心臓
Online ISSN : 2186-3016
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52 巻, 1 号
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OpenHEART
HEART’s Selection
心不全と糖尿病 企画:室原豊明(名古屋大学大学院医学系研究科 循環器内科学)
HEART@Abroad
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[臨床研究]
  • 湯本 浩司, 齋藤 実, 髙岡 幸子, 吉田 智貴, 稲葉 慎二, 住元 巧
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 52 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2020/01/15
    公開日: 2021/03/07
    ジャーナル フリー

     背景:多くの心不全患者は高齢で,様々な余病を有するため,薬への依存度が高い.一方,内服種類数だけでなく,1日当たりの服用回数の増加は服薬アドヒアランスの不良を惹起し,結果として予後に影響する可能性がある.本研究では,服用回数の増加は心不全患者の再入院に関連するとの仮説を立て,その検証を行った.

     方法:2006年から2014年までに心不全で喜多医師会病院に入院した連続452名を,後ろ向きに調査した.転帰は退院後の全再入院および心不全再入院とした.退院時処方より内服種類数と服用回数を調査し,各転帰との関連を検討した.

     結果:内服種類数の中央値は9種類であり,服用回数の中央値は3回であった.中央値1.1年の追跡中に269名(60%)が全再入院をきたし,中央値2.5年の追跡中に145名(32%)が心不全再入院をきたした.内服種類数と服用回数はともに再入院の増加に関連し,服用回数3回以上は,年齢,性別,BNP値,腎機能,糖尿病,心不全入院歴,過去1年の入院歴で補正後も心不全再入院と有意に関連した.また,上記共変数で作成した心不全再入院予測モデルの精度は,内服種類数9種類以上の追加で改善し,服用回数3回以上の追加でさらに改善した.

     結語:服用回数の増加は心不全再入院に関連する可能性がある.

Editorial Comment
[症例]
  • 桃井 瑞生, 坂田 新悟, 岩澤 佑治, 新屋 貴章, 北島 龍太, 樫村 晋, 酒井 正憲, 山川 裕之, 新村 大輔, 福本 耕太郎, ...
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 52 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2020/01/15
    公開日: 2021/03/07
    ジャーナル フリー

     症例は73歳,男性.高血圧症で近医に通院中であった.X年2月,労作時の呼吸困難のために当科紹介受診し,心不全の診断で入院加療を行った.腹部臍上部に血管雑音を聴取し,腎動脈エコーを施行したところ,左腎動脈を2本認め,どちらも起始部で狭窄していた.腹部造影CTを撮影したところ,左腎動脈は大動脈から3本分岐しており,いずれも狭窄していた.降圧薬4剤の内服下でも高血圧が難治性であり,経皮的腎動脈形成術の適応と判断した.腎動脈造影では,3本の左腎動脈いずれも有意な狭窄を認め,3本の左腎動脈それぞれにステントの留置を行った.術後,外来での血圧コントロールが良好となり,降圧薬を2剤に減らした.大動脈から3本分岐している重複腎動脈狭窄に対して経皮的腎動脈形成術を施行した貴重な症例を経験したので報告する.

  • 橋本 昌樹, 荻本 理紗, 本田 圭, 大森 康歳, 石原 有希子, 鴨井 祥郎, 山本 博之, 田中 茂博
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 52 巻 1 号 p. 54-60
    発行日: 2020/01/15
    公開日: 2021/03/07
    ジャーナル フリー

     症例は55歳,男性.左下肢壊疽に対して45歳時に左下肢切断術の既往がある.50歳時に健診での心電図異常を契機に経胸壁心エコー,心臓CTを施行された.前壁中隔の壁運動高度低下に加え左前下行枝#7の閉塞,右冠動脈#1の中等度狭窄を認めていた.その後通院を自己中断し以降の精査は未施行であった.55歳時に腰部・右下肢の疼痛としびれを主訴に当院へ搬送,右下肢壊疽の診断で大腿切断の予定となった.術前の胸部X線で心陰影拡大と胸水貯留を認め,また経胸壁心エコーでは左室のびまん性壁運動低下に加え左室心尖部に弧状の,可動性を有する異常構造物を認めた.下肢に対する手術施行は高リスクであると判断,保存的加療の方針となり,各種モダリティを用いて心室内異常構造物の精査を行う方針とした.心臓MRIでは前壁中隔から心尖部にかけて遅延造影を認めた.また,同部位で心内膜に沿った造影不良域を認めた.入院第36病日に施行した経胸壁心エコーでは心室内異常構造物は縮小,可動性も消失していた.上記結果より,陳旧性心筋梗塞による左室壁運動の高度低下,それに伴う心室内血栓の形成と考えた.心室内血栓検出に関しては低侵襲性から経胸壁心エコーが,感度・特異度の観点から心臓MRIが推奨される.比較的珍しい形状の心室内構造物に対して各種モダリティを用いて,経時的な画像所見の変化も併せて心室内血栓であると最終的に判断できた1例であった.

Editorial Comment
[症例]
  • 小村 茉穂, 東 慶之介, 古賀 貴博, 栗田 康寿, 油尾 亨, 井上 勝, 三輪 健二, 安田 敏彦, 松原 隆夫
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 52 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 2020/01/15
    公開日: 2021/03/07
    ジャーナル フリー

     症例は40歳代女性.16歳時にC型肝炎を指摘され,その後肝硬変として近医でフォローされ,30歳時に門脈血栓症を認めた.某日,肝性脳症による意識障害にて当院へ救急搬送となり,胸腹部CTで肺動脈の拡張と,心エコーで著明な右心負荷所見を認め当科へコンサルトとなった.右心カテ—テル検査で肺高血圧症の診断基準を満たし,著明な脾腫および脾動静脈の拡張を伴っており,その他の肺高血圧症も否定的であったことから,門脈肺高血圧症の診断に至った.肺高血圧治療薬としてセレキシパグを用いたが改善には至らず,トルバプタンを中心とした利尿薬を用い,平均肺動脈圧86→37 mmHg,肺血管抵抗21.5→3.8 WUと著明な血行動態の改善を認めた.今回,肝性脳症を契機に診断され著明な血行動態の改善を認めた門脈肺高血圧症の1例を経験した.文献的考察を加え臨床経過を報告するとともに,門脈肺高血圧症に対する治療戦略として安易な肺高血圧治療薬の初期併用療法を避け,病態に応じて利尿薬による前負荷軽減を優先する必要性が示唆された.

  • 酒井 峻太郎, 西崎 史恵, 遠藤 知秀, 澁谷 修司, 花田 賢二, 横田 貴志, 富田 泰史
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 52 巻 1 号 p. 70-74
    発行日: 2020/01/15
    公開日: 2021/03/07
    ジャーナル フリー

     症例は77歳男性.前立腺癌再発の診断で当院泌尿器科へ通院しステロイド内服中であった.前日より持続する胸部不快感を自覚し泌尿器科を受診.心電図で胸部誘導のST上昇と血液検査で心筋逸脱酵素上昇を認め当科紹介となった.緊急冠動脈造影では有意狭窄を認めず,左室造影所見よりたこつぼ型心筋症の診断となり入院となった.入院後に施行した血液検査で血清ナトリウム値116 mmol/Lと著明な低ナトリウム血症を認め,確認したところステロイド自己中断により副腎不全をきたした可能性が考えられた.入院前の精神的なストレスとなるエピソードはなく,ステロイド自己中断が誘因となり,たこつぼ型心筋症を発症したと考えられた.

  • 神吉 和重, 藤井 明
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 52 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2020/01/15
    公開日: 2021/03/07
    ジャーナル フリー

     症例は60歳女性,労作時の呼吸困難感を主訴に他院を受診し,大動脈弁閉鎖不全症と診断された.心不全の発症後に繰り返す尿路感染症と眩暈症状で手術を二度延期した.大動脈弁交連部直下に大豆大の左心室瘤を合併しており,手術は自己心膜を用いた大動脈弁形成術(尾崎法)と,左心室瘤パッチ閉鎖術を施行した.術中所見で,上行大動脈の著明な浮腫と肥厚を認め,術前経過と合わせて,高安動脈炎と診断した.術後は早期にプレドニゾロンの内服を行って炎症反応を抑制した.術前に高安動脈炎の診断が得られなかった大動脈弁閉鎖不全症で,大動脈弁交連部直下左心室瘤を合併した極めて稀な症例であった.

  • 久保田 直樹, 尾崎 和幸, 大久保 健志, 保屋野 真, 栁川 貴央, 小澤 拓也, 柏村 健, 南野 徹
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 52 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2020/01/15
    公開日: 2021/03/07
    ジャーナル フリー

     症例は59歳男性.半月前からの左下腿浮腫を主訴に近医を受診した.造影CTで左大腿静脈から膝窩静脈にかけての深部静脈血栓症と末梢の肺塞栓を認め同院に入院となった.明らかな血栓素因は認めなかった.未分画ヘパリンによる抗凝固療法が開始されたが,第9病日の造影CTで肺塞栓の増悪を認めたため回収可能型下大静脈(IVC:inferior vena cava)フィルターが挿入された.第12病日の造影CTではIVCフィルターの血栓閉塞と右大腿まで連なる深部静脈血栓の悪化を認めたため当科へ転院となった.未分画ヘパリン治療の強化を行ったが浮腫・疼痛の増悪を認めた.第21病日からウロキナーゼ72万単位/日の全身投与を開始したがそれでも改善を認めなかった.第23病日に右内頸静脈よりパルススプレーカテーテルをIVCフィルター部まで挿入し,ウロキナーゼ48万単位/日を3回に分けて連日局所投与したところ第28病日の造影CTで血栓の消退を認めた.第29病日にIVCフィルターは抜去し,第35病日自宅退院した.血栓溶解薬の全身投与で改善しないIVCフィルターの血栓閉塞に対してカテーテル的血栓溶解療法(CDT:catheter directed thrombolysis)が有用であった1例を報告する.

  • 木村 太朗, 岡部 俊孝, 飛鳥井 邑, 斎藤 惇平, 嶋津 英, 大山 祐司, 井川 渉, 小野 盛夫, 木戸 岳彦, 荏原 誠太郎, 磯 ...
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 52 巻 1 号 p. 85-89
    発行日: 2020/01/15
    公開日: 2021/03/07
    ジャーナル フリー

     症例は43歳,男性.2017年5月末より食思不振,両側下腿浮腫を自覚していた.その後38℃台の発熱を認め,同時期より下腿浮腫増悪,右下肢疼痛が出現し体動困難となり救急外来を受診した.右下肢蜂窩織炎を契機に増悪した高血圧性心疾患を基礎病態とした心不全として心不全治療とampicillin-sulbactam(ABPC/SBT)による治療を開始し,心不全,皮膚所見は改善したがCRP高値で遷延した.経過中に突然の左半身脱力を認めたため施行した頭部MRIで急性多発性脳梗塞を認めた.血液培養は陰性であり,複数回の経胸壁心臓超音波検査,経食道心臓超音波検査でも疣贅や新規の弁膜症など感染性心内膜炎として有意な所見は認められなかった.経過から感染性心内膜炎を疑い,fluorine-18 fluorodeoxyglucose positron emission tomography(18F-FDG PET/CT)を施行したところ,心臓内の僧帽弁と考えられる部位に異常集積を認めたため感染性心内膜炎に準じて加療した.ABPC/SBTに加えgentamicin,ceftriaxioneの投与を開始,歯科治療も施行したところ炎症の低下を認めた.治療効果判定に18F-FDG PET/CTを施行し治療以前に認められた異常集積の消失を確認した.

     18F-FDG PET/CTが診断および治療効果判定に有用であった血液培養陰性の自己弁感染性心内膜炎の1例を経験したため報告する.

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