心臓
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50 巻, 1 号
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OpenHEART
HEART’s Selection
循環器疾患診療50年を振り返って ―虚血性心疾患におけるわが国の歩み―
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 大西 秀典, 山村 修, 植田 信策, 齋藤 佐, 前田 文江, 江端 清和, 柴田 宗一, 榎本 崇一, 坪内 啓正, 佐藤 尚美, 廣部 ...
    2018 年 50 巻 1 号 p. 48-59
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2019/03/28
    ジャーナル フリー

     巨大災害発災後の被災地では循環器疾患の増加が報告されている.しかし被災者における循環器疾患の経年的変化は不明である.今回我々は災害慢性期の津波被災地で,被災者を対象に心臓超音波検査(ultrasound cardiography;UCG)の健診を行い,災害関連疾患としての循環器疾患の頻度と経年的変化について調査した.対象は宮城県亘理郡の仮設住宅および周辺住民の被災者で,被検者数は1回目207名(発災18カ月目;男45名,女162名,平均70.2±9.9歳),2回目125名(発災30カ月目;男37名,女88名,平均71.4±9.9歳),3回目121名(発災44カ月目;男32名,女89名,平均71.2±7.6歳)であった.全例に問診とUCGを実施し,希望者に迅速測定装置でN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(N-terminal pro-brain natriuretic peptide;NT-proBNP)の測定を行った.健診結果よりUCG有所見(弁膜症など)の推移および背景因子を検討した.その結果,UCG有所見者の割合は発災18カ月目より42.0%,60.8%,72.7%と年毎に増加し(p<0.0001),特に発災18カ月目と発災30カ月目の間で有意に増加した(p<0.001).NT-proBNPは有所見群が高値であった(p<0.001).有所見群の危険因子は各年度で変化したものの3回目では有意差は消失した.それにもかかわらず,有所見群の増加は継続した.災害関連疾患としての循環器疾患は,被災住民において経年的に増加する可能性が示唆された.今回の調査結果より,仮設住宅から一般住宅へ居住が移ることでリスク要因は減少するが,UCG所見の改善がないことから被災地での健診はUCGの必要性があると考える.

  • 市川 啓之, 櫻木 悟, 藤原 敬士, 西原 大裕, 辻 真弘, 横濱 ふみ, 谷本 匡史, 大塚 寛昭, 山本 和彦, 川本 健治, 田中 ...
    2018 年 50 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2019/03/28
    ジャーナル フリー

     背景:急性冠症候群(ACS)の急性期には,糖代謝異常を認めることが多い.本研究ではACSの急性期に糖負荷試験を行い,糖代謝異常の経時的変化とその機序について検討した.

     方法:対象は,ACSで当院に入院した患者のうち,糖尿病既往がなく,心不全などの合併症のない26名.急性期と亜急性期に75 gOGTTを施行し,インスリン分泌能および抵抗性の経時的変化を調査した.

     結果:急性期には糖尿病型の割合が46%と多く存在したが,亜急性期には15%に低下した.急性期から亜急性期にかけて,Insulinogenic indexは有意に上昇した(0.50±0.46 vs 0.91±0.78,p=0.003).一方,HOMA-IRには変化がみられなかった.

     結論:ACS患者では糖代謝異常が多く存在し,その原因として,インスリン抵抗性よりもインスリン分泌能の低下が大きく関与していると考えられた.

[症例]
  • 大下 晃, 河野 佑典, 三好 徹, 川上 秀生, 松岡 宏
    2018 年 50 巻 1 号 p. 66-71
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2019/03/28
    ジャーナル フリー

     症例は80歳代,男性.2010年に心室細動の蘇生後に左冠動脈主幹部から左前下行枝の狭窄に対してステント留置が行われた.2011年には左回旋枝の慢性完全閉塞病変に対してカテーテル治療が施行された.以後,外来で経過観察していたが,2015年の非造影MRIのT1強調法によるプラーク評価で右冠動脈遠位部に高輝度プラーク(high-intensity plaque;HIP)が認められた.冠動脈造影では同部に有意狭窄は認めず,食事運動療法を再度指導して経過をみた.半年後のHIPは増悪しており,オメガ3脂肪酸エチルを追加して経過観察した.しかし,さらに半年後のMRIではHIPの著明な増悪を認め,狭窄の進行も疑われたため冠動脈造影を施行した.HIP部位は,光干渉断層法でプラークの破綻を認め,血管内視鏡では高度の黄色調プラークに血栓付着を認めた.狭窄も進行していたため,末梢保護用フィルター使用下にステント留置を行った.

     今回,心臓MRIでHIPの増悪した症例に対して,光干渉断層法および血管内視鏡で評価し治療した症例を経験したので報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 大西 達也, 福留 啓佑, 宮城 雄一, 寺田 一也, 太田 明
    2018 年 50 巻 1 号 p. 75-82
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2019/03/28
    ジャーナル フリー

     症例は1歳1カ月の男児.38週0日,2916 g,他院で出生した.日齢1より多呼吸を認め,加療されるも改善しないため,日齢7に精査加療目的で当院へ新生児搬送された.心エコー検査および胸部造影CT検査で上心臓型総肺静脈還流異常(Ⅰa型)と診断し,日齢30に心内修復術を施行され,術後23日に合併症なく退院した.1歳1カ月時に術後評価の心臓カテーテル検査を行い,肺静脈吻合部狭窄および肺高血圧症は認めず,術後経過は良好と判断した.しかし,主肺動脈造影の静脈相で肺静脈から奇静脈を経由し上大静脈への造影剤の異常流入を認めた.選択的奇静脈逆行造影を施行したところ,術前に認めなかった新たな垂直静脈の形成を確認した.現時点では有意な短絡とはいえず治療適応はないと判断したが,将来的に血管成長に伴う短絡血流増加の可能性がある.術前の画像検査を後方視的に再評価しても同垂直静脈は確認できず,画像検査に映らないほどの極小の垂直静脈があった可能性や,新たに血管増生した可能性が考えられた.自験例は稀な臨床経過であり,本症に対する術前検査,術式や術後評価の方法において示唆に富む症例と考えられた.

[症例]
  • 新富 將央, 松坂 英徳, 佐田 政司, 石北 陽仁, 手束 美香, 秋山 雄介, 小河 清寛, 盛重 邦雄, 久保 俊彦
    2018 年 50 巻 1 号 p. 83-87
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2019/03/28
    ジャーナル フリー

     症例は64歳男性.左室駆出率32%の低左心機能を伴う持続性頻脈性心房細動に対し両側肺静脈拡大隔離術(CPVI)を施行した.CPVI後の早期再発の予防としてベプリジル100 mgを継続し,洞調律を維持した.CPVI後16日目に全身倦怠感と動悸を主訴に再入院となった.洞調律でQTc 560 msと著明なQT延長,心エコーで低左心機能の遷延を認めた.R on T型の心室性期外収縮からTorsades de pointesが出現したため,イソプロテレノール・リドカイン・硫酸Mgの静注および低K血症の補正を行った.ベプリジルはQT延長の被疑薬として中止したが,入院時に提出した血中濃度は基準値以下であった.深い陰性T波を伴うQT延長は改善傾向と再延長の経時的二峰性を示し,約3週間後に正常化した.心機能も左室駆出率59%まで改善した経過から頻拍誘発性心筋症であったと判断した.ベプリジルによるQT延長は血中濃度と相関するとされており,同剤が主因ではないと推察した.上記の特徴的な経時的心電図変化から,何らかの誘因によるストレス心筋症様の病態の合併も関与したQT延長であった可能性が疑われた.

Editorial Comment
[症例]
  • 外川 正海, 上田 哲之, 中垣 彰太, 谷 一宏, 大高 慎吾, 村田 明
    2018 年 50 巻 1 号 p. 90-94
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2019/03/28
    ジャーナル フリー

     症例は64歳女性.若年時より左上腕に血管怒張や拍動性腫瘤を自覚していた.56歳時,近医の勧めで当科初診,MRAにて左上腕に複雑な動静脈瘻を認めた.治療が検討されたが,その時点では症状に乏しく,そのまま経過観察の方針となった.以後,当科への受診は途絶えていた.今回,同部位に新たな拍動性腫瘤が出現,急速に拡大し痛みを伴うようになったため近医より当科紹介受診となった.精査にて左上腕に既知の動静脈瘻に加え3つの左上腕動脈瘤を認めた.最大のものは66 mm大で体表から容易に視認可能であり,画像と経過から動静脈瘻の破綻に伴う巨大仮性動脈瘤と考えられ,準緊急にて手術施行の方針とした.術式は左上腕動脈を結紮し瘤を空置してGore-Tex Graft 8 mmにてバイパス,瘤と静脈の交通は瘤内より可及的に結紮処理した.術後経過は良好にて術後10日目に独歩退院となった.現在当科外来にて経過観察中であるが,瘤は良好に縮小し再拡大を認めていない.本症例の如く,1肢に動静脈瘻と複数の動脈瘤が併存した手術例は非常に稀であり,文献的考察を加えて報告する.

  • 出嶋 育朗, 片山 陽介, 宮本 芳行, 岩畔 哲也, 宮本 正興, 奥本 泰士, 木村 桂三, 赤木 秀治
    2018 年 50 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2019/03/28
    ジャーナル フリー

     症例は80歳女性.特発性血小板減少性紫斑病(ITP)にて7年前よりステロイド加療中,4年前より肺動脈拡張が認められていた.今回,全身倦怠感と呼吸困難で入院,肺高血圧と拡大した肺動脈中枢部に巨大血栓を認めた.肺血管拡張薬で治療したところ,肺高血圧の改善と肺動脈内の血栓の消失を認めた.肺動脈末梢に血栓はなく肺血流シンチの異常も認めず,以前より肺動脈拡張が認められていたことより,慢性的な肺高血圧により肺動脈拡張をきたし,そこに血栓が形成されたと考えた.肺血管拡張薬の投与で肺高血圧は改善し,肺動脈内血栓も消失した.ITPに合併した肺高血圧症はこれまでなく,さらに肺高血圧治療に伴い肺動脈内血栓の消失も確認できた貴重な症例を経験した.

  • 野田 征宏, 坪田 誠, 池田 知歌子
    2018 年 50 巻 1 号 p. 102-107
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2019/03/28
    ジャーナル フリー

     症例は機械弁による大動脈弁置換術後,ペースメーカ移植後の74歳男性.利尿薬の増量にても外来コントロール困難な心不全のため精査加療目的に入院となった.心臓超音波検査で心膜輝度の上昇および左室流入血流速度呼吸性変動率31%と上昇を認めた.心臓カテーテル検査ではdip & plateauを呈し,大動脈弁置換術後に生じた収縮性心膜炎と診断した.入院後も利尿薬の静注および強心剤投与下でもForrester Ⅳの心不全状態であるため心膜切除術の適応とした.手術は再正中切開による超音波メスを用いた心拍動下での左房後面を除く心膜完全切除を施行した.術後は順調に経過し,少量の利尿薬でもForrester Ⅰを維持し,術後23病日に退院となった.収縮性心膜炎の手術成績は不良であり,手術のタイミングおよびその術式が重要となるが,われわれは超音波メスを用いて人工心肺を用いずに心拍動下で心膜の完全切除を行い良好な結果を得た.

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