重症虚血肢症例の救肢, 救命には血行再建が不可欠であるが, バイパス手術と血管内治療にはそれぞれ利点や欠点があるため, これらを適切に組み合わせた血行再建戦略を立てる必要がある. 2003年より2011年の間にFontaine IV度の重症虚血肢に対して血管内治療とバイパス術を組み合わせたハイブリッド治療を施行した27例27肢を検討対象とし, その治療成績を検討した. 症例の内訳は, 男性19例, 女性8例, 平均年齢は72.0歳で, 19例 (70.4%) が糖尿病を合併, 24例 (88.8%) が高血圧を合併, 8例 (29.6%) が血液透析例であった. ハイブリッド治療の内訳は, 腸骨動脈血管内治療+鼠径部以下のバイパス術が17例, 浅大腿動脈血管内治療+膝窩-下腿・足部動脈バイパス術が9例, 大腿-膝窩動脈バイパス術+膝下動脈血管内治療が1例であった. 27例全例にバイパスの初期開存ならびに血管内治療の初期成功が得られた. 術中死亡は認めず, 急性心筋梗塞を発症した1例が入院中死亡となったが, ほかの26例は軽快退院となった. 術後1年でのバイパスならびに血管内治療部位の援助1次/2次開存率は89.3%, 救肢率は100%, 生存率は86.8%であった. 術後フォローアップ期間中にステント破損から膝窩動脈仮性瘤を形成した1例は外科的血行再建により修復できた. 一方, 血管内治療を追加したのは5例で, その内訳はグラフト狭窄または吻合部狭窄が3例, 血管内治療部位の再狭窄が2例であったが, いずれも救済できた. 比較的満足すべき臨床成績が得られたことより, 重症虚血肢に対するハイブリッド血行再建治療の有用性が示唆された.
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