心臓
Online ISSN : 2186-3016
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48 巻, 9 号
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OpenHEART
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HEART’s Original
[臨床研究]
  • 立木 秀一, 近藤 武, 天沼 誠, 新井 雄大, 森田 ひとみ, 松谷 英幸, 関根 貴子, 高柳 知也, 石坂 和真, 佐野 始也, 高 ...
    2016 年 48 巻 9 号 p. 1020-1032
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/09/15
    ジャーナル フリー

     目的 : 欧米では閉塞性冠動脈疾患の診断, 予後予測に冠動脈カルシウムスコア (Agatston Score) が有用との報告が多数あるが, 本邦ではAgatston Scoreに関する報告は少ない. そこで日本人の閉塞性冠動脈疾患の推定におけるAgatston Scoreの意義を多数例で検討した.

     方法 : 何らかの理由で冠動脈疾患が疑われて冠動脈CT血管造影 (CCTA) を実施した連続6,965例 (男/女=3583/3382, 平均年齢66±12歳) を対象とし320列MDCT (Aquilion One) を用いてAgatston Scoreを算出し, その後CCTAを実施した. 侵襲的冠動脈血管造影 (ICA) の施行例ではその結果を真とし (ICA群), ICA未施行例ではCCTA所見を真とした (ICA+CCTA群). ICA+CCTA群はICAを行った症例を含むCCTAを行った全症例である.

     結果 : ICA+CCTA群のAgatston ScoreのROC解析におけるarea under curve (AUC) は0.824と高値で, 最適cut off値は>65であり, 陽性的中率45.0%, 陰性的中率92.1%, 正診率76.0%であった. 閉塞性冠動脈疾患の有病率 (Y) とloge (Agatston Score) の片対数グラフで両者の関係を検討すると, ICA+CCTA群では, Y=-40.574+15.202 loge (Agatston Score), r=0.993, p<0.0001の有意な正相関が得られた. ICA+CCTA群において外来レベルで得られる情報 (性別, 年齢, body mass index (BMI), 典型的な狭心症状の有無, 家族歴, 高血圧, 脂質代謝異常, 糖尿病, 喫煙) にAgatston Scoreを加えて多変量ロジスティック解析を行ったところ, BMI以外はすべて有意な独立した閉塞性冠動脈疾患の危険因子であった.

     結語 : ICA+CCTA群ではAgatston Score (>64) により高い精度で閉塞性冠動脈疾患を診断できた (正診率76.0%). また, Agatston Scoreは従来からの閉塞性冠動脈疾患の危険因子と独立した有意な冠因子であった. さらにAgatston Scoreと他の危険因子と組み合わせて冠動脈狭窄 (+) である確率を計算する式を導き出した.

[臨床研究]
  • 武田 守彦, 高田 剛史, 佐竹 洋之, 菅野 道貴, 兼光 伯法, 柴 信行
    2016 年 48 巻 9 号 p. 1033-1041
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/09/15
    ジャーナル フリー

     ナトリウム (Na) 排泄型利尿薬を含めた濃厚な薬物治療が奏効せず, 気管内挿管・人工呼吸管理を要した重症うっ血性心不全症例に対し, トルバプタン (TLV) を経管投与した7例につき有効性と安全性を検討した. 平均年齢73歳で, 初期投与量は7.5mg/日とした. 投与開始から72時間は血清Na値を4時間ごとに計測し, 高Na血症に注意し適宜輸液を行った. 投与後1週間の期間中, 平均1日尿量は増加し, 腎機能の有意な悪化を認めず, 血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド値は有意に低下した. 全症例が回復して人工呼吸器より離脱し得た. 高Na血症は1例に認めたのみで, 神経学的合併症は認めなかった. 従来TLVの投与が禁忌とされてきた, 自己飲水不能な重症心不全患者でも, 適切なモニタリングを行えばTLVを安全かつ効果的に使用できる.

Editorial Comment
[症例]
  • 矢崎 恭一郎, 森 文章, 網代 洋一, 渡邉 真広, 塚本 圭, 齋藤 貴士, 溝渕 景子, 岩出 和徳
    2016 年 48 巻 9 号 p. 1043-1048
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/09/15
    ジャーナル フリー

     症例は高血圧歴を有する64歳男性. 繰り返す運動後失神を認めたため精査加療入院となった. トレッドミル, ホルター心電図, 各種画像検査では失神をきたすような不整脈や器質的心疾患は認められなかった. 心エコー上S字状中隔を呈していたが左室内に加速血流は認めなかった. 心臓カテーテル検査にて左室-大動脈同時圧測定を行った. 安静時には同様に圧較差を認めなかったが, イソプロテレノール (ISP) 0.01μg/kg/分にて平均圧較差53.2mmHgが顕在化し, 同時に施行した左室造影では僧帽弁閉鎖不全がⅢ度に増悪した. その他の検査所見と併せ, 運動後失神としての原因はS字状中隔による流出路狭窄の顕在化と判断した. β遮断薬内服および生活指導を行い, 以後半年間失神や前失神は認めていない. ISPやドブタミン負荷で圧較差が顕在化するS字状中隔症例を経験するが, 本症例のように左室-大動脈同時圧測定により直接証明しえた症例は貴重であるため, ここに報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 須藤 麻貴子, 片岡 俊哉, 大平 奈緒, 小澤 牧人, 田中 康史, 松本 大典, 米田 直人, 高石 博史, 陌間 亮一, 丸尾 伸之
    2016 年 48 巻 9 号 p. 1050-1054
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/09/15
    ジャーナル フリー

     症例は30歳女性. 双胎妊娠のため当院産科通院中. 妊娠23週3日に切迫早産のため入院し子宮収縮抑制薬の加療を実施していた. 妊娠26週時に妊娠高血圧症と診断, 降圧加療を開始した. 妊娠27週3日より下腿浮腫, 呼吸困難感が出現した. 2日後呼吸状態が悪化したため緊急帝王切開術施行し原因精査・加療目的で当科紹介となった. 胸部X線にて右下肺にうっ血像, 経胸壁心エコーで僧帽弁後交連部から左房後壁に吹く高度僧帽弁逆流を認め, これに伴う片側性肺水腫と診断した. 降圧・利尿薬加療にて自覚症状, 心不全徴候は速やかに改善した. 産後11日目の経胸壁心エコーでは軽度~中等度の僧帽弁逆流を認めるのみで, 経食道心エコーでも僧帽弁後交連部の逸脱は認めなかった. 妊娠中の心拍出量は非妊娠時と比較し30~50%増加し, 双胎妊娠では単胎妊娠と比較しさらに20%増加する. 周産期の肺水腫発症は全妊娠中の0.05~0.5%と稀だが, 妊娠高血圧症や双胎妊娠, 子宮収縮抑制薬投与例では発症率が増加すると報告されている. 本症例では, 僧帽弁後交連部の結合織の脆弱性を背景にして, 圧・容量負荷の増大により偏位の強い逆流を生じ片側性肺水腫をきたしたものと推察する. 本症例を通じ周産期の循環動態の変化について文献的考察を加え報告する.

Editorial Comment
Editorial Comment
[症例]
  • 南 健太郎, 熊谷 浩司, 菅井 義尚, 大塚 義満, 千賀 通晴, 武 寛, 沓澤 大輔, 矢野 利明, 佐々木 健人, 中村 紘規, 内 ...
    2016 年 48 巻 9 号 p. 1058-1064
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/09/15
    ジャーナル フリー

     症例は21歳の男性. 18歳時から運動時に強い動悸が出現することを自覚していた. 20歳時, 安静時12誘導心電図で心房細動 (AF) を認め当院へ紹介. 胸部X線, 胸腹部CT検査で完全内臓逆位を認めた. 労作時の動悸症状が強く, 2014年11月にカテーテルアブレーションにて両側拡大肺静脈隔離を施行した. 術後しばらくして労作時動悸症状が再発し, ホルター心電図でAFへ移行する多発性心房性期外収縮 (PAC) が記録された. 2015年4月, 再発性発作性心房細動に対してアブレーション2nd-sessionを施行. 両側肺静脈隔離を再施行したがPACは頻発しており, Ensite systemを用いてPACのactivation mappingを作成すると, 心房中隔に位置する部位からcentrifugal patternを呈するfocal activityを認めた. 左側に位置する右房側から同部位にirrigationカテーテルにて通電を施行しPACは消失, AFの誘発性も消失した. 完全内臓逆位の若年性心房細動症例に対して, 非肺静脈巣状興奮の起源を同定し, アブレーションにより治療しえた症例を経験したので報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 大野 睦記, 二川 圭介, 岡部 雄太, 伊藤 勘介, 辻 正樹, 巴里 彰吾, 小木曽 正隆, 西村 睦弘, 永田 健一郎, 磯貝 俊明, ...
    2016 年 48 巻 9 号 p. 1066-1071
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/09/15
    ジャーナル フリー

     症例は78歳男性, 心房細動, 肥大型心筋症 (hypertrophic cardiomyopathy ; HCM) の診断で近医にかかりつけ中であった. 経過観察中の某日に, 動悸症状を自覚し救急隊要請となった. 他院に救急搬送となり病着時のモニター持続性心室頻拍を認め, かつショックバイタルであり, 電気的除細動を施行され洞調律化を得た. その後精査加療目的のため, 当院紹介受診となった. 当院での各種検査より, 心室中部閉塞性肥大型心筋症 (mid ventricular obstruction ; MVO) の診断に至った.

     本症例はHCMに心房細動を合併した症例であり, 抗不整脈薬としてアミオダロンの内服を開始し, また持続性心室頻拍によるショックの既往も認めていたため, 植込み型除細動器の植込みを行った. 入院中の左心カテーテル所見より, 治療前の左室内圧較差は70mmHgと高値であったが, アミオダロンの内服加療継続により3カ月後には23mmHgにまで改善していた.

     本症例は, これまでの一般的な内服加療法とは異なるアミオダロンの内服継続により, 圧較差の軽減を得ることができた症例を経験したためここに報告する.

Editorial Comment
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[症例]
  • 住野 陽平, 土谷 健, 小澤 貴暢, 高宮 智正, 服部 英二郎, 澤田 三紀, 徳永 毅
    2016 年 48 巻 9 号 p. 1074-1080
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/09/15
    ジャーナル フリー

     症例は69歳の男性. 胸痛で近医を受診し, 心電図上ST上昇を認め当院へ救急搬送された. 当院到着時JCSⅠ-1, 血圧65/30mmHgとショックバイタルで, 心電図上完全房室ブロック, 46bpmの房室接合部調律でⅡ, Ⅲ, aVF誘導でST上昇を認めた. 大動脈バルーンパンピング (Intra-aortic balloon pumping ; IABP), 一時的ペースメーカを挿入し冠動脈造影を施行した. 左前下行枝 (Left anterior descending coronary artery ; LAD) #6入口部, 回旋枝 (Circumflex branch ; Cx) #11が完全閉塞でLAD末梢は側副血行による血流を認めた. 右冠動脈 (Right coronary artery ; RCA) も#1で完全閉塞しており血栓性病変が疑われた. 心電図変化と造影所見からRCAが今回の責任病変と診断し同部位へ血行再建を開始した. 病変に前拡張をかけ遠位から3.5mmの薬剤溶出性ステントを2本留置し, 後拡張を行った. Door to balloon timeは49分であった. その後LADへガイドワイヤーの通過を試みたが, 病変が固く難渋した. 術中に心室細動が出現し電気的除細動200 Jで心拍再開した. 急性期の血行再建は継続困難と判断, 集中治療室へ入室し, 挿管, IABP管理, カテコラミン投与で循環動態を維持し気絶心筋の回復を待つ方針とした. その後, 循環動態は徐々に改善し第8病日IABP離脱, 第11病日抜管し神経学的後遺症なく回復した. 心臓超音波上も側壁を中心に壁運動が改善し, 第54病日2枝バイパス (左内胸動脈—LAD, 大伏在静脈—Cx) を施行, その後心機能は軽度改善し現在は自転車に乗れるまでに運動機能も改善した. 慢性完全閉塞に合併した急性心筋梗塞は非常に重症であり, 主要2枝の慢性完全閉塞に合併した急性心筋梗塞の長期の生存例は非常に稀である. 本症例はDoor to balloon timeの短縮と責任病変の適切な判断, 迅速な血行再建により救命することができた.

Editorial Comment
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[症例]
  • 松田 祐治, 米津 太志, 鈴木 誠, 松村 昭彦, 橋本 裕二, 磯部 光章
    2016 年 48 巻 9 号 p. 1083-1089
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/09/15
    ジャーナル フリー

     症例は84歳男性. 呼吸困難を主訴に外来受診された. 診察所見, 検査所見から心不全と診断し, 入院となった. その際施行した採血で高感度トロポニンI上昇と心エコーで下壁基部の新規に壁運動低下が認められていたため, 心不全加療後に待機的に冠動脈造影検査を施行した. 右冠動脈 (#2) に軽度狭窄を認め, 同病変より末梢は造影遅延があり, 左前下行枝からの側副血行路を認めていた. 冠動脈病変が心不全の病態と考えられ, 右冠動脈に対する経皮的冠動脈インターベンションを施行した. 光干渉断層法 (OCT) で, 病変部を観察すると, 蜂巣状のマイクロチャンネルを認め, 真腔の径は1.3mmと高度の狭窄を認めた. 2.25mmのバルーンで前拡張し, 2.75mm×15mmのエバロリムス溶出性ステントを留置すると, 造影遅延は改善し, 末梢まで良好に造影された. 造影上の軽度狭窄が造影遅延を伴った原因として, OCTで蜂巣状の内腔構造が示唆された症例を経験したので報告する.

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