心臓
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51 巻, 12 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
OpenHEART
HEART’s Selection
心臓病に挑むゲノム医療 企画:朝野仁裕(大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学)
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 関塚 宏光, 三宅 仁
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 51 巻 12 号 p. 1261-1268
    発行日: 2019/12/15
    公開日: 2021/02/02
    ジャーナル フリー

     企業健康診断を受検した25,987名を対象として,心房細動(atrial fibrillation;AF)有病率と生活習慣の関連性に着目した単施設における記述疫学調査および横断調査を行った.除外基準を除いた30歳から59歳のホワイトカラー労働者23,953名(男性20,601名,女性3,352名)を調査した結果,AFの有病率(心房粗動の3名を含む)は,66名(0.28%,男性64名,女性2名)であった.AF群とAFなし群で有意差が認められた背景因子をロジスティック回帰分析で特定したところ,全対象では高齢,男性,慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)併存,男性では高齢,CKD併存が独立因子であった.

     AF群の社員で治療がなされているのは58%のみであり,企業定期健康診断時はAFに対する治療介入の良い機会となる可能性がある.

Editorial Comment
[症例]
  • 齋藤 大樹, 佐地 真育, 伊東 千早, 清水 淳, 内室 智也, 高梨 秀一郎
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 51 巻 12 号 p. 1272-1275
    発行日: 2019/12/15
    公開日: 2021/02/02
    ジャーナル フリー

     症例は65歳男性,生来健康であった.来院3日前より便秘気味であった.来院当日の夕方に下剤および座薬を使用し息んでいたところ,脱力感を自覚し,その後意識障害を認めた.前医へ救急搬送され腹部大動脈瘤破裂の診断の後,当院へ紹介搬送された.その搬送中に心肺停止となり,直ちに心肺蘇生が開始された.当院へ到着後,すぐに手術室へ搬入された.手術室に搬入後,心肺蘇生を施行しつつ,緊急手術を開始した.開腹すると,腹腔内には出血を認めなかった.同時切開していた左胸腔内より下行大動脈を遮断した後に,腹部大動脈瘤を開けてみると,瘤内(右側瘤壁)より下大静脈へ穿破している所見を認めた.同部位を修復し中枢は腎動脈下,末梢は両側総腸骨動脈へ人工血管置換術を施行し手術終了とした.術後経過は順調であり,術後およそ3週間で,リハビリ施行目的に他院へ転院となった.

  • 佐藤 麻美, 福西 雅俊, 安彦 里佳, 高田 裕美子, 野手 健司, 後藤 浩実, 竹中 秀, 西川 幹人, 及川 達也, 吉田 一郎, ...
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 51 巻 12 号 p. 1276-1282
    発行日: 2019/12/15
    公開日: 2021/02/02
    ジャーナル フリー

     感染性心内膜炎は,弁膜疾患や先天性心疾患などの心疾患を有する例に多くみられる.今回我々は僧帽弁尖には疣腫を認めず,乳頭筋感染によって急性僧帽弁逆流を生じたと思われる感染性心内膜炎の1例を経験したので報告する.

     症例は60歳代女性.発熱と倦怠感を自覚し,その後背部痛の出現と嘔吐のため当院へ救急搬送され入院.血液培養検査でメチシリン感受性黄色ブドウ球菌が検出され,感染性心内膜炎の鑑別のため心エコー図検査を施行したが明らかな疣腫は指摘できず,軽度僧帽弁逆流を認めるのみだった.翌日,収縮期雑音の明らかな増強があり心エコー図の再検査を施行.前日指摘されなかった僧帽弁前尖の逸脱を認め,僧帽弁逆流は重症となっていた.弁尖には前日同様に疣腫を指摘できなかったが,前乳頭筋の輝度上昇と腱索の断裂を認め乳頭筋感染による感染性心内膜炎が疑われた.抗生剤治療が行われていたが,第7病日に状態が急変し永眠された.剖検が行われたが,乳頭筋に膿瘍形成を伴う細菌感染所見があり腱索の断裂を認めるも,僧帽弁尖には疣腫を認めなかった.感染性心内膜炎は弁自体への感染が多いとされているが,本症例は弁尖に疣腫を認めず乳頭筋感染という非常に稀な症例であった.心エコー図検査では弁以外の部位も詳細に観察すべきと考える.

  • 藤戸 秀聡, 齋藤 佑記, 右田 卓, 門野 越, 須藤 晃正, 相澤 芳裕, 深町 大介, 田中 正史, 奥村 恭男
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 51 巻 12 号 p. 1283-1289
    発行日: 2019/12/15
    公開日: 2021/02/02
    ジャーナル フリー

     症例は73歳,女性.僧帽弁狭窄症に対して僧帽弁交連切開術後,また,慢性心不全のため3回の入院加療歴があり,普段からNYHA Ⅲ度の息切れがある.安静時の息切れ,起座呼吸が出現したため救急搬送された.胸部X線上,著明な心拡大と肺うっ血像を認め,慢性心不全の急性増悪と判断した.経胸壁心エコー図上,僧帽弁のdoomingや左房,右心系の著明な拡大から既知の僧帽弁狭窄の関与が疑われたが,平均左房-左室間圧較差は軽度であった.臨床所見と検査所見に乖離がみられたため,3次元経食道心エコー図,ハンドグリップ負荷心エコー図を施行した.3次元planimetry法では僧帽弁口面積1.32 cm2と重度狭窄の所見を認めた.ハンドグリップ負荷心エコー図では,高度の肺動脈圧上昇の所見は得られなかったが,収縮期三尖弁圧較差の上昇と症状の出現があるため,重度の僧帽弁狭窄が心不全に関与していると考え,僧帽弁置換術,三尖弁輪形成術を施行した.術後,息切れの症状は改善し,術後のハンドグリップ負荷心エコー図で収縮期三尖弁圧較差は低下した.右心不全を合併する重度の僧帽弁狭窄症において,低心拍出の影響により,ドプラ心エコー図の圧較差による重症度診断や,運動負荷心エコー図による手術適応の判断が困難であることがある.そのような病態の評価に,3次元経食道心エコー図による形態学的評価を含めた,多角的な重症度診断が必要と考えられた.また,僧帽弁置換術が有効であった.

  • 石川 和徳, 林 弘樹, 森 秀暁
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 51 巻 12 号 p. 1290-1294
    発行日: 2019/12/15
    公開日: 2021/02/02
    ジャーナル フリー

     症例は71歳男性.約1年前から他院で心房細動と診断され抗凝固療法を受けていた.前胸部痛の精査目的に当院を受診した.経胸壁および経食道心臓超音波検査では,大動脈弁の左冠尖および無冠尖のそれぞれに可動性を伴う有茎性の疣腫状構造物の付着を認めた.大動脈弁腫瘍と診断し塞栓予防および確定診断のために手術適応と判断した.術中所見では大動脈弁の3尖すべてに有茎性の腫瘍を認めた.茎部を含めた腫瘍切除を行い大動脈弁は温存した.心房細動に対してはメイズ手術を併術した.左冠尖および無冠尖から摘出した腫瘍が病理組織検査で乳頭状弾性線維腫と診断された.術後の心電図は正常洞調律を維持したことから,抗凝固療法は術後3カ月で中止した.経胸壁心臓超音波検査では大動脈弁の接合は良好であり弁機能不全は認めなかった.術後2年を経過した現在も正常洞調律を維持し,大動脈弁の機能不全や腫瘍の再発は認めていない.

Editorial Comment
[症例]
  • 高木 啓倫, 勝部 康弘, 赤尾 見春, 松井 亮介, 小林 光一, 長嶺 美和, 佐野 透美, 宮田 真貴子, 田辺 雄次郎, 田嶋 華子 ...
    2019 年 51 巻 12 号 p. 1297-1303
    発行日: 2019/12/15
    公開日: 2021/02/02
    ジャーナル フリー

     症例は9カ月の男児.川崎病の主要症状6項目中4項目を認め,加えて,非常に不機嫌であること,BCG接種部位の発赤など川崎病を強く疑わせる臨床症状ならびに血液検査を考慮し川崎病を疑った.治療は第3病日より免疫グロブリン点滴静注(以下IVIG)療法を開始したが治療抵抗性のため,第5病日にIVIGを追加し,さらに第8病日にプレドニゾロンの追加を行い解熱した.心臓超音波検査では入院時には明らかな冠動脈病変(以下CAL)は認めなかったが,第9病日にはCAL合併が出現し,最大値は右冠動脈6.5 mm(Zスコア10.44),左冠動脈3.2 mm(Zスコア4.28)となった.CALは発症1カ月時点でも改善を認められなかった.CRP値は3.66 mg/dLと軽度の上昇に留まっていたが,PTX3値は63.7 ng/mLと著しい高値を認めており,PTX3がIVIG不応例の予測ならびにCAL合併の予測に有用である可能性を示唆する症例と考え,過去のデータレビューとともに報告する.

  • 小暮 周平, 山本 直樹, 湯浅 右人
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 51 巻 12 号 p. 1304-1309
    発行日: 2019/12/15
    公開日: 2021/02/02
    ジャーナル フリー

     近年腎移植の生着率は改善しており,腎移植患者の長期生存者も増加している.一方腎移植までの腎不全状態,移植後のステロイド,免疫抑制薬使用などによって動脈硬化が進行しやすい.症例は64歳男性で,20歳時にネフローゼ症候群を発症し,22歳で透析導入した.40歳で献腎移植を受け以後腎機能は安定していた.憩室炎,横行結腸癌,人工肛門造設などで62歳までに4度の開腹歴を認めた.64歳時に,半年間で10 mm拡大し最大短径48 mmとなった右総腸骨動脈瘤に対して治療介入が必要となった.術前の造影CTで右内腸骨動脈が献腎に対して端々吻合されており,この血管を温存する必要があったため開腹にて人工血管置換術を行うことを選択した.頻回の手術による高度癒着や長期間のステロイド使用などによる組織の脆弱性が顕著で,血管の剝離,吻合には非常に難渋した.また,術翌日には開腹創の脆弱性から腹壁破裂に至り,減張縫合術の追加を必要とした.腎移植後の遠隔期に腹部・腸骨動脈瘤を発症してくる症例は本邦でも数例報告されている.本症例のように癒着や組織脆弱性が極めて強い症例も多いと考えられ,解剖学的に可能であればステントグラフトの使用が望ましい.やむなく人工血管置換術が必要な症例に対しては患者背景を考慮し,吻合方法やバイパスルートなどを注意深く検討する必要がある.

Editorial Comment
[症例]
  • 奥山 虎章, 藤井 真也, 宇野 剛輝, 永吉 信哉, 宮本 敬史, 中島 崇智, 武藤 誠, 清水 禎彦, 吉村 道博
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 51 巻 12 号 p. 1311-1316
    発行日: 2019/12/15
    公開日: 2021/02/02
    ジャーナル フリー

     78歳女性.ST上昇型急性心筋梗塞の診断で,緊急冠動脈造影を施行し,責任病変である左前下行枝第一対角枝の完全閉塞に対し,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行し,薬剤溶出性ステントを留置した.PCI後,順調に心臓リハビリテーションを施行していたが,退院直前の第6病日,一般病棟にて突然心肺停止となり,心肺蘇生を施行した.急変直後,心肺蘇生中の心エコーでは,心破裂を示唆する心嚢液貯留を認めなかった.自己心拍が再開しなかったため,体外式膜型人工肺(VA-ECMO)を導入した.原因検索のため施行した造影CTでは,左血胸,後腹膜血腫を認めたが,心嚢液貯留や大血管損傷の所見もなく,原因不明のまま同日死亡した.病理解剖を施行し,左室自由壁の心破裂を認め,直接死因と判明した.さらに,心膜破裂,横隔膜破裂も認め,これらにより,血胸,後腹膜血腫を呈したため,心嚢液貯留がほとんどみられず,生前の心破裂の診断に難渋したと考えられた.心破裂に伴う出血により,心嚢や左胸腔の内圧が上昇し,心肺蘇生時の胸骨圧迫による過度の圧負荷が加わったことで,心膜破裂,横隔膜破裂に至ったと推察された.胸骨圧迫の影響で心膜破裂,横隔膜破裂を合併した報告は非常に稀であり,また同時に合併した報告はない.胸骨圧迫に伴う稀有な合併症により診断に難渋した心破裂の1例を経験したので,文献的考察とともに報告する.

Editorial Comment
Meet the History
  • ─松田 暉先生に聞く
    松田 暉, 和泉 徹
    2019 年 51 巻 12 号 p. 1319-1328
    発行日: 2019/12/15
    公開日: 2021/02/02
    ジャーナル フリー

    松田 暉先生は私の5年先輩である.私のような循環器内科医は心臓外科医に直接鍛えられたとの思いがある.心臓病の根治を掲げた外科が輝きを増していた時代のおひとりである.今では常識になったハートチームは臓器移植法下の心臓移植医療の実施を通じて否応なく本邦に定着した経緯がある.内科医と外科医の合同チームが適応を決め,外科医には卓越したアウトカムを求め,内科医が介入前後の疾病管理を担うシステムの誕生である.松田先生はこの課題に自然体で取り組まれ,臓器移植法下心臓移植という難題に凛として先陣を務めた.そしていまなおその重責を全うされている.ここではその一部始終を真摯に語ってもらった.胸の内をお聞きするまたとないチャンスに恵まれた.感謝を申し上げるとともに,先生が描かれる心臓移植医療の本来あるべき発展を願ってやまない.

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