心臓
Online ISSN : 2186-3016
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46 巻, 10 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
OpenHEART
HEART’s Selection 内皮機能評価を診療に生かす(診断,病態,など)
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 秋田 千里, 玉貫 啓太, 小栗 真人, 北岡 千佳, 中村 常之, 犀川 太
    2014 年 46 巻 10 号 p. 1341-1345
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/18
    ジャーナル フリー
     川崎病におけるエラスターゼ阻害薬は, 長らくガンマグロブリン不応例に対する補助療法という位置づけであった. 最近, 初期治療に使用することの有用性が報告された. われわれは, 川崎病の初期治療でのエラスターゼ阻害薬, 特にシベレスタット水和物 (SSH) の用量依存性の薬効に注目した.  今回, 川崎病12例に対して初期治療に高濃度SSH (0.04mg/kg/時) の投与を行い, 通常濃度SSH群16例 (0.02mg/kg/時), UTI群18例のhistorical controlと比較し, 川崎病急性期での用量依存性の効果を検討した.  治療から解熱までの期間は, 前回と同じくUTI群 (3.8±1.8日) に比べSSH群 (2.4±2.0日) が有意に短い結果であった (p=0.0075). HD-SSH群 (2.4±2.5日) とSSH群に有意差は, 認めなかった (p=0.49). これを反映して入院日数もHD-SSH群 (9.7±1.9日) とSSH群に, 有意差は認めなかった. 薬価は, 高濃度で使用しても, UTIよりSSHのほうが安価であった.  発熱をエンドポイントすると, 治療から解熱までの期間および入院期間ではHD-SSH群とSSH群には有意差を認めなかった. 本来の好中球エラスターゼの役割を考えると冠動脈評価が最も薬剤効果を反映すると考える.
  • 武田 賢治, 山本 浩之, 小松 原一正, 近藤 淳, 井原 敬子
    2014 年 46 巻 10 号 p. 1346-1350
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/18
    ジャーナル フリー
     今後の診断治療の参考となるよう市中一般総合病院における感染性心内膜炎の実態を調査し検討した. 2010年5月から2012年8月までの期間に当院に入院し, 感染性心内膜炎と診断された症例は8例であった. 男性5例, 女性3例の計8例で, 平均年齢は72.4±9.9歳であった. 誘因となる処置を契機に発症する典型例は少なく, 不明熱や肺炎などによる敗血症から感染性心内膜炎を発症するケースが多かった (87.5%). 8例中7例で基礎疾患に弁膜症を有していた. 原因菌ではStaphylococcus aureusが最も多かった (25%). 全例経胸壁超音波検査にて疣腫を認めた. 疣腫は10mm以上の比較的大きな症例が多かった (87.5%). 脳塞栓症を37.5%に認めた. 脳梗塞を併発した3症例のうち2症例の起炎菌はStaphylococcus aureusであった. 脳梗塞を発症した症例では疣腫は全例僧帽弁前尖に認め, 全例疣腫の大きさは10mm以上で, かつ可動性は乏しかった. 転帰は2例が死亡し, 3例が外科的治療を要した. 内科的治療では3例が完治した. 当院の症例からは, 可動性にかかわらず10mm以上の大きな疣腫があり, 原因菌がブドウ球菌である場合と疣腫が僧帽弁前尖にみられる場合は, 塞栓症のリスクがより強く予測されるため, 早期の手術の必要性が考慮された.
  • 藤山 友樹
    2014 年 46 巻 10 号 p. 1351-1359
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/18
    ジャーナル フリー
     急性心不全治療における持続的血液濾過透析 (continuous hemodiafiltration ; CHDF) は, 血行動態への影響が少なくバイタルサインが不安定な重症患者も安心して使用でき, 集中治療室では好んで用いられる. 今回, 1994年から2006年に入院した急性心不全587例を対象に, CHDFの治療成績について検討した. 患者内訳は男性379例, 女性208例, 平均年齢は67.2歳, 虚血性心疾患が52.6%と最も多く, NYHA Ⅲ/Ⅳが90%を占めた. 98例にCHDFを施行し, 死亡率はCHDF (-) 群6.7%に対しCHDF (+) 群57.1%と有意に高かった. CHDF導入に関する各種パラメーターを解析し, 閉塞性動脈硬化症合併 (p=0.0001), ショック例 (p=0.0001), ノルアドレナリン使用 (p=0.003) などに強い相関を認めた. 次に, CHDFの院内予後決定因子について検討し, 虚血性心疾患や高血圧, 糖尿病合併では生存例が多く, 拡張型心筋症やカテコラミン使用例, ショックなど重篤例では死亡率が高かった. またcase-control studyでは, ドブタミン (p=0.001) やノルアドレナリン (p=0.039) の使用, ヘマトクリット低値 (p=0.033) に強い相関を認めた. ショックなど重度の循環不全を併発した急性心不全では, CHDFの補助療法を行っても予後が不良である可能性が示唆された.
[症例]
  • 木村 俊之, 清水 紀宏, 吉谷 敬, 松谷 健一, 平林 高之
    2014 年 46 巻 10 号 p. 1360-1366
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/18
    ジャーナル フリー
     症例は28歳男性. 脳梗塞を発症し当院脳外科に入院となった. 入院時体重168kg (BMI 57.1) の高度肥満であり, 呼吸困難で仰臥位になれず. 全身麻酔下に頭部CT撮影された. 覚醒, 抜管後より心不全状態からショックとなり心肺蘇生法 (CPR), 経皮的心肺補助装置 (PCPS) 挿入により救命された. 心エコー図上, 左室拡張末期径 (LVDd) 77mm, 左室駆出率 (LVEF) 21%と左室内腔拡大を伴うびまん性の高度壁運動低下を認めた. 冠動脈造影検査では異常所見を認めず. 心臓リハビリテーションと食事療法 (1300kcal/日) により2カ月で体重112kgまで減量し, LVEF 42%まで改善した. 心筋生検では心筋細胞の肥大を認め, 臨床所見と合わせていわゆる肥満心筋症が考えられた. 本症例では閉塞性睡眠時無呼吸 (OSA) を合併しており, 減量と持続陽圧呼吸療法 (CPAP) 導入が心不全の改善に著効したと考える.
Editorial Comment
[症例]
  • 山村 美奈子, 丸山 美知郎, 濱岡 卓人, 井上 己音, 油谷 伊佐央, 平澤 元朗, 永田 義毅, 臼田 和生, 谷口 陽子
    2014 年 46 巻 10 号 p. 1368-1373
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/18
    ジャーナル フリー
     症例は70歳代女性. 主訴は呼吸困難. 73歳時に肺動脈血栓塞栓症, 下肢深部静脈血栓症の既往あり. 50歳ごろにベーチェット病と診断されたが詳細は不明. 2009年12月呼吸困難にて当院へ救急搬送となった. 来院時ショック状態, 心エコー図検査にて心嚢液貯留, 心タンポナーデ所見があり, 緊急心嚢ドレナージを行い改善した. 心電図やCT検査所見より急性心筋梗塞や急性解離性大動脈瘤は否定, 心嚢液は血性で培養や細胞診は異常なし. 心エコー図検査や心臓MRI検査で心膜腫瘤, 胸部CT検査で多発性肺結節がみられた. PET-CT検査で心膜腫瘤, 気管支周囲リンパ節, 多発性肺結節にFDG異常集積がみられ, 胸腔鏡下肺生検で血管内に肉芽腫を伴う壊死性血管炎像を認めた. 以降心タンポナーデの再発はなく経過した. 心膜腫瘤, 心タンポナーデを生じたベーチェット病の稀な1例を経験したので報告する.
[症例]
  • 大保 英文, 泉 聡, 脇山 英丘
    2014 年 46 巻 10 号 p. 1374-1379
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/18
    ジャーナル フリー
     石灰化大動脈弁狭窄, 僧帽弁輪石灰化はいまだ明確な発生機序は判明していない. 今回われわれは高度の僧帽弁輪石灰化を合併した石灰化大動脈弁狭窄症に対し手術を要した姉弟症例を経験したので報告する.  弟症例 : 75歳, 主訴は呼吸困難. 既往歴に完全房室ブロック, 高血圧, 家族歴に父, 弟の心疾患による死亡を認めた. 心エコーにて高度の大動脈弁狭窄, 僧帽弁閉鎖不全, 三尖弁閉鎖不全を認め, CTにて高度の大動脈弁, 僧帽弁輪の石灰化を認めた. 手術は超音波吸引装置にて弁輪の石灰化を除去し2弁とも置換した. 長時間の心筋保護を要したが, 術後合併症なく退院した.  姉症例 : 85歳, 主訴は労作時呼吸困難. 心エコーにて高度の大動脈弁狭窄, 中等度の僧帽弁閉鎖不全を認めた. CTにてやはり高度の弁輪の石灰化を認めた. 手術は年齢を考慮し大動脈弁置換のみを行ったが, 術後合併症なく退院した.  高いリスクが懸念される大動脈弁, 僧帽弁輪の高度石灰化合併例では術前のCTによる石灰化病変の立体画像構築による評価や超音波吸引装置の使用は有用であった. またその発生機序が解明されるに従い遺伝性素因を指摘する論文が増えていることから, 本邦においても家族例の集積や遺伝子解析が期待される.
[症例]
  • 代田 智樹, 和田 有子, 上原 剛, 駒津 和宜, 高橋 耕平, 大津 義徳, 寺崎 貴光, 瀬戸 達一郎, 福井 大祐, 高野 環, 天 ...
    2014 年 46 巻 10 号 p. 1380-1385
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/18
    ジャーナル フリー
     症例は53歳女性. 既往歴として抗リン脂質抗体症候群 (APS), 慢性腎不全, 右大腿骨骨頭壊死による下肢切断後. 脳梗塞の診断で近医にて入院加療中, 呼吸苦出現し, 心不全および慢性腎不全急性増悪の加療目的に当院転院となった. 当院入院時CTでStanford A偽腔開存型大動脈解離および右巨大冠動脈瘤を認めたが, 全身状態不良であったこと, 大動脈解離は亜急性期であると考えられたため, 全身状態改善を待って慢性期に手術を行う方針とした. 入院約1カ月後に右冠動脈瘤血栓閉塞による急性心筋梗塞を発症. また同時に上行大動脈の再解離を認めた. 血栓閉塞した右冠動脈瘤にステント留置を行った後, 準緊急的に部分弓部置換術+冠動脈バイパス術を施行した. 冠動脈瘤は腹部大動脈瘤や脳動脈瘤との合併が多いとの報告もあるが, 大動脈解離との合併例の報告はない. 本症例では大動脈解離の保存的加療中に再解離をきたし, 同時に冠動脈瘤の血栓閉塞による急性心筋梗塞を発症したため, 治療に難渋した.
[症例]
  • 森島 重弘, 小野 隆志, 中澤 誠, 工藤 恵道
    2014 年 46 巻 10 号 p. 1386-1393
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/18
    ジャーナル フリー
     血管性浮腫は突然発症する頸部顔面の浮腫から, 咽頭や喉頭に浮腫が進行し, 生命を脅かす上気道閉塞や呼吸不全に至ることが知られている. 遺伝的因子やレニン-アンジオテンシン系阻害薬などが血管性浮腫に関与するとされ, 血中ブラディキニン濃度の上昇が原因とされている. 今回, 複数の要因が重なり血管性浮腫を発症した思われる症例を経験したので報告する. 症例は17歳の男性. 幼少期に大動脈縮窄症術後再縮窄と診断され, 上半身高血圧に対してロサルタンとアムロジピン投与で17年間経過観察された. 突然の頭痛で来院. クモ膜下出血と診断され, カルシウム拮抗薬の静脈内投与で降圧療法が行われた. 第1病日に顔面, 頸部, 右上肢の浮腫を認め, 気管切開を必要とする血管性浮腫を発症した. 第2病日に脳動脈留クリッピング術を施行. 第7病日にカルシウム拮抗薬を中止することなく血管性浮腫は自然に消退した. その後, クモ膜下出血後合併症の脳梗塞を発症したり, 降圧治療のためバルサルタンの内服を開始したが血管性浮腫は認めなかった. 第56病日, 右鎖骨下動脈右大腿動脈人工血管バイパス術を施行. 第81病日に退院した. 退院後遠隔期に全身麻酔下に経皮的大動脈内ステント留置術, 人工心肺を用いた非解剖学的人工血管バイパス術 (上行大動脈-胸部下行大動脈バイパス) を行ったが血管性浮腫を認めなかった.
[症例]
  • 村松 宏一, 長沼 宏邦, 中村 賢, 川田 典靖, 橋本 和弘
    2014 年 46 巻 10 号 p. 1394-1397
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/18
    ジャーナル フリー
     症例は68歳女性. 18年前に冠動脈バイパス術 (Coronary artery bypass grafting ; CABG) を施行 : 大伏在静脈 (Saphenous vein graft ; SVG) -左前下行枝 (Left anterior descending artery ; LAD), SVG-高位側壁枝 (High lateral ; HL), SVG-右後下行枝 (Posterior descending ; #4PD). 13年後に施行した冠動脈造影検査ではSVG-HLは閉塞していた. 今回は数日前よりの胸痛があり冠動脈造影検査を施行, SVG-LADが閉塞していた. また, 造影CT上SVG-#4PDが胸骨直下を横断しており, 左開胸での再CABGの方針とした. 右大腿動静脈を確保した後, 第4肋間開胸した. グラフトとしては初回手術時に左内胸動脈を損傷していたためSVGを選択, in flowについては下行大動脈の近位部に, PAS-Port (Cardica社, Redwood) を使用して中枢吻合した. グラフトのデザインは肺の影響を考慮, 肺門部を通した. SVGをHL LADに吻合, 術中のflowは良好であった. 術後CoronaryCTではグラフトはpatentであり, 術後14日目に独歩退院した. 左開胸による再CABGは, グラフト損傷を回避し, オフポンプで手術を施行できる有効な選択肢であると考えられた.
Editorial Comment
[症例]
  • 吉原 修, 内藤 眞明, 沓掛 康道, 岩倉 岳史, 吉原 和代, 神谷 正貴, 八重樫 拓, 冨田 雄平, 宮崎 健介, 鈴木 敏之, 寺 ...
    2014 年 46 巻 10 号 p. 1399-1407
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/18
    ジャーナル フリー
     心原性脳塞栓症は広範な重症脳梗塞となりやすく, 近年, 患者数が増加傾向にある. 心原性脳塞栓症の一次予防, 再発予防には塞栓源となる基礎心疾患を正確に同定し, 個々の病態に応じた適切な治療を行うことが重要である. 塞栓源心疾患を同定する画像検査として一般的に心エコー図が行われ, 経胸壁心エコー図よりも経食道心エコー図が検出能力に優れている. しかし, 特に高齢脳梗塞患者では, 経胸壁心エコー図で異常がなければ経食道心エコー図は施行されないことが多いという実態も報告されている. 多列CTを用いた心臓イメージングの進歩は目覚ましく, 近年は冠動脈イメージングを超えて心筋症, 先天性心疾患, 弁膜症等の多様な心疾患の診断に心臓CTは活かされている. 心臓CTのappropriate use criteriaでも, 他の非侵襲的診断機器で十分な画質の画像が得られない場合に心臓内塊, 自己弁, 人工弁を心臓CTで評価することは適切であるとされ, 心臓CTの塞栓源心疾患同定における有用性も報告されている. 本論文では, 128列256マルチスライスCTを用いた心臓CTで検出された塞栓源心疾患の症例を提示し, 心臓CTを用いた塞栓源心疾患評価について考察する. 心内構造物の観察に死角が少ないのが心臓CTの利点であり, 塞栓源心疾患の検出に有益な情報を提供可能で, 心エコー図に付加的な役割を果たすことが期待できる.
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