心臓
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45 巻, 1 号
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Open HEART
HEART’s Selection (重症下肢虚血(CLI)に対する治療)
HEART’s Original
臨床研究
  • 坂本 吉正, 儀武 路雄, 松村 洋高, 山城 理仁, 山本祐介 祐介, 田中 圭, 橋本 和弘
    2013 年 45 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル フリー
    日本は2007年に超高齢社会に突入し,高齢者心臓大血管手術も増加傾向にある.80歳以上の心臓大血管手術のリスク評価と手術成績を検討し,その妥当性と問題点について考察した.対象は2002年4月〜2010年12月に80歳以上で手術を施行した53例,年齢は82.1±1.9歳,冠動脈バイパス術28例,大動脈弁置換術17例,胸部大動脈瘤2例,その他6例.緊急または準緊急手術は9例(17%).予測死亡率はJapan score:5.2±8.4%,EuroSCOREII:7.1±6.2%,STS score:4.7±3.2%で実際の手術死亡は5.7%(3例)であった.術後入院期間は27±22日,合併症を9例(17%)に認め呼吸不全が5例(9.4%)と最も多かった.術後観察期間は30.3±26.4カ月で遠隔死亡は6例(11.3%),5年生存率は75.5±7.7%と良好,40人(75%)が外来通院中で最高齢は94歳であった.Japan score は超高齢者においても信頼できるリスク評価法であった.現状では重症例が比較的少なく早期診断,外科治療による中期成績は良好であった.今後,重症超高齢患者の増加が予想され外科,内科医の連携をより緊密にし,統合的な病態把握と早期診断に基づく待機的手術が積極的に選択できる環境をさらに整備してゆく必要がある.
Editorial Comment
症例
  • ─アルコール量と臓器障害の関連性
    寺柿 政和, 河野 仁美, 井上 圭右, 崔 吉永, 稲荷場 ひろみ, 川村 千佳, 岡村 幹夫
    2013 年 45 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル フリー
    アルコールは心臓や肝臓を含むさまざまな臓器に影響を及ぼす.アルコール性心筋症(alcoholic cardiomyopathy;ACM)は特発性心筋症に類似して左室壁運動低下や左室拡大を示すが,大酒歴があることで区別される.断酒で心機能は改善し,再飲酒で悪化するといわれるが,量を減らして飲み続けた場合の長期予後は明らかではない.また,肝障害との合併についても一定の見解はない.今回われわれは,時期を違えて顕性のACMとアルコール性肝硬変を認めた症例を経験した.患者は,51歳時にACMと診断され,断酒により心機能は改善した.その後,以前の約半量のアルコールを再び飲み始めて15年以上を経て肝硬変をきたしたが,この間にはACMは再燃しなかった.飲酒量が臨床的にACMか肝硬変かを規定する一因になったと推測され,興味深い症例と考えられた.
症例
  • 坪井 宏樹, 伊藤 一貴, 井出雄一郎 雄一郎, 長尾 強志
    2013 年 45 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の女性で,主訴は安静時の胸部圧迫感であった.2008年10月に施行した冠動脈造影では左右冠動脈に狭窄病変は認められなかった.しかし,右冠動脈後下行枝に孤立性の冠動脈瘤が認められ,その径は3.8×3.0mmであった.外科的治療やカテーテル治療を希望されなかったため,降圧療法を厳格に行い経過観察した.しかし,2009年9月の冠動脈造影では4.6×3.3mm,2011年6月には5.4×4.3mmに増大した.このため,カテーテルによるコイル塞栓術を施行した.5本のコイルを使用することにより冠動脈瘤は閉塞した.術中および術後も不整脈などの合併症はなく,心筋逸脱酵素値の上昇は軽度であった.冠動脈末梢の孤立性冠動脈瘤におけるコイル塞栓術の有用性が示唆された.
症例
  • 足立 淳郎, 酒井 千恵子, 角谷 慶人, 松永 晋作, 阪本 貴, 西尾 学
    2013 年 45 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル フリー
    症例は,29歳,男性.冠危険因子は喫煙,高血圧,脂質異常症.既往歴家族歴に特記事項なし.2011年3月上旬,自動車内で気分不良が出現し,その後心肺停止となった.By-standerによる心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation;CPR)を実施されつつ救急要請された.救急隊実施のモニター波形は心室細動(ventricular fibrillation;VF)で直ちにAED実施され搬送された.蘇生後の心電図上,V1〜6に著明なST上昇が認められたため,急性心筋梗塞(acute myocardial infarction;AMI)を疑い,輸液,ヘパリン投与,ニトロ製剤点滴などを実施しながら緊急冠動脈造影(coronary angiography;CAG)を実施した.LAD seg.6に99%狭窄を認めたが,硝酸薬冠注にて狭窄が解除されたため,冠攣縮性狭心症(vasospastic angina;VSA)と診断した.心肺停止発生時の初期調律がVFであったことと,心肺停止蘇生後の意識レベル低下の遷延していることで低体温療法の適応と判断した.Arctic Sunによる軽度低体温療法を実施し後遺症なく完全社会復帰に成功した.当院でのArctic Sunによる軽度低体温療法の経験について若干の文献的考察を含め報告する.
症例
  • 古川 博史, 青野 準, 寒川 昌信
    2013 年 45 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル フリー
    高血圧性心不全を伴う高度石灰化異型大動脈縮窄症に対して,下肢血流改善および心負荷軽減のために非解剖学的バイパス術を行った1例を経験した.症例は65歳,女性.約10年来高血圧で近医にて投薬加療中であったが,コントロール不良であった.2010年4 月,起座呼吸と呼吸困難で救急搬送され,来院時血圧187/51mmHgの高血圧を認めた.胸部X線上両側肺うっ血とBNP 324.8pg/mLの高値を認め,高血圧性心不全と診断された.CT検査上,上行大動脈~弓部大動脈およびその分枝~下行大動脈~腹部大動脈~両側腸骨動脈まで全周性の高度石灰化を認め,さらに腎動脈直下腹部大動脈に高度狭窄を認めた.足関節上腕血圧比(ankle brachial index;ABI)検査では右0.60,左0.48と下肢血流は高度に低下していた.左腋窩動脈−両側大腿動脈バイパス術による非解剖学的バイパス術を行った.術後経過は良好で,造影CTにて人工血管は良好に開存しており,ABIは右0.95,左0.91と下肢血流の改善を認めた.心不全の再発なく臨床症状の改善を認め,BNPも96.4pg/mLまで低下し,降圧薬の投与なく血圧コントロール良好で退院した.高血圧性心不全を呈した高度石灰化異型大動脈縮窄症に対して腋窩動脈−両側大腿動脈バイパス術を行い,下肢血流改善と心負荷軽減を得ることができ良好な結果が得られた.
症例
  • 近藤 正輝, 福田 浩二, 若山 裕司, 中野 誠, 川名 暁子, 長谷部 雄飛, Mohamed A Shafee, 下川 宏明
    2013 年 45 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,女性.2011年3月,東日本大震災後より動悸を自覚し前医受診.心拍数180台の上室性頻脈,うっ血性心不全の状態を認めた.心拍数コントロール施行も奏功せず,electrical cardioversionを施行され当科転院となった.転院後頻脈の再発はなく,β遮断薬などの内服加療により心不全は改善,左室駆出率40%であった心収縮能も正常化し明らかな心基礎疾患は同定されなかった.退院後,頻脈の再発を認めカテーテルアブレーションを施行した.右房内に広範囲な低電位領域が存在,頻脈は右房分界稜を旋回する非通常型心房粗動であり,分界稜の下側壁側に認めたfragment電位への通電で治療に成功した.術後洞調律を維持したが,左脚前枝ブロックが残存した.また経過中クレアチンフォスフォキナーゼ(creatine phospho kinase;CPK)の持続高値を認め,骨格筋生検施行.肢体型筋ジストロフィと診断された.本症において上室性頻拍を初発症状とする報告は稀であるが,不整脈基質と関連した可能性が高く,心機能の推移を含め慎重なフォローが必要である.
症例
  • 川島 理, 槇田 俊生, 阿部 秀樹, 井上 晃男
    2013 年 45 巻 1 号 p. 68-71
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル フリー
    症例:77歳,男性.1997年3月に急性心筋梗塞を発症し,左前下行枝#7にベアメタルステント(bare metal stent;BMS)を留置している.その後,内服薬を自己中断していた.2010年10月,冷汗を伴う胸痛を自覚し摂食不良となった.翌々日に喘鳴,呼吸苦が出現し当院に救急入院,来院時の収縮期血圧が70 mmHgと心原性ショック状態で,心電図でⅡ,Ⅲ,aVF,V2〜6にてST上昇がみられた.緊急冠動脈造影にて右冠動脈#3で完全閉塞,左前下行枝#7 ステント内で血栓性閉塞,#6で99 %の狭窄を認めた.責任病変を#7と診断し大動脈内バルーンパンピングを挿入し経皮的冠動脈インターベンション術に移行した.血栓溶解療法(tissue plasminogen activator;t-PA)を冠動脈内に投与し,血栓吸引後,#6〜#7に薬剤溶出ステント(drug eluting stent;DES)を挿入し血行再建を得られるも心室細動を繰り返した.電気的除細動を繰り返し,懸命に蘇生を図るも反応なく永眠した.BMS留置13年後においてもステント血栓症が生じることに留意する必要があると思われる.
Editorial Comment
症例
  • 田ノ上 禎久, 肥後 太基, 山村 健一郎, 原 寿郎, 砂川 賢二, 富永 隆治
    2013 年 45 巻 1 号 p. 74-78
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル フリー
    これまで九州大学病院ハートセンターにおいて,6例の心臓移植を施行し,6例の渡航移植(ピッツバーグ大学1例,コロンビア大学2例,ロマリンダ大学1例,バドユーンハウゼン心臓病センター2例)を経験した.現在,最近移植された1例がリハビリ中,渡航移植の1例が移植後4年目に拒絶反応で死亡した.ほか10例が外来通院中である.2011年春まで,本邦で唯一長期使用が可能であった体外設置型のニプロ補助人工心臓は22例経験し,現在,1例の患者が体外設置型のニプロ補助人工心臓装着状態でハートセンター入院中であり,1例の患者が植込型補助人工心臓に移行,1例の患者が他施設で装着され入院待機中である.新規臨床導入の植込型補助人工心臓に関しては,8例の患者が装着され,1例が心臓移植を終了し,5例が外来通院をしながら移植待機中で,2例が在宅復帰プログラム進行中である.全例,日本臓器移植ネットワークの登録後に装着している.合併症に関しては4例にドライブライン挿入部皮膚の感染を認めたが,いずれも一時的な抗生物質の投与で対処可能であった.また,1例に血栓塞栓症による脳神経症状を併発したが,後遺症なく回復した.心臓移植を受けた症例に関しては,移植直前まで就労しており,入院したままの体外設置型ニプロ補助人工心臓装着症例と比べて著しく術後の回復が良好であった.
症例
  • 森澤 太一郎, 小谷 英太郎, 神谷 仁孝, 宮地 秀樹, 渋井 俊之, 吉川 雅智, 中込 明裕, 草間 芳樹, 新 博次, 梅澤 まり子 ...
    2013 年 45 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎に合併する動静脈血栓症・塞栓症は,頻度は少ないが生命予後にかかわる重要な合併症の1つである.今回,われわれは潰瘍性大腸炎に合併した深部静脈血栓症および肺動脈血栓症に対し,抗凝固療法,血栓溶解療法にて出血合併症なく治療し得た2症例を経験したので報告する.症例1:44歳,男性.30歳より潰瘍性大腸炎全大腸炎型に対しサラゾスルファピリジン,メサラジンで加療中,寛解状態であったが深部静脈血栓症,肺動脈血栓症を発症.ヘパリンによる抗凝固療法,ウロキナーゼによる血栓溶解療法にて症状は改善し,ワルファリン療法に移行した.症例2:26歳,女性.頻回の下痢と血便が出現し,大腸内視鏡検査にて潰瘍性大腸炎全大腸炎型・重症型と診断.メサラジン,プレドニゾロンによる治療を開始.経過中,右鼠径部から中心静脈カテーテル挿入後に深部静脈血栓を認めた.ヘパリンとワルファリンによる抗凝固療法により血栓は消失し,ワルファリン中止後再発を認めていない.潰瘍性大腸炎はメサラジンの内服にて寛解状態を維持している.炎症性腸疾患に伴う血栓症は,発症機序に不明な点が多く,原疾患に起因する出血を危惧して抗凝固療法,血栓溶解療法が躊躇される例も多い.しかし,炎症性腸疾患では血栓症の合併による死亡率が高いため,常に血栓症の存在に留意し,血栓症を発症した場合には出血のリスクを考慮したうえで,積極的な抗凝固療法,血栓溶解療法を迅速に行うことが重要と考える.
Editorial Comment
症例
  • 田中 愛子, 伊藤 賀敏, 鶴岡 歩, 波多野 麻衣, 吉永 雄一, 重光 胤明, 澤野 宏隆, 一柳 裕司, 西野 正人, 林 靖之, 甲 ...
    2013 年 45 巻 1 号 p. 88-92
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル フリー
    近年,心臓震盪は子どもが突然死する原因の1つとして徐々に認識されてきた.輿水らの報告では,心臓震盪は胸郭のコンプライアンスが大きい若年者に多く,Maronらの報告や国内例ともに18歳以下に多くみられる.当施設では最近3年間で3例の心臓震盪を経験した.症例1:41歳,男性.日本拳法練習中に胸部打撲を受け,心肺停止となった.初期波形は心室細動(ventricular fibrillation;VF)であり,電気的除細動を含む蘇生処置を施行された.心肺停止17分後に心拍再開し,当施設に救急搬送された.搬送後も意識障害が遷延したため,脳低温療法を施行し,社会復帰を果たした.症例2:18歳,男性.フットサルの練習中,ボールを前胸部でトラップした際に倒れ,心肺停止となった.初期波形はVFであり,電気的除細動を含む蘇生処置された.心肺停止6分後に心拍再開し,社会復帰した.症例3:27歳,男性.柔道の試合中,相手ともつれ合い倒れて,心肺停止となった.初期波形はVFであり,電気的除細動を含む蘇生処置にて,心肺停止8分後に心拍再開し,社会復帰した.院外心肺停止のうち,心室細動に対しては,早期の電気的除細動が良好な神経学的転帰と関連しているといわれている.上記3症例からも,特にスポーツを行う場には自動体外式除細動器(automated external defibrillator;AED)の普及が急務と考えられる.
Editorial Comment
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