心臓
Online ISSN : 2186-3016
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48 巻, 1 号
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OpenHEART
HEART’s Selection(循環器ガイドラインの功罪)
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 布廣 龍也, 黒部 昌也, 南 一敏, 古殿 真之介, 内田 雄三, 中嶋 寛
    2016 年 48 巻 1 号 p. 34-41
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

     急性心筋梗塞例では, 入院時高血糖は院内死亡の独立した危険因子と考えられている. 一方, 入院時高血糖と長期予後の関連を検討した報告は少ない. 本研究では, 急性心筋梗塞患者の入院時高血糖が観察期間の総死亡, 主要心事故 (MACE) に及ぼす影響を検討した.

     方法 : 2003年6月から2009年12月まで当院に, 発症24時間以内に来院し, PCIを施行した心筋梗塞患者414名を対象とした. 来院時血糖値を180mg/dLを基準に高血糖群168名, 非高血糖群246名の2群とした. この2群間で, 全死亡, MACEの発生頻度を比較した. 次に, 来院時血糖値, 年齢, 高血圧, 喫煙, 脂質異常症, 糖尿病, CPK最高値, クレアチニン値, 病院までの到着時間で調査したコックス回帰を用いて, 全死亡, 心臓死およびMACEの予測因子を求めた. また, 生存率の比較を行った.

     結果 : 観察期間5.8年の中で, 非高血糖群では, 総死亡17.9%, 心臓死8.5%, MACE 19.9%であった. また高血糖群では, 総死亡27.3%, 心臓死16%, MACE 28.5%であった. 多変量コックス回帰では, 入院時高血糖が総死亡とMACEの予測因子であった (ハザード比 : 1.90, P=0.014, 1.88, P=0.014). 総死亡だけでなく, MACEに対する長期予後を調べた. 高血糖群は, 総死亡 (Log rank P=0.017) もMACE (Log rank P=0.034) も, 長期予後が悪かった.

     結語 : 入院時高血糖が急性心筋梗塞患者の総死亡, 心臓血管死, MACEのリスク上昇と関連し, 長期予後に影響すると思われた.

Editorial Comment
[症例]
  • —99パーセンタイル値の挙動を含めて—
    丸山 隆久, 町田 圭介, 小林 隆洋, 笠井 俊夫
    2016 年 48 巻 1 号 p. 43-50
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

     目的 : 昨今のガイドラインでの急性心筋梗塞 (AMI) の定義では, トロポニン値が変動し少なくとも1回で「正常者の上限99パーセンタイル値」を超えることが求められる. 来院時採血における高感度トロポニンT (hsTnT) (Roche社) のAMI診断能, これに影響する要因, およびメーカー推奨の99パーセンタイル値の挙動について評価した.

     方法と結果 : 胸部症状を主訴とした救急外来受診時にhsTnTが測定された連続766名において, AMI (73名) に対する診断能をROC曲線にて検討した. 患者全体で最適カットオフ値は0.021ng/mL (感度82%, 特異度70%) であり, 99パーセンタイル値 (0.014ng/mL) をカットオフとすると, 感度93%, 特異度57%であった. サブグループにおいて, 年齢75歳以上群 (354名), eGFR 60mL/分/1.73m2未満群 (351名), 急性心不全合併群 (135名), BNP 100pg/mL以上群 (241名) では, 最適カットオフ値は各々, 0.120, 0.130, 0.114, 0.120ng/mLと高く, 99パーセンタイル値をカットオフとすると特異度が顕著に低下した (各々, 30, 34, 7, 12%).

     結論 : 高齢, 腎機能低下, 急性/慢性の心不全患者では, AMI診断におけるhsTnTの解釈に際して偽陽性の増加に注意が必要である.

Editorial Comment
[症例]
  • 小野 公誉, 黒田 弘明
    2016 年 48 巻 1 号 p. 52-55
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

     症例は79歳, 女性. 64歳の時, 大動脈弁狭窄症兼閉鎖不全症に対し, 生体弁による大動脈弁置換術を受けた. 術後14年目に労作時動悸を自覚するようになり, 心不全治療が開始された. 同じころから認知機能低下を認めるようになった. その3カ月後にはNYHAⅣ度となり, 精査の結果, 大動脈弁狭窄症兼閉鎖不全症の再発と, 僧帽弁閉鎖不全症Ⅲ度, 三尖弁閉鎖不全症Ⅳ度, 上行大動脈拡張 (49mm), 発作性心房細動と診断された. 手術適応とされたが, 認知機能低下が進行し躊躇していたところ, るい痩による消化管通過障害から経口摂取不能となり全身状態が悪化した. ようやく再手術を受けることに同意し, 生体弁による大動脈弁再置換術と僧帽弁形成術, 三尖弁輪形成術および上行大動脈人工血管置換術を受けた. 幸い術後経過は良好で, 認知機能も改善し, 独歩退院した. 摘出した生体弁には, 弁尖硬化だけでなく3カ所の亀裂を認めた. 生体弁劣化による高齢での再手術は高リスクとなりうることから, 60歳台の症例に生体弁を選択する場合には, そのことを十分に考慮する必要がある.

[症例]
  • 伊東 祐紀, 川崎 達也, 張本 邦泰, 佐藤 良美, 本田 早潔子, 三木 茂行, 神谷 匡昭, 川田 公一
    2016 年 48 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

     左室と右室に血栓が同時に形成される病態は極めて稀で, その臨床的特徴や予後は十分には知られていない. 今回, 両心室に血栓を生じた症例の経験を契機に, 同様の症例報告を系統的に調査した. 自験例は心サルコイドーシスと考えられる慢性左心不全の55歳男性で, プレドニン内服中に左室心尖部と右室心尖部に血栓が出現した. ヘパリンを併用したワルファリンの導入で, 明らかな塞栓症を生じることなく血栓は消失あるいは縮小した. われわれの文献的検討で, 両心室に血栓を同時に生じた31例の報告を確認した. 基礎疾患は拡張型心筋症 (7例) や心筋梗塞 (6例), 産褥心筋症 (5例) が比較的高頻度であった. 心サルコイドーシスは2例の報告があり, 本例と同様にいずれもステロイドを内服中であった. 両室血栓に対して外科的摘出を選択した4例中1例と内科療法を選択した26例中5例の計6例が経過中に死亡した. 治療方法が不明であった1症例は血行動態が破綻した心室頻拍に対して電気的カルディオバージョンを施行されていた. 一方, 救命できた25例中9例に塞栓症が生じ, その主な内訳は肺塞栓4例, 脳塞栓3例, 下肢動脈塞栓3例, 冠動脈塞栓2例であった (重複症例あり). 両心室血栓を生じた症例の予後は一般に不良で, 塞栓症を発症する頻度が高いと考えられた.

[症例]
  • 長岡 宣幸, 嵐 弘之, 春木 伸太郎, 岡山 大, 中尾 優, 指田 由紀子, 南 雄一郎, 水野 雅之, 山口 淳一, 志賀 剛, 萩原 ...
    2016 年 48 巻 1 号 p. 62-68
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

     症例は, 82歳, 女性. 1年半前, 閉塞性肥大型心筋症 (hypertrophic obstructive cardiomyopathy : 以下HOCM) と診断された. β遮断薬が開始となり, 左室流出路 (left ventricular outflow tract : 以下LVOT) 圧較差104mmHgから28mmHgと改善し経過観察となった. 1カ月前, 閉塞性黄疸を発症し, 当院に入院した. 入院時の心エコー検査ではLVOT圧較差は37mmHgであった. 入院約1カ月後, 胸痛, 呼吸困難感を自覚し, 心電図でV1−3誘導でのST上昇, 胸部X線で肺血管陰影増強を認めた. 冠動脈造影検査では有意な狭窄はなく, 急性冠症候群の可能性は否定的であったが, 左室造影検査で心尖部の壁運動が低下し, 心基部は過収縮の状態であった. 冠動脈支配と一致しない壁運動低下を認め, HOCMを有する患者がたこつぼ心筋症を合併したものと判断した. 心臓カテーテル検査では, peak to peakで約70mmHgの圧較差を認め, 心エコーでも, LVOT平均圧較差84mmHg, 入院時にはなかった収縮期僧帽弁前方運動 (systolic anterior motion : 以下SAM) と僧帽弁閉鎖不全の増悪所見を認めた.

     その後11日経過した時点での経胸壁心エコー検査では, 心尖部の壁運動は改善し, LVOT狭窄, SAMは再び改善した. 経過からは, LVOT狭窄が, たこつぼ心筋症の発症を契機に増悪したものと考えられた. 今回われわれは, HOCMにたこつぼ心筋症を合併した症例を経験したため報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 庄司 圭佑, 横井 宏和, 柳内 隆, 西川 真理恵, 伊藤 大輔, 木村 雅喜, 木下 英吾, 白石 淳, 兵庫 匡幸, 島 孝友, 沢田 ...
    2016 年 48 巻 1 号 p. 70-76
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

     症例は12年前に感冒後の胸痛・心筋障害にて入院歴のある28歳男性. 感冒にて総合感冒薬を内服し2日後の早朝に胸痛が出現したため当院を受診した. 心電図にてⅡ, Ⅲ, aVF, V3−6誘導でST上昇, 心臓超音波検査にて心尖部から後側壁の壁運動低下を認めた. 急性冠症候群の疑いで緊急冠動脈造影を行ったが有意狭窄を認めなかった. 入院後のpeak CPKは1139IU/Lで胸痛と心電図変化は徐々に改善した. 本症例では12年前にも同様の経過と臨床所見を呈しており, 急性心筋炎やたこつぼ心筋症よりも冠動脈攣縮による心筋障害が強く疑われた. 第3病日の心筋シンチグラフィでは心尖部を中心とした後側壁領域の心筋血流と心筋脂肪酸代謝の乖離所見を認め, 冠攣縮による心筋障害と矛盾しない所見であった. 第6病日に実施したエルゴノビン誘発試験で冠攣縮は陰性であったが, 左冠動脈の造影遅延を認め, 今回と過去の臨床経過と併せて冠微小血管攣縮と診断した. また12年前にも同様の総合感冒薬を内服した後に胸痛・心筋障害を呈しており, 含有成分のうちエフェドリンが冠微小血管攣縮の誘因となった可能性が示唆された. 総合感冒薬服用後に胸痛, 心筋障害を繰り返した病態として, 冠微小血管攣縮が存在することも念頭において治療にあたる必要があると考えられた.

Editorial Comment
[症例]
  • 伊東 勘介, 磯貝 俊明, 森 大, 田中 博之
    2016 年 48 巻 1 号 p. 78-86
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

     症例は48歳, 男性. 屋外歩行中に突然心肺停止し, 後方に卒倒した. バイスタンダーによる心肺蘇生が開始され, 自動体外式除細動器による除細動1回で心拍再開し, 当院に救急搬送された. 来院時心電図でⅡ, Ⅲ, aVF誘導でST上昇と頭部CTで外傷性頭蓋内出血を認めた. ST上昇型心筋梗塞と診断し緊急冠動脈造影を施行したところ, 回旋枝に完全閉塞を認めた. 頭蓋内出血は活動性があり, 急性期に抗血小板薬や抗凝固薬の投与により出血が増悪すると判断したため, 血栓吸引とバルーン拡張のみで再灌流治療を行い, ステントは留置しなかった. 外傷性脳出血には頭蓋内圧センサーを留置して管理した. 入院中に心血管イベントは起こらずに経過した. 本症例では, 急性心筋梗塞に外傷性頭蓋内出血を合併したが, 冠動脈閉塞に対しては, あえてステント留置は行わずに, 血栓吸引とバルーン拡張のみの治療を行い, 治療後頭部疾患に対して脳神経外科医による厳重な管理を行うことで, 幸いにも良好な経過を得た. 活動性出血を合併する急性心筋梗塞の治療では, 安易にステント留置をして, 通常の抗血小板療法および抗凝固療法を行うと出血が増悪するリスクが高いため, 急性期の治療方針の決定に工夫を要すると考えられた.

Editorial Comment
[症例]
  • —刺激伝導系連続切片標本による不整脈・伝導障害基質の解析—
    黒澤 毅文, 松山 高明, 宮本 康二, 松本 学, 大郷 恵子, 池田 善彦, 相庭 武司, 鎌倉 史郎, 草野 研吾, 植田 初江
    2016 年 48 巻 1 号 p. 88-94
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

     57歳女性. 45歳時に多発筋炎と診断されステロイドの内服を開始された. 52歳時から心室期外収縮による動悸に対し, 抗不整脈薬内服を開始された. 54歳時に当センターに入院し, 多発筋炎による二次性心筋症と診断されて外来通院していた. 心電図では二束ブロックを認めていたが, 57歳時に心室頻拍/心室細動から心肺停止となり, 心機能低下も増悪していたため, 再同期機能付き植込み型除細動器を適用した. しかし, その後も心室頻拍が頻回に出現し, 抗不整脈薬では抑制できず, カテーテルアブレーションを行った. 高周波通電は心室頻拍中に拡張期電位の記録される左室側の心室中隔部を中心に施行され心室頻拍は停止した. 2週間後に異なる波形の心室頻拍が出現したが, 心不全の改善とともに出現しなくなった. 1年後, 全身倦怠感が出現し, 心不全増悪による症状と判断して入院となったが, 入院中に心肺停止となり, 心肺蘇生の効果なく死亡した. 病理解剖では心臓は左脚前枝や右脚が含まれる左室前壁 (両室接合部) ~側壁基部に多発筋炎の炎症後の変化と考えられる高度の置換性線維化が広がり, 二束ブロックであったことに矛盾しなかった. また, 心室中隔基部や後乳頭筋付近の心内膜面にはカテーテルアブレーションの通電瘢痕を認め, それに隣接した心室中隔深層では不均一な網状の線維化病変があり, この線維化病変は心室頻拍を発生させる基質である可能性が示唆された.

セミナー(心臓財団虚血性心疾患セミナー)
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