心臓
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50 巻, 5 号
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OpenHEART
HEART’s Selection
循環器疾患診療50年を振り返って―高血圧におけるわが国の歩み―
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 木全 玲, 福山 和恵, 安富 真道, 高原 宏之, 白木 宏明, 平山 園子, 小澤 徹, 武居 明日美, 井上 信孝
    2018 年 50 巻 5 号 p. 524-528
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー

     目的:独居・高齢者は心不全増悪のハイリスク症例である.総務省の統計では,2010年の独居世帯数は1,678万世帯で総人口の13.1%を占めており,2030年では1,872万世帯,総人口の16.1%と想定されている.独居者は,医療アドヒアランス低下や生活習慣の悪化をきたしやすく,疾患管理には患者教育や社会的支援は重要な役割を果たす.このような背景のもと,心疾患を抱える独居者の臨床像を明らかにすることは,患者支援・患者教育を考える上で重要である.今回,ひとり暮らしの冠動脈疾患の臨床像を明らかにするために,独居群/同居群を2群に分けてその臨床像を検討した.

     対象:過去に経皮的冠動脈形成術の既往があり,当院外来通院中の冠動脈疾患症例137例を独居群(n=28,M/F=26/2)と同居群(n=109,M/F=94/15)の2群に分け検討.個々の症例の精神的ストレスは,Self-rating Depression Scale(SDS)によるアンケートにて評価した.

     結果:基礎心疾患の構成比率,年齢は両群間で有意な差はなかった(年齢:独居群65.6±6.7歳,同居群65.0±9.7歳).糖尿病,脂質異常症,高血圧の有病率も差を認めなかったが,喫煙は独居群で高率であった(p<0.01).SDSスコアで評価した精神的ストレスは,独居群で高度にある傾向であった.平均59.3カ月の観察期間内で,心不全入院をきたした割合は同居群で8.3%(9/109)に対して独居群では28.5%(8/28)と有意に高率であった(p<0.005).心不全入院を従属変数としたロジスティック回帰分析では,独居の心不全入院に対するオッズ比は,5.195倍であった.

     総括:独居は,冠動脈疾患において心不全悪化の要因である.

Editorial Comment
[症例]
  • 冲永 紗百合, 関本 輝雄, 吉竹 功央一, 野口 薫, 宗次 裕美, 横田 裕之, 佐藤 貴俊, 近藤 武志, 柴田 正行, 松下 弘, ...
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 50 巻 5 号 p. 531-536
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー

     心室中隔穿孔は緊急手術を要する急性心筋梗塞の予後不良な合併症である.

     症例は79歳男性.来院2週間前に胸痛,10日前から呼吸困難を自覚し,うっ血性心不全の診断で入院した.心電図では下壁誘導で陰性T波を認め,心臓超音波検査で下壁の壁運動低下,心基部に心室中隔穿孔を認めた.上記所見より,下壁心筋梗塞に合併した心室中隔基部穿孔が疑われたが,循環動態は安定しており待機的な外科的治療を選択した.第5病日の冠動脈造影検査で右冠動脈近位部の完全閉塞を診断し,第12病日に心室中隔穿孔閉鎖術を施行した.その後良好な経過で第25病日に独歩退院した.

     下壁心筋梗塞後の心室中隔基部穿孔にもかかわらず,待機的な手術で良好な経過をたどった稀な症例であり考察を加え報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 安里 哲矢, 渡邉 望, 緒方 健二, 栗山 根廣, 柴田 剛徳
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 50 巻 5 号 p. 538-544
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー

     高血圧症にて内服加療中の79歳女性.来院当日自宅にて気分不良,冷汗,意識消失を認め,救急要請となり近医へ搬送された.数分後に意識回復するも血圧低値であり昇圧薬を投与されたが収縮期血圧50~90 mmHgで推移した.心電図にて前胸部誘導でST上昇を認め,トロポニンT陽性,心エコー図では壁運動低下と高度僧帽弁逆流(MR)を認めた.急性冠症候群に伴う急性MRとの診断で当院へ転院搬送となった.当院での心エコー図にて,前壁中隔側左室中部から心尖部にかけて壁運動の低下と心基部の過収縮,僧帽弁前尖の収縮期前方運動(SAM)に伴う高度MRを認めた.当院受診後も収縮期血圧70 mmHg台と低値であり,大動脈バルーンパンピング(IABP)を留置した上で冠動脈造影を施行した.冠動脈には有意狭窄を認めず,左室造影では心基部の過収縮を認め,たこつぼ型心筋症と診断した.補助循環を要する急性MRであったが,エコー上弁尖の逸脱や穿孔は認めずSAMによるMRであり壁運動の正常化とともにMRは改善すると考えた.左室流出路閉塞の解除目的に,輸液とβ遮断薬投与を行ったところ血圧は徐々に改善した.第3病日にIABPを抜去し,第4病日に一般病棟へ転床となった.心エコー図では経時的に壁運動は改善し,SAMは消失しMRも軽度まで改善し,第21病日に退院となった.SAMに伴う急性MRにて一過性に心原性ショックとなり,壁運動の改善とともにMRも改善した,たこつぼ型心筋症の1例を経験したので文献的考察も含めて報告をする.

[症例]
  • 小西 克尚, 大西 史峻, 山内 良太, 渡邉 清孝, 大村 崇, 太田 覚史, 北村 哲也, 森 拓也, 伊藤 竜吾, 川上 恵基, 田中 ...
    2018 年 50 巻 5 号 p. 545-551
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー

     60歳代の女性が著明な下肢浮腫のため紹介された.顕正尿蛋白を伴い,ネフローゼ症候群と診断.腎生検結果および血液中の蛋白所見から,ALアミロイドーシスと診断された.心臓超音波検査にて全周性の心肥大を認め,心臓MRI画像で心肥大,遅延造影所見,胸水貯留を認め,心アミロイドーシスの合併が疑われた.ボルテゾミブ・デキサメタゾンによる化学療法を2コース施行した結果,ALアミロイドーシスは寛解に至り,心肥大も壁厚12 mmまで改善し,血清BNP値も395.5 pg/mLから33 pg/mLまで低下した.ネフローゼ症候群も現在に至るまで臨床的に再発なく経過されている.同薬剤によって心アミロイドーシスによる心肥大が著明に改善し,心不全が改善し得たという症例を経験したので報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 根本 尚彦, 原 英彦, 髙亀 則博, 武中 宏樹, 福井 遼, 新倉 寛輝, 加藤 全功, 安齋 均, 小林 延行
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 50 巻 5 号 p. 554-560
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー

    症例1:73歳,女性.約50年前に肺動脈弁狭窄症に対して外科的肺動脈弁交連切開術を施行.最近になり浮腫・心拡大・心房細動の出現を認め精査のため当院を紹介受診.心臓超音波検査で中等度の肺動脈弁狭窄を認め,右心カテーテル検査を施行,右室肺動脈弁圧較差が48 mmHgであった.

    症例2:73歳,女性.陳旧性心筋梗塞(バイパス術後),心房中隔閉鎖術後,洞不全症候群(ペースメーカー植込み後),慢性腎不全,糖尿病で当院加療中,薬物治療抵抗性で短期間に心不全入院を繰り返している.心エコーで圧較差69 mmHgと高度の肺動脈弁狭窄症を認めた.

     ともに有症候性の肺動脈狭窄症であり,開心術後であること,弁尖の石灰化は軽度であること,合併奇形がないことから経皮的肺動脈弁形成術(percutaneous transluminal pulmonary valvuloplasty;PTPV)施行した.

     現在,2例とも外来にて症状も消失し経過良好である.

Editorial Comment
[症例]
  • 吉本 彩花, 山崎 宙, 伊藤 彰
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 50 巻 5 号 p. 562-567
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー

     症例は60代男性.1年ほど前から息切れ,数カ月前から左胸部の違和感を自覚し,当科を受診した.胸部X線写真で大動脈弓部の拡大を疑い,胸部CT検査を施行したところ,長径85 mm,短径70 mmの巨大肺動脈瘤が認められた.心臓カテーテル検査では,平均肺動脈圧が17 mmHgと肺高血圧はなく,左右冠動脈に有意狭窄や冠動脈肺動脈瘻はみられなかった.心臓超音波検査では先天性心疾患も認められなかった.肺動脈瘤の原因として,シャント性先天性心疾患や肺高血圧,梅毒等が報告されているが,本症例ではいずれも認められなかったことから,特発性肺動脈瘤と診断した.特発性肺動脈瘤の予後は,悪くないとする報告がある一方,破裂や解離,突然死をきたした症例も報告されている.本症例では瘤径が巨大であったため,破裂や解離のリスクが高いと判断し,人工血管置換術を施行した.

  • 千丈 創, 川松 直人, 木全 啓, 横山 泰廣, 吉野 邦彦, 山崎 学, 新沼 廣幸, 丹羽 公一郎, 阿部 恒平, 三隅 寛恭, 小宮 ...
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 50 巻 5 号 p. 568-573
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー

     症例は20歳,男性.友人とバドミントンをしている最中に突然心停止した.バイスタンダーでCPRが施行されAEDが計6回作動したが蘇生せず,当院に救急搬送された.64分間の心停止後に心拍再開したが循環動態が保てず,気管挿管管理下にPCPS・IABPを必要とした.一時PCPSからVV-ECMOに切り替えるなど呼吸循環管理に難渋したが,後遺症なく蘇生後13日で自立歩行が可能となった.冠動脈造影およびアセチルコリン負荷試験,心筋生検では異常を認めなかったが,心臓MRIで左室後側壁に径18mmの心室憩室を認めた.電気生理学的検査を行うと容易に心室頻拍が再現され,この憩室が起源と考えられた,心室頻拍根治を目的に左室憩室の外科的切除を行った.その後約1年間心室頻拍は再発していない.心室頻拍が心停止の原因と断定することは困難であったが,左室憩室が心室頻拍の起源と考えられ,切除術を行うことでコントロールが可能であった症例を報告する.

  • 滝浪 学, 緑川 博文, 影山 理恵, 植野 恭平, 菅野 恵
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 50 巻 5 号 p. 574-578
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー

     片側性肺動脈欠損症は稀な先天性奇形で,胸部X線写真所見にて鑑別疾患の1つに挙げられることが多く,先天性心疾患を伴うものや無症状で経過しても反復性感染症,肺高血圧症等を合併し,それらが予後不良因子となる.我々は,無症状で経過した成人の片側性肺動脈欠損症に合併した縦隔型気管支動脈瘤の症例を経験した.

     症例:48歳,女性.30歳頃に原因不明の発熱で入院歴と未治療の高血圧の既往があった.検診で胸部異常陰影を指摘され,近医受診し胸部大動脈瘤を認め当院紹介となった.心電図や血液検査所見,心エコー検査所見に特記すべきことはなかった.胸部X線写真で左肺野拡大と透過性亢進,右側縦隔偏位を認め,CTにて右主肺動脈欠損と右肺の低形成,16×15 mmの気管支動脈瘤を認めた.

     手術経過:気管支動脈瘤に対し,コイル塞栓術を施行した.術後経過は良好で術後2日目に退院した.

     結語:稀な片側性肺動脈欠損症に合併した気管支動脈瘤の1例にコイル塞栓術を施行し,良好な結果を得た.今後も,肺高血圧等の合併症や他の血管異常,瘤化の可能性を考慮し,経過観察していく所存である.

Meet the History
  • ─三崎拓郎先生に聞く
    三崎 拓郎, 新田 隆
    2018 年 50 巻 5 号 p. 579-590
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー

     本日は富山大学名誉教授の三崎拓郎先生にお話を伺いました.

     三崎先生は,金沢大学名誉教授の岩喬先生とともに,不整脈外科の礎を築かれました.現在,WPW症候群などの頻脈性不整脈に対するカテーテルアブレーションが盛んに行われていますが,いずれもまず外科治療が行われ,そこで得られた知見に基づいてカテーテル治療が開発されました.心房細動のカテーテルアブレーションも同様で,外科治療が先行していなければ現在のカテーテル治療は実現しなかったか,導入が非常に遅くなっていたと考えられます.

     三崎先生は医学部の学生の頃から不整脈外科に強い興味を持たれて,岩先生の教室に入られ,以降この分野に没頭された人生でした.若い時に大きな感動を得て,そして時には挫折を味わうことが大きな飛躍をもたらす上で重要であると感じました.

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