心臓
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49 巻, 6 号
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OpenHEART
HEART’s Selection(フレイル高齢者に対する心臓病治療の問題点)
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 傍島 光男, 上野 博志, 桑原 弘幸, 牛島 龍一, 福田 信之, 絹川 弘一郎, 横山 茂樹, 名倉 里織, 土居 寿男, 山下 昭雄, ...
    2017 年 49 巻 6 号 p. 556-562
    発行日: 2017/06/15
    公開日: 2018/06/15
    ジャーナル フリー

     当院では2015年5月に第1例目のTAVIを施行し,1年間でtrans femoral approach 26例,trans apical approach 8例を経験した.

     全34例の患者背景は,平均年齢83.7±6.5歳,女性79%,平均STS score 5.3%であり,TAVI選択の理由としては高齢(85歳以上;56%)や高度Frail(CSHA frailty scale 4点以上;62%)が多かった.

     TAVI前と退院時を比較するとNYHA(2.7±0.6→2.3±0.8,p<0.01),EF(62±11→66±11%,p<0.01),弁口面積(0.60±0.18→1.61±0.36 cm2,p<0.01),logBNP(2.34±0.50→2.10±0.41 pg/mL,p<0.01)といずれも著明に改善し,その効果は3カ月後も維持されていた.

     全34例中1例に弁輪破裂および脳梗塞を生じたが,リハビリにより独歩退院まで回復し,導入後1年の時点で30日死亡率0%,ペースメーカ植込み0%と成績は良好である.

     TAVIは術前評価を適切に行うことで,高齢者や虚弱患者に対して安全に施行可能であり劇的な効果が得られると考えられる.

Editorial Comment
[症例]
  • 横川 沙代子, 阪本 貴之, 渡部 研一, 中里 和彦, 大和田 尊之, 竹石 恭知
    2017 年 49 巻 6 号 p. 564-571
    発行日: 2017/06/15
    公開日: 2018/06/15
    ジャーナル フリー

     症例は47歳男性.2012年8月に急性心筋梗塞にて当院で心臓カテーテル検査を施行した.冠動脈造影では,左前下行枝(left anterior descending coronary artery;LAD)#7に完全閉塞を認めた.同部位に対して経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention;PCI)を施行し,薬剤溶出性ステント(drug eluting stent;DES)を留置した.11カ月後に確認造影検査を施行したところ,#7ステント近位端からLAD起始部にかけて90%狭窄を認めたことからPCIを施行した.血管内超音波(intravascular ultrasound;IVUS)で観察したところステント近位端からLAD近位部にかけてプラークの増殖を認めたため,前回留置したステント近位端にオーバーラップさせる形で左主幹部(left main coronary trunk;LMT)中間部までDESを留置した.LMTはIVUS上びまん性にプラークがみられたが血管内腔は保たれていたためLMT入口部までのstentingは行わなかった.最後にLADと左回旋枝にkissing balloon inflationを施行し終了とした.3カ月後に虚血性心不全にて当院に救急搬送され,緊急冠動脈造影を施行した.LMTのステント近位端からLMT入口部にかけて90%狭窄を認めた.同部位に対しPCIを施行し,LMT入口部までDESを留置し終了とした.本症例では,LADのステント近位端にステント再狭窄を2度繰り返し,最終的にはLMT入口部におよぶPCIが必要となった.DESの登場によりステント再狭窄は大幅に減少したが,依然再狭窄は大きな問題である.今回のステント再狭窄の原因とその対処法について考察する.

Editorial Comment
[症例]
  • 毛涯 秀一, 赤沼 博, 上島 彩子, 羽生 壮史郎, 片桐 有一, 山本 一也
    2017 年 49 巻 6 号 p. 575-580
    発行日: 2017/06/15
    公開日: 2018/06/15
    ジャーナル フリー

     症例は74歳女性.X年1月下旬突然眼前暗黒感,嘔気を自覚.気分不良が持続したため近医を受診.CT上心嚢水貯留を認めたことから当科紹介.心臓超音波検査上壁運動異常などはなかったが,著明な心嚢水貯留による心タンポナーデの状態であり,緊急心嚢ドレナージを施行.血性心嚢水が排泄され循環動態は安定した.造影CT検査では,左冠動脈近傍に壁の石灰化を伴う最大径27 mmの腫瘤があり,左前下行枝近位部から肺動脈本幹へ連続する瘻管を認め,腫瘤との連続性が確認されたことから,冠動脈瘻に合併した動脈瘤が破裂し心タンポナーデをきたしたと診断した.瘤内は血栓化していたが再破裂の危険性も高く瘤閉鎖が必要と判断.外科的治療も検討したが,造影上輸入血管が1本しか確認できなかったこと,輸入血管は細く瘤内開口部の同定が困難であることが予想されたこと,瘤内は血栓化しており血流がほとんどみられなかったことなどからコイル塞栓術を選択した.コイルを瘤内から中枢側瘻管にかけて留置し,瘻管および瘤への血流消失を確認し終了とした.冠動脈肺動脈瘻は比較的稀な疾患である.動脈瘤の破裂を伴う例はさらに少なく報告も限られている.一般的に外科的治療が第一選択ではあるが,循環動態が安定し,冠動脈瘻・動脈瘤を形成する血管群の形態などによっては,コイル塞栓術を考慮してもよいと考える.

Editorial Comment
[症例]
  • 野中 大史, 高瀨 浩之, 田中 隆光, 待井 将志
    2017 年 49 巻 6 号 p. 583-589
    発行日: 2017/06/15
    公開日: 2018/06/15
    ジャーナル フリー

     60歳,女性.主訴は労作時呼吸困難と下腿浮腫.2015年9月コントロール不良の糖尿病,感音性難聴等の臨床症状からMitochondrial myopathy,Encephalopathy,Lactic acidosis and Stroke-like episodes(MELAS)が疑われ,ミトコンドリア遺伝子3243点変異を認め,確定診断された.11月心不全で入院し,心エコーでは左室心筋重量増加とびまん性壁運動低下,99mTc-sestamibi安静心筋シンチグラフィでは左室前壁中隔領域に集積低下,MRIでは心筋中層に淡い線状の遅延造影を認めた.また心臓カテーテル検査で冠動脈は正常,同時に行った左室心筋生検(HE染色)にて心筋細胞の肥大と空砲変性がみられた.β遮断薬や利尿薬にて治療を開始し一旦退院したが,2016年1月心不全増悪にて再入院となった.本症例はMELASに合併した心筋症の1例と考えられた.

[症例]
  • 重松 達哉, 岡山 英樹, 川口 直人, 細川 紗生, 小﨑 哲也, 川村 豪, 髙橋 龍徳, 木下 将城, 川田 好高, 日浅 豪, 山田 ...
    2017 年 49 巻 6 号 p. 590-594
    発行日: 2017/06/15
    公開日: 2018/06/15
    ジャーナル フリー

     症例は60歳台の男性.突然の胸部絞扼感を自覚し近医を受診,心電図にて急性心筋梗塞が疑われたため当院へ救急搬送された.心電図では完全右脚ブロックとⅡ・Ⅲ・aVF誘導のST上昇を認め,経胸壁心エコー検査では左室後壁の壁運動低下と心室中隔瘤を認めた.緊急冠動脈造影検査を施行し,左冠動脈回旋枝の遠位部に血栓塞栓と思われる完全閉塞病変を認めた.吸引カテーテルでの血栓吸引を試みたが明らかな血栓は吸引できず,小径バルーンによる拡張を行い再灌流が得られた.血管内超音波検査および光干渉断層法では閉塞から近位の左冠動脈回旋枝に明らかなプラークや血栓は認めなかった.冠動脈塞栓症の原因精査として施行した経食道超音波検査・心臓CTでは心室中隔瘤内に血栓は同定されなかったが,明らかな右左シャントは存在せず,左心耳は低形成であった.ホルター心電図検査および入院中の病棟モニター心電図で心房細動は全く捉えられなかった.以上の結果から,心室中隔瘤内で形成された血栓による冠動脈塞栓が急性心筋梗塞の原因であった可能性がある.心室中隔瘤は非常に稀な疾患であり,中隔瘤内で形成された血栓による脳塞栓症の報告症例は数例認めるが,冠動脈塞栓症を生じた症例の報告は今までない.心室中隔瘤と左心耳低形成を合併したST上昇型急性心筋梗塞の1例を経験したのでここに報告する.

[症例]
  • 田村 純, 俵原 敬, 浮海 洋史, 尾関 真理子, 高林 瑠美, 神田 貴弘, 松成 政良, 松倉 学
    2017 年 49 巻 6 号 p. 595-601
    発行日: 2017/06/15
    公開日: 2018/06/15
    ジャーナル フリー

     症例1:77歳,男性.(主訴)呼吸困難.(現病歴)2009年1月初診時心エコー上著明な心肥大を指摘された.99mTc-PYP心筋シンチグラフィ(PYP-RI)で心筋に集積を認め,心臓MRIにて心内膜側にLGE陽性を認めた.心筋生検による病理等にてAL型心アミロイドーシスと診断された.その後加療を行うも約1年後心不全増悪により死亡となった.

     症例2:58歳,男性.(主訴)労作時息切れ.(現病歴)2012年8月初診.心エコーで著明な心肥大あり,PYP-RIで心筋集積あり.MRIにて心筋全周にび漫性のLGE陽性を認めた.心筋生検にて心アミロイドーシスと診断され加療が開始されるが,約2年後心不全・心室細動にて死亡.死後病理よりTTR型アミロイドーシスと診断された.

     両症例ともに死後剖検が行われ,心筋からはそれぞれのMRI上LGE集積の分布と一致する高度なアミロイド沈着所見が確認された.

     造影心臓MRI上異なるパターンを呈し,病理所見と対比できた心アミロイドーシスの2例を経験したので報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 井上 美奈子, 古賀 徳之, 樋口 優, 金城 満, 土橋 卓也
    2017 年 49 巻 6 号 p. 603-609
    発行日: 2017/06/15
    公開日: 2018/06/15
    ジャーナル フリー

     症例は79歳,男性.73歳時に心肥大を伴う心不全を発症した.心肥大は徐々に進行し,心房粗動や非持続性心室頻拍などの不整脈が出現,心不全は次第に治療抵抗性となった.心アミロイドーシスを疑い十二指腸生検を施行したが,アミロイド沈着は認めなかった.79歳時,再度心不全が増悪し,漏出性胸水貯留に加え,大量の滲出性心嚢液貯留を繰り返すようになった.心膜炎を疑い薬物療法を行うも奏効せず,心膜開窓術を施行したが,術後も心不全は治療抵抗性であった.術後46病日に死亡した.剖検では心重量642 gで,高度な両室肥大を認めた.組織学的には,Hematoxylin-Eosin染色で両心室,心房に広範な好酸性無構造物の沈着を認め,沈着物はCongo-red染色で橙赤色を示し,心アミロイドーシスと診断した.しかし他臓器へのアミロイド沈着はわずかであった.アミロイド沈着物は免疫組織化学染色でtransthyretinと同定され,家族歴がないことや臨床像,病理解剖所見を総合して野生型ATTR(ATTRwt)心アミロイドーシスと診断した.ATTRwt心アミロイドーシスは比較的予後良好とされているが,本症例は難治性心不全を呈した.心肥大を伴い心不全や不整脈をきたす高齢者の鑑別診断として,ATTRwt心アミロイドーシスの可能性を考慮する必要があると考えられた.

Editorial Comment
[症例]
  • 季白 雅文, 酒井 浩
    2017 年 49 巻 6 号 p. 613-617
    発行日: 2017/06/15
    公開日: 2018/06/30
    ジャーナル フリー

     ペースメーカ植込み後にリード不全を示唆する閾値上昇やリード抵抗の変化をきたす症例がある.今回,リード不全の診断での再手術時に本体損傷を認めた稀な症例を報告する.症例は70歳男性.主訴は立ちくらみと車の運転中の意識消失発作.ホルター心電図で4秒の洞停止を認め,洞不全症候群の診断にてペースメーカ植込みを行った.11カ月後のペースメーカ外来にてリード抵抗の一時的上昇(3000Ω以上)を認め,また左腕の内旋にてリード抵抗の上昇の再現性を認めた.初回植込み時から1年3カ月後にリード不全の診断にて再手術を行い,術中に本体のヘッダーとチタニウムケースの接合部の離開を認めた.リードの異常所見は認めず本体の交換のみを行った.接合部の損傷の報告例は耐久性の問題や外部衝撃による原因であった.この症例では損傷部位の解析結果と日常生活の状況からゴルフスウィング運動による損傷が原因と判断した.再発予防としては運動の回避と本体植込み時の位置や角度が考えられた.

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