. Nifekalant投与を中止しamiodarone静注の急速·負荷·持続投与を行った. 静注amiodarone投与開始後は心室細動の再発を認めずamiodarone 100mgの経口投与に変更後にも再発を認めていない.
  • 飯嶋 賢一, 池主 雅臣, 長谷川 奏恵, 八木原 伸江, 佐藤 光希, 和泉 大輔, 渡部 裕, 古嶋 博司, 相澤 義房
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_197
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    症例: 49歳, 男性. 嘔気を主訴に救急外来受診中に心室細動(VF)をきたした. 心電図では下壁·側壁誘導にJ波を認めたがST-T部分に異常は見られず, 心エコーも正常であった. 入院後も繰り返しVFを生じ, 除細動通電不応性に陥った. 静脈麻酔下に人工呼吸管理としたがVFは抑制されなかった. β遮断薬(ランジオロール)は無効であったが, イソプロテレノール静注でJ波の減高とともにVFが抑制され, J波関連特発性VFと考えた. 回復後のコントロール状態のプログラム刺激でVFが誘発されたが, キニジン内服後は, 側壁誘導のJ波が減高して有効不応期が20ms延長し, VFも誘発されなくなった. 植込み型除細動器(ICD)の除細動試験で誘発されたVFは, コントロール(閾値25J, 周波数6.8Hz), イソプロテレノール点滴中(10J, 6.4Hz), キニジン内服中(10J, 5.2Hz)であった.
  • —日本陸連医事委員会の取り組み
    真鍋 知宏, 山澤 文裕
    原稿種別: 第23回 心臓性急死研究会
    2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_198-S2_203
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/05
    ジャーナル フリー
    日本国内では, 1年間に2,000以上の市民マラソン· ロードレースが開催されている. 日頃のランニングやジョギングの成果を発揮しようとして, 全国各地で行われる市民マラソン大会には多くの参加者が集まっている. 市民ランナーに対するメディカルチェックは, 現時点においては十分に行われておらず, 走行中に心肺停止を生じることも稀ではない. また, 救護体制は主催者によってまちまちであり, AEDが適切に配備されたロードレースにおいては, 心肺停止者が救命される事例をマスコミ報道などで知ることができる. 一方で公表されない死亡事例も存在しており, その情報を入手するのも容易ではない. ある程度は, マスコミ報道からの情報収集が可能であるが, 病状などの詳細についてはデータとしてまとめられることはなかった. ロードレース中の安全を確保する観点からは, 個別の事例を検討して, 今後の予防に対して活用することが重要である. 日本陸上競技連盟医事委員会では, 陸連, 地方陸上競技協会が主催, 主管しているロードレースにおいて, その救護体制と傷病者数を把握するシステムを構築しようとしている. 現状と今後の課題について報告する.
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