心臓
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45 巻, 4 号
選択された号の論文の27件中1~27を表示しています
OpenHEART
HEART’s Selection(COPDにおける心肺連関を考える)
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 福永 直人, 岡田 行功, 那須 通寛, 庄村 遊
    2013 年 45 巻 4 号 p. 413-417
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/13
    ジャーナル フリー
     背景 : 高齢化社会のわが国では退行性病変による心臓弁膜症が増加し僧帽弁逆流もその1つである. 若年者では遠隔生存率あるいは弁関連合併症の回避からみて弁形成術が推奨されているが, 高齢者の治療成績は明らかとなっていない.  方法 : 1991年1月から2010年4月までに僧帽弁逆流に対して僧帽弁形成術を受けた70歳以上の連続203例を対象とした. 平均年齢は74±3歳 (70~88歳), 男性92例 (45%) で, 85例 (42%) がNew York Heart Association functional class III-IVであった. 僧帽弁逆流をCarpentier分類で分けるとtype I 39例, type II 134例, type IIIa 30例でtype II, いわゆる弁逸脱が66%であった. 基本的にはCarpentierテクニックとePTFEによる人工腱索再建術, リングによる弁輪形成術によって僧帽弁形成術を行った. 併施手術は147例 (72%) に行った. 203例全例でフォローアップは完了し平均追跡期間は4.7±3.7年であった.  結果 : 病院死亡は11例 (5.4%) 認め, そのうち5例は非心臓死であった. 病院死を含む生存率, 心臓死回避率は5年で85±3%, 95±2%, 10年で66±6%, 82±5%であった. 血栓塞栓症回避率は5年で87± 3%であった. 心エコーフォローアップでは中等度以上の僧帽弁逆流回避率は5年で96± 2%であり, 再手術回避率 (5年) は96±2%であった.  結論 : 僧帽弁逆流に対する僧帽弁形成術は高齢者においても遠隔成績が優れており, 外科治療の1つの選択肢である. 今回のわれわれの成績は日本の高齢者に対する僧帽弁形成術のbenchmarkになると考えられる.
症例
  • 押田 裕喜, 丹下 正一, 宇居 吾郎, 庭前 野菊, 小野 洋平
    2013 年 45 巻 4 号 p. 418-423
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/13
    ジャーナル フリー
     Torsades de pointes (TdP) から心室細動を呈した原因として, スルピリドによるQT延長症候群 (入院時QTc 554msec, 蘇生直後QTc 600msec) が原因と考えられた1例を経験した. 症例は70歳代前半の男性, 14年前に血液透析の導入とインスリン治療が開始されていた. 1カ月前より浮動性眩暈と食欲減退および低血糖 (随時血糖 : 53mg/dL) があり傾眠傾向で前医に入院, 意識障害精査加療のため, 当院内科に転院した. 第3病日髄液穿刺後にTdPから心室細動に移行し自動式体外除細動器 (automated external defibrillator ; AED) で除細動された. 当院転院13日前よりスルピリド150mg/日を内服しており, 中止3日後の血中濃度が1.24μg/mLと高値で50mg錠の最高血中濃度 (0.16μg/mL) の約8倍, 治療域上限 (0.58μg/mL) の約2倍であったことから, 薬剤性の意識障害およびQT延長症候群と診断した. 術後も低血圧が遷延, コルチゾール : 1.0μg/dL, ACTH : 7pg/mLと副腎不全が判明, 入院前の低血糖や精神症状も副腎不全の症状と推察された. スルピリドを投与する前に器質的疾患による精神症状を除外することが重要であり, 投与する際には腎機能を勘案して減量し, 錐体外路症状・QT延長症候群などの発生に注意を払う必要がある.
Editorial Comment
症例
  • 丸山 尚樹, 白石 裕一, 白山 武司, 畔柳 彰, 中村 猛, 山野 哲弘, 松室 明義, 沢田 尚久, 松原 弘明
    2013 年 45 巻 4 号 p. 425-430
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/13
    ジャーナル フリー
     症例は, 82歳, 男性. 1989年肥大型心筋症と診断され, 以後, 徐々に拡張相に移行. 心機能低下・心室頻拍 (ventricular tachycardia ; VT) を認めるようになり, 2000年よりアミオダロンを開始し100mgで維持した. 2007年には, 10分程度の持続性VTを認めるようになり, 同年2月にカテーテルアブレーションを行った. しかし, 多源性のVTで根治にいたらず, 除細動器付き心臓再同期療法デバイス (cardiac resynchronization therapy defibrillator ; CRT-D) 植え込みとβ-blockerの併用でVTもなく順調に経過した. 2011年初めより, 動悸が先行する失神前駆症状を頻回に認めるようになり心拍数130~170拍/分のVTが原因と診断. 投薬の調整を試みるもコントロール困難で, 3月末に当院紹介入院. カテーテルアブレーションの再セッションも不成功に終わった. アミオダロンの増量でVTの頻度は低下したものの, 95~105拍/分の遅いVTが増え, CRT-Dが検出できないため, VT zoneを90拍/分と低く設定できる機種に変更したところ, すべての心室頻拍に抗頻拍ペーシング可能となり短時間で停止でき症状改善を得た.  低いVT設定を行うとupper trackingの設定が低くなることや, 洞性頻脈に対してのショック誤作動の要因となり得るが, 今回は活動性の低い高齢者でβ-blockerも内服していたため, 回避することが可能であった. 拡張相肥大型心筋症におけるslow VTの治療に難渋した症例を経験した.
Editorial Comment
症例
  • 渡邉 雄介, 北村 哲也, 山里 将一朗, 岩崎 仁史, 森 拓也, 浜田 正行, 伊藤 正明
    2013 年 45 巻 4 号 p. 433-438
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/13
    ジャーナル フリー
     70歳, 男性. 高血圧のため近医通院中であった. 呼吸困難および下腿に高度な浮腫を認め胸骨左縁第2肋間にLevine III/VIの収縮期雑音を聴取された. 心エコー検査で右心系拡大と右室流出路中隔側に内部不均一で低エコーな23×33mmの腫瘍を認めた. 可動性はなく, 表面は比較的スムーズで流出路狭窄を認めた. 肺塞栓を含めた明らかな転移は認めなかった. 外科的に腫瘍切除術施行し, 病理検査で悪性線維性組織球腫 (malignant fibrous histiocytoma ; MFH) と診断した. 術後4カ月目には術前以上の大きさに再発を認め, 心不全の増悪による全身状態悪化のため化学療法も施行困難であり, 徐々に全身状態は悪化し, 術後8カ月で死亡した.  心臓原発MFHの好発部位は左房 (特に後壁側) であり, 本症例のように右心系に発生するものは極めて稀であるといえる. 治療としては, 腫瘍切除可能例では積極的な外科的切除が推奨されている. しかし, 再発率, 遠隔転移発生率は高く, 心臓原発MFHの予後は極めて不良であるといえる.  今回, われわれは肉眼的には完全に切除したものの術後4カ月で再発し右房・右室・肺動脈へ浸潤・進展, 肺に多発転移を認めたMFHの1例を経験した. 極めて稀な疾患であり報告する.
Editorial Comment
症例
  • 金森 寛充, 竹村 元三, 今井 一, 鈴木 貴史, 高杉 信寛, 久保田 知希, 牛越 博昭, 服部 有博, 青山 琢磨, 川崎 雅規, ...
    2013 年 45 巻 4 号 p. 440-445
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/13
    ジャーナル フリー
     症例は, 64歳, 男性. 若年より高血圧を指摘され, 38歳時, 慢性腎不全により血液透析を導入後, 脳死下腎移植を施行された. このころより心肥大, 心電図異常が指摘されていた. 2010年5月ごろより一過性心房細動による動悸を自覚するようになった. β遮断薬により改善したが, 心エコーより大動脈弁狭窄症あるいは肥大型心筋症の進行が疑われ同年11月精査・加療目的にて当科入院となった. 入院時BNP 2,572pg/mL, 胸部X線では左側胸水・肺うっ血を認めた. 心エコー検査では, 全周性に著明な左室壁肥厚, 大動脈弁狭窄を認めた. 心臓カテーテル検査による直接圧較差から求めた大動脈弁口面積は0.83cm2であった. 冠動脈には有意狭窄は認めず, 大動脈弁狭窄症による心不全と診断し心不全治療を開始した. その後, 高度な進行性左室肥大の原因検索のためα-galactosidase A活性を測定したところ異常低値を認め, 心筋生検を施行し心筋細胞内にスフィンゴ糖脂質の蓄積を確認したことからFabry病による心肥大と診断し酵素補充療法を開始した. 心肥大の原因となり得る複数の疾患を合併し診断に苦慮したFabry病の1例を経験した. また, 高度な大動脈弁狭窄症を合併したFabry病はわれわれが検索した限りではなく, 稀有な症例と思われたため報告する.
Editorial Comment
Editorial Comment
症例
  • 小野 悠, 酒井 芳昭, 石川 啓史, 山岡 智樹, 佐野 雅則, 松野 公紀, 宮崎 義也, 石橋 巌
    2013 年 45 巻 4 号 p. 450-454
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/13
    ジャーナル フリー
     症例は77歳, 男性. 心不全で入退院を繰り返し, 心筋生検所見より心アミロイドーシスと診断. 心電図では完全左脚ブロックを認め, 心エコーでは拡張障害, 全周性の左室肥大, dyssynchronyを認めた. 心不全は薬物治療のみではコントロール不良であり, 心エコー上dyssynchronyを認めていることよりCRT-D (cardiac resynchronization therapy defibrillator) 植え込みを施行. VT (I time-velocity index) 31cmから43.8cm, ESV (end systolic volume) 42mLから30mLと改善し, 本人の自覚症状も改善, 一定期間の外来followが可能となった. 拘束型心筋症, 心アミロイドーシスに対するCRT-D有効例の報告は現時点では見当たらないが, 本症例は拡張機能障害にdyssynchronyを併発した心アミロイドーシスにCRTが一時的な症状改善に有用であった1例と考えられた.
Editorial Comment
Editorial Comment
症例
  • 竹内 庸浩, 西堀 祥晴, 丸山 貴生, 高井 研次, 堀松 徹雄, 増田 重樹, 藤田 幸一, 高田 昌紀, 粕本 博臣, 大塚 章人, ...
    2013 年 45 巻 4 号 p. 458-464
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/13
    ジャーナル フリー
     症例は87歳, 女性. 慢性心不全, 2型糖尿病, 慢性腎不全, 慢性閉塞性動脈硬化症の既往がある. 不安定狭心症の入院加療中に腎機能の悪化により乏尿状態となった. 著明な全身浮腫, 肺水腫をきたし, 高濃度酸素投与を必要とした. また, 代謝性アシドーシスも出現した. 限外濾過の適応と考えられたが高齢のため希望しなかった. フロセミドによる利尿効果は弱く, トルバプタン15mg/日を併用投与開始したところ, 7日後に利尿がつき始めた. 同時に, 全身浮腫, 肺水腫は改善し, 酸素投与を中止できた. トルバプタンは新しい水利尿薬であり, 他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留に対して適応がある. しかし, 重度の腎機能障害を有する患者では投与経験が少ない. 今回われわれはトルバプタン併用投与により限外濾過を回避できた心不全と末期腎不全を合併する急性肺水腫の1例を経験したので報告する.
症例
  • 後藤 徹, 田崎 淳一, 東谷 暢也, 今井 逸雄, 塩井 哲雄, 丸井 晃, 坂田 隆造, 舟木 健史, 堀川 恭平, 安部倉 友, 宮本 ...
    2013 年 45 巻 4 号 p. 465-470
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/13
    ジャーナル フリー
     症例は77歳, 女性. 脳梗塞の既往あり, 胸部大動脈瘤 (70mm) を指摘され当院受診した. 手術ハイリスクのためステントグラフト内挿術 (thoracic endovascular aortic repair ; TEVAR) を施行した. 術前評価にてAdamkiewicz動脈がTEVARに伴い閉塞することが明らかであり, スパイナルドレナージ (cerebrospinal fluid drainage ; CSFD) を挿入したうえで, TEVARを施行した. 外腸骨動脈の石灰化および狭窄のため大腿動脈からのTEVAR用シース挿入困難であり, 後腹膜アプローチにて総腸骨動脈からシースを挿入し, TAGステントグラフトを留置した. シース抜去時に血管壁を損傷したため, 術中から輸血を要し, 外科的に修復して閉腹した. 術後, 播種性血管内凝固症候群 (disseminated intravascular coagulation syndrome ; DIC) となり輸血を要したが, 翌日に意識混濁と右共同偏視を認め, CTで右急性硬膜下血腫を認めたため, 緊急開頭血腫除去術を施行した. 開頭術後は頭部再出血および出血による神経学的後遺症は認めず, 輸血治療によりDICは改善した. TEVAR施行後にendoleakは認めず, 術後47日目に転院となった.  TEVARによる重篤な合併症の1つに対麻痺があるが, その予防目的にCSFDは有用な手段である. 急性硬膜下血腫はCSFDの予後にかかわる重大な合併症であるが, TEVARにおけるCSFD後の急性硬膜下血腫の頻度は報告されていない. 今回われわれは, 早期発見と他科との連携により後遺症を残さず救命に成功した症例を経験したので報告する.
Editorial Comment
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症例
  • 迫田 邦裕, 安齋 均, 猪原 拓, 桑原 政成, 渡邉 琢也, 浅野 拓, 水野 篤, 増田 慶太, 白井 丈晶, 西原 崇創, 新沼 廣 ...
    2013 年 45 巻 4 号 p. 475-481
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/13
    ジャーナル フリー
     症例は糖尿病, 脂質異常症, 統合失調症で近医通院中の77歳, 女性. 来院3日前に突然の胸部不快感があり, 徐々に食思不振が悪化し, 当院外来受診. 心電図上, II, III, aVFにてST上昇と異常Q波を認め, 経胸壁心エコー図で下壁と右室の壁運動の低下があり, 亜急性下壁心筋梗塞の診断となった. 緊急心臓カテーテル検査施行し, 右冠動脈の入口部で完全閉塞, さらに右バルサルバ洞に少量の造影剤の貯留を認めたため, 緊急造影CTを施行し, 右バルサルバ洞の拡大と偽腔内血栓を伴う限局性解離を認めた. 年齢とADLを考慮し, 内科的治療を行い, 入院第17病日に退院となった. 比較的良好な経過が得られ, 8カ月後に施行したCTでは右バルサルバ洞拡大は残存も偽腔内血栓と解離は消失していた.
Editorial Comment
Editorial Comment
症例
  • 諏訪 賢一郎, 俵原 敬, 浮海 洋史, 尾関 真理子, 待井 将志, 田村 純, 宮島 佳佑, 神田 貴弘, 安見 和彦
    2013 年 45 巻 4 号 p. 484-489
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/13
    ジャーナル フリー
     症例は62歳, 男性. 発熱にて当院受診. 心電図にてI, II, aVL, V4~6にST上昇を認め, さらに心筋逸脱酵素とCRP上昇を認めた. また心エコーにて心尖部前側壁と中部下壁に壁運動低下が認められた. 緊急心臓カテーテル検査にて前壁, 側壁, 下壁の一部に壁運動低下を認めたものの, 左室駆出率57%であり, 冠動脈に有意狭窄を認めなかった. 以上所見より急性心筋炎と診断. 第4病日の心臓MRIでは, シネMRIにて左室駆出率11%, 全周性高度壁運動低下, T2強調画像black blood像にて左右両室全体に高信号, そして遅延造影MRIにて心尖部寄り側壁の心外膜側を主とした遅延造影を認めた. 同日心筋生検を施行. リンパ球の浸潤を多数認め, リンパ球性心筋炎と診断した. また血行動態破綻のため大動脈バルーンパンピング (intra-aortic balloon pumping ; IABP), 経皮的心肺補助装置 (percutaneous cardiopulmonary support ; PCPS) を導入. その後も心機能は悪化し, 大量免疫グロブリン療法, ステロイド短期大量療法を施行するも第9病日に死亡した. 剖検では心筋へリンパ球主体の高度の炎症細胞浸潤, 心筋の凝固壊死, 融解, 変性と間質浮腫を認めた. 初期軽症期から入院し血行動態破綻直前に心臓MRIの撮影ができた劇症型心筋炎の貴重な1例を経験したので報告する.
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