症例: 57歳, 女性.
経過: 2008年9月ごろより労作時の胸部圧迫感を認めたため, 冠動脈造影を施行. 精査の結果, 左前下行枝(left anterior descending artery; LAD近位部と, 左回旋枝(left circumflex artery; LCxを含む3枝病変と診断され, 冠動脈バイパス手術(coronary artery bypass grafting; CABG) (RITA to LAD, SVG to OM)を施行された. 4カ月後の確認造影でRITAの閉塞を認め, 冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention; PCI)を施行することとなった. LAD, LCxの入口部病変は, LMTから続くtrue bifurcationにてmini-crush stentingの方針とし, LMT-LCxに対しeverolimus eluting stent(EES)を留置, ステント近位部をcrushした. 引き続きLMT-LADにかけてEESを留置し, kissing balloon technique(KBT)を行って手技を終了とした. 術後の経過は良好であったが, PCI後3カ月で施行した確認造影で, LMTにperi-stent contrast staining(PSS)を認めた. 術後8カ月で再度確認造影を行ったところ, PSSの所見は改善を認めた.
考察: Late acquired stent malappositionの発生はステント血栓症の危険因子となり得る可能性が示唆されており, 造影上PSSの所見を呈するケースが多い. 本症例においては, 薬剤そのものの影響だけではなく, KBTを含めたバルーンによる過拡張により血管支持組織である中膜平滑筋か, あるいは外膜への直接的な障害の影響も, その誘因として推測される. 今後, 遅発性ステント血栓症の発症に注意が必要と考えられた.
結語: LMT分岐部病変に対しEESによるmini crush stenting後, 短期間にPSSを認め, その後, 改善を認めた1例を経験した. これまでEES留置症例のPSSの報告はなく, 示唆に富む症例と考え報告する.
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