急性心不全治療における持続的血液濾過透析 (continuous hemodiafiltration ; CHDF) は, 血行動態への影響が少なくバイタルサインが不安定な重症患者も安心して使用でき, 集中治療室では好んで用いられる. 今回, 1994年から2006年に入院した急性心不全587例を対象に, CHDFの治療成績について検討した. 患者内訳は男性379例, 女性208例, 平均年齢は67.2歳, 虚血性心疾患が52.6%と最も多く, NYHA Ⅲ/Ⅳが90%を占めた. 98例にCHDFを施行し, 死亡率はCHDF (-) 群6.7%に対しCHDF (+) 群57.1%と有意に高かった. CHDF導入に関する各種パラメーターを解析し, 閉塞性動脈硬化症合併 (p=0.0001), ショック例 (p=0.0001), ノルアドレナリン使用 (p=0.003) などに強い相関を認めた. 次に, CHDFの院内予後決定因子について検討し, 虚血性心疾患や高血圧, 糖尿病合併では生存例が多く, 拡張型心筋症やカテコラミン使用例, ショックなど重篤例では死亡率が高かった. またcase-control studyでは, ドブタミン (p=0.001) やノルアドレナリン (p=0.039) の使用, ヘマトクリット低値 (p=0.033) に強い相関を認めた. ショックなど重度の循環不全を併発した急性心不全では, CHDFの補助療法を行っても予後が不良である可能性が示唆された.
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