心臓
Online ISSN : 2186-3016
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50 巻, 11 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
OpenHEART
HEART’s Selection
循環器疾患診療のFuture Topics―循環器疾患イメージングのFuture Topics
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 藏澄 宏之, 池永 茂
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 50 巻 11 号 p. 1207-1214
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

     背景:我が国の透析患者の増加とともに透析患者に対する心大血管手術も増加している.

     目的:透析患者に対する心大血管手術の短期・長期成績を明らかにする.

     対象:2004~2016年の期間に当院で行われた心大血管手術1124例のうち透析患者に対する心大血管手術70例.

     方法:開心術後の成績を調査し,予後に影響する因子を同定した.また,遠隔期の生存率を日本の透析人口の生存率と比較した.

     結果:年齢は67.6±8.3歳,男性は40例(57.1%)であった.糖尿病性腎症が35例(50%)で,術前透析期間は平均78.1カ月であった.在院死を6例(8.6%)に認め,その内訳は下肢虚血が2例,低拍出症候群,周術期心筋梗塞,致死性不整脈,急性呼吸窮迫症候群が各1例であった.脳合併症を4例(5.7%),縦隔洞炎を2例(2.9%)に認めた.遠隔期生存率は3年70.6%,5年51.1%,10年19.2%であった.遠隔期死亡の内訳は,心疾患8例,脳血管疾患7例,悪液質3例,感染症2例,その他3例であった.心臓死回避率は3年88.7%,5年76.9%,10年54.9%であった.Cox比例ハザードモデルを用いた多変量解析では,閉塞性動脈硬化症(ASO)の既往(Hazard比5.4,p=0.05)と縦隔洞炎の合併(Hazard比10.2,p=0.03)が遠隔期死亡に対する危険因子で,ASOの既往は遠隔期心臓死に対する単独の危険因子(Hazard比5.3,p=0.01)でもあった.生存率において,日本の透析人口は1年87.2%,3年72.6%,5年59.9%であるのに対して,本研究対象(70例)は1年85.1%,3年67.6%,5年46.7%で,有意差はなかった(p=0.12).

     結語:開心術後の透析患者の予後は,日本の透析人口と同等であった.遠隔期の心疾患死亡を多く認め,術後の慎重なフォローアップが必要と考えられた.またASO合併例は予後不良であった.

Editorial Comment
[症例]
  • 関 晴永, 緑川 博文, 植野 恭平, 滝浪 学, 影山 理恵, 菅野 恵
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 50 巻 11 号 p. 1217-1221
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

     Turner症候群はX染色体欠損により生じ,低身長・性腺機能異常をはじめ様々な合併症を伴い,心血管系の異常が生命予後を左右する.大動脈二尖弁・大動脈径拡大・大動脈縮窄は約半数の患者に合併し,若年での大動脈解離が問題となる.症例は48歳女性,10歳時にTurner症候群と診断された.無月経であったが,健康上大きなイベントなく経過し,健診にて胸部異常陰影を指摘されたため当院当科受診.CTにて上行から弓部大動脈に最大径50 mmの真性瘤と大動脈縮窄を認めた.エコーでは大動脈の弁輪拡大はなく,弁機能に異常はなかった.血圧の上下肢差なく,染色体検査は45,XOであった.手術時に大動脈は二尖弁と判明したが,機能的問題はなし.上行大動脈置換のみ施行し,経過良好にて29日目に独歩退院となった.大動脈壁の病理所見は嚢胞性中膜壊死を疑う所見であった.Turner症候群の患者は体格が小さいため,大動脈径の評価ではASI(aortic size index)が用いられており,ASI>2.5 cm/m2では大動脈解離のリスクが非常に高くなる.大動脈二尖弁・大動脈縮窄・高血圧を合併する場合にはさらに危険とされている.本症例はASI 4.0 cm/m2であり,大動脈二尖弁・大動脈縮窄・高血圧を有していながらも,中年期まで無症状で経過した極めて稀な症例であると考えられる.

  • 白木 宏明, 魚谷 美貴, 岩田 幸代, 谷口 弥生, 小澤 徹, 武居 明日美, 田中 秀和, 田中 裕史, 大北 裕, 平田 健一, 井 ...
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 50 巻 11 号 p. 1222-1227
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

     症例は44歳男性.発症1週間前に急性腸炎に罹患.2日前に胸部不快感を自覚し近医受診.当院受診時,心電図にてⅡ,Ⅲ,aVFおよび左側胸部誘導の広範囲なST低下,aVR誘導のST上昇を認めた.心エコー図では左室駆出率(Ejection Fraction;EF)60%で,左室壁運動は正常であった.急性冠症候群の疑いにて冠動脈造影を施行するも正常冠動脈の所見.入院2日目,左室収縮能は保たれていたが,2:1房室ブロックを呈し,その後完全房室ブロックへ移行し,体外式ペーシングを挿入した.翌3日目に左室収縮能が急激に悪化し,EF 20%まで低下し,右室壁運動低下や心筋浮腫・心膜液貯留も著明となった.人工呼吸器管理・大動脈バルーンパンピング(IABP)による循環補助でも血行動態が保てず,補助人工心臓の適応と判断し,高次医療施設に転院.両心補助人工心臓を含む集学的治療にて救命し得た.急性心筋炎は,心筋の炎症を主体とする炎症性疾患と定義され,様々な重症度・病態を示す疾患であり,その中で劇症型心筋炎は,急激なポンプ失調から血行動態の破綻をきたすものを指す.本例は,伝導障害が先行し,劇症型心筋炎の病態を呈した.劇症型心筋炎の病態の進展を考える上で貴重な症例であり,ここに報告する.

Editorial Comment
[症例]
Editorial Comment
[症例]
  • 松本 和久, 山本 隆, 小笠原 梢, 近藤 絵里, 長地 尚子, 河野 和弘, 角谷 昭佳
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 50 巻 11 号 p. 1235-1242
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

     症例は80歳の女性.突然呼吸困難が出現し,近医で低酸素血症を指摘され,精査・加療目的に紹介された.低酸素血症の原因は肺塞栓症であったが,JAK2遺伝子変異を伴う本態性血小板血症が認められた.JAK2遺伝子変異のある本態性血小板血症では,静脈血栓症の発症頻度が高いことが報告されている.本症例では,静脈血栓症の原因となる凝固系の血栓性素因や悪性疾患は認められず,JAK2遺伝子変異を伴う本態性血小板血症が肺塞栓症の発症に関与したと判断した.急性期は抗凝固療法を併用したが,肺動脈内の血栓が消失後は,本態性血小板血症に対してハイドロキシウレアによる骨髄抑制療法と抗血栓薬として低用量アスピリンの投与を継続した.肺塞栓症のリスクのあるJAK2遺伝子変異についての文献的考察も加え報告する.

  • 山形 亘, 磯貝 俊明, 小木曽 正隆, 吉田 彩乃, 西村 睦弘, 田中 博之, 手島 保
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 50 巻 11 号 p. 1243-1248
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

     症例は43歳男性.覚醒剤使用で服役中,運動時に心室細動による心肺停止となり,自動体外式除細動器で除細動され当院に搬送された.心電図で陰性T波を認めたが,心エコー検査では壁運動異常を認めなかった.緊急冠動脈造影で右冠動脈に数珠状のびまん性冠動脈瘤を認めた.血管内超音波検査で複数の隔壁を有し複雑に拡張した血管径の大きい病変であったため,経皮的冠動脈形成術は困難と判断した.薬物治療と心室細動の二次予防として植込み型除細動器を留置した.覚醒剤やコカインなどの違法薬物は心血管系に作用し,動脈瘤を形成しうるとされる.本症例では覚醒剤の使用は病歴聴取により確認できたものの,コカインなどの他の違法薬剤の使用歴は明らかにできず,また本症例と同様の病変を示す違法薬物患者の先行報告がないため,違法薬物自体とこの特殊な冠動脈病変との因果関係について断定はできない.しかしながら,川崎病や自己免疫疾患による血管炎の既往はなく,通常の動脈硬化病変とは考えにくい特殊な病変であったことから,違法薬剤が数珠状冠動脈病変の形成に関与した可能性が示唆された.

Editorial Comment
[症例]
  • 野村 亜南, 茂木 健司, 櫻井 学, 坂田 朋基, 金行 大介, 高原 善治
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 50 巻 11 号 p. 1251-1255
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

     症例は33歳の男性で,無治療のアトピー性皮膚炎があった.2015年7月に39℃の発熱を認めたため,当院内科外来を受診した.採血で炎症反応が高値であったがfocusが不明であったため,経過観察となった.その後も解熱しないため近医を受診し,CT上,両肺に多発する浸潤影を認めたため当院紹介となり,敗血症性肺塞栓症の疑いで呼吸器内科に入院となった.血液培養を施行した後,抗生剤による治療を開始したが,間歇的な発熱が持続し,感染性心内膜炎の可能性も考慮して入院時に心エコーも施行したが,疣腫らしきものは認めなかった.入院3日目に,血培から黄色ブドウ球菌が検出されたことが判明し,心エコーを再検したところ,三尖弁に入院時には認められなかった20 mm大の疣腫が認められたため,緊急手術の方針となった.三尖弁後尖に20 mm大の疣腫を認め,前尖と中隔尖にも小さい疣腫を認めた.後尖をできるだけ温存する形で疣腫を切除し,DeVega法で弁輪縫縮した.卵円孔開存も認めたため5-0 proleneで縫合閉鎖した.術後経過は順調で,第22病日に退院となり,現在も定期的に外来でフォローしているが,感染性心内膜炎の再発や三尖弁閉鎖不全症の増悪はみられていない.

  • 三島 健人, 中澤 聡, 加藤 香, 登坂 有子, 菊地 千鶴男, 高橋 善樹
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 50 巻 11 号 p. 1256-1261
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

     乳頭状線維弾性腫はすべての心内膜より発生する可能性があるが,弁の弁腹に発生するものが多い.今回我々は,乳頭状線維弾性腫が左心室乳頭筋に発生した症例を2例経験したので報告する.

     両症例とも68歳で,男性1例,女性1例.両症例ともに,収縮期雑音の精査の心エコー検査で左心室内の腫瘤を指摘され,可動性を有するため,手術を行い摘出した.両症例ともに左心室乳頭筋より発生し,病理組織検査では,短い茎を有し絨毛状葉状体を放射状に伸ばした構造を認め,乳頭状線維弾性腫の診断であった.

     心室内の腫瘤性病変を認めた場合,乳頭状線維弾性腫も鑑別疾患とする必要があると考えられた.

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