心臓
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47 巻, 12 号
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OpenHEART
HEART’s Selection(ストレス応答と心臓の病態生理)
[基礎研究]
  • 野呂瀬 準, 塩沢 英輔, 野呂瀬 朋子, 矢持 淑子, 本間 まゆみ, 佐々木 陽介, 伊藤 嘉憲, 吉田 亮一, 瀧本 雅文
    2015 年 47 巻 12 号 p. 1397-1404
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

     老人性全身性アミロイドーシス (senile systemic amyloidosis ; SSA) は高齢者の心臓や肺, 全身の小血管壁などに野生株トランスサイレチン (transthyretin ; TTR) を構成蛋白とするアミロイドが沈着する病態であり, 組織学的なアミロイド沈着の同定と, TTRに対する免疫組織化学によって診断される. 無症候のことが多く, 生前に診断に至ることは少ないが, 時に不整脈や心不全などの心症状を生じ問題となる症例がある. 本邦では本症の認知度が低いが, 循環器疾患の診療に携わる医師は認知すべき疾患である. 今回われわれは, 80歳以上の日本人高齢者の剖検例の心臓を用いてSSAを有していないかATTRアミロイドーシスの沈着を組織学的に検討した. 16.7%の症例 (17/102例) において心筋細胞周囲間質, 小血管壁にATTR陽性アミロイドの沈着を認めた. 高度のアミロイド沈着を示す症例全例95歳以上であった. SSAでは肉眼的に88.2% (15/17例) の症例に心肥大を認めた. またSSAの存在が拡張不全の病態の原因の1つである可能性も考えられた. 本症の頻度は今後の高齢化とともに増加する可能性があり, さらなる症例の蓄積と本症の組織所見と病態の関連を解析する上で重要であると考えられた.

[臨床研究]
  • 前川 慶之, 阿部 修一, 内田 徹郎, 浜崎 安純, 黒田 吉則, 水本 雅弘, 中村 健, 貞弘 光章, 森兼 啓太
    2015 年 47 巻 12 号 p. 1405-1410
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

     背景 : 1999年に米国疾病管理センターが発表した手術部位感染予防のガイドラインにおいて, 手術時に留置されたドレーンは可及的速やかに抜去すべきとされている (カテゴリーⅠB) が, ドレーン留置期間と手術部位感染の関係を定量化した報告はない.

     目的 : ドレーン留置期間と手術部位感染の罹患率を定量化すること.

     対象と方法 : 当院で開心術を受けた連続457例 (男298 : 女159, 年齢67.5±11.7歳). ドレーン留置期間, 手術部位感染の罹患率, 抜去時のドレーン先端培養汚染を評価した.

     結果 : ドレーン留置期間は中央値5日 (四分位範囲3-7日) であり, 457例中19例 (4.1%) が手術部位感染を発症, また13例 (2.8%) のドレーン先端が細菌汚染を起こしていた. ドレーン先端培養陽性と手術部位感染には統計学的相関を認めた (χ2検定, p<0.001, オッズ比12.7, 95%信頼区間3.5-45.9). ロジスティック回帰分析より, ドレーン留置期間と手術部位感染 (p<0.01, 寄与率6.1%), ドレーン留置期間とドレーン先端汚染 (p<0.01, 寄与率6.8%) と相関関係が認められた. 手術部位感染の起因菌は黄色ブドウ球菌が多数を占めた (14/19例) 一方, ドレーン先端汚染はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が半数を占めた (7/13例).

     結論 : 開心術後において, ドレーン留置期間, 先端培養汚染, 手術部位感染はそれぞれ関連性があった.

Editorial Comment
[症例]
  • 伊藤 憲, 今川 正吾, 石戸谷 裕樹, 山梨 克真, 宜保 浩之, 蒔田 泰宏, 松村 尚哉
    2015 年 47 巻 12 号 p. 1412-1418
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

     症例は65歳女性. 持続性心房細動による急性心不全で入院した. 電気的除細動により洞調律復帰が得られ, 心不全代償化後に施行された冠動脈造影検査にて瘤形成を伴う冠動脈肺動脈瘻が認められた. 心臓カテーテル検査によるFick法では肺体血流比の増加は検出されなかった. また, 造影CT検査にて多脾症, 両側二葉肺, 膵体尾部欠損, 腸回転異常および下大静脈奇静脈結合が認められ, 本症例は嚢状動脈瘤合併冠動脈肺動脈瘻を伴った心房内臓錯位症候群と診断された. 冠動脈肺動脈瘻は冠動脈造影検査施行例の0.3~0.8%に認められ, 先天性冠動脈奇形で最も多い疾患であるが, 瘤形成の合併は0.06%と稀である. さらに, 本邦での動脈瘤合併冠動脈肺動脈瘻を伴った心房内臓錯位症候群の報告はない.

     今回われわれは嚢状動脈瘤合併冠動脈肺動脈瘻を伴った心房内臓錯位症候群の1例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 大橋 浩一, 鈴木 紅, 佐々 達郎, 宮崎 紀樹, 立石 和也, 金子 雅一, 春成 智彦, 黒木 識敬, 弓場 隆生, 安倍 大輔, 岩 ...
    2015 年 47 巻 12 号 p. 1421-1427
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

     手術歴や外傷歴のない27歳男性. 緩徐に増悪する腹痛が出現し, 腰痛, 両側下腿浮腫も出現したため当院救急外来を受診した. 造影CTで肝静脈合流部近位下大静脈~両側腎静脈内, 右第三腰静脈内に血栓像を認め, 両側総腸骨静脈領域までの連続する下大静脈血栓症の診断となった. 内視鏡検査では腸管内に特記すべき病変はなかった. 血液検査で抗核抗体, 凝固因子, プロテインS, プロテインCなどの血栓素因は正常範囲であったが, 血漿ホモシステイン (以下Hcy) 濃度が上昇しており高Hcy血症による血管内皮障害から下大静脈血栓症に至ったと考えられた. 葉酸とビタミンB6を補充しつつ抗凝固療法による保存的加療により症状は軽快し, 画像所見でも血栓は縮小した. 抗凝固療法継続中であり, 静脈血栓症の増悪・再発は認めていない. 高Hcy血症が原因と考えられる広範囲に及ぶ下大静脈血栓症は稀であり, 葉酸・ビタミンB6投与と抗凝固療法で保存的加療にて軽快した症例を経験した.

Editorial Comment
[症例]
  • 土屋 ひろみ, 木村 光, 丸山 周作, 荻原 真之, 堀込 実岐, 馬渡 栄一郎, 池井 肇, 山本 一博, 竹花 貞夫, 矢崎 善一
    2015 年 47 巻 12 号 p. 1429-1434
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

     症例は69歳の女性. 進行胃癌の手術予定中に呼吸困難を自覚し近医へ緊急入院. 造影CT検査で両側肺動脈に広範な陰影欠損を認め, 急性広範型肺塞栓症と診断され当院に搬送された. 前医より抗凝固療法開始したが次第に呼吸状態が増悪し心停止に陥った. 経皮的心肺補助 (PCPS) 下にカテーテルによる血栓破砕・吸引, 局所血栓溶解療法を施行した. その後進行胃癌からの出血がコントロールできず, PCPS補助下で根治的胃切除術を施行した. 周術期にPCPS回路内に血栓形成などを合併したが, 回路交換や抗凝固療法の調整によって術後は出血および血栓性の大きな合併症は認めずPCPSを離脱, 独歩退院した. 適切な凝固管理を行うことでPCPS作動下に進行胃癌に対する根治術が可能であった急性広範型肺塞栓症の1例を経験したので報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 籏 厚, 三宅 陽一郎, 大上 賢祐, 田中 哲文, 福岡 陽子, 上村 由樹, 岡部 学
    2015 年 47 巻 12 号 p. 1436-1441
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

     後天性第Ⅴ因子 (FV) インヒビターは極めて稀な疾患である. この疾患により大腸出血および血性心嚢液貯留を発症した僧帽弁狭窄症 (MS) 症例に対してFVインヒビター治療を行ったうえで人工弁置換術を施行する経験を得たので報告する. 【症例】69歳, 女性. 維持透析中, 人工肛門増設術後. 【既往歴】網膜色素変性症, 感染性心内膜炎, 大腸穿孔. 【家族歴】血液疾患を認めない. 【現病歴】僧帽弁狭窄症, 心房細動などで当院通院中. 大腸穿孔のために緊急開腹手術を施行された後に転院し維持透析を行っていたが心不全と貧血進行のため再転入院となった. 【入院後経過】ワルファリン中止, 新鮮凍結血漿, ビタミンK投与に反応しないプロトロンビン時間 (PT) および, 活性化部分トロンボプラスチン時間 (APTT) の延長が継続し, 入院第15病日に内視鏡的大腸出血止血術, 第19病日に心タンポナーデに対するドレナージ手術を施行した. 血液凝固系検査でPTおよびAPTT延長, トロンボテスト正常, FV活性は3%以下 (測定限界値以下) でcross mixing testにより短縮が認められないなどよりFVインヒビターと診断しプレドニゾロン (PSL) 投与を行った. FV活性は速やかに回復し, PSL漸減・中止後も維持されたためPSL中止後17日目に通常の人工心肺下に僧帽弁置換術を施行した. 術後経過は順調で術後20カ月の現在まで出血傾向を示すことなく経過している.

Editorial Comment
[症例]
Editorial Comment
[症例]
  • 法里 優, 五十殿 弘二, 酒本 暁, 河村 浩平, 谷垣 徹, 椿本 恵則, 坂谷 知彦, 木村 晋三, 松尾 あきこ, 井上 啓司, 藤 ...
    2015 年 47 巻 12 号 p. 1454-1460
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

     症例は69歳男性. 呼吸困難を主訴に当院に救急搬送され, 急性心不全にて入院となった. 経胸壁心エコー検査で大動脈弁の高度石灰化とそれに伴う開放制限を認め弁口面積は0.6cm2であり重症大動脈弁狭窄症を疑った. しかし, 左室駆出率25%と左室壁運動は低下しており, 大動脈弁通過血流速度2.76m/s, 平均圧較差17.4mmHgであり重症とは診断できず, 弁口面積の結果と合致しないことから低流量低圧較差大動脈弁狭窄症と考えられた. 正確な重症度診断のためにドブタミン負荷心エコーを行ったが, 高容量負荷でも一回心拍出量 (stroke volume ; SV) の増加は26%と収縮予備能は低下しており重症度評価は困難であった. 胸部単純CTにより大動脈弁石灰化スコアを測定したところ, 8808Agatston units (AU) と異常高値であったため重症大動脈弁狭窄症と判断し, 大動脈弁置換術を行った. 術中所見にて高度石灰化を伴う重症大動脈弁狭窄症を確認した. 心収縮予備能が低下しているためドブタミン負荷心エコーでも重症度評価が困難であった低流量低圧較差大動脈弁狭窄症に対して, 胸部単純CTによる大動脈弁石灰化スコアが重症度の判定に有用であった症例を経験したため報告する.

研究会(第34回 関東川崎病研究会)
HEART’s Report
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