心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
49 巻 , 10 号
選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
OpenHEART
HEART’s Selection(肺血栓塞栓症(予防・カテーテル治療・薬物治療等))
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 山名 祥太, 川崎 健作, 大西 和子, 大西 伸悟, 松原 昌美, 清水 宏紀, 大西 祥男
    2017 年 49 巻 10 号 p. 1020-1028
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

     目的:急性心筋梗塞後の左室リモデリングが予後に与える影響は大きく,高齢化が進む我が国において,高齢者に対する心臓リハビリテーション(心リハ)の左室リモデリングへの効果を明らかにすることは重要である.そこで当院における高齢心筋梗塞患者について,6カ月間の心リハ実施と左室リモデリングとの関連について検討した.

     方法:65歳以上の高齢ST上昇型急性心筋梗塞患者84名(平均年齢73.3±5.0歳)を対象とし,3カ月以上心リハを継続した心リハ群44名と3カ月未満に離脱あるいは不参加の非心リハ群40名に分類し,心リハ前と6カ月後の血液検査と心臓超音波検査項目を比較検討した.さらに前期高齢者群(平均年齢70.0±2.9歳)と後期高齢者群(平均年齢78.4±2.8歳)に分類し,各項目を比較検討した.

     結果:全高齢者心リハ群では左室拡張末期容積(LVEDV)と左室収縮末期容積(LVESV)は有意に減少し,非心リハ群ではLVEDVとLVESVは増加傾向を認めた.前期高齢者心リハ群においてLVEDVとLVESVは有意に減少し,後期高齢者心リハ群においてもLVESVは有意に減少し,LVEDVは統計的な差は認めないが減少傾向を認めた.しかし前期および後期高齢者非心リハ群ではLVEDVとLVESVは逆に増加傾向を認めた.

     結論:前期高齢者,後期高齢者のいずれにおいても,ST上昇型心筋梗塞患者に対する心リハと左室容積の減少との関連が示された.

Editorial Comment
[症例]
  • 鈴木 佑一, 俵原 敬, 松成 政良, 松倉 学, 山下 哲史, 神田 貴弘, 田村 純, 高林 瑠美, 尾関 真理子, 浮海 洋史
    2017 年 49 巻 10 号 p. 1031-1038
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

     症例1:55歳男性.2005年より末梢血好酸球増多を指摘されていた.2006年9月に胸背部痛が出現し救急搬送された.来院時よりeosino 9329/μLと上昇を認めた.来院時の左室造影では左室駆出率45%であったが,5日後に心不全出現し,左室造影再検にて左室駆出率は29%と低下していた.心筋生検で好酸球性心筋炎と診断.同日よりステロイドパルス療法を開始した.心臓MRI上,心尖部と前壁に心筋障害を残したが,64歳の現在まで再発なく経過している.

     症例2:47歳男性.2015年4月下旬,心窩部絞扼感,全身倦怠感で救急搬送された.緊急心臓カテーテル検査にて冠動脈に有意狭窄を認めなかったが,左室造影で前壁と下壁に壁運動低下を認めた.心臓MRIT2強調black blood像で心筋全体に高信号域を認め,遅延造影像では左室外膜層主体に全周性の遅延造影効果を認めた.以上より急性心筋炎を疑い心筋生検を施行した.Eosino 449/μLと正常上限であったが,ステロイドパルス療法を開始した.第5病日にEosino 999/μLと上昇.心筋組織では好酸球の強い浸潤が認められ,好酸球性心筋炎と診断した.心筋逸脱酵素の減少,壁肥厚の改善がみられ,その後,MRI再検でも心筋障害を残すことなく経過した.

     急性心筋炎の診断には心内膜生検を含め,臨床所見,心電図,血液学的検査,画像所見などを組み合わせて診断する必要がある.中でも心臓MRIは心筋組織性状を反映する非侵襲的診断方法であり,各種心筋組織性状評価法を組み合わせることで診断能を向上させることができる.2例は,末梢血好酸球数の増加期間,ステロイド開始の時期に違いがあり,遠隔期における心筋障害の残存の有無に影響を与えたと考えられた.急性心筋炎の急性期に心臓MRIや心筋生検にて好酸球性心筋炎を診断し,早期にステロイド治療をすることが重要と考えられる.

Editorial Comment
[症例]
  • 御手洗 敬信, 米山 喜平, 大宮 一人, 原田 智雄, 明石 嘉浩
    2017 年 49 巻 10 号 p. 1041-1047
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

     症例は70歳の女性.多発性骨髄腫,肺炎に対し当院血液内科にて入院加療中であった.免疫抑制薬使用中であり,肺炎加療は難渋し,長期入院を要していた.入院中に突然の胸背部違和感が出現し,12誘導心電図にてST変化を認め,急性冠症候群の疑いで当科へ診療依頼となった.心電図上ST変化を認めたものの,経胸壁超音波検査では心基部過収縮,心尖部無収縮のたこつぼ症候群様変化を認めた.急性冠症候群を臨床所見上否定できず,同日,緊急冠動脈造影検査を行った.その結果,冠動脈に有意狭窄は認められず,左室壁運動はたこつぼ症候群様変化を認めた.この時点で,たこつぼ症候群と診断した.集中治療室へ帰室し,その直後は全身状態安定して経過していたが,帰室約7時間後に突然の心停止に至った.心肺蘇生行ったが,反応に乏しく,蘇生開始約50分後に死亡確認に至った.原因究明のために病理解剖を行った.肉眼的所見では,心臓周囲に約50 mLの血性心膜液の貯留を認め,左室心筋心尖部に心筋内出血を認めた.出血は心外膜脂肪織内に及んでおり,さらに心筋に小さな穿孔部位が確認された.組織学的所見においても心尖部心筋内出血の所見であり,肉眼所見と一致した.これらの結果より,たこつぼ症候群およびそれに伴う心破裂と診断した.症状出現から間もなく心破裂に至った,稀なたこつぼ症候群と考えられた.

Editorial Comment
[症例]
Editorial Comment
[症例]
  • 捶井 達也, 石川 紀彦, 堀川 貴史, 瀬口 龍太, 木内 竜太, 富田 重之, 大竹 裕志, 河内 賢二, 渡邊 剛
    2017 年 49 巻 10 号 p. 1056-1061
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

     Barlow症候群は両弁尖に高度な粘液腫様変性による肥厚を特徴とする僧帽弁閉鎖不全症であり,僧帽弁形成術は困難である場合が多い.しかし弁尖の形態を正確に評価し弁形成を行うことで,Barlow症候群に対しても弁形成術は可能である.また我々はda Vinci Surgical System(da Vinci)を用いた完全内視鏡下の僧帽弁形成を行っており,Barlow症候群に対しても積極的に行っている.

     方法:今回当院で経験したBarlow症候群に対するda Vinciを用いた僧帽弁形成術9例(男/女;6/3例,平均52.6歳,について検討した.手術は完全体外循環のもと,右胸壁の4つのポートからda Vinciを用いて僧帽弁形成術を行った.

     結果:平均手術,人工心肺,大動脈遮断時間は223分,138分,76分であった.形成方法はArtificial neochordae 7例,Resection and Suture 3例,Folding plasty 3例,edge-to-edge 1例であった.使用した人工弁輪のサイズは34 mmが5例,32 mmが4例であった.全例人工心肺からの離脱に問題はなく,術当日に抜管し,翌日からリハビリテーションを開始した.全例で術後当日に抜管し,術後10.7日目に退院した.術後の心臓超音波検査では全例逆流に消失を確認した.

     結語:da Vinciを用いた僧帽弁形成術は正中切開を回避できるため低侵襲であり,3次元画像と自由度の高い鉗子により術者の意図した形成術を行うことができる.そのため今回da Vinciを用いた完全内視鏡下でBarlow症候群に対する僧帽弁形成術は,良好な結果が得られたと考える.

Editorial Comment
[症例]
  • 東海林 裕子, 栗原 顕, 小野 裕一, 清水 茂雄, 大友 建一郎, 染谷 毅, 伊藤 栄作, 磯部 光章
    2017 年 49 巻 10 号 p. 1063-1069
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

     症例は66歳男性.前胸部違和感のため施行したCTにて下行大動脈右背側に腫瘤性病変を認め,炎症反応も高値であった.造影MRIにて下行大動脈右側壁から造影剤の漏出を認めsealed ruptureが疑われた.血液培養は陰性でPET/CTにて下行大動脈に沿ったmassに強い集積を認め,他臓器に活動性炎症を示唆する集積は認めなかった.待機的に下行大動脈置換術を施行したが,血液検査にてIgG4 224 mg/dL,血管壁組織検査ではIgG4陽性形質細胞が無数に認められIgG4関連疾患の確定診断に至った.IgG4関連疾患による炎症性大動脈瘤は稀な疾患であるが致死的となり得る重要な疾患である.今回sealed ruptureを契機にIgG4関連疾患と診断された症例を経験した.

  • 湯澤 尚子, 佐藤 伸孝, 関山 裕士, 村嶋 英達, 堤 穣志, 稲田 慶一, 野田 一臣, 森 力, 芝田 貴裕, 吉村 道博
    2017 年 49 巻 10 号 p. 1070-1075
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

     1経妊1経産の30歳妊婦.妊娠14週に労作時呼吸困難を認め当院を受診した.低酸素血症,D-ダイマー高値,心エコー上右心負荷所見を認め,肺血栓塞栓症が疑われた.しかし,本人のCT検査の同意が得られず,胸部MRI検査を施行した.両側肺動脈に血栓を認め,急性肺動脈血栓塞栓症(亜広範型)と診断した.同日施行した下肢静脈エコーでは深部静脈血栓症を認めず,プロテインS活性以外の先天性因子の異常は認めなかった.

     入院後より未分画ヘパリンによる抗凝固療法を開始し,その後は低酸素血症,自覚症状の改善を認めた.画像検査上も心エコーで右心負荷所見の消失,MRIで血栓の著明な縮小を確認した.妊娠継続のためヘパリン自己注射へ切り替え,その後症状の悪化なく退院した.

     妊婦に合併した急性肺動脈血栓塞栓症の診断・治療に関してのエビデンスはない.妊娠における特殊性を考慮し診断治療を行う必要があると考えられた.

  • 髙原 宏之, 岩田 幸代, 武居 明日美, 鄧 皓之, 白木 宏明, 吉岡 隆之, 谷口 弥生, 平山 園子, 小澤 徹, 井上 信孝
    2017 年 49 巻 10 号 p. 1076-1082
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

     症例は88歳女性で,慢性的な肩こり症状と胃部不快感に対して葛根湯とファモチジンを常時内服していた.主訴は失神・痙攣.約2カ月前から同主訴にて他院に入院となり,完全房室ブロック・QT延長および低K血症を認められ,低K血症の補正とプロパフェノン内服中止にて症状が改善し同院退院となった.しかし,失神を伴う痙攣が再発するため当院へ救急搬送となった.入院時,胸部単純X線写真上肺うっ血・心拡大を認め,心電図では高度房室ブロックとQT延長(QTc 580 ms)を認めた.入院後,頻発する心室期外収縮を契機とするTorsade de Pointes(TdP)が捉えられた.K 3.6 mEq/L,Mg 1.73 mg/dLと低K血症,低Mg血症を認め,TdPに影響した薬としてファモチジン・甘草の関与が疑われた.緊急ペーシングを行い電解質補正,同薬中止により第2病日以後PVCの著減,TdPの消失を認めた.QTcは改善傾向にあったが,その後第8病日まで500 msと延長は遷延していた.第8病日,完全房室ブロックに対しペースメーカ移植術を行い,現在まで症状なく経過されている.QT延長の素因が疑われる高齢女性のTdP発症に,薬による電解質異常,徐脈,加齢の生理的変化など複数の要因が関与したと考えられる.高齢化社会の医療問題のひとつであるポリファーマシーの重要性を示す教訓的な症例であり,ここに報告する.

Editorial Comment
研究会(第11 回心不全陽圧治療研究会)
  • 百村 伸一
    2017 年 49 巻 10 号 p. 1086
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー
  • 奥村 貴裕
    2017 年 49 巻 10 号 p. 1087-1091
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

     症例は40歳男性.4年前に完全房室ブロックに対しペースメーカーを装着した.当時の左室駆出率は40~50%程度,心筋保護薬の内服が開始された.7か月前,心不全の再増悪にて入院し,CRT-Pへのアップグレードが行われた.左室駆出率は10%台,左室拡張末期径は80 mmであった.今回,再び心不全増悪にて入院となり,重症心不全治療目的に当院へ転院となった.ドブタミン,ミルリノンおよびフロセミドの持続静注にて治療を開始したが,強心薬の減量により,血圧低下および肺うっ血の増悪を認めたため,Adaptive Servo Ventilation(ASV)を導入した.さらなる血圧の低下を認めることなく安定した尿流出が得られ,ドブタミンの減量・中止,β遮断薬の増量が得られた.これにより,強心薬の離脱が可能となり,退院へと至った.その後,再入院することなく良好な経過であったが,2年半後に植込み型補助人工心臓の装着を余儀なくされた.ASV治療の導入により補助人工心臓非装着で貴重な時間的猶予を家族とともに共有できた.重症心不全に対するASVの有用性については,未だ意見の一致を見ず,確立していない.エンドポイントの設定によっては,有用な手段のひとつと考えられ,患者群の同定や管理方法などさらなるエビデンスの集積が望まれる.

  • 塩見 利明, 安藤 眞一
    2017 年 49 巻 10 号 p. 1092-1093
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー
  • 中野 宏己, 永井 利幸, 安斉 俊久
    2017 年 49 巻 10 号 p. 1094
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

     急性心不全患者に対するNPPV(Non-invasive Positive Pressure Ventilation:非侵襲的陽圧換気)の血行動態への効果は静脈灌流量の低下による前負荷軽減と,心臓周囲圧の上昇による後負荷の減少が知られている.またNPPVは肺胞拡張,機能的残気量の増加による酸素化改善と,肺コンプライアンス改善による呼吸筋仕事量の低下をもたらし,交感神経活性を低下させる.

     数々の臨床試験の結果,急性心不全に対するNPPVの使用は気管挿管の回避と院内死亡率の抑制に有意に関連することが知られている.欧米の最新心不全ガイドラインにおいても,急性期NPPVの使用はClass ・Aで推奨されている.なかでも,初回接触時に呼吸回数が25回/分以上でSpO2が90%以下の強い呼吸困難を伴う症例においては,より早期のNPPV導入が望ましいとされている.モード選択に関しては,原則CPAP(Continuous Positive Airway Pressure:持続気道陽圧)で十分な効果が期待できるとされているが,COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:慢性閉塞性肺疾患)に代表されるような高二酸化炭素血症を伴う2型呼吸不全や,呼吸筋疲労を伴っている場合はBiPAP(Bilevel Positive Airway Pressure:二層性気道陽圧)を選択する.当院では原則トータルフェイスマスクを用い,CPAPモードを第一選択としており,実際約9割の急性心不全症例に使用されている.

     NPPVの導入に成功しても,日常診療の中では患者ごとの忍容性や病態の違いなどから,適切な離脱タイミングや離脱失敗に悩むことも少なからず経験するものの,離脱に関する報告は極めて少ない.当院の急性心不全レジストリ(NaDEF:National cerebral and cardiovascular center Acute Decompensated heart Failure)の解析結果(617例)では,NPPV装着後24時間以内に61%が離脱に成功した一方で,33%が使用継続,6%が気管内挿管へと移行していた.24時間以内離脱困難の予測因子を検討したところ,入院時の収縮期血圧低値,CRP高値そして下腿浮腫の存在が独立して関連していた.また,離脱困難症例では強心薬や利尿薬の使用が有意に多く,硝酸薬の使用は少なかった.したがって,Nohria-Stevenson分類のWet & Coldの症例や肺炎などの感染症合併例におけるNPPV離脱困難が示唆された.また,NPPV奏功の指標として,SAP ・ score,NPPV装着後のpHの変化や酸素化の改善などが報告されており,当院のレジストリ研究でもより詳細な検討を行ってゆく予定である.

  • 義久 精臣
    2017 年 49 巻 10 号 p. 1095
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

     心不全患者における陽圧呼吸療法は,肺うっ血のある症例において,肺うっ血の解除や心拍出量の上昇に寄与する.一方,肺うっ血の少ない症例においては,低心拍出のリスクも存在するため,慢性心不全における継続使用に際して注意が必要であろう.一方,心不全における心腎連関の概念は広く普及している.睡眠呼吸障害は心機能および腎機能の低下にも関係する全身疾患と考えられ,心不全患者に高率に合併している.慢性心不全患者における陽圧呼吸療法は悪化した心腎連関を包括的に改善しうる可能性がある.

     今回,睡眠呼吸障害を合併した慢性心不全に対するASVによる血行動態への影響,心腎機能改善効果を中心にお話しさせて頂きます.

  • 成瀬 代士久
    2017 年 49 巻 10 号 p. 1096
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

     本項では心房細動(AF)と心室頻拍(VT)へのAutoSVまたはCPAP治療の効果についてレビューする.

     睡眠時無呼吸(SAS)患者においてAFの合併率・新規発症率はSASを認めない患者と比べて高いことが知られている.SASによる低酸素血症・高炭酸ガス血症等が交感神経活性を亢進させ,血圧上昇・左室後負荷の増大から左房の拡大・線維化につながりAFを惹起するという病態生理が考えられている.SAS患者に対してCPAP治療を行うことで,電気的除細動後もしくはカテーテルアブレーション治療後のAF再発を抑制することができる.CPAP治療によるAF抑制効果については多数のエビデンスがあり,2016年の欧州心臓病学会のガイドラインでも「AF再発を減らすためにSASの治療は最適化されるべきである(Class ・a [evidence level B])」と明記されている.AutoSVのAFへの効果については,オフポンプ冠動脈バイパス術後(第1~5病日)に通常の心臓リハビリに加えてAutoSVを使用することで術後のAF発生を減らすことができたという報告がある.

     VTについてもAFと同様にSASを有する患者でVTの合併率・発生率(突然死,植え込み型除細動器[ICD]の適切作動)が増える.またSASを有する患者のICD作動は日中より夜間に多いことも知られている.SASを治療することにより心室性期外収縮が減るという報告は多数認められる.一方,VTに対する効果についての報告は,肥大型心筋症,心不全,重症SASを合併した薬物抵抗性VTにCPAPが奏功した症例報告や,中枢性SASを合併しICDが植え込まれた心不全患者にAutoSVを導入すると導入しなかった群に比べてその後のICD作動をSASがない患者と同じくらいまで減らすことができたという研究が認められる程度であり,今後のさらなるエビデンスの蓄積を期待したい.

  • 深見 智子
    2017 年 49 巻 10 号 p. 1097-1098
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

     【目的】Auto SV(以下ASV)を導入する慢性心不全患者に,QOLが低下することなく患者らしい生活を継続するために有効であった支援を明らかにする.

     【症例】A氏50歳代後半男性.心エコー結果:EF 21.7% 199X年に特発性拡張型心筋症と診断され入院加療,内服にて心不全治療されていた.201X年かかりつけ医より『余命1年です』と宣告されたため当院での治療を希望された.A氏は2回の心不全入院を繰り返し,入院時から『眠れない,熟睡感がない』と訴えた.家族は『夜寝る時にすごいイビキと息が止まっている感じがしする』と言われたため,心不全チームにて陽圧治療の適応について検討した.

     【経過】201X年1月簡易睡眠検査結果はAHI 30.0回/h,中枢性無呼吸主体の重症SASでありチェーンストーク様呼吸を認めた.しかし,A氏に陽圧治療を導入すると医療費の負担(指導料)が大きくなることが予測されたため,医療費の負担を軽減できるように医師,社会福祉士と検討し調整をした.3月に実施した終夜睡眠ポリグラフィー検査結果はAHI 43.6回/hであった.A氏にCPAP導入の必要性を説明し患者指導と試験実施を開始した.A氏はCPAP導入後も『熟睡感がない,眠れない』と睡眠に対する自覚症状の変化を認めなかった.CPAP解析結果はAHI 33.3回/hでありCheyne-Stokes respiration(以下CSR)が残存している状態であった.そのため,医師,臨床工学技士,看護師と協議を行いCPAPからASVへ変更した.ASV解析結果はAHI 33.3回/hからAHI 12.3回/hまで低下した.A氏はASV使用後,仰臥位での睡眠が可能となり睡眠導入剤を離脱することができた.A氏は『こんなに眠れたのは久しぶり.朝方の息苦しさもないし,夜に起きることもなかった.こんなに楽に付けられるとは思っていなかった』と話した.外来の定期受診時には日常生活やセルフモニタリングについて慢性心不全看護認定看護師が面談を行い,ASVについては慢性呼吸器疾患認定看護師がマスク装着の不具合や使用時の不安や疑問をA氏から確認し,適切に使用できているか解析結果を参考にフィードバックした.

     【結果】A氏に入院中から外来において適切な支援と医療費の負担額を軽減できたことがASVを継続的に使用することに繋がった.CPAPからASVへの変更を余儀なくされたが,AHIの改善と睡眠に対する自覚症状が消失し,睡眠導入剤を使用することなく熟睡感を得ることができた.

     【考察】慢性心不全ガイドラインでは,収縮不全を伴う慢性心不全患者においては,CSR-CSAは右室収縮機能障害,拡張期血圧低下とともに主要な予後悪化因子であり,CSR-CSAがあると死亡のリスクが2.14倍になることが報告されている.A氏も病期の進行から睡眠呼吸障害があることが明らかとなった.今回A氏にCPAP・ASVの解析結果から適切な陽圧治療を選択し,入院中から外来まで多職種と協働し包括的な支援を継続できたことが,ASVを継続的に使用することに繋がり睡眠の質が改善し,QOLを低下することなくA氏の望む生活を送ることができたと考える.

feedback
Top