心臓
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46 巻, SUPPL.2 号
選択された号の論文の36件中1~36を表示しています
第26回 心臓性急死研究会
  • 宝田 顕, 五関 喜成, 矢崎 義直, 山科 章
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_5
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は16歳, 女性. 実父が冠攣縮性狭心症と診断されている. 2013年3月学校内で部活の練習後に突然心配停止となり, 当院ERに搬送された. 救急隊現着時には心室細動でありAEDが作動, 直後心停止となるも社内で自己心拍再開した. 入院後より直ちに低体温療法を導入, 復温後リハビリにて高次機能障害が徐々に改善した. 洞調律時の12誘導心電図にて前胸部誘導の陰性T波, 心エコーでは壁運動異常を認め, 心筋脂肪酸代謝シンチでは左前下行枝, 対角枝および回旋枝領域の代謝障害を呈した. 冠動脈造影にて器質性病変は指摘されないものの, アセチルコリン負荷試験では3枝に心電図変化を伴う瀰慢性の血管攣縮が誘発された. 電気生理学的検査ではVTやVFは誘発されず, ピルジカイニド負荷試験も正常であった. 以上より家族性の冠攣縮性狭心症が誘因となった若年発症のCPA症例と考えられ, 貴重な1例として報告する.
  • 松本 健佑, 廣畑 敦, 武 寛, 吉岡 亮, 大原 美奈子, 広瀬 英軌, 伴場 主一, 山本 桂三
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_6-S2_11
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は20歳男子大学生でスポーツ部に所属している. 2013年某日, 授業中に胸部不快感を認め近医受診した. 心電図で胸部誘導のST上昇を認め, 急性心筋梗塞の疑いで当院紹介となった. ニトロ製剤の投与で, ST変化の改善を認めたものの, 時間経過とともにSTの再上昇を認め, 緊急冠動脈造影を施行した. 造影検査前に心室細動となり電気的除細動を施行. 冠動脈造影では左前下行枝seg. 6に99%狭窄を認め, 血管拡張薬の冠動脈内注入を行うも狭窄は解除されず, 引き続き冠動脈ステント留置術を行った. IVUS, OCTでは同部位にプラークおよび血栓を認めた. さらに慢性期に冠攣縮誘発試験を行ったところ冠攣縮が誘発された. 軽度器質的な狭窄に加え, 冠攣縮を契機として発症した急性心筋梗塞と診断した. 今回危険因子のない若年スポーツマンの急性心筋梗塞の1例を経験したので報告する.
  • 文本 朋子, 上山 剛, 吉賀 康裕, 大野 誠, 福田 昌和, 加藤 孝佳, 清水 昭彦, 矢野 雅文
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_12-S2_17
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     目的 : 当院で心室細動 (VF) 蘇生後, 冠攣縮性狭心症 (VSA) と診断された症例について検討した.  対象と方法 : 対象は, VF蘇生後VSAと診断された10症例 (男6例, 発症時年齢51±12歳) の臨床像を検討した. 器質的冠動脈狭窄病変の有無, 心臓電気生理学的検査 (EPS) でのVF誘発性, VSAに対する内服薬の有無, 非発作時の心電図などについて検討した.  結果 : 75%以上の冠動脈の有意狭窄は3例に認めた. VFは56% (5/9) に誘発された. 発症時にはVSAに対しては未治療であった. 診断後, 内服治療は1例を除く9例に行われ, 8例にICDの植込みが行われた. 非発作時心電図では5例50% (下壁+側壁誘導 : 2例, 下壁誘導 : 3例, 前壁誘導 : 0例) にJ波を認めた.  結論 : 冠攣縮を認めた心室細動蘇生後症例の特徴として, 下壁誘導あるいは側壁誘導に高率にJ波を認めた.
  • 三木 裕介, 金城 昌明, 大石 英生, 青木 敏二郎, 森 寛暁, 河宮 俊樹, 一宮 仁, 内田 恭寛, 渡邊 純二, 一宮 惠
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_18-S2_24
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     30歳代, 男性. 家で子供と遊んでいる際に突然心肺停止となった. 直ちに家族により心肺蘇生が開始された. 救急隊接触時心室細動 (VF) であった. 自動体外式除細動器 (AED) による除細動で自己心拍再開し, 当院に到着した. 冠動脈造影では有意狭窄を認めず, 入院後低体温療法を施行した. 後日施行したアセチルコリン負荷試験では3枝共に冠攣縮を認めた. 電気生理検査では心室頻拍 (VT) や心室細動は誘発されなかった. 遅延電位 (LP) は陽性, T波オルタナンス (TWA) は陰性だった. ジルチアゼム, ニフェジピン, 硝酸イソソルビドの投与を行ったが, モニターで無症候性のST上昇とその後の非持続性心室頻拍 (NSVT) や心室期外収縮 (PVC) の頻発を認めた. 内服薬の増量を行うとともに, 突然死のハイリスク症例と考え, 植え込み型除細動器 (ICD) 植え込みを施行した. 術後経過良好で退院, 社会復帰となった. 問題なく経過していたが, 退院後63日目に初めて服薬を忘れたその夜, 再度VFとなり, 搬送された. ICDが数回作動しており, ICDにST上昇が記録されていた. 再度低体温療法と内服薬の追加・調整を行い退院した. 重症冠攣縮性狭心症が原因と考えられる院外心停止に対してICD植え込みを行い退院したが, その後再度VFとなりICDによる除細動で心臓死を回避できた1例を経験したので報告する.
  • 森谷 尚人, 田淵 真基
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_25
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     背景 : 冠攣縮性狭心症 (VSA) による発作時には早期に攣縮を解除できないと心室細動などの致死性不整脈をきたし致命的となることがある. 十分な観察下でない場合にはby-standerによる処置が極めて重要である.  症例 : 54歳, 男性. 2009.6心カテにてVSAと診断. 2011.5未明に胸痛後ショック状態となり救急車にて来院. 救急隊による除細動にて洞調律へ復帰. 第3病日のカテにて冠動脈に有意狭窄認めず. 亜硝酸剤点滴加療中の第6病日未明に著名なST上昇から心室細動 (Vf) を呈し病棟NurseによるAED使用にて洞調律へ復帰した. モニター記録上, 心室細動発症より除細動まで3分であった. 心電図変化とシンチ所見から多枝攣縮が推測された. その後内服薬多剤併用療法にて発作軽快し独歩退院となった.  考察 : 病院病棟内では必ずしも常に医師が常駐しているわけではなく, 救急救命の方法としてAEDは市中のみならず, そのリスクの大きさから病院内においても有用であると考えられた.
  • 住居 晃太郎, 蓼原 太, 清水 嘉人, 三保 成正, 山本 佳征, 片倉 健二郎, 森重 俊彦, 五明 幸彦
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_26-S2_31
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     当院でのAEDが装着された院内心停止に対する心肺蘇生症例を全例調査した.  対象と方法 : 電子カルテ記録でAEDのキーワードで検索し, AEDが使用された院内心停止を調査した.  結果 : AEDは73症例, 76回に使用された. 平均年齢77.1歳であった. 年次別使用回数は2004年から2012年まで, 各1回, 4回, 5回, 7回, 8回, 10回, 9回, 18回, 14回と年々増加傾向にあった. 使用病棟は循環器40回, 脳外科25回, 救急 (到着後CPA) 6回, その他5回であった. 使用時間帯は平日日勤帯17回, その他が59回であった. 入院主病名は脳疾患25例, 心疾患23例, 肺疾患14例, その他11例であった. 心停止の原因は致死性不整脈29回, 呼吸不全27回, 敗血症性ショック9回, 心原性ショック4回, 出血性ショック2回, 電解質異常2回, 不明3回であった. AED作動ありが25例28回, なしが48例48回であった. AED作動ありの中で心拍再開21例, 生存退院10例. AED作動なしの中で心拍再開16例, 生存退院8例であった.  結論 : 院内心停止に対し当院ではAEDが積極的に使われている. 脳疾患, 心疾患で使用頻度が高く, 致死性不整脈以外での使用率は62%であった. 休日または勤務時間外に78%使用された. 致死性不整脈は心拍再開率が82%と高く, 生存退院は48%であった. AEDが作動しなくても心拍再開が33%認められ, 生存退院が17%存在した.
  • 土屋 隼人, 宮本 卓也, 石野 光則, 禰津 俊介, 安藤 薫, 西山 悟史, 宮下 武彦, 渡邉 哲, 久保田 功
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_32-S2_37
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は79歳女性, 主訴は労作時息切れ. 左心不全増悪の診断で1年前に当院入院既往歴がある. 心電図は1年前と比較して, 右軸偏位の増強と新たな右室肥大所見を認めた. 胸部レントゲンでは肺うっ血は明らかでなく, 心拡大と両下肺野の透過性低下を認めた. 心エコー検査ではD shape所見を呈し, 三尖弁圧較差は77mmHgと上昇し著明な右心負荷所見を認めた. 右心カテーテル検査にて肺動脈性肺高血圧 (PAH) と診断した. 抗核抗体および抗セントロメア抗体陽性を認め, 両手指の皮膚硬化所見と合わせて強皮症に伴うPAHと診断した. エポプロステノールを含めた肺高血圧治療薬を開始するも改善なく, イレウス発症を契機に呼吸循環状態の悪化をきたし, 第62病日に急死した. 病理解剖の結果, 心臓は求心性左室肥大を呈し, 肺は著明な無気肺を呈していた. 肺細小動脈の中膜および内膜の肥厚を認め, 同時に肺静脈にも内膜の線維性肥厚と一部完全閉塞の所見あり, 肺静脈閉塞性疾患 (PVOD) の所見も呈していた. 強皮症に伴うPAHはPVODの合併等含め複雑な病態を呈し, しばしば治療抵抗性であり注意を要すると考えられる.
  • 中間 泰晴, 井上 一郎, 河越 卓司, 嶋谷 祐二, 三浦 史晴, 西岡 健司, 岡 俊治, 薹 和興, 大井 邦臣, 播磨 綾子, 橋本 ...
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_38
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     心配停止やショックで発症するような重症肺血栓塞栓症は依然として高い死亡率が報告されている. 当院において2006年8月~2013年7月までの7年間に急性肺血栓塞栓症で入院となった101症例のうち, 循環虚脱を呈した32症例に関してその病態・治療法・予後に関して検討した. 32症例は平均年齢65歳で女性が69%を占めていた. うち22症例 (69%) は心配停止状態で来院した患者であり, 残り10症例のショック症例は全例生存退院可能であった. 心配停止症例のうち8症例は社会的背景・病態からご家族が蘇生を希望されず全例死亡した. 残り14症例では11症例でPCPSが, 10症例でt-PAが使用されていた. 22症例のうち生存退院が可能であったのは6例であったが, その全例が両側肺動脈中枢に血栓を有していながらインターベンション後に肺動脈のflowが改善した症例であった. 循環動態の破綻した急性肺血栓塞栓症の症例でインターベンションが生存率を上昇させる可能性が示唆された.
  • 野 原正一郎, 大場 豊治, 高橋 甚獮, 杉 雄介, 佐藤 晃, 安川 秀雄, 甲斐 久史, 福本 義弘
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_39
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は34歳, 女性. これまで心疾患の指摘はなく, 第1子出産時も正常分娩であった. 今回, 妊娠高血圧症の診断で当院産婦人科に入院となり, 翌日に第2子を経膣分娩. 出産直後より呼吸状態の悪化を認め, 胸部レントゲン写真で肺うっ血, 心拡大を, 心エコー図検査でEF : 30%後半と左室機能不全を呈しており, 産褥心筋症を基礎としたうっ血心不全の診断となる. 同日よりドブタミン, フロセミド持続静注を開始し, 良好な利尿反応が得られ, 心不全は改善傾向となった. 第6病日16時37分, 看護師が病棟モニターでSpO2低下を確認, 訪室時は心肺停止状態であった. 直ちにCPRを開始し, 気管内挿管, 及びIABP, PCPS補助下に全身管理を行ったが, 心拍再開には至らず, 第11病日に永眠された. 剖検では冠動脈3枝共に著明な内膜肥厚を呈しており, 中膜では空胞変性が観察されたが, 粥状硬化性の変化はみられなかった. さらに冠動脈主幹部の内膜~中膜にかけての断裂像とそれに伴う血栓形成・閉塞を認め, これらが突然死の原因となった可能性が考えられた. 産褥心筋症の経過中に突然死を来した症例で, 原因として線維筋性異形成に伴う冠動脈解離が考えられた非常に稀な1例を経験したため報告する.
  • 柿添 絵里, 林谷 俊児, 中島 豊, 西山 憲一, 池田 宗一郎, 栗林 祥子, 池田 次郎, 松浦 広英, 堺 浩二, 末松 延裕, 稲 ...
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_40-S2_44
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は50歳代男性. 2カ月前より背部痛を自覚するも精査を受けなかった. 某日, 背部痛後に乗車したタクシー車内で心肺停止となり最寄りの警察署で蘇生が開始された. 救急隊接触時は心室細動で4回除細動されるも循環再開せず当院搬送. アドレナリン, アミオダロン等静注し電気的除細動を行ったが, 無脈性電気活動から心静止となり経皮的心肺補助装置 (PCPS) を挿入した. 冠動脈造影で器質的狭窄はなかったが右冠動脈が左冠尖から起始していた. PCPS下に集中治療したが低心拍出に高度DICを合併し翌日死亡した. 剖検で右冠動脈左バルサルバ洞起始を認めたが動脈硬化性病変はなかった. 心室中隔に亜急性心内膜下梗塞, 左室側壁に脂肪変性がみられたが右室に脂肪の沈着や繊維化はなかった. 右冠動脈左バルサルバ洞起始で突然死をきたすことは知られているが, 本例では起始異常の他に左室脂肪変性や亜急性心筋梗塞が不整脈基質として関与していた可能性が考えられた.
  • 中手 夕季, 藤島 慎一郎, 石原 嗣郎, 下釜 達朗, 瀧口 知浩, 入田 英二, 加世田 繁, 古賀 徳之
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_45-S2_48
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     59歳女性, 糖尿病, 慢性腎不全, 自己免疫性肝炎があり, ステロイド内服中であった. 右下肢蜂窩織炎で入院となった. 入院時の心電図, 胸部レントゲンは異常なし. 第4病日, ベッドから起き上がった際に突然意識消失し, その後心肺停止となった. 蘇生後, 血液検査, 心エコーの所見から肺塞栓と診断し, また胸部レントゲン写真で右肺上葉に浸潤影を認め, 肺梗塞を伴っていると考えられた. t-PAの投与を行うも, 間もなく再び心肺停止となり死亡された. 剖検を行った結果, 両側に多発する肺塞栓症を認め, 広範な肺出血, 肺水腫を伴っていた. 肺塞栓は, 病理学的所見から, 数日経過したものから比較的新鮮なものが混在していた. 病理所見では明らかな肺梗塞の所見はみられなかった. 本例のように, 比較的中枢側の肺動脈の閉塞で肺出血をきたし, また発症時にすでに広範囲の肺出血を伴っていた例は稀ではないかと考え報告する.
  • 西蔵 天人, 関本 輝雄, 大西 克実, 近藤 誠太, 土至田 勉, 茅野 博行, 濱嵜 裕司, 丹野 郁, 小林 洋一
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_49
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は40歳女性. 呼吸困難を主訴に救急搬送された. 来院時血圧138/80mmHg, 脈拍126/分, 呼吸30/分, SpO2 85%であったが, 来院直後に血圧低下, SpO2 60%に低下し, 意識レベルが低下した (JCS300). 心電図は洞調律, 胸部単純写真で著明な肺うっ血, 心臓超音波検査で左房内に巨大な可動性腫瘤を認め, 拡張期に僧帽弁に嵌頓していた. 左房内腫瘤の僧帽弁嵌頓と診断, 直ちに経皮的心肺補助装置を導入し, 循環動態を安定させ, 左房腫瘤摘出及び憎帽弁形成術を施行した. 腫瘤は卵円孔を付着部とした8×7×5cm大の粘液腫であった. 術後速やかに肺うっ血は改善し, 翌日には人工呼吸器を離脱可能となり, 合併症なく経過した. 巨大左房粘液腫の僧帽弁嵌頓によるショックに対し, 緊急経皮的心肺補助装置導入により救命しえた症例を経験したため報告する.
  • 山口 由明, 水牧 功一, 西田 邦洋, 坂本 有, 片岡 直也, 井上 博
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_50-S2_55
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     発端者は29歳男性. 持続性単形性心室頻拍 (240/分, 右脚ブロック型上方軸) で入院. 非発作時, 下壁誘導でJ波 (notched type) を認め, pilsicainide負荷で増強したが, Brugada型心電図変化はみられなかった. 経胸壁心臓超音波検査で左室緻密化障害と診断され, 電気生理検査で心室頻拍, 心室細動とも誘発されなかったため, カテーテルアブレーションは施行できずICD植え込みを施行した. また, 長男は13歳時に下壁誘導でJ波 (notched type) を認め, 経胸壁心臓超音波検査で左室緻密化障害と診断されたが無症状であった. 発端者の兄も無症状だが, 発端者と同様に下壁誘導でのJ波に加えてV1, V2誘導でBrugada型ST上昇を呈しflecainideで有意な増強を認めた. 最近, 左室緻密化障害と早期再分極の合併例の報告があり, 家族性に両者を合併しさらにBrugada症候群との関連も示唆された興味深い一家系と考えられた.
  • 勝海 悟郎, 古嶋 博司, 和泉 大輔, 大槻 総, 長尾 智美, 飯嶋 賢一, 佐藤 光希, 小田 雅人, 渡部 裕, 池主 雅臣, 南野 ...
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_56-S2_61
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     生来健康の27歳男性. 父親が57歳時に突然死している. 深夜飲酒中に心室細動をきたし当院に搬送された. 心肺蘇生, 低体温療法を施行し, 後遺症なく回復した. 心エコー, 心臓MRI, 冠動脈CTで器質的心疾患は認めなかった. Type 3 Brugada型心電図を認めたが, ICD植え込み後に施行したピルシカイニド負荷試験ではtype 1様波形変化が1誘導のみであり, 特発性心室細動と診断した. また, 同検査中に右脚ブロック, 左軸偏位型の心室性期外収縮を認めた. 運動負荷試験後の夜間から早朝にこの心室性期外収縮より心室細動が惹起され, ショック作動を繰り返した. 心臓電気生理検査では左室基部後壁心外膜側に心室性期外収縮の起源を認め, 心内膜側から焼灼を試みたが, 完全には抑制されなかった. その後, ベプリジル内服により心室性期外収縮, 心室細動は抑制され, 以後9カ月間再発なく経過している. 心室細動を惹起する心室性期外収縮の起源が同定され, bepridilが奏功した特発性心室細動症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 中田 晃裕, 北村 健, 深水 誠二, 河村 岩成, 森山 優一, 荒井 研, 名内 雅宏, 西村 卓郎, 渡邉 智彦, 福岡 裕人, 北條 ...
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_62-S2_67
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は19歳男性. 特記すべき既往歴なし. 通学中に意識消失, 心肺停止状態でありAEDにより心室細動 (VF) が除細動され, 蘇生し当院へ救急搬送された. 来院時自然停止する左脚ブロック型上方軸の単形性心室頻拍 (VT) を繰り返し, VFに移行した. 洞調律時はV2, V3誘導でtype ⅠのBrugada型心電図を呈していた. 後日施行した心臓電気生理検査では, 洞調律中のHV時間は65msと延長, 上記のVTと同形のVTが誘発され, 頻拍周期は210ms, VT中のHV時間は85msと洞調律時より延長, ヒス束電位は常にVTのQRSに先行し, ヒス束, 右脚電位, 心室電位は常に1 : 1で対応した. 脚枝間リエントリー性心室頻拍と診断. 右脚を通電し, 以降全くVTは誘発されなくなった. VFは非薬物投与下に右室流出路2連期外刺激で誘発され, 通電後も再現性をもって誘発された. ICDを植え込み経過観察中である. 脚枝間リエントリー性心室頻拍を合併したBrugada症候群は比較的稀であり, 考察を加えて報告する.
  • 中野 誠, 福田 浩二, 近藤 正輝, 長谷部 雄飛, 佐竹 洋之, 平野 道基, 下川 宏明
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_68-S2_73
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は55歳男性. 2001年, 失神を繰り返すBrugada症候群症例として当院にて植え込み型除細動器 (implantable cardioverter defibrillator ; ICD) 移植術施行. その後, 年5回程度の心室細動 (ventricular fibrillation ; VF) によるICD適正作動を認めていた. シロスタゾール, ベプリジルによる薬物療法は発作抑制に無効であった. 2013年7月, ICD作動の自覚有, 当院救急外来受診. ICD記録上, VFに対するICD適正作動を2回認め, 経過観察目的に入院. 入院当日にもVFに対するICD適正作動あり, VFストームの状態. 左脚ブロック・下方軸の心室性期外収縮 (premature ventricular contraction ; PVC) をトリガーとしたVFが確認され, PVCをターゲットとした高周波カテーテルアブレーション (radiofrequency catheter ablation ; RFCA) の方針となった. RFCA中はclinical PVCがほとんど認められず, pace mapを指標とした. Pace mapが合致する右室流出路では, 前壁から側壁にかけて心室波よりも遅れた異常電位を認め, 同部位に広範に通電を施行した. RFCA後7カ月を経過したが, PVCならびにVFの再発を認めていない. VF発作の基質の可能性がある右室心内膜側の異常遅延電位をもつBrugada症候群症例に対して, RFCAが発作抑制に奏功した一例を経験したので報告する.
  • 長山 友美, 向井 靖, 井上 修二朗, 竹本 真生, 樗木 晶子, 砂川 賢二
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_74
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     背景 : 心室細動をおこす早期再分極 (ER) 症候群とBrugada症候群 (BS) の関連については未だ不明である.  目的 : 特発性心室細動 (IVF) におけるERとBSを検討する.  方法 : 2006~12年にIVFと診断された連続14例において, ERとBrugada型心電図 (B-ECG) について検討した. また, 経過中B-ECGを示しBSと診断された6例とB-ECGのみで受信した17例を比較した.  結果 : IVFの14例中, ERは13例 (93%) に認め, 5例が下壁+側壁誘導, 5例が下壁誘導のみに出現した, BSと診断された6例では5例 (83%) にERを認めた. VFのないB-ECG患者17例では, ERを9例に認めたが, 1例を除いて下壁・側壁誘導以外であった.  結語 : IVFのVF発作にERが関連しており, BSにおいてもERとの連続性が示唆された. 特に下壁・側壁誘導のERがVF出現に重要な所見と考えられた.
  • 楢林 ゆり子, 伊藤 尚志, 橋本 晃, 矢﨑 義行, 榎本 善成, 堀 真規, 久次米 真吾, 野呂 眞人, 中村 正人, 杉 薫
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_75-S2_82
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は49歳男性. 平成25年7月の早朝に自宅で倒れているところを家族が発見, 心室細動 (VF) を認め自動体外式徐細動器で除細動後当院に搬送された. 来院時の心電図ではBrugada型心電図を疑う所見を認め, 冠動脈造影では左冠動脈前下降枝に75%狭窄を認めた. アセチルコリン (ACh) 負荷試験で同部位の完全閉塞を認めVFを認めた. 十分な冠拡張薬を投与し後日冠動脈造影を再検したが, やはり同部位に75%狭窄を認め, 経皮的冠動脈インターベンション (PCI) を施行した. その後も心電図ではtype 1のBrugada型心電図を呈しており, PCI後に施行した心臓電気生理検査でVFが誘発され, イソプロテレノール投与下ではVFは抑制された. 本症例は器質的冠動脈狭窄に伴う冠攣縮からVFを呈したと考えられるが, その特徴的な心電図と電気生理学的特徴からBrugada症候群の因子もあると考えられ, 示唆に富む症例と考え報告する.
  • 麻生 明見, 中村 俊博, 石川 智一, 鍵山 弘太郎, 石松 高, 江島 恵美子, 小村 聡一朗, 井上 寛子, 森 隆宏, 竹中 克彦, ...
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_83-S2_90
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は22歳女性. 平成13年の学校健診で心室性期外収縮 (PVC) を指摘されていた. 平成15年13歳時に初めて失神をきたした. 心電図上QT時間の延長と頻発するPVCや非持続性心室頻拍 (NSVT) を認め, 入院中に失神を伴う多形性心室頻拍 (PVT) を確認した. 頻発するPVCは単形性であり, 右室流出路起源と考えられた. またNSVTやPVTの開始1拍目はPVCと同一波形であり, PVCが頻拍のトリガーとなっていた. Schwartzの診断基準から先天性QT延長症候群と診断し, β遮断薬を開始した後は症状なく経過した. 平成24年9月外出中突然心肺停止となり, 救急隊の自動体外式除細動器で心室細動が確認され2回の電気的除細動にて洞調律に復帰した. 近医で急性期治療が行われ, 後遺症なく退院した. その後, 当科で頻拍のトリガーとなり得る右室流出路起源のPVCに対してカテーテルアブレーションを行い, 続いて植込み型除細動器 (ICD) 植え込み術を行った. 小児に対するICD植え込み術の症例は少なく, その多くが突然死の二次予防である. 本症例も10年間のICD適応Class IIa状態を経て, Class IとなりICDを植え込んだ. 先天性QT延長症候群に対するICDの適応とそのタイミングについて, さらに先天性QT延長症候群に合併したPVCに対するアブレーションについて考察を加え報告する.
  • 福地 敦子, 菊池 幹, 折口 秀樹, 吉村 仁, 百名 洋平, 瀬筒 康弘, 橋本 亨, 相良 洋治, 宮田 健二, 毛利 正博, 山本 ...
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_91-S2_95
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は29歳, 女性. 5児の母である. 約10年前より失神発作を繰り返し, 複数の施設で頭部MRI・脳波やHolterECGなどの検査を複数回受けたが, 異常所見はみられなかったとのことであった. そのため, 過去には失神の原因はパニック障害と診断され, 内服加療されたこともあった.  失神の頻度は1-2回/月程度であり, 失神が起こる状況は歩行時・立位・座位などさまざまだが, いずれも精神的緊張状態・ストレス・寝不足などがある時であった. 今回精査希望にて当科外来紹介となり, 電気生理学的検査目的で入院となった. 電気生理学的検査では右室流出路からの2連期外刺激で多形性心室頻拍および心室細動が再現性をもって誘発された. 入院時の十二誘導ECGでは一見QT間隔は正常範囲だか, 電気生理学的検査開始時の十二誘導心電図ではU波が出現していた. アドレナリン投与でQT延長し, プロプラノロール投与でQT短縮が認められた. 以前の心電図を調べたところ, 結節性T波がみられたものがあった. 以上よりQT延長症候群と診断した. 初診時の心電図でQT延長を認めなかったが, EPS施行時の心電図ではQT延長を認めた症例を経験したので報告する.
  • 勝俣 良紀, 相澤 義泰, 田部井 亮太, 西山 崇比古, 木村 雄弘, 西山 信大, 谷本 陽子, 高月 誠司, 福田 恵一
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_96-S2_100
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     26歳の女性. 生来健康であった. これまでに, 失神やアレルギーの既往なく, 健康診断で心電図異常を指摘されたことはなかった. また突然死や心疾患の家族歴も認めていない. 膣狭窄に対する膣拡張術施行中, 止血用3000倍希釈ボスミン7mL (エピネフリン換算2mg) を膣粘膜に局注した直後に, 血圧210/116mmHg, 心拍数188bpmまで上昇, その後QT時間が延長し, 心室性期外収縮が頻発, 局注後4分後に心室性期外収縮からtorsade de pointesとなり, 心肺停止となった. 心臓マッサージ開始後, 300 Jで電気的除細動を施行し, 洞調律に復帰した. 直後の心電図では, 急性冠症候群を示唆する所見や明らかなQT延長を認めず, 電解質も正常範囲内であった. 心エコー検査でも明らかな器質的心疾患を認めなかった. しかし, 術後2日目の心電図で明らかな要因なくQTcが552msと著明に延長していたため, 精査目的で電気生理学的検査が施行された. 右室心尖部, 右室流出路からのプログラム刺激ではVT/VFは誘発されなかったが, イソプロテレノール負荷にてQTcが375msから535msと著明に延長し, TU波の出現を認めたため, 潜在性QT延長症候群と診断した. その後, プロプラノロール30mg内服開始となったが, 予測最大心拍数近くまでの運動負荷でも明らかなQT時間の延長を認めなかったため, 運動制限, 妊娠制限せずに経過観察とし, これまでのところ経過良好である.
  • 吉岡 良造, 藤木 明, 阪部 優夫
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_101-S2_104
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は71歳男性. 来院時, 心房細動頻脈の傾向を認め, 心不全の診断し入院加療を開始した. 心エコー, 壁運動は瀰漫性 (左室駆出分画34%) に低下したためレートコントロールにジギタリスを投与しフロセミド併用下に加療開始した. 第2病日, 心電図上徐脈傾向となることに並行してT波の陰転化が出現した. それに伴いQT延長をきたしTorsades de pointes (TdP) が頻発した. 電解質異常はなく, 硫酸マグネシウム投与を行っても抑制不十分であったため一時ペーシングを施行した. その後, 徐々にT波の陰転化が改善しQT時間も短縮し, TdPは出現しなくなった. 心臓カテーテル検査を行ったが冠動脈に器質的狭窄を認めなかった. 左室壁運動は瀰漫性に低下していたが, 特に心尖部が優位に低下していた.  今回われわれは心機能低下をきたした心房細動頻脈を伴う心不全症例においてジギタリス投与後に特異な心電図変化をきたしTdPが頻発する症例を経験したため報告する.
  • 池村 修寛, 稲川 浩平, 福田 芽森, 山田 亘, 宮田 宏太郎, 田中 宏明, 吉田 拓生, 池上 幸憲, 谷本 耕司郎, 布施 淳, ...
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_105-S2_109
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は心室細動蘇生後の23歳男性. 生来健康. 従兄弟が32歳で突然死. 駅のホームで倒れているところを発見され, 救急隊要請された. 目撃者なし, bystander CPRなし. AED (Automated External Defibrillator) により, 除細動を2度行われた後に自己心拍再開し, 当院救命センター搬送となった. 心肺停止時間は不明だが最大で1時間程度と考えられた. 全身状態安定後に低体温療法を開始した. 来院時のQT間隔は正常 (QT/QTc : 370/440msec) であったが, 低体温時の心電図で著名なQT延長 (QT/QTc : 720/600msec) を認めた. 復温後にQT間隔は正常化した. 冠動脈造影は異常なく, アセチルコリン負荷試験は陰性, 心エコー, 心臓MRI (magnetic resonance imaging) で器質的心疾患を示唆する明らかな所見は認められなかった. 潜在性QT延長症候群を疑いエピネフリン負荷試験を施行した. 負荷前のQT間隔は正常 (QT/QTc : 440/423msec) であったが, 投与1分後 (Peak state) にQT/QTc : 480/640msecまで延長し, 投与3分後 (Steady state) にはQT/QTc : 440/454msecまで戻った. 潜在性QT延長症候群と診断し, ICD植え込みを行った. 診断にエピネフリン負荷試験が有用であった心室細動蘇生後の潜在性QT延長症候群の1例を経験したので報告する.
  • 百名 洋平, 平島 祐太朗, 加耒 秀隆, 菊池 幹, 瀬筒 康弘, 橋本 亨, 相良 洋治, 宮田 健二, 折口 秀樹, 毛利 正博, 山 ...
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_110-S2_113
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は82歳, 男性. 高血圧症, 糖尿病, 認知症に対して近医で外来加療を受けている. 半年前から安静時胸部絞扼感のような訴えがあり, 1~2分程度で改善していたとのことであった. 入院当日午前, 自宅で安静時に胸が苦しいと家族に訴え, 安静で改善しないためかかりつけ医を受診した. かかりつけ医受診時は症状は改善していたが, 不安定狭心症を疑われ当院紹介となった. 心筋逸脱酵素の上昇なく, 心エコー, タリウム心筋血流シンチグラフィで虚血を疑う所見を認めなかったため, 入院4日目に退院とした. ところが, 同日安静時に痙攣を伴う突然の意識消失発作を認めたため当院へ搬送された. 搬送時の心電図でQTc=650msと延長しており, 4日前の心電図と比較してQT延長が顕在化していた. 服薬歴からドネペジル塩酸塩による薬剤性QT延長症候群を疑い, 内服を中止した. 心電図モニターで失神をきたすような不整脈の出現を認めず, QT時間も経時的に短縮した. 今回, ドネペジル塩酸塩によると思われるQT延長症候群が疑われた症例を経験したため報告する.
  • 瀧口 知浩, 藤島 慎一郎, 中手 夕季, 入田 英二, 加世田 繁, 古賀 徳之
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_114-S2_119
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は71歳女性. 入院4日前から倦怠感あり, 当院を受診され, 発熱と炎症反応高値を認め, 不明熱の精査加療目的に入院し, スルバクタム/アンピシリンを開始. 入院4日目に血液培養にてStreptococcus agalactiaeが検出され, 心エコーでは僧房弁に疣贅, 軽度の逆流を認め, 感染性心内膜炎と診断し, ペニシリンGの投与を開始した. 入院5日目朝に心不全が出現するも, 心エコー所見は著変なく, 保存的加療を継続した. 同日夜に完全房室ブロック出現し, 補充収縮が出現せず, 死亡した. 病理解剖では, 僧房弁後尖に疣贅の付着を認め, 房室結節付近まで細胞浸潤を認めた. 本症例では, 心エコーで著明な弁破壊を認めなかったが, 弁輪部への細胞浸潤が強く, 房室結節付近まで浸潤したことで, 房室ブロックが生じたことが死因となったと考えた. Streptcoccus agalactiaeによる感染性心内膜炎の報告は少なく, また本症例では弁自体の破壊が軽度であるにも関わらず, 弁輪部への浸潤が強く, 急速に刺激伝導系の障害が生じ, 死因となったことが稀であると考え報告する.
  • 岡田 清治, 太田 哲郎, 和氣 正樹, 竹田 昌希, 松木 由佳子
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_120
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     2009年6月から2013年7月に当院で急性心筋炎を9症例経験した. 9例の平均年齢は63.1歳で男性6名女性3名であった. 初発症状は発熱, 感冒様症状が4名, 胸痛2名, 全身倦怠感1名, 腰痛1名, 心肺停止1名であった. このうちIABP挿入となった患者が6名, PCPS挿入となった患者は3名でこのうち2名が急性心筋炎が原因で死亡した. 死亡例は入院後3日目, 16日目に死亡した. Max CKの平均は2156IU/Lであり, 死亡例, 転院例, 入院継続例を除いた患者の平均入院期間は25日間であった. ウィルス学的検索は全症例で行ったがはっきりとした原因を特定できた症例はなかった. 経過中, 心室細動, 心室頻拍を認めた症例は3例あり, 1例はICDの植込みを行った. 劇症型心筋炎は予後不良の疾患であることには違いないが, IABP, PCPSなどを含めたDevice治療を適切に早期から行うことで予後改善につながる可能性が考えられた.
  • 佐藤 裕介, 森下 哲司, 宇隨 弘泰, 荒川 健一郎, 天谷 直貴, 絈野 健一, 石田 健太郎, 佐藤 岳彦, 福岡 良友, 池田 裕之 ...
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_121-S2_125
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は61歳, 男性. 先行する感冒症状があり, 心電図上広範囲のST上昇と心臓超音波検査にて著明な心機能低下・心筋の浮腫を認めたため劇症型心筋炎と診断した. IABP挿入下にICU管理としたが, 第2病日に心室頻拍となり血行動態の破綻をきたしたため, 人工呼吸器管理ならびにPCPS・CHDFを追加し, 血行動態の保持を行った. 壁運動は経時的に改善し, 第12病日にIABP, PCPSから離脱することが可能となった. しかし, 第22病日に突然の徐脈, 心停止をきたした. 心停止直前の心電図ではSTの上昇がみられ, また入院時の冠動脈造影にて有意狭窄なかったこと, 冠拡張薬の投与にて徐脈ならびにST上昇がすみやかに改善したため, 冠攣縮性狭心症による心停止と判断した. その後は危険な不整脈や心不全の再増悪なく経過し, 血液濾過透析が必要なものの社会復帰が可能となった. 劇症型心筋炎に重篤な冠攣縮を合併した稀有な一例を経験したため報告する.
  • 芳沢 礼佑, 小松 隆, 佐藤 嘉洋, 椚田 房紀, 小澤 真人, 上田 寛修, 森野 禎浩, 中村 元行
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_126-S2_133
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は35歳, 男性. 意識消失発作あり近医入院. 心電図で完全房室ブロック (Complete atrioventricular block ; CAVB) と非持続性心室頻拍 (Nonsustained ventricular tachycardia ; NSVT) を認め当科紹介となった. 心エコー図検査では左右シャント (Qp/Qs=2.1) を有する二次孔型心房中隔欠損症, 心室中隔基部の菲薄化を認めた. 心臓magnetic resonance imaging (MRI) では左室側壁と心室中隔中央部に遅延造影像を認めた. 18F fluorodeoxyglucose positron emission tomography (18F-FDG PET) を施行したところ, 左心室に不均一なFDG集積を認め, 臨床診断で心サルコイドーシスと診断した. ステロイド治療により, 速やかに房室伝導は改善し, ステロイド漸減を行い退院となった. しかし, 退院5カ月後に施行した18F-FDG-PETで左室内の不均一なFDG集積の増強を認め, その1カ月後にめまいを伴うCAVBが再発したため当科に再入院となった. 今回われわれは, ステロイド治療導入後に寛解と再増悪を呈し, 18F-FDG-PETが診断と活動性の指標に有用であった心サルコイドーシスの1例を経験したためここに報告する.
  • 松下 紀子, 佐藤 俊明, 金谷 允博, 百瀬 裕一, 長岡 身佳, 樋口 聡, 星田 京子, 宮越 睦, 三輪 陽介, 上田 明子, 副島 ...
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_134-S2_139
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例1 ; 45歳男性. 30歳時, Becker型筋ジストロフィーと診断された. 43歳時, 電車内で心停止となりAEDによりVFは除細動され自己心拍が再開した. ICD植え込み後, 外来に通院中.  症例2 ; 50歳女性. 34歳時, 完全房室ブロックに罹患し恒久型ペースメーカー植え込み. 翌年, 筋強直性筋ジストロフィーと診断された. 47歳時, 自宅で失神, 救急外来受診後再び失神. モニター心電図上VTであり, CPRを受け自己心拍が再開した. ICD植え込み後, 外来に通院中.  筋ジストロフィーは, 進行性の遺伝性神経筋疾患であり, 心疾患を合併することがある. 拡張型心筋症様の心機能低下を呈することがあるほか, 房室ブロックや心室性不整脈により突然死することが知られている. その二次予防については一般的なガイドラインに基づいているものの, 一次予防に関する一定の見解はない. 筋ジストロフィー患者のデバイス植え込みについて文献的考察を踏まえ報告する.
  • 小川 陽子, 澤田 三紀, 芳本 潤, 阪田 純司, 松前 宏信, 竹内 泰代, 藤田 真也, 森脇 秀明, 鏑木 敏志, 吉田 裕, 土井 ...
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_140-S2_147
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     近年, 先天性心疾患術後の成人症例が増加している. 遠隔期には心不全や不整脈をきたす例も多く管理には留意が必要であるが, 疾患特性により通常とは異なる検討が必要な場合も多い. 今回, 経過観察目的のホルター心電図施行中に心室細動 (VF) を発症, 蘇生後に経静脈的に左心室へ植込み型除細動器 (ICD) リードを留置した症例を経験したため報告する.  症例は26歳男性. 完全大血管転位にて乳児期に心房スイッチ術, 19歳時に三尖弁置換術を施行し当院で経過観察されていた. 26歳時, 出勤中に心肺停止 (CPA), 救急搬送先の病院で自己心拍再開した. ホルター心電図にて, 洞性頻脈から心房細動を経て心室頻拍さらに心室細動への移行が確認された. 蘇生後脳症はなく, ICD植込み目的に当院へ転院. 上記術後にて構造変化および術後癒着があり, 心外膜と経静脈的アプローチの双方を検討, 後者の適応と判断した. 右鎖骨下静脈穿刺にて, ロケーター付きスタイレットを用いてシングルコイルリードを右心房, さらに解剖学的左室へと進めて留置した. 術後経過良好でアミオダロン内服下に社会復帰している.  先天性心疾患術後のICD植え込みの際は手術歴と解剖についての詳細な検討が必要である.
  • 高橋 啓子, 奥村 恭男, 渡辺 一郎, 古川 力丈, 園田 和正, 佐々木 直子, 磯 一貴, 大久保 公恵, 中井 俊子, 平山 篤志
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_148-S2_153
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は34歳, 男性. 入院1年前頃より左足先の知覚低下を認め, 徐々に両側の下肢全体に広がった. その後, 入院3カ月前より排尿困難, 便秘も出現し, 当院神経内科を受診し, 精査加療目的に入院となった. 入院時, 第5胸髄以下の触痛覚の低下と深部腱反射の亢進を認め, 脊椎MRIで第2から第3頸髄の腫大を認めた. 同部位はT2強調画像で高信号を呈しており, 造影MRIでは第2頸髄内に4.8mm大の造影結節を認めた. 入院3日目, 排尿後に意識消失発作あり, ホルター心電図上29秒の洞停止を認めた. 一時ペースメーカーは本人の同意が得られず施行せず経過観察したが, その後も夜間の徐脈傾向と数秒間の洞停止を繰り返した. 脊髄病変に対し, 入院11日目よりステロイドパルス療法を施行, その後はプレドニン内服を継続した. ステロイド治療開始後, MRIで病変部は縮小し, 洞停止も認めなくなった. 経過から, 本症例は脊髄病変による自律神経経路の障害により洞停止をきたしたと考えられ, 稀な症例と考え報告する.
  • 小池 秀樹, 北原 健, 藤井 悠一郎, 坪田 貴也, 本多 満, 吉原 克則, 池田 隆徳
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_154-S2_159
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は88歳の女性. 持続性心房細動の加療目的でⅠ群抗不整脈薬ピルシカイニド150mg/日が投与されていた. 食事の摂取が困難となり, 自立歩行が不可能となったため, かかりつけ医を受診した. 高度の徐脈を呈しており, 当院へ転送となった. 搬送中のモニター心電図で心室頻拍が認められた. 搬送後の血液検査で, 代謝性アシドーシスと高カリウム血症が認められ, 心電図では高度徐脈 (28/分), P波の消失, QRS幅の高度延長 (188msec) を伴う心室固有調律を呈していた. 血清Cr値は2.87mg/dL, ピルシカイニドの血中濃度は3.91 μg/mLと高値であり, 急性腎不全による高K血症およびピルシカイニド中毒による徐脈と診断された. 輸液および緊急血液透析を施行し, 心拍数および心電図異常は改善した. ピルシカイニドの透析除去率は30%前後と報告されているが, 本症例では透析で早々に病状は改善した. 高齢者のピルシカイニド中毒に対しては, 積極的に透析療法を施行すべきと考えられた.
  • 金山 純二, 野田 崇, 中島 育太郎, 石橋 耕平, 宮本 康二, 岡村 英夫, 相庭 武司, 鎌倉 史郎, 草野 研吾, 安田 聡, 小 ...
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_160-S2_166
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     55歳, 男性. 失神の既往はなく, 突然死の家族歴なし. 学童期の健診で徐脈を指摘されていたが, 運動部に所属し症状なく過ごしていた. 35歳時に徐脈 (30回/分) 精査のため当院を受診した. 器質的疾患は示唆されず, 運動時の心拍応答も良好であったため, 外来経過観察となった. 2013年6月, 意識消失発作と徐脈のため, 当院外来を再診した. 12誘導心電図では洞性徐脈 (37回/分) 以外特記すべき所見は認められず, 心エコー図検査では両心房の拡大が認められた. 再度トレッドミル検査を施行したところ, 洞調律から心房細動へと移行し, さらに心室細動へと移行した. 直ちに心臓マッサージを施行したところ自然に洞調律へと復帰した. ひきつづき入院精査を行った. 冠動脈造影検査および冠攣縮誘発試験, 心臓MRI検査ではいずれも疾患特異的な所見は認めなかった. ピルジカイニド負荷試験ではBrugada型心電図を認めず, エピネフリン負荷試験では, 心房細動が誘発されるものの, 心室細動にはならなかった. 電気生理検査では洞機能不全とHV時間の延長を認めた. 右室心尖部および流出路からの3連刺激では心室細動は誘発されなかった. 以上より特発性心室細動と診断し, 植込み型除細動器移植術を施行した. その後, 心室細動の再燃はなく, 退院となった. 運動負荷試験により心室細動が誘発された洞不全症候群の一例を経験した.
  • 岩井 慎介, 沖重 薫, 川口 直彦, 加藤 信孝, 長谷川 智明, 山下 光美, 浅野 充寿, 志村 吏左, 鈴木 秀俊, 青柳 秀史, ...
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_167-S2_172
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は76歳男性. 陳旧性心筋梗塞の診断で3枝冠動脈バイパス術後であったが, ふらつき・失神を主訴に当科紹介となった. 冠動脈造影でバイパスは3枝開存していたが, 心臓電気生理検査で持続性心室頻拍 (VT) が誘発され失神の原因と考えられた. 数日後にPulseless VT (HR 195bpm, 右脚ブロック型, 上方軸) を認め, DC200Jで停止した. アミオダロン200mg/日開始し, ICD植え込み後, VTに対してカテーテルアブレーションを施行した. 右室心尖部からの2連期外刺激で2種類のVT1, VT2が誘発されたが, 血行動態不安定であったため, まずsubstrate mappingを施行したところ, 後下壁領域に広範囲な低電位領域を認めた. 下壁の低電位領域と正常電位領域の境界部でVT1のhigh score pace mappingが得られ, かつ同部位でVT1のQRS onsetから26ms先行する電位を認め, 通電中に頻拍周期の異なるVT2へ移行した. 通電領域を拡大させ, 最初の通電部位の近傍部位での通電中にVT2の停止に成功し, いかなるVTも誘発困難となり以後再発なく経過している.
  • 白井 康大, 佐々木 毅, 井原 健介, 杉山 浩二, 田尾 進, 川端 美穂子, 横山 泰廣, 笹野 哲郎, 平尾 見三
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_173-S2_178
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     特に既往症はなく, マラソンを愛好する生来健康な57歳男性. 洗濯物を干している時に失神した. 救急搬送先での心電図は正常範囲内で, QT延長はなかった. ホルター心電図にて, 連結期の長い心室性期外収縮 (VPC) に続く非持続多形性心室頻拍 (VT) (CL 240ms, 最高8連発) が日中頻回に記録された. 当院を受診後の心臓超音波検査, 冠動脈造影検査では異常を認めず, 血行動態の破綻する特発性多形性VTと診断された. ソタロール内服にてVTは抑制されたが, トリガーの左脚ブロック型VPCに対してカテーテルアブレーションを施行した. 右室のvoltage mapでは低電位領域は認めず, 右室中部中隔側においてペースマップが良好な部位に高周波通電を行った. アブレーション後, VTの再発を認めていない. 心臓MRIでは心室中隔にLGEを認めており, 多形性VTの基質あるいはそのVTのトリガーとなるVPCの発生に局所的な心筋障害の関与が疑われた.
  • 岩崎 夢大, 佐藤 弘和, 小松 寿里, 佐藤 英二, 中川 孝, 櫻本 万治郎, 山科 順裕, 三引 義明, 石田 明彦, 滑川 明男, ...
    2014 年 46 巻 SUPPL.2 号 p. S2_179-S2_183
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は53歳男性. ゴミ焼却所で作業中に倒れているところを発見された. 来院時は不穏状態でSpO2を測定できず, 胸部X線写真では著明な肺水腫, 心臓超音波検査ではびまん性の壁運動低下を認めEF 20%程度だった. 挿管しPEEP 15mmHg, FiO2 1.0で呼吸管理をするも改善せず. その後心肺停止となり, 心肺蘇生を施行しながらの冠動脈造影で有意狭窄はみられなかった. PCPS導入下にICUで低体温療法導入を開始した. 翌日の超音波検査では心筋は浮腫様で, その後も左室壁の壁運動の改善は認められなかった. 復温後も意識は改善せず多臓器不全が進行し, 入院後5日目に死亡した. 死後に撮像したCTではSAHが確認された. その後の剖検にて脳にSAHの所見, 心筋細胞にリンパ球浸潤像が認められ心筋炎と診断された. 本症例はSAHに伴う神経原性肺水腫が原因で呼吸状態が改善せずその後ERで急変したため, 頭部CTを施行する機会がなく診断が困難であったのに加え, 病理学的に心筋炎を合併した症例だった. このような症例の報告例は見られず, 稀少と考え文献的考察を加えて報告する.
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