心臓
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49 巻, 9 号
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OpenHEART
HEART’s Selection(経カテーテル大動脈弁留置術 最新の知見,拡大する適応と将来への展望)
[臨床研究]
  • Improvement of vascular endothelial function by homocysteine-lowing therapy with folate and/or cyanocobalamin in patients with hyperhomocysteinemia
    松村 憲太郎, 澳本 定一, 井下 謙司
    2017 年 49 巻 9 号 p. 912-922
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2018/09/28
    ジャーナル フリー

     循環器外来で血漿総ホモシステイン(tHcy)を測定した1277例(男性559例,女性718例,平均年齢74±13歳)を対象にした.重回帰分析で血漿tHcyに対する有意な独立因子は年齢,estimated glomerular filtration rate(eGFR),ヘモグロビンとflow-mediated vasodilation(FMD)であった.血漿tHcy値13.6 nmol/mL以上の高ホモシステイン血症は385例(30.1%)にみられた.高ホモシステイン血症はより高齢で,冠動脈疾患や慢性腎臓病が多く,慢性炎症に貧血や低蛋白血症,低脂質などの栄養障害を合併していた.また動脈硬化指標のbrachial ankle pulse wave velocity(baPWV)は有意に高く,血管内皮機能を反映するFMDも有意に低かった.葉酸あるいはビタミンB12欠乏による高ホモシステイン血症の123例で葉酸あるいはビタミンB12製剤を3カ月投与し,前後で諸検査値を比較した.高感度CRP,LDL-コレステロールは有意に低下,血漿tHcyは23.9±13.6 nmol/mLから13.1±7.7 nmol/mLへ有意に減少,FMDも4.0±2.2%から6.1±3.8%へと有意に増加した.葉酸あるいはビタミンB12欠乏による高ホモシステイン血症に対する葉酸/ビタミンB12補充療法は,抗炎症作用と脂質改善作用を介して血管内皮機能を改善する.

Editorial Comment
[症例]
  • 金子 光伸, 笠尾 昌史, 西前 伊紀子, 新田 宗也, 野﨑 みほ, 鈴木 将敏, 白井 徹郎
    2017 年 49 巻 9 号 p. 924-929
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2018/09/28
    ジャーナル フリー

     症例は35歳女性.会社でのデスクワーク中に失神発作が生じ当院に搬送.救急車内のモニター心電図で持続性単形性心室頻拍(S-VT)が記録されていたが,搬送中にS-VTは自然停止し意識障害も改善した.来院時12誘導心電図ではⅠ,Ⅱ,Ⅲ,aVL,aVF,V1-V6誘導で異常Q波を,心エコー検査では前壁・中隔に広汎な壁運動異常を認め,S-VTの原因は陳旧性心筋梗塞(OMI)であると判断した.また全身性エリテマトーデス(SLE)と抗リン脂質抗体症候群に対し他院でステロイド治療を受けていたが,治療により両者の活動性はない状態であった.冠動脈造影で冠動脈に高度狭窄や閉塞所見を認めなかったものの,左前下行枝中間部に冠動脈解離の所見を認め,本病変がOMIの原因と判断した.また血行動態が破綻するS-VTが生じており,アミオダロン治療およびICD治療を行った.S-VTの原因が冠動脈自然解離によるOMIと考えられた若年女性例であり報告する.

[症例]
  • 相田 健次, 江尻 純哉, 吉開 友羽子, 山根 啓一郎, 吉野 直樹, 木下 美菜子, 川戸 充徳, 永澤 浩志
    2017 年 49 巻 9 号 p. 930-935
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2018/09/28
    ジャーナル フリー

     循環器外来で血漿総ホモシステイン(tHcy)を測定した1277例(男性559例,女性718例,平均年齢74±13歳)を対象にした.重回帰分析で血漿tHcyに対する有意な独立因子は年齢,estimated glomerular filtration rate(eGFR),ヘモグロビンとflow-mediated vasodilation(FMD)であった.血漿tHcy値13.6 nmol/mL以上の高ホモシステイン血症は385例(30.1%)にみられた.高ホモシステイン血症はより高齢で,冠動脈疾患や慢性腎臓病が多く,慢性炎症に貧血や低蛋白血症,低脂質などの栄養障害を合併していた.また動脈硬化指標のbrachial ankle pulse wave velocity(baPWV)は有意に高く,血管内皮機能を反映するFMDも有意に低かった.葉酸あるいはビタミンB12欠乏による高ホモシステイン血症の123例で葉酸あるいはビタミンB12製剤を3カ月投与し,前後で諸検査値を比較した.高感度CRP,LDL-コレステロールは有意に低下,血漿tHcyは23.9±13.6 nmol/mLから13.1±7.7 nmol/mLへ有意に減少,FMDも4.0±2.2%から6.1±3.8%へと有意に増加した.葉酸あるいはビタミンB12欠乏による高ホモシステイン血症に対する葉酸/ビタミンB12補充療法は,抗炎症作用と脂質改善作用を介して血管内皮機能を改善する.

[症例]
  • 柿野 貴盛, 渡邉 亜矢, 白濱 尚治, 池内 雅樹, 浦部 由利
    2017 年 49 巻 9 号 p. 936-941
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2018/09/28
    ジャーナル フリー

     症例は,20年以上前に僧帽弁閉鎖不全症に対して,弁形成術さらに数年後,弁置換術(機械弁)を施行された慢性心房細動の70代男性である.来院時,駐車場内を運転中に心室細動となった.アミオダロン静注下に頻回の電気的除細動で自己心拍が再開した.第12病日には,アミオダロン点滴静注下に,突然の意識低下,血圧低下を伴う持続性心室頻拍が発症し,電気的除細動を施行した.そのため,さらなる不整脈予防にカルベジロール内服を開始した.しかし,第23病日,心室頻拍,torsade de pointsから再度,心室細動が発症し,心肺蘇生,電気的除細動,人工呼吸管理を施行した.3度の致死的不整脈から,いずれも蘇生に成功し,脳機能障害を認めなかったが,早期の植込み型除細動器の植込みの適応と考えられた.ところが,頻回のショックによる腎不全,また左心機能低下に伴う肺うっ血を合併しており,全身状態が改善するまで着用型自動除細動器をbridge to implantationとして装着した.徐脈が致死的不整脈の誘因として考えられたため,植込み型除細動器を植込み後は心室リードからのペーシングを行ったところ,以後,致死的不整脈を認めなかった.着用型から植込み型除細動器を使用し,致死的不整脈のトリガーとなる徐脈を心室ペーシングで回避することで治療に成功した症例を経験したので報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 翠 洋平, 平澤 元朗, 大倉 誓一郎, 大倉 清孝, 竹森 一司, 前野 孝治, 岡藤 和博, 登谷 大修
    2017 年 49 巻 9 号 p. 944-950
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2018/09/28
    ジャーナル フリー

     60代男性.X-3年より四肢近位筋痛とクレアチンキナーゼ高値を健診にて指摘された.その後皮膚筋炎の診断でX-1年より副腎皮質ステロイドが開始されるも,X年に呼吸困難が出現し当科を受診した.高度びまん性心機能低下と肺うっ血ならびに異所性心房頻拍の持続(1日20時間以上)を認めた.皮膚筋炎の心合併症と考えられたが,弁膜症や冠動脈狭窄,心筋生検所見では特記所見はみられず,頻脈誘発性心筋症をその主要因と判断した.頻拍に対してβ遮断薬投与すると,持続時間軽減と自覚症状改善を認めるも軽労作にて容易に頻拍が出現したためカテーテルアブレーションを実施した.三尖弁輪6時方向に心房頻拍起源が同定され,同部位に対して焼灼した.焼灼後平均心拍数は約20 bpm低下し,運動負荷でも頻拍誘発されず,心機能,自覚症状ともに著明な改善を認めた.皮膚筋炎を背景としたIncessant型心房頻拍に対するカテーテルアブレーションが奏功し,心不全が著明に改善した貴重な症例であると考え報告する.

[症例]
  • 大石 庸介, 小貫 龍也, 小崎 遼太, 関本 輝雄, 越智 明徳, 辻田 裕昭, 塚本 茂人, 浅野 拓, 濱嵜 裕司, 小林 洋一
    2016 年 49 巻 9 号 p. 951-957
    発行日: 2016/11/25
    公開日: 2018/09/28
    ジャーナル フリー

     症例は71歳男性.主訴は労作時呼吸困難.2014年1月から労作時呼吸困難,胸部不快感を認めたが放置していた.2015年2月から,症状頻回になったため,他院で運動負荷試験を施行したところ,臨床症状と一致して,ST変化を伴う完全房室ブロックを認め,精査加療目的で当院搬送された.虚血性心疾患を疑い緊急で冠動脈造影を施行したところ,右冠動脈,左冠動脈前下行枝,左冠動脈回旋枝本幹に有意狭窄は認めなかったが,左冠動脈回旋枝分枝である小血管サイズの左房回旋枝入口部に99%狭窄を認めた.アセチルコリン負荷試験は右冠動脈,左冠動脈ともに攣縮所見はなく,胸部症状,心電図変化も認めなかった.ペースメーカの植え込みが検討されたが,運動負荷試験中に虚血性変化を伴う房室ブロックを認めたことから,第7病日左房回旋枝入口部病変に対し,冠動脈形成術を施行した.左房回旋枝入口部からステント留置術を行い良好に拡張し,血流回復を認めた.術後の運動負荷試験,24時間心電図で,房室ブロックは認めず,退院後の臨床症状は完全に消失した.左房回旋枝の冠動脈形成術により,ペースメーカを回避できた運動誘発性房室ブロックの1例を経験した.

Editorial Comment
[症例]
  • 行重 佐和香, 楠瀬 賢也, 瀬野 弘光, 西條 良仁, 林 修司, 伊勢 孝之, 八木 秀介, 山口 浩司, 山田 博胤, 添木 武, 若 ...
    2017 年 49 巻 9 号 p. 960-965
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2018/09/28
    ジャーナル フリー

     症例は36歳,男性.2週間前から労作時息切れが出現したため近医を受診し,心拡大を指摘され精査・加療目的に当院に紹介された.来院時,Ⅲ音を聴取し,心エコー図検査では左室拡大,びまん性の高度左室壁運動低下(左室駆出率32%),左室心尖部を主体とする網目状の肉柱形成が目立った.うっ血性心不全に対する薬物治療後,施行した心臓カテーテル検査では冠動脈に有意狭窄を認めず,虚血性心筋症は否定的であった.左室心筋の緻密化層(C)と非緻密化層(NC)の比(NC/C比)は,心エコー図検査および心臓MRI検査のそれぞれにおいて2.2および2.5であり,孤立性左室緻密化障害と診断した.左室収縮不全に対してβ遮断薬療法を開始したところ,体重は約5 kg減少し,胸部X線写真で肺うっ血が改善し,BNPも低下したため退院となった.約1年後の左室駆出率は51%と改善し,NYHA class Ⅰとなり心不全は安定した.左室緻密化障害は,左室心筋が緻密化層と非緻密化層の二層構造を呈し,過剰な肉柱形成と深い間隙を形態的特徴とする疾患である.本症は小児期の稀な疾患とされていたが,画像診断の発達により成人期の発見例が増加し,左室駆出率低下例における鑑別疾患として重要である.我々は,β遮断薬療法により左室駆出率の改善,心不全病態の安定が得られた左室緻密化障害の成人例を経験したため報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 出島 徹, 森田 有紀子, 花島 陽平, 漢那 雅彦, 中山 未奈, 岡島 裕一, 堀口 順子
    2017 年 49 巻 9 号 p. 968-973
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2018/09/28
    ジャーナル フリー

     症例は,69歳,男性.2016年5月にST上昇型急性前壁心筋梗塞の診断で入院となった.緊急心臓カテーテル検査で左前下行枝#6の完全閉塞を認め,血栓吸引とステント留置を実施し,血行再建を得た.ピークCKは6763 IU/Lであり,ピークCK-MBは412 IU/Lであった.第6病日に前胸部痛を訴え,その後意識消失し,脈拍触知不能となった.心肺蘇生を行い心拍は再開したが,血圧56/38 mmHg,脈拍120/分のショックとなり,蘇生後の心電図胸部誘導でSTが上昇していた.速やかにSTは減高したが,左側胸部痛あり,胸部X線写真で左肺野全域の透過性低下と胸部CTで左胸水を認めた.CT室入室時から再度前胸部痛あり,ICU帰室後の心電図胸部誘導でSTが再度上昇していた.冠動脈造影でステント閉塞を確認し,血栓吸引とステント内のバルーン拡張で冠血流の再開を得た.翌日(第7病日),側胸部痛が増悪したため,胸部CTを再検したところ胸水増多による縦隔偏移を認め,胸腔ドレーンを挿入し血液の排出を確認した.第22病日,肺の拡張と再出血がないことを確認しドレナージチューブを抜去し,第25病日に退院となった.過去にステント血栓症と血胸の同時発症の報告はなく,教育的症例と思われた.

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