心臓
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48 巻, 12 号
選択された号の論文の46件中1~46を表示しています
OpenHEART
HEART’s Selection(心臓再生治療の現状と展望)
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 中前 恵一郎, 桝田 出, 東 信之, 岩崎 新, 髭 秀樹, 今井 優, 戸田 勝代, 藤井 嘉章, 鮎川 宏之, 黒瀬 聖司, 武田 定 ...
    2016 年 48 巻 12 号 p. 1357-1363
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー

     脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は,心血管保護作用のほかに脂肪分解促進,インスリン抵抗性改善など代謝作用を有している.SGLT2阻害薬ダパグリフロジン(DAPA)の心機能や代謝・体組成への効果に対する心臓・代謝ホルモンとしてのBNPの意義を検討した.高血圧合併2型糖尿病患者24例(血中BNP 4 pg/mL以上,平均BMI 28.0 kg/m2,平均HbA1c 7.4%)にDAPA 5 mg/日を24週間投与し,心エコー,血液検査,体組成を測定した.生理活性を有する血中BNPは増加傾向(p=0.08)を示したが,非活性の血中NT-proBNP(p<0.05),NT-proBNP/BNPモル比(p<0.01)は低下した.心エコー拡張機能指標のE/e’や左房容積係数は改善し,空腹時血糖,HbA1c,血中インスリン値,体重,内臓脂肪面積,拡張期血圧は有意に低下した.血中BNPの増加は,脂肪分解,糖代謝改善作用などのBNPの生理活性が発揮されていることを示す可能性が考えられた.DAPAは,BNPの生理活性増強と心負荷軽減作用を介して,心機能や代謝に好影響を及ぼすことが示唆された.

[症例]
  • 佐藤 徹, 水谷 英夫, 村上 弘明, 今井 裕一, 谷口 正弥, 大久保 節也, 市川 毅彦, 中野 赳, 湯淺 右人, 伊藤 正明
    2016 年 48 巻 12 号 p. 1364-1370
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー

     症例は41歳,男性.幼少時より肥大型心筋症と診断され,近医で経過観察中であった.今回,動悸を主訴に紹介受診.肺炎による洞性頻脈と診断し,抗生剤加療にて動悸は軽快した.入院時の胸部CTにて肺動脈近傍に周囲に石灰化を伴う腫瘤様陰影を認めた.心臓CT,冠動脈造影での精査の結果,左回旋枝中枢側より発生する壁在血栓を伴う冠動脈瘤を認め,左前下行枝は起始部より完全に欠損していた.左回旋枝は心尖部を介して心筋前壁側へ回り込み,左前下行枝の近位部に接続し,そこから順行性に小さな左前下行枝を認めた.また右冠動脈も起始部より紡錘状に拡張していた.冠動脈奇形の多くは起始異常や冠動脈瘻であり,本例に認められた左冠動脈前下行枝欠損は冠動脈そのものの異常であり,頻度は極めて少ないとされる.今回われわれは,先天性左冠動脈前下行枝欠損に加え,冠動脈瘤を合併した肥大型心筋症の1例を経験した.肥大型心筋症に冠動脈瘤を合併した報告例はあるが,本例のようにさらに先天性冠動脈左前下行枝欠損を合併した例はわれわれが検索しえた範囲では他に報告はなく,今回の報告が初めての症例であると思われたため報告した.

  • 橋本 慎太郎, 上野 裕貴, 新北 浩樹, 松本 雄二, 園田 浩一朗, 瀬戸 裕, 久田 洋一, 波多 史朗
    2016 年 48 巻 12 号 p. 1371-1376
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー

     症例1:78歳女性.20XX年8月に胸痛が出現し近医を受診,造影CTで肺動脈本幹から右肺動脈にかけ造影欠損を認め当院に救急搬送された.急性肺血栓塞栓症を疑い,ウロキナーゼ,へパリン点滴を行うも第11病日の造影CTで造影欠損像は不変であった.ワルファリン内服で外来加療を行うも10月の造影CTで末梢側へ造影欠損像が進展した.慢性肺血栓塞栓症として心臓血管外科にて肺動脈内膜摘除術を施行したところ,病理所見より肺動脈肉腫の診断となった.本人の希望で保存的に加療され,局所再発,心膜浸潤を認め,翌年9月に永眠した.

     症例2:52歳女性.20YY年5月より歩行時の呼吸困難感を自覚していた.7月に職場検診のPET-CTで,肺門部に異常集積を認め,当院呼吸器内科を受診した.造影CTで右肺門部に造影欠損を認めた.肺動脈腫瘍を疑い血管内生検を施行し,肺動脈肉腫の診断となった.10月よりADR単剤で化学療法を施行するも腫瘍の増大を認め,翌年1月に右肺全摘術を施行され,平滑筋肉腫の診断となった.2月に無症候性の脳転移を認め,定位放射線照射施行するも,新規脳転移巣の出現とともに麻痺・痙攣を認めた.肺炎を併発し7月に永眠した.

     肺動脈肉腫は進行性の悪性腫瘍で早期診断が重要だが,稀な疾患で肺血栓塞栓症との鑑別が困難である.本2症例の経過を踏まえ,肺動脈肉腫を早期診断するための肺血栓塞栓症との鑑別点につきフローチャートを作成し,文献的考察を加え報告する.

  • 中川 頌子, 澁谷 真彦, 河合 健志, 住吉 晃典, 高橋 怜嗣, 正井 久美子, 松本 愛加, 梶山 哲也, 宮本 裕治, 増山 理, ...
    2016 年 48 巻 12 号 p. 1377-1382
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー

     症例は基礎疾患をもたない48歳女性.入院6日前より全身倦怠感と39℃の発熱があった.入院の前日に左眼痛と視力低下があり,眼内炎の疑いで眼科に入院.緊急で硝子体手術を施行した.血液培養と硝子体液の培養よりStreptococcus dysgalactiaeが検出され,眼内炎の原因精査で施行した心エコーで三尖弁に疣贅の付着を認め,感染性心内膜炎の診断で抗生剤加療を開始した.しかし抗生剤抵抗性であり,第5病日に施行した胸部CTで新たに両側肺野にまだらに結節影を認め,胸水貯留も出現した.敗血症性肺塞栓症(Septic Pulmonary Emboli;SPE)を疑い,第10病日,三尖弁修復術を施行した.術後経過は良好であり,術後33日目に退院となった.

  • 石破 光咲子, 岩田 周耕, 黒嶋 健起, 井澤 和眞, 八巻 多, 酒井 博司, 芹川 真哉, 小川 裕二
    2016 年 48 巻 12 号 p. 1383-1388
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー

     症例は50歳代男性.発作性心房細動に対するⅠa群薬による薬物療法の効果が不十分となり,拡大肺静脈隔離術(EEPVI)を行った.隔離術には成功したが,術後3日目より食後の胸部灼熱感,38℃台の発熱が出現し,4日目に行った上部消化管内視鏡検査では胸部食道の一部に白色変性が認められた.食道熱傷を起こしていると考え,絶食で経過観察したところ,解熱し胸部症状の改善も得られたが,術後13日目の内視鏡検査では食道熱傷がさらに潰瘍化していた.また,単純胸部CTでは食道外縦隔に空泡が,食道造影CTでは食道外に造影剤の漏出が認められた.縦隔食道瘻と考えられたが,縦隔炎の程度は軽いと思われ,絶食やプロトンポンプインヒビター(PPI)内服,抗生剤点滴などの継続で解熱し,症状も改善が得られた.その後1週間毎に食道造影CTにて経過を追い,術後35日目の食道造影CTで食道外への造影剤の漏出はみられなくなり,内視鏡検査でも食道熱傷の治癒を確認した.食事を再開した後も臨床経過に問題なく,術後61日目に自宅退院した.PVIの合併症である食道潰瘍の治癒過程を詳細に画像評価した症例であり,文献的考察を含め報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 杉原 隆太, 松尾 浩志, 竹田 泰治, 平田 明生, 柏瀬 一路, 樋口 義治, 安村 良男
    2016 年 48 巻 12 号 p. 1391-1397
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー

     症例は79歳男性.2011年に左浅大腿動脈閉塞病変に対してベアメタルステントを留置された.2013年には下肢動脈エコーでステント内閉塞が認められ内服加療強化したが,2015年に症状の増悪が認められたことから,血管形成術を行う方針とした.

     病変のワイヤクロスに難渋し,0.035 inch stiffness wire,debulking deviceを用いても病変を通過できず,最終的に40 gの先端荷重のtapered wireで通過した.加えてバルーン拡張にも難渋し,最終的にはスコアリングバルーンの高圧拡張により拡張が得られた.血管内超音波検査で病変を評価するとステント内に新たな高度石灰化が認められ,治療に難渋した要因と考えられた.今回,左浅大腿動脈のステント内に新たに高度石灰化病変が形成された1症例を経験したので報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 中田 円仁, 比嘉 南夫, 眞志取 多美, 間仁田 守, 旭 朝弘, 田端 一彦
    2016 年 48 巻 12 号 p. 1400-1404
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー

     症例は59歳女性.冠動脈の危険因子として高血圧しか有さないが,運動中に出現した胸痛を主訴に来院された.心電図でⅡ,Ⅲ,aVf誘導のST上昇を認め,急性心筋梗塞の診断で経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention;PCI)を施行した.入院時の血液検査でhigh-density lipoprotein cholesterol(HDL-C) 134 mg/dLと高値であった.Cholesteryl-Ester Transfer Protein(CETP) 1.4 μg/mLと低くHDL-Cが高い原因はCETP欠損症が原因と診断した.冠動脈の危険因子としてlow-density lipoprotein(LDL)-Cに注意すべきはもちろんだが,100 mg/dLを超えるHDL-Cを認めた場合にCETP欠損症を考慮する必要があり,CETP欠損症の場合にはHDL-Cの高値が冠危険因子となる可能性があることに注意が必要である.

Editorial Comment
[症例]
  • 米田 浩平, 高橋 健文, 岸 宏一, 井上 広基, 別宮 佳奈子, 村上 尚嗣, 金崎 淑子, 新谷 保実, 岩﨑 優
    2016 年 48 巻 12 号 p. 1407-1413
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー

     症例は40歳代女性.2013年5月頃より労作時の呼吸困難を自覚していたが,徐々に増悪し夜間の起坐呼吸も出現したため6月に当院外来を受診した.胸部X線では心拡大と肺うっ血を認め,心エコーでは軽度の左室肥大とびまん性の壁運動低下を認めた.入院の上,カルペリチド等の投与を行ったが入院後14時間で約12 Lの多尿があり,Na 155 mEq/Lと上昇を認めたため飲水制限を解除,カルペリチドも中止した.問診によると中学生頃から1日10 L以上の多飲があり尿崩症が疑われた.高浸透圧血症時に尿浸透圧の低下を認め,血清ADHは測定感度以下と低値であった.頭部MRIにて後葉高信号の消失が認められ中枢性尿崩症と診断した.デスモプレシンの点鼻投与を開始後,尿量・飲水量ともに著明に改善し,口渇や夜間尿などもほぼ消失,心不全症状も改善したため退院された.

Editorial Comment
研究会( 第35回 関東川崎病研究会 )
HEART’s Report(平成26年度日本心臓財団研究奨励 研究報告)
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