心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
45 巻, 10 号
選択された号の論文の27件中1~27を表示しています
Open HEART
HEART’s Selection(心臓核医学の最新動向)
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 小鷹 悠二, 小幡 篤, 渡部 潔, 渋谷 清貴, 佐々木 伸也, 濱田 一路, 越川 智康, 望田 幸
    2013 年 45 巻 10 号 p. 1234-1238
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/28
    ジャーナル フリー
    はじめに : 近年の報告によれば, 感染性心内膜炎は有病率だけでなく, 治療成績も変化が少ないとされている. 治療デバイス使用の増加, 原因の複雑化に伴う症例の難治化, 原因微生物の変化なども原因と考えられる. 地域医療支援病院として機能する当院において, 10年間の症例を解析し, 本地域の傾向を評価した. 対象 : 期間は2002年4 月~2012年8 月までの約10年間とし, 当院で診断, 加療した29症例を対象とした. 結果 : 症例は22~99歳に分布しており, 平均年齢は68±20歳, 70代以上が約60%と, 高齢者の割合が多かった. 基礎疾患や初発症状などは文献的な報告と同程度だったが, 低ADL (activities of daily living) 患者が約30%程度を占めた. 全体の死亡率が38%と, 文献的な報告に比べると高く, 特に70歳以上では59%と高率であった. 起炎菌としては, MSSA (methicillin-sensitive staphylococcus aureus) の頻度が最も多く, これまでの本邦報告よりも欧米での報告に近いものであった. 考察 : 起炎菌が黄色ブドウ球菌優位に変化してきていることが裏づけられた. 当院での罹患患者は高齢者が多く, 特にこれまで報告が少なかった70歳以上の患者, 低ADL患者が多くを占めることが特徴的であった. 70代以上, 低ADL患者では文献的な報告よりも高い死亡率であった. 原因精査がされにくい超高齢者や低ADL患者の中にも相当数の感染性心内膜炎患者がいると推測される. 超高齢者や低ADL患者においても, 熱源精査として本疾患を考えることの必要性が示唆される結果であった.
Editorial Comment
症例
  • 馬塲 里英, 小杉 理恵, 前川 恵美, 馬場 彰泰, 島田 恵, 高橋 路子, 赤石 誠
    2013 年 45 巻 10 号 p. 1242-1246
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/28
    ジャーナル フリー
     われわれは虚血性心疾患と鑑別を要する心電図変化を認め, 精査にて特徴的な心電図の観察を行い, 心筋虚血を否定し得た症例を経験したので報告する. 症例は35歳男性. 2011年春の健康診断で前胸部誘導V1~3の陰性T波を指摘され, 心筋虚血の疑いで当院を受診した. 胸痛はなく, リスクファクターは喫煙のみであった. 2カ月後の外来で心電図はほぼ正常化していたが, 短期間で変化を生じているため, 心臓カテーテル検査を施行した. 冠動脈に有意狭窄は認めなかったが, 検査中に一過性左脚ブロックを認め, その後V1~3の陰性T波を認めることを繰り返し起こした. その際に胸痛は認めず, 冠動脈に狭窄もみられなかった. ホルター心電図では, RR間隔の平均値をとると, 左脚ブロック出現時ではおよそ913msec, 正常QRS波形時では1,032msecと, RR間隔に差が認められた. 心拍数の上昇に伴い, 左脚ブロックが出現することが確認された. このような現象は心拍数依存性脚ブロックとして知られている. また, 心内電極を用いたペースメーカ挿入後や一過性左脚ブロック後などに自己心拍のT波に異常をきたすことが知られておりcardiac memoryと呼ばれているが, 本症例の心電図変化は心拍数依存性左脚ブロック後のcardiac memoryによるものと診断した. 一見して虚血性心疾患と鑑別が難しい心電図変化を呈しても, 中には病的意義がないものもある. 両者の鑑別の方法はまだ不十分であるため, 状況に応じて精査を行う必要があると考えられた.
Editorial Comment
症例
  • 荒木 勉, 大江 康太郎
    2013 年 45 巻 10 号 p. 1249-1253
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/28
    ジャーナル フリー
     症例は56歳, 男性, 心疾患の既往なし. 1999年慢性腎不全で血液透析開始. 2009年関節リウマチと診断, 薬物治療の効果不十分で, 2010年 9月からTNF-α阻害薬アダリムマブ (40mg, 2週間に 1回) 開始. 以後関節症状は改善傾向を示したが, 約 4カ月後の2011年 1月心エコーで中等量の心膜液貯留を認めた. 約 1カ月後の 2月発熱, 胸部圧迫感にて入院, 心エコーで多量の心膜液貯留と心タンポナーデの所見を認めた. また抗核抗体陽性 (<40→ 320倍), 抗DNA抗体陽性 (2.5→6.5 IU/mL), 血清補体価低下 (30→6U/mL) を認め, アダリムマブの副作用であるループス様症候群に伴う心膜液貯留と診断した. 入院後心窩部からエコーガイド下に心膜穿刺を施行, 約1,200mLの浸出液を排除するとともにヒドロコルチゾンを投与した. 以後心膜液の再貯留なく経過し, プレドニゾロンとIL-6阻害薬の投与で 3月退院した. TNF-α阻害薬治療中の関節リウマチ患者では心膜液の出現に注意する必要がある.
症例
  • 伊藤 誠, 阿部 幸雄, 北 安紀子, 柚木 佳, 田中 千春, 水谷 一輝, 伊東 風童, 中川 英一郎, 小松 龍士, 土師 一夫, 成 ...
    2013 年 45 巻 10 号 p. 1254-1259
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/28
    ジャーナル フリー
     症例は, 61歳, 女性. 2, 3 週前から労作時呼吸困難を自覚し始め, 徐々に安静時呼吸困難も出現したため近医を受診した. 低酸素血症が認められたため, 呼吸不全の精査加療を目的として, 同日, 当院へ入院した. 高度の肺高血圧症が認められたため, 急性肺血栓塞栓症を疑い, 造影CT検査および肺血流シンチグラフィ検査を行ったが, 肺血栓塞栓症を示唆する所見は認められなかった. 肺高血圧症に対する治療薬の処方を順次追加したが, 呼吸状態は徐々に悪化し血行動態は不安定となった. そのため, 第8 病日にスワン・ガンツカテーテルを挿入して強心薬の投与を開始した. 乳癌の既往があることから, pulmonary tumor thrombotic microangiopathy (PTTM) を疑い, 肺動脈に楔入させたスワン・ガンツカテーテル先端から吸引した肺動脈血の細胞診を施行した. その結果, 腺癌が検出されPTTMと確定診断したが, 同日死亡した. 急速に出現した肺高血圧症を伴う呼吸不全の原因疾患には, 肺血栓塞栓症のほかPTTMがある. PTTMは生前診断が難しい疾患とされるが, 吸引肺動脈血の細胞診が有用である.
症例
  • 池田 智之, 牧山 武, 中尾 哲史, 椙本 晃, 宮澤 豪, 下司 徹, 中野 顕, 大橋 直弘, 綿貫 正人, 日村 好宏, 堀江 稔
    2013 年 45 巻 10 号 p. 1260-1265
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/28
    ジャーナル フリー
     50歳ごろより心房細動と高血圧を指摘されていた60歳の女性が, 完全房室ブロックによる徐脈となり, 2002年に永久ペースメーカ移植を行われた. その後, 約 2年間の経過で心機能が著明に低下し, 心不全悪化による入院を繰り返した. そのため, 2004年にペースメーカを両室ペーシング機能付き植込み型除細動器に変更したところ心機能は改善し, 心不全の悪化による入院を必要としなくなった. その後約 8年間の経過で心エコーでの左室拡張末期径は再拡大傾向であるが, 心不全症状の悪化や脳性ナトリウム利尿ペプチド (brain natriuretic peptide ; BNP) の再上昇は認めていない. 本症例は家族歴に房室ブロックと心不全を有するために遺伝性の心疾患の関与を疑い, 遺伝子解析を行ったところ, lamin A/C遺伝子 (LMNA) に異常を認めた. LMNAは, 核膜の裏打ち蛋白であるlamin A/Cをコードする. 本遺伝子異常により家族性に伝導障害, 拡張型心筋症様の心機能低下をきたす. 本疾患に対する伝導障害には両室ペーシングが有効であると報告されているが, その後の長期経過を観察し得た症例は貴重であり報告する.
Editorial Comment
Editorial Comment
症例
  • 長谷川 薫, 山家 実, 田渕 晴名, 河部 周子, 皆川 忠徳, 菊田 寿, 関口 祐子, 山中 多聞, 渡辺 卓, 中野 陽夫, 三浦 ...
    2013 年 45 巻 10 号 p. 1270-1274
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/28
    ジャーナル フリー
     症例は47歳, 女性. 生後 6カ月時に心室中隔欠損症と診断され, 以後, 他院で経過観察されていた. 44歳時に施行した経胸壁心臓超音波検査では右室内に乱流があり, 三尖弁逆流圧較差145mmHgを認め, 小さな心室中隔欠損に肺動脈弁下部または右室流出路狭窄が合併すると推測された. 47歳時に労作時息切れが出現したため, 経胸壁心臓超音波検査に加え心臓カテーテル検査を施行した. 心腔内酸素分圧測定結果および心室造影から, 心室中隔欠損による短絡は認めず, 肺動脈楔入圧 8 mmHg, 肺動脈圧28/8 mmHg, 右室流出路圧26/ 3 mmHg, 右室流入部圧163/0 mmHgと右室流出路の圧較差を認めた. 右室内圧較差, 右室造影所見より右室二腔症と診断した. 外科的治療の適応と判断し, 右室内の異常筋束の切除を行った. 術後経過は良好で, 経胸壁心臓超音波検査においても右心負荷所見は改善を認めた. 心室中隔欠損は自然閉鎖したが, 右室二腔症が進行し心不全を呈した成人例を提示した. 心室中隔欠損の経過中に高い右室圧と心雑音の増強を認めた場合, 本疾患概念を念頭において鑑別診断をすすめることが重要と考えられる.
Editorial Comment
Editorial Comment
症例
  • 飛田 良, 林 秀樹, 柴田 沙智子, 宗村 純平, 小澤 友哉, 前川 昭次, 堀江 稔
    2013 年 45 巻 10 号 p. 1279-1285
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/28
    ジャーナル フリー
     症例は, 13歳, 男子中学生. パソコンでゲームをしていた際に興奮し失神をきたし, 心肺停止状態に陥った. 救急隊到着後, 心室細動が確認され直流除細動が施行されて蘇生に成功した. しかし, 一時的に低酸素脳症となり後遺症として高次脳機能障害を呈したため, 日常生活活動 (activities of daily livings ; ADL) の遂行能力に障害を生じた. 致死性不整脈に対して薬物療法と植込み型除細動器を植え込んだ. 理学療法士と言語聴覚士を含めた包括的心臓リハビリテーションを施行し, 運動耐容能の向上に加えて, ADLを再獲得できた. 入院後約 3カ月で自宅退院ができ, 中学校への復学も成し遂げることができた. 入院中ないし退院後の 6カ月間において, 致死性不整脈の発生は認められなかった. また, 退院後の遺伝子解析の結果, リアノジン受容体遺伝子の異常が判明し, 本症例はカテコラミン誘発多形性心室頻拍と診断された.
症例
  • 影山 茂貴, 滝澤 明憲, 小野寺 知哉, 村田 耕一郎, 縄田 隆三, 竹内 亮輔, 坂本 篤志, 吉崎 徹, 山崎 文郎, 三浦 友二郞
    2013 年 45 巻 10 号 p. 1286-1292
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/28
    ジャーナル フリー
     症例は64歳, 男性. 2005年より他院で巨細胞性動脈炎と診断され, ステロイドなどで継続加療されている. 1999年不安定狭心症で当科を受診し, 左前下行枝に対し経皮的冠動脈インターベンション (percutaneous coronary intervention ; PCI) を施行した. 以降再狭窄を繰り返し, 2001年までにベアメタルステント (bare metal stent ; BMS) 留置を2度, バルーン拡張術を 3度施行し, 2009年には多枝病変の狭心症に対して冠動脈バイパス術を施行した. 2010年にバイパスグラフトの左内胸動脈の閉塞による急性冠症候群を発症し, 左冠動脈主幹部から左前下行枝に薬剤溶出性ステント (drug eluting stent ; DES) を留置した. 2011年には左冠動脈主幹部のステント内再狭窄に対し薬剤溶出性ステントを留置したが, 入院中に施行した造影CTで大動脈基部動脈瘤を認めた. これに対し大動脈基部置換術および左前下行枝に対する再バイパス術を施行したが, 術後のCTでバイパスグラフトは閉塞していた. さらに2012年には左冠動脈主幹部入口部のステント内再狭窄に対してDESを留置し, 左前下行枝のび漫性のステント内再狭窄に対してもバルーン拡張術を行った. 左冠動脈主幹部には再狭窄を認めなくなったが, その後左前下行枝に 1年間で 3度もステント内再狭窄をきたし, いずれもバルーン拡張術で狭窄を解除した. 本症例で冠動脈およびそのバイパスグラフトに狭窄を反復し, 大動脈基部動脈瘤を合併したことに関しては, 巨細胞性動脈炎の影響が大きいと考えられた.
Editorial Comment
症例
  • 岡田 武規, 古玉 純子, 山田 直人, 出井 尚美, 大坪 秀樹, 大橋 紀彦, 田中 玄紀, 加世田 俊一
    2013 年 45 巻 10 号 p. 1295-1301
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/28
    ジャーナル フリー
     症例は65歳, 男性, 約 2カ月前から労作時呼吸困難, 下腿浮腫, 食欲低下あり, 2週間前から, 夜間起座呼吸となり, 近医受診した. 胸部X線写真で, 右肺に腫瘤影, 胸水貯留, 心拡大あり, 当院呼吸器科を紹介受診し, 精査, 加療目的に入院した. 入院時の心臓超音波検査では, 左室拡張末期径61.7mm, 左室駆出率17%と著明な心機能障害, 肺高血圧症を認め, 酸素投与, フロセミド, スピロノラクトン, カルベジロール, トルバプタン, ピモベンダンの投与を開始した. 薬物療法開始後も十分な尿量が得られず, adaptive servo ventilation (ASV) を導入した. ASV導入後は十分な尿量が得られるようになり, 心不全症状も速やかに改善した. 右肺の腫瘤影の精査目的で, 胸腹部造影CT検査を行ったところ, 左上肺静脈に血栓像を指摘され, うっ血性心不全の精査, 加療目的で第15病日に当科に転科した. 経気管支肺生検も予定されていたため, 抗凝固療法を行わず, 心不全治療を継続した. 第36病日に再度, 胸部造影CT検査を行ったところ, 左上肺静脈の血栓は消失し, 右肺の腫瘤影も著明に縮小していた. うっ血性心不全を合併した肺静脈血栓症において画像上明瞭にその合併が確認され, 抗凝固療法を行うことなく, 心不全治療のみで肺静脈血栓の消失を認めた非常に興味深い症例を経験したので報告する.
症例
  • 望月 優作, 佐藤 洋, 佐野 誠, 早乙女 雅夫, 漆田 毅, 加藤 秀樹, 林 秀晴, 伊東 宏晃, 金山 尚裕
    2013 年 45 巻 10 号 p. 1302-1306
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/28
    ジャーナル フリー
     37歳の女性. 第 2子を正常分娩後 4日目に意識を消失し, 救急外来を受診した. 血圧40/ -mmHg, 心拍数126/分, チアノーゼを認めショック状態であった. 心電図上は, 完全右脚ブロック, 左側胸部誘導中心のST上昇を示し, 胸部X線では肺水腫を認めた. 心エコー上は, 前壁中隔から側壁にかけて広範な低収縮であった. 緊急冠動脈造影にて左冠動脈主幹部より左前下行枝, 回旋枝にかけての解離を認めた. 主幹部から回旋枝にベアメタルステントを留置したが, 前下行枝の血流は確保されなかった. 緊急冠動脈バイパス術を予定したが, 血行動態の悪化により施行されなかった. 最大CK値は17,742 IU/Lと広範な梗塞であり, 大動脈内バルーンパンピング, カテコラミンの投与によりショックから離脱した. 第61病日に施行した冠動脈造影では, 左前下行枝は再開通し, 解離は自然修復されていた. 妊娠に関連した急性心筋梗塞は非常に稀であるが, 最近の妊婦の高齢化により増加している. 特に, 産褥期は冠動脈解離に注意する必要がある.
研究会(第7回 心不全陽圧治療研究会)
  • 百村 伸一
    2013 年 45 巻 10 号 p. 1308
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/28
    ジャーナル フリー
  • 中山 史生, 河野 浩章, 瀬戸 信二, 吉嶺 裕之, 前村 浩二
    2013 年 45 巻 10 号 p. 1309-1313
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/28
    ジャーナル フリー
  • 寺川 宏樹, 藤井 雄一, 上田 智広, 野村 秀一
    2013 年 45 巻 10 号 p. 1314-1318
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/28
    ジャーナル フリー
     心不全におけるadaptive servo ventilation (ASV) の有用性が多く報告されており, 心不全治療におけるASVの位置づけが高まっている. 当院においても心不全患者にASVを使用する頻度が増えており, 今回, 当院のASV使用頻度およびその成績について調べた. ASVは2012年から使用頻度が増加した. ASV導入の大部分は, 入院中に治療に難渋するような薬剤抵抗性心不全に使用される症例と, 心不全の安定期に導入して心事故減少を目指して使用される症例であった. 前者の代表例として, ASV導入によりカテコラミンから離脱し退院できた症例を呈示する. 後者の代表例として, 著明な左室拡大を伴った拡張型心筋症による心不全でASVにより心機能指標が改善した症例を呈示する. また, 当院の検討でもASV導入により心事故の頻度が減少している可能性が示唆され, 心不全治療におけるASVの重要性を再認識した. 今後, ASV導入の成功率を高める工夫が課題の1 つと考えられた.
  • —タイトレーションも含めて
    川名 ふさ江
    2013 年 45 巻 10 号 p. 1319-1326
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/28
    ジャーナル フリー
     心不全と睡眠時無呼吸の関係が議論されてから久しい. 今, 睡眠呼吸障害の分野で最もホットなのが循環器領域といえる. 今回, 心不全患者にみられる睡眠ポリグラフ検査 (polysomnography ; PSG) 所見を整理し, 解析方法と気道陽圧 (positive airway pressure ; PAP) タイトレーションについても言及する. 心不全の脳波の特徴は, 睡眠効率の低下, 入眠潜時の延長, 覚醒反応指数の増加, 中途覚醒時間の延長, 徐波睡眠の減少, 脚動の増加があげられる. また, 高齢者が多いことから, 高齢者に特徴的な脳波に対する理解も重要である. 睡眠呼吸障害については, さまざまなタイプの呼吸イベントが混在し, 心不全という病態を起因とするチェーン・ストークス呼吸 (Cheyne-Stokes respiration ; CSR) が最も特徴的なものであろう. また, 混合性と分類される呼吸イベントには, 無呼吸持続時間のうち中枢性部分が大半を占めるものが多いことも, 心不全呼吸イベントの特徴である. 心機能の程度や心不全の病期によって, 出現する呼吸イベントが異なり, それによって治療選択も困難なことが多く, PSGによる詳細な検討が重要視されている. 治療選択としては, まず持続気道陽圧 (continuous positive airway pressure ; CPAP) で試み, 治療困難な場合, 以前ならBi-level-PAPであったが, 現在はadaptive servo ventilation (ASV) が主流である. ASVのCSR呼吸に対する劇的な治療効果は多くの施設で証明されている. また, かなり経験を必要としたASVマニュアルタイトレーションも, 現在はすべて自動で簡便に治療導入が可能となっている.
feedback
Top