心臓
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44 巻, 2 号
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Open HEART
HEART’s selection (日本人のステント血栓症)
HEART’s Original
臨床研究
  • CKD原疾患別降圧度と腎保護作用の分析
    堀越 哲, 井尾 浩章, 中田 純一郎, 大澤 勲, 濱田 千江子, 富野 康日己
    原稿種別: HEART’s Original
    2012 年 44 巻 2 号 p. 123-130
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的: レニン·アンジオテンシン(renin-angiotensin; RA)系阻害薬オルメサルタンの降圧度と腎保護効果の関係について検討した.
    方法: 2004年から2009年の間に順天堂大学医学部附属順天堂医院腎·高血圧内科外来通院加療中で, 12カ月以上, オルメサルタンが継続投与され, 降圧薬処方内容, 量の変更がなく, 診察時血圧, 推定糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate; eGFR)·蛋白尿測定が定期的に行われていた患者109名を対象とし, 投薬背景や原疾患別にカルテベースで分析した.
    結果: すべての群で有意な降圧効果を認めた. 新規にオルメサルタンの単独投与が開始されたA群では, 有意な蛋白尿減少効果を認めたが, eGFRは低下傾向を示した. RA系阻害薬以外の降圧薬投与中にオルメサルタンが追加されたB群では, eGFRの低下は認めなかったが, 蛋白尿減少効果もみられなかった. ほかのRA系阻害薬の単独投与からオルメサルタンに切り替えられたC群では, 切り替え時の血圧が比較的低く, 蛋白尿減少効果は軽度で有意差を認めなかった. RA系阻害薬を含む降圧薬の多剤併用中にアンジオテンシンII受容体遮断薬(angiotensin II receptor blocker; ARB)がオルメサルタンに切り替えられたD群では, オルメサルタン投与量が最も多く, 蛋白尿減少効果は軽度でeGFRが有意に低下していた. 原疾患別にみると, 本態性高血圧蛋白尿陽性群で降圧度とeGFRの間に有意な相関がみられた. 本態性高血圧蛋白尿陰性群では, 蛋白尿陽性群に比して投与開始前のeGFRが高く, 投与後の有意なeGFR低下はみられなかった. 一方, 慢性腎炎症候群では, 12カ月後の降圧度と蛋白尿減少率およびeGFRとの間に相関はみられなかった.
    考察: オルメサルタンには, より強力な降圧効果と降圧効果に依存しない蛋白尿減少効果が認められたが, 一方でeGFRは低下した. オルメサルタンがeGFR低下速度を促進あるいは減速したのかは不明である. 原疾患や病態の違いにより, RA系の関与の質や量が異なることが示唆され, RA系阻害薬の投与にもその質·量の使い分けが求められていると思われる.
Editorial Comment
臨床研究
  • 宮城島 賢二, 平光 伸也, 木村 央, 森 一真, 石川 志保, 依田 竜二, 杉浦 厚司, 加藤 靖周, 加藤 茂, 岩瀬 正嗣, 森本 ...
    原稿種別: HEART’s Original
    2012 年 44 巻 2 号 p. 132-139
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    背景: 慢性心不全に対するβ1選択性β遮断薬ビソプロロールの有用性は, 複数の無作為化対照比較試験(randomized controlled trial; RCT) によって確立されているが, 国内での臨床使用および臨床成績に関する報告は少ない.
    目的: 日本人の慢性心不全患者に対するビソプロロールの血行動態ならびに心機能に及ぼす影響について検討する.
    方法: 左室駆出分画率(left ventricular ejection fraction; LVEF)40%以下の慢性心不全患者25例に対して, 0.625mgより投与開始し, 1~2週間ごとに漸増し, 24週間追跡した. New York Heart Association(NYHA)心機能分類, 血圧, 心拍数, 血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide; BNP), 心エコー図検査所見, 胸部X線, 腎機能マーカー, 血中ヘモグロビン(hemoglobin; Hb)濃度の経時的変化を解析した.
    結果: 全例に対してビソプロロールの導入が可能であった. 経過観察中に3例が本研究から脱落した. 継続投与が可能であった22例では, LVEFをはじめとした心エコー図検査所見ならびにBNP値は, 経時的に改善傾向を示し, NYHA心機能分類も投与前後で改善が認められた. なお, 腎機能マーカーおよび血中Hb濃度は有意な変動を示さなかった.
    結論: ビソプロロールは, 日本人の収縮機能が低下した慢性心不全患者において, 高い忍容性を示し, 血行動態および心機能を改善することが確認された.
Editorial Comment
臨床研究
  • 森岡 広嗣, 西村 和修, 榊原 裕, 黒川 俊嗣
    原稿種別: HEART’s Original
    2012 年 44 巻 2 号 p. 142-150
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的: 高齢化社会に伴い高齢者の手術適応患者も増加している. 今回, 80歳以上の超高齢者弁膜症手術の当施設での手術適応方針の妥当性について検討した.
    方法: 2006年10月~2010年7月に行われた全弁膜症手術174例中75~79歳37例をC群, 80歳以上27例をO群とし, 早期·遠隔期成績およびADL変化について比較検討した.
    術式は単弁手術として, 大動脈弁置換術, C群/O群(以下この順で示す): 24例/18例, 僧帽弁置換術/形成術, 4例/2例, 三尖弁形成術, 0例/1例, 2弁手術, 9例/6例, 3弁手術, 0例/1例, ほか合併手術が行われた.
    結果: 在院死亡はC群/O群(以下この順で示す): 0例/2例(肺炎1, 多臓器不全1)であった. 挿管時間20.7±26.0時間/24.6±42.4時間, ICU滞在日数3.5±2.0日/4.7±6.9日, 在院日数24.0±11.5日/31.0±20.6日と両群間で有意差は認めらなかった. NYHA(New York Heart Association)分類は術前2.4±0.8/2.5±0.7と比較し, 術後は1.2±0.5/1.2±0.4, 退院後1.4±0.6/1.3±0.5と両群ともに改善がみられた. 平均follow up期間は549.0日であった. 術後3年生存率は84.3%/88.4%で両群間に有意差はみられなかった. また, 生存患者のADLは良好であった.
    結語: 80歳以上の超高齢者でも術前状態を詳細に検討すれば, 80歳未満の高齢者と遜色なく手術を行い得ると考えられ, 当科の手術方針は妥当と考えられた.
症例
  • 門口 倫子, 清水 雅俊, 今西 純一, 高野 貴継, 正井 博之, 三輪 陽一, 陰下 敏昭
    原稿種別: HEART’s Original
    2012 年 44 巻 2 号 p. 151-156
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は42歳, 男性. 幼少時から肥満であった. 2年前に閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea; OSA) を指摘され, 持続陽圧呼吸療法が導入されたが自己中断していた. うっ血性心不全をきたしたため, 紹介入院した際には体重116kg, BMI 39.2と高度肥満であり, 心エコー図では左室腔の拡大とび漫性壁運動低下といった拡張型心筋症を呈していた. 終夜睡眠ポリグラフではチェーン·ストークス呼吸を伴う中枢性睡眠時無呼吸(Cheyne-Stokes respiration with central sleep apnea; CSR/CSA)が出現していた. 心不全治療および減量に伴って次第に心不全症状は軽快し, ポリソムノグラフィで中枢性無呼吸は消失し, 代わって再びOSAを呈していた. OSAに対して持続陽圧呼吸療法が再開され, 心収縮の改善が確認された. 本例は心不全の増悪, 改善に呼応して睡眠呼吸障害パターンが変化し, 睡眠呼吸障害の治療も心不全改善に寄与するという, 両者の密接な関連が示唆される興味深い1例であった.
Editorial Comment
Editorial Comment
症例
  • 和田 英樹, 川田 貴之, 小西 博応, 大村 寛敏, 鈴木 宏昌, 代田 浩之
    原稿種別: HEART’s Original
    2012 年 44 巻 2 号 p. 161-164
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    本邦においては, アミオダロンの副作用として末梢神経障害が生じたとの報告はない. 今回, アミオダロンが原因と考えられる末梢神経障害をきたした拡張型心筋症の1例を報告する. 症例は拡張型心筋症のため当院にて加療されていた62歳, 男性. 度重なる持続性心室頻拍に対してアミオダロンの内服を継続していたが, 歩行のふらつきや起立困難が出現するようになったため, 入院し神経学的精査を行ったところ, 末梢神経障害と判明した. アミオダロンによる副作用の可能性が考えられたため, 神経生体検査を行ったところ電子顕微鏡にて神経周囲に封入体を認めた. アミオダロンの末梢神経障害の所見と一致したため, アミオダロンによる末梢神経障害と診断した. そのため, アミオダロンの内服を中止し, 現在, 外来にて経過観察中である.
症例
  • 吉崎 徹, 健 梅谷, 高橋 宗一郎, 中村 政彦, 瀬戸 俊邦, 相沢 一徳
    原稿種別: HEART’s Original
    2012 年 44 巻 2 号 p. 165-171
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は, 58歳, 男性. 他院にて2008年8月, 左冠動脈主幹部(left main trunk; LMT)から左前下行枝(left anterior descending artery; LAD)近位部にTAXUS 3.5×12mmを, LAD遠位部にTAXUS 2.5×24mmを留置. 2009年3月, 再度LMT入口部からLAD近位部にTAXUS 3.5×16mmを留置されている. 2010年5月上旬, 痔の手術のため抗血小板薬2剤(アスピリン, クロピドグレル)の内服中止を指示された. 内服中止後9日目に急性心筋梗塞を発症し当院緊急搬送. 来院時ショック状態で大動脈バルーンパンピング挿入後, 緊急冠動脈造影検査(coronary angio-graphy; CAG)施行. LMTステント内に血栓閉塞を認め, 経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention; PCI)を行った. 術後peak CK 11,229 IU/L(CK-MB 736.2 IU/L)まで上昇したが経過良好で, 退院前CAGでは冠動脈に血栓残存なく第21病日歩行退院となった. 抗血小板薬の中断がステント血栓症の原因と考えられ, 本症例のようなハイリスク症例では安易な抗血小板薬の中断は非常に危険であった.
症例
  • 馬渡 耕史, 大野 朗, 徳田 潔, 春田 弘昭, 中野 治
    原稿種別: HEART’s Original
    2012 年 44 巻 2 号 p. 172-181
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    肺血栓塞栓症は, 診断手順の確立により日本においても広く認識されるようになり, 向精神薬服用者で静脈血栓や肺塞栓症の合併が多いことも報告されている. そのほとんどは急性肺血栓塞栓症といわれているが, 慢性の場合は長い経過と非特異的な症状のせいもあって多くは見逃されている可能性がある. 今回, われわれは, 向精神薬の長期にわたる服用歴を持ち, 肺血栓塞栓症を合併した症例5例を経験したので報告する. 男性2例, 女性3例, 年齢は39~67歳で, 向精神薬の内服期間は4~25年であった. 1例は急性発症で起立時に急にショック状態となり心肺停止にいたっている. 残り4例は数カ月から数年にわたる息切れや呼吸困難で慢性の反復性の病型であったが, 長期の臥床や悪性腫瘍などの誘因となるものはなかった. 胸部X線写真では, 全例肺動脈の拡大を認め, 心電図は4例で右室負荷所見を認めた. 心エコードプラ, または右心カテーテル検査による肺動脈圧は急性発症の1例を除いて収縮期圧が72~128mmHgで著しく高値であった. 下肢から下大静脈にかけての静脈エコーでは5例とも血栓を認めなかった. 全例下大静脈フィルターは使用せず, 抗凝固療法のみを行い, 肺動脈圧の低下をみた. 心肺停止後の蘇生例は歩いての退院となったが, 入院中の急変で1例を失った. 向精神薬内服中の患者が, 呼吸困難や息切れを訴えた場合は, 肺血栓塞栓症の鑑別が必要である.
症例
  • 川島 理, 青野 豪, 阿部 秀樹, 上村 直, 密岡 幹夫, 柳沼 厳弥, 神部 裕美
    原稿種別: HEART’s Original
    2012 年 44 巻 2 号 p. 182-189
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は, 58歳, 男性. 2010年7月中旬に胸痛が持続するため, 当院紹介受診となる. 緊急冠動脈造影を施行したところ左前下行枝(#7)90%狭窄を認めたため, そのまま冠動脈インターベンションを施行した. ステント留置(Xience VTM)後より造影遅延となり, ステントストラットからのプラークの逸脱を認めた. ニコランジルの冠動脈内投与後, 大動脈内バルーン·パンピング(intra aortic balloon pumping; IABP)を挿入して終了した. 翌朝, 胸痛が増強したため, 再度冠動脈造影を施行したところ, ステント内プラーク逸脱の増量を認めた. バルーンにて再三圧排するも拡張不十分のため, Xience VTMよりもストラットが密なCypherTMを追加留置. 良好な拡張を得て終了した. 第3病日にIABPを離脱し, 順調に経過していたが第9病日朝, 冷汗を伴う胸痛があり緊急造影施行. 左前下行枝ステント内で血栓性閉塞を認めた. 血栓を吸引後, バルーンで高圧拡張しDriverTMを留置した. IABPを挿入後, 持続静脈内投与をヘパリンナトリウムからアルガトロバンに変更し, 内服薬はアスピリン, クロピドグレルにシロスタゾールを追加した. 第11病日にIABPから離脱した. 第18病日午前に再度胸痛を認めたため, 緊急造影したところステント内亜急性再閉塞を認めた. バルーンでステント内を高圧拡張しIABPを挿入した. その直後にも胸痛を認め再造影したところ再度血栓性閉塞となっており, 再バルーンニング施行. 提携病院に転院のうえ, 第20病日に準緊急1枝バイパス手術(左前下行枝—左内胸動脈)を施行した.
症例
  • 中尾 佳永, 外山 英志, 古屋 秀和, 新谷 恒弘, 三岡 博, 東 茂樹
    原稿種別: HEART’s Original
    2012 年 44 巻 2 号 p. 190-193
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    現在, 日本では慢性腎不全患者に対する治療として, 血液透析を主とする透析治療が大半を占め, その患者数は年々増加している. 血液透析時バスキュラーアクセス(vascular access; VA)を必要とするが, シャントトラブルとして静脈の還流障害によって静脈高血圧症を併発することがあり, その原因は, 一時的カテーテルなどの留置の既往による中心静脈の狭窄や閉塞があげられる. また, 透析治療の長期化や患者の多様化に伴い, ペースメーカー植え込み患者に遭遇することもある. リードで鎖骨下静脈などの中心静脈が閉塞や狭窄している可能性が高い. 内シャント作成前に中心静脈の評価を行うことが重要で, その手段として静脈造影法が有用である. 今回, 76歳, 男性で左鎖骨下静脈よりリードを挿入され, 右肩前方に手術創がある患者に内シャントを作成することになった. 透析導入前で腎機能への影響がない陰性造影剤である炭酸ガスを使用した静脈造影で内シャント作成部位の検討および中枢静脈に病変がないことを確認した. 前腕中央に自家静脈を使用したVAを作成した. 内シャント作成18日目にVAを使用して透析を開始し, 退院した. 中枢静脈の狭窄の有無を確認するためには, 静脈造影が必要である. しかし, 高度腎機能障害者はヨード造影剤が絶対禁忌で, その代用物として陰性造影剤が比較的安全に使用でき, また, VA作成には十分な静脈の評価ができた.
Editorial Comment
症例
  • 磯貝 俊明, 川辺 正之, 永田 健一郎, 岡山 大, 金子 雅史, 古堅 あずさ, 久保 良一, 田中 博之, 上田 哲郎, 野中 隆広, ...
    原稿種別: HEART’s Original
    2012 年 44 巻 2 号 p. 196-201
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は, 71歳, 女性. 突然の胸痛を自覚し, 当院に救急搬送された. 血圧97/67mmHg, 脈拍61/分. 急性心筋梗塞を疑って心臓カテーテル検査の準備中, 血圧が低下し, 心エコーで心嚢液を認めたため, 急性心筋梗塞に心破裂を合併したと考えた. しかし, 冠動脈造影上, 鈍角枝以外に有意狭窄はなく, 左室造影では心尖部を中心として広範囲に無収縮で, 心基部が過収縮であった. 心タンポナーデに対して, 緊急開胸手術にて心嚢内血腫除去と左室破裂部修復を行った. 術後, 慢性期には左室収縮はほぼ正常化し, 心筋シンチグラムおよび心臓MRIで心筋梗塞を示唆する所見も認めなかった. 本症例は, 左室の壁運動異常と冠動脈の有意狭窄部位の左室灌流領域が一致せず, 慢性期には壁運動がほぼ正常化して梗塞所見を認めなかったことから, たこつぼ心筋症に心破裂を合併したと診断した. たこつぼ心筋症は, 通常予後が良好で, 心破裂を合併することは稀である. しかし, たこつぼ心筋症も, 心破裂を合併する疾患の1つとして念頭に置き, 診療にあたることが重要である.
Editorial Comment
Editorial Comment
研究会(第45回 河口湖心臓討論会)
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