心臓
Online ISSN : 2186-3016
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47 巻, 3 号
選択された号の論文の27件中1~27を表示しています
OpenHEART
HEART’s Selection(感染性心内膜炎をめぐる最近の話題)
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 頭司 良介, 筈井 寛, 清水 木綿, 八木 良樹, 後藤 拓也, 森 敏純, 大石 泰男, 秋元 寛
    2015 年 47 巻 3 号 p. 315-321
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
     院外心室細動 (ventricular fibrillation ; VF) への低体温療法の有用性が示され動物実験ではより早期からの導入が神経学的転帰を改善させることが示されている. 当院が所在する高槻市ではドクターカーを活用し, 医師による冷却輸液を用いた病院前からの低体温療法が可能である. 今回, 病院前診療でどの程度冷却輸液を投与できるかを, その効果および安全性とともに検討した. 研究対象期間に病院前で自己心拍再開後に低体温療法を導入した10例を対象とした. 冷却輸液投与可能時間は平均13分で輸液量は平均744mLであった. 初回膀胱温は35.1°C, 目標体温34±0.5°Cの到達時間は186分であった. 500mL以上投与した群では有意に初回膀胱温が低く (34.8 vs. 35.8°C, p=0.027), 目標体温到達時間が早い傾向にあった (126 vs. 326分, p=0.052). しかし, 神経学的転帰に差はなかった. 院外VF心停止で病院到着後に低体温療法を開始した8例と, 合併症について比較したが, 来院時に肺うっ血をきたす傾向があるも呼吸状態は悪化させず, 転帰にも影響を与えなかった. また難治性VFに対し経皮的人工心肺補助 (percutaneous cardiopulmonary support ; PCPS) 導入を前提に心停止中より病院前低体温療法導入を行った6例についても検討したが, 虚脱からPCPS導入が平均54分と時間的に厳しい条件ながら4例で良好な神経学的転帰を得た. 冷却輸液を用いた病院前低体温療法は日本の中規模都市でも安全かつ迅速に行うことができたが, 神経学的転帰の改善は明らかではなかった. 心停止中からの導入を含めさらなる研究が望まれる.
Editorial Comment
Editorial Comment
[症例]
  • 田内 祐也, 山田 光倫, 奥田 直樹, 渋川 貴規, 佐藤 尚司, 松田 暉
    2015 年 47 巻 3 号 p. 325-330
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
     症例は63歳女性, 約2年前からの労作時息切れを自覚していた. 今回感冒を契機に受診した医療機関にて初めて心雑音を指摘され当院紹介となった. 当院受診時身体所見では左第3肋間に明らかなthrillを触知し, 著明な連続性雑音を聴取した. エコーおよびCT検査にて右バルサルバ洞動脈瘤の右室内破裂と診断され, 外科的治療を行うこととなった. 手術は人工心肺, 心停止下に大動脈切開および主肺動脈切開の2方向からのアプローチにて右冠動脈洞から右室流出路へと伸びるWindsock型の瘤を切除し, 大動脈弁の構造変化をきたさないように注意し瘤口のパッチ閉鎖を行った, 術後経過は良好であった. 比較的症状の軽微であったバルサルバ洞動脈瘤破裂の1例を経験したため報告する.
[症例]
  • 下司 徹, 中野 顕, 綿貫 正人, 宮澤 豪, 池田 智之, 椙本 晃, 眞鍋 奈緒美, 佐藤 裕介, 黒江 彰, 長谷 行洋, 山田 英 ...
    2015 年 47 巻 3 号 p. 331-339
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
     60歳女性. 意識レベル低下, 嘔吐のため, 他院に入院. 同日深夜にTorsade de pointes (TdP) を繰り返し, ショック状態となり当院に救急搬送された. 心電図で接合部調律, 巨大陰性T波, QT延長を認め, 緊急心臓カテーテル検査の結果, たこつぼ心筋症と診断し, 人工呼吸器管理, 大動脈バルーンパンピング, 右室ペーシングを開始. 高熱, 乏尿に対しては, 敗血症性ショックの合併を疑い, 持続血液濾過透析, 広域抗生物質, γグロブリンの点滴静注を行った. その後, いったんは解熱, 血行動態安定したが, 第4病日夜に再度高熱とともにショック状態となり, TdPが再燃. 低ナトリウム血症, 副腎腫瘤の存在からチェックしていた入院時血液検査で, 第5病日に急性副腎不全 (副腎クリーゼ) と判明した. ステロイド補充を開始し, 速やかに解熱, 血圧上昇, 不整脈も消失した. 後に両側副腎摘出術を施行し, 乳癌切除後の転移性副腎腫瘍による副腎皮質機能障害と診断した.  副腎クリーゼは非特異的な全身症状とともに重篤な血行動態に陥りやすく, しばしば致死的な病態であるため, 治療抵抗性のショックをきたしている場合には本疾患も念頭に置き, 早急に精査治療を開始することが重要と考えられた. たこつぼ心筋症, 致死性心室性不整脈にて発症し, その原因が孤発性の転移性両側副腎腫瘍による副腎機能低下症と判明した稀有な症例であり, 若干の文献的考察を加え報告する.
Editorial Comment
[症例]
  • 臼井 英祐, 庄司 聡, 川初 寛道, 平尾 龍彦, 宮崎 亮一, 山下 周, 佐藤 弘典, 山口 徹雄, 原 信博, 柳下 敦彦, 梅本 ...
    2015 年 47 巻 3 号 p. 341-351
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
     重症大動脈弁狭窄症に対しバルーン大動脈弁形成術 (BAV) を施行した2症例を提示する.  症例1は73歳男性. 3度の冠動脈バイパス手術の既往のある透析患者であり, 高度大動脈弁狭窄症に伴う安静時胸痛, 透析困難症にて入院した. ユーロスコアⅡ : 13.8%と外科的大動脈弁置換術 (SAVR) のリスクは高く, 透析困難症からの離脱を目的としてBAVを施行した. 圧較差・症状は改善し, 施行11カ月を経過し外来通院中である.  症例2は63歳男性. 低心機能, 高度大動脈弁狭窄症に伴う初発のうっ血性心不全にて入院, 低心拍出症候群を呈し大動脈内バルーンパンピング (IABP) を要したが離脱困難であり, 第11病日にBAVを施行した. 以後血行動態は改善し, IABP離脱の上, 第54病日にAVRを施行, 第81病日に独歩退院した.  BAVの効果は不十分かつ一過性とされガイドライン上Class Ⅱbであるが, 特別な設備を必要とせず注意深く手技を行えば安全性も高く, 経カテーテル大動脈弁置換術 (TAVR) が可能となった現在, その有用性は再評価されており, 現在のBAVの適応について考察する.
Editorial Comment
Editorial Comment
[症例]
  • 長谷川 広樹, 村山 弘臣, 八神 啓, 岡田 典隆, 前田 正信
    2015 年 47 巻 3 号 p. 355-359
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
     肺底区動脈大動脈起始症は, 体動脈から肺循環へのシャントとなり, 肺血管抵抗を上昇させる. 一方, 左室性単心室には最終手術としてフォンタン手術を施行するが, フォンタン循環の成立には低い肺血管抵抗を必要とする. 今回, 左室性単心室に, 肺底区動脈大動脈起始症を合併した稀な症例に対し, 患側下葉切除した後フォンタン手術を施行した. 症例は2歳女児. 両房室弁左室挿入 (DILV) と診断され, 肺動脈絞扼術を経て, 両方向性グレン手術まで行われていた. その後, 腹部大動脈から右肺底区に灌流する異常血管を認め, 肺底区動脈大動脈起始症の診断がなされた. 肺血管抵抗低下, 容量負荷軽減を目的として, 右下葉切除を施行し, 平均肺動脈圧ならびにRpIの低下を認めた. その後フォンタン手術を施行し, 術後経過は良好であった. 患側肺血管抵抗の上昇により, 肺血流不均衡が生じることがある. 患側肺血管抵抗が高い状態で時間が経過すれば, 肺血管床の発育に左右差が生じる. その状態でグレン手術もしくはフォンタン手術を施行した場合, 左右不均衡の原因が解消されても, 非拍動流性の肺血流下では, 肺血管床の発育および左右不均衡解消には時間を要する. そのため, グレン手術前までに, 肺底区動脈大動脈起始症に対する治療を行うことが望ましい. 治療は, 一般的には患側下葉切除だが, 異常動脈の結紮やコイル塞栓は, 肺血管床が温存され, 特にフォンタン手術施行の場合は有効な方法である.
Editorial Comment
[症例]
  • 石山 将希, 杉本 匡史, 櫻井 正人, 加藤 慎也, 土肥 薫, 世古 哲哉, 山脇 弘二, 垣本 斉, 中村 真潮, 笠井 篤信, 須川 ...
    2015 年 47 巻 3 号 p. 361-366
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
     大動脈弁狭窄症および狭心症の診断を受けた77歳男性が大動脈弁置換術 (生体弁) および冠動脈バイパス術を他施設で施行された. 術後経過は良好であり術後24日に独歩退院となったが, 退院6日目に意識障害をきたし緊急入院となった. メチシリン耐性黄色ブドウ球菌による敗血症性ショック, 多臓器不全および汎発性血管内血液凝固症を合併しており集学的治療が開始されたが, 第3病日に脳梗塞による左片麻痺を合併し第7病日に死亡した. 臨床診断は人工弁置換術後感染性心内膜炎に合併した弁狭窄であり, 病理解剖の結果から術後短期間で疣贅とフィブリンが弁に沈着したために弁周囲組織の破壊を伴わずに弁の可動性低下および狭窄が進行したと推察された. 早期型の人工弁置換術後感染性心内膜炎は弁周囲組織の破壊を伴いやすい病態であるが, 疣贅の増大による弁表面の肥厚のみが進行する病態も念頭に入れて鑑別していく必要がある. また人工弁の疣贅については経胸壁心臓超音波検査を用いた評価には限界があり, 本症例は経食道心臓超音波検査を用いて感染性心内膜炎を評価することの重要性を示す教訓的な症例と考えられた.
Editorial Comment
[症例]
  • 須賀 俊博, 須賀 裕子, 長谷川 典子, 大山 啓太, 大沢 天使, 奥 裕子, 阿久澤 暢洋, 羽鳥 貴, 今井 邦彦, 北原 陽之助, ...
    2015 年 47 巻 3 号 p. 368-373
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
     原発性冠動脈解離は発症すると突然死や心筋梗塞を引き起こすが, 稀な疾患で原因や病態に不明の点が多い. 症例は65歳男性. 心肺停止状態で搬送され救命処置で心拍再開した. 急性冠症候群が疑われ緊急冠動脈造影を行うも狭窄や閉塞を認めなかった. 脳保護目的に低体温療法を行い, 意識・全身状態は改善したが, 心肺停止の原因は不明であった. 入院後の採血検査, 心電図, 心エコーの経過から心筋梗塞を発症していたことが疑われ, 冠動脈CTを行うと, 右冠動脈に緊急冠動脈造影で確認できなかった狭窄を認めた. 冠動脈造影再検査を実施したところ緊急時に認めなかった冠攣縮を2箇所認め, 血管内超音波で同部位に冠動脈解離を認めた. 冠攣縮による心筋梗塞, および冠攣縮による原発性冠動脈解離と診断し, 内服治療, 禁煙指導と植込み型除細動器の植込みを行った. 心肺停止・心筋梗塞を引き起こした冠攣縮によって原発性冠動脈解離が発症した可能性のある1例を経験したため報告する.
Editorial Comment
[症例]
  • 長田 巧平, 近田 明男, 金森 尚美, 山本 花奈子, 加藤 千恵子, 小見 亘, 佐伯 隆広, 長井 英夫, 阪上 学
    2015 年 47 巻 3 号 p. 375-381
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
     症例は60歳代男性. 慢性腎不全に対して維持透析中の2年前より薬剤抵抗性の心房細動発作を認め, 持続性心房細動に移行し, 労作時呼吸困難の悪化を認めるようになった. 有症候性の持続性心房細動であり, カテーテルアブレーション治療目的に入院した. 残存する腎機能を温存する目的で治療前の造影CTは施行せず, 治療時にも造影剤を用いず心腔内超音波 (CARTSOUNDTM) のみを用いて左房肺静脈の3次元画像を取得しアブレーションを施行した. 左房肺静脈の3次元画像は右房から取得した超音波画像に加え, 経中隔的に左房内に挿入し取得した画像も利用して作成した. この3次元画像をもとに両側肺静脈隔離および左房天蓋部焼灼を行った. 左房内の超音波カテーテルの操作には注意が必要であるが, 造影剤の使用が困難な症例に対するカテーテルアブレーションの戦略として有用と考え報告する.
[症例]
  • 大谷 俊人, 渡邊 紀晶, 西樂 顕典, 土肥 由裕, 北川 知郎, 日高 貴之, 栗栖 智, 中野 由紀子, 石田 隆史, 山本 秀也, ...
    2015 年 47 巻 3 号 p. 382-388
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
     症例は35歳女性. 出産2週間前に高血圧症を指摘されたが経過観察されていた. 出産後咳嗽や喀痰を認め, 徐々に増悪し, 産後3カ月目には安静時呼吸困難とそれに伴う不眠を認めるようになった. 近医受診したところ著明な心機能低下を認め, 周産期心筋症による心不全が疑われたため当院紹介, 緊急入院となった. 慢性心不全に対する標準治療に加え, 第11病日よりブロモクリプチンの内服を開始したところ, 急速に改善を認め退院となった. 入院時の左室駆出率は19.4%であったが, 3カ月後には63%と正常化した. 周産期心筋症の原因として16kDaプロラクチンの関与が指摘されており, それが微小血管障害と心筋細胞の融解を引き起こすといわれている. 抗プロラクチン療法による周産期心筋症への治療効果はこれまでも報告されているが, 抗プロラクチン療法に関する大規模な臨床試験は行われておらず, 今後さらなる研究が必要になると考えられる.
Editorial Comment
[症例]
  • 斧田 尚樹, 本条 崇行, 岩藤 泰慶
    2015 年 47 巻 3 号 p. 390-394
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
     症例は90歳, 女性. 心不全の原因精査のため左上腕動脈より冠動脈造影を施行したが, 止血の際に皮下血腫が生じた. 冠動脈造影2日後に穿刺部に血管性雑音を聴取し, エコーにて仮性動脈瘤を確認した. 用手およびエコープローベを用いて圧迫したが疼痛増強のため十分な圧迫はできなかった. 疼痛およびそれによる肘の屈曲障害のため手術を予定したが, 手術前日 (冠動脈造影6日後) に瘤が破裂した. しかし, 仮性瘤破裂により新たに生じた血腫が, 上腕動脈と瘤との交通部を圧迫閉鎖したため自然止血され, 仮性動脈瘤が退縮・消失したと考えられた.
Editorial Comment
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