心臓
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52 巻, 9 号
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新型コロナに日本循環器連合はどう立ち向かうのか 企画:石津智子(筑波大学 医学医療系 循環器内科)
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[臨床研究]
  • 中川 彰人, 安村 良男, 山田 貴久, 上松 正朗, 安部 晴彦, 中川 雄介, 樋口 義治, 藤 久和, 真野 敏昭, 彦惣 俊吾, 中 ...
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 52 巻 9 号 p. 1002-1010
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2021/10/05
    ジャーナル フリー

     いまだ有効な治療法の確立されていないHFpEFにおいて,併存症を中心とした患者背景から臨床病型を分類,フェノタイピングすることで治療薬の有効性を検証するアプローチが試みられている.KaoらはI-PRESERVE試験をもとに,年齢,性別,併存症等11項目を用いた統計学的手法によりHFpEFを予後の異なるAからFの6グループに分類した(Eur J Heart Fail.2015).本研究では本邦における多施設共同前向き観察研究であるPURSUIT-HFpEF registry研究に登録された347症例が,上記手法を用いて同様の6グループに分類できるかを検討した.その結果,I-PRESERVE試験では各グループに比較的均一に分類されたが,PURSUIT-HFpEF registry登録症例ではFが83.0%,Cが9.2%に分類され,その他のグループに分類された症例はわずかでフェノタイピング結果が大きく異なり,I-PRESERVE試験の登録症例で提唱されたフェノタイピング手法をそのまま本邦のHFpEF症例に用いることはできないと言える.両者の違いの原因として,I-PRESERVE試験はHFpEFに対するイルベサルタンの有用性を検証するための介入試験で細かな登録基準があり,登録症例はわが国の実臨床で遭遇するHFpEF症例と臨床的背景が大きく異なることが考えられる.今後もHFpEF症例の新たなフェノタイピング手法の創出が期待されるが,ソースデータの患者背景に注意が必要であるとともに,対象症例を広く抽出した観察研究を基にしたフェノタイピング手法の創出が望まれる.

  • 綿引 愛美, 堀中 繁夫, 豊田 茂, 井上 晃男
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 52 巻 9 号 p. 1011-1020
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2021/10/05
    ジャーナル フリー

     わが国の心房細動患者は75歳以上が約半数を占めており,腎機能が低下していることが知られており,腎機能に影響を受けにくいアピキサバンが有用と考えられているが,日本人では欧米人に比べ,薬物の総クリアランスが低く,血中濃度が高いことも報告されている.そこで今回,アピキサバンの薬物動態を推測するために母集団薬物動態解析モデルを用いて,75歳未満および以上に分けて検討し,あわせて腎機能の指標であるクレアチニン・クリアランス(CCr,Cockcroft-Gault式)との関連についても検討した.対象はアピキサバンを導入した非弁膜症性心房細動患者140例で,少なくとも4週間服薬継続後の外来受診時に採血し,投与から採血までの時間も記録した.血中濃度はSTA-Liqud Anti-Xa活性から算出した.直接経口抗凝固薬(DOAC)は半減期が短く血中濃度がピークとトラフを形成し,数点の採血では濃度のピークを捉えることが難しいため,非線形混合効果モデルを用いて母集団薬物動態解析を行った.推測した血中濃度と実測値はほぼ良好な相関が認められ,偏りもなかった.標準投与群(5 mg×2)に比べ減量群(2.5 mg×2)で総暴露量(0-24時間までの血中濃度-時間曲線下面積(AUC0-24h,area under the plasma concentration time curve)が低下していた.また,標準投与群においてのみ,70歳未満に比し75歳以上で最高血中濃度(Cmax),最低血中濃度(Cmin),AUC0-24hが有意に高値を示し,最高血中濃度到達時間(tmax),血中濃度半減期(t1/2)も有意な延長が認められた(それぞれp<0.05).CCrとアピキサバンのAUC0-24hは,有意な逆相関が認められた(標準投与群:AUC0-24h=−36×CCr+7106,r=−0.750,p<0.001,減量投与群:AUC0-24h=−42×CCr+5002,r=−0.806,p<0.001).さらに,体重,血清クレアチニン(Cr),性別,年齢がAUC0-24hに及ぼす影響を多変量解析した結果,標準投与群では,体重>血清Cr>性別の順に強く影響していた.以上から本邦における75歳以上の高齢心房細動患者におけるアピキサバン投与では,CCrの低下,なかでも低体重に影響を受け血中濃度が増加する可能性があり注意が必要であると考えられた.

Editorial Comment
[臨床研究]
  • 青柳 秀史, 斉藤 輝, 中村 浩章, 横山 泰廣
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 52 巻 9 号 p. 1022-1027
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2021/10/05
    ジャーナル フリー

     目的:肺静脈隔離(pulmonary vein isolation;PVI)を完成させるための追加高周波通電(touch-up ablation;TA)の有無において,肺静脈の解剖やクライオバルーン(cryoballoon;CB)とホットバルーン(hotballoon;HB)の違いが関連するか比較検討することである.

     方法:CBおよびHBを使用した発作性心房細動(paroxysmal atrial fibrillation;PAF)連続症例61例,23例を対象に検討した.

     カテーテルアブレーション(catheter ablation;CA)前に造影心臓CTを施行.冠状断および水平断における肺静脈の角度を矢状断を基準に計測した.肺静脈の角度は冠状断では頭側と尾側に,水平断では腹側と背側に計測された中央値をもとにグループ分けして検討した.TAは,CA後に左房-肺静脈間残存した伝導(LA-PV Gap)が認められる場合に行った.

     結果:CB使用患者において,左下肺静脈(LIPV)の頭側と右上肺静脈(RSPV)の尾側への偏位は,LA-PV Gapを有意に多く認めた(それぞれp=0.05,p=0.03).右下肺静脈(RIPV)は肺静脈の方向に関係なくLA-PV Gapを認め,他の肺静脈に比べて有意に多かった(p<0.01).一方HB使用患者において,RIPVは頭側に偏位するとLA-PV Gapが有意に多く認められた(p<0.01).RSPVは尾側かつ背側に偏位するとLA-PV Gapを有意に多く認めた(p<0.03).左上肺静脈(LSPV)は肺静脈の方向に関係なくLA-PV Gapを認め,他の肺静脈に比べて有意に多かった(p<0.05).

     結語:CBとHBでは,LA-PV Gapの生じやすい解剖学的な方向に差が認められた.CBにおいてはRIPVが,HBにおいてはLSPVが肺静脈の解剖学的な方向にかかわらずLA-PV Gapが生じやすいことが認められた.

Editorial Comment
[症例]
  • 吉田 聡哉, 前田 眞勇輔, 犬飼 高平, 森崎 英典, 林 拓海, 廣瀬 未来, 久野 晋平, 松脇 佑次, 竹中 真規, 吉田 路加, ...
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 52 巻 9 号 p. 1030-1034
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2021/10/05
    ジャーナル フリー

     症例は23歳の女性.気分不快後に意識消失し,痙攣を認めた.救急隊接触時に心室細動(VF)を認め,電気的除細動に難治性で,来院後もVFを繰り返した.また著明なアシデミアに加え,低カリウム血症を含む電解質異常を認めた.冠動脈造影検査では冠動脈に有意狭窄は認めなかった.経皮的心肺補助法(PCPS)導入後は洞調律を維持できるようになり血行動態も安定した.その後カフェイン製剤を購入していたことが判明し,来院時の検体ではカフェイン血中濃度186.6 mg/L(カフェイン摂取量8 g相当)であり,カフェイン中毒の診断に至った.入院2日目に心室頻拍が出現したが,ランジオロール投与と血液透析を行い,以降は致死性不整脈が出現することなく経過した.一方で低酸素脳症のため,入院12日目に気管切開を行い,41日目に転院となった.VFの原因は多岐にわたるが,本例はカフェイン中毒によりVF stormに至っており教訓的であり今回報告した.

Editorial Comment
[症例]
  • 村田 理沙子, 大野 正和, 秋元 耕, 矢部 顕人, 戸舎 稚詞, 福島 琢, 榊原 温志, 土屋 勇輔, 鈴木 雅仁, 近江 哲生, 佐 ...
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 52 巻 9 号 p. 1036-1041
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2021/10/05
    ジャーナル フリー

     症例は74歳女性.今回入院の2年前にたこつぼ症候群の診断で入院となり,心内血栓・高血圧に対する加療が行われた後,壁運動の改善を確認し退院となった.退院後は近医で高血圧,高血糖の加療が行われていた.X年10月,受診2,3日前より食思不振が出現し,1日前から嘔気・嘔吐・動悸・冷汗が出現し改善しないため,救急要請し来院した.来院時著明な高血圧を認めており,血液検査で心筋逸脱酵素の上昇・心電図検査でST低下・経胸壁心臓超音波検査で心尖部の過収縮,心基部の無収縮を認め,たこつぼ症候群の診断で入院となった.たこつぼ症候群の再発は稀であり診断基準に褐色細胞腫の除外が必要とあることから,スクリーニング検査として内分泌検査を行ったところ血中カテコラミンの上昇を認めた.腹部CT検査で右副腎に直径3 cm大の腫瘤があり,131I-MIBGシンチグラフィで同部位に集積を認めたことから褐色細胞腫によるカテコラミン心筋症と診断した.ドキサゾシンの投与を2 mgから開始し,自覚症状,心電図変化,左室壁運動異常は改善したため第8病日に退院となった.外来でドキサゾシンを最大量の12 mgまで増量したのち腹腔鏡下右副腎摘除術を行った.その後経過は良好で,以降カテコラミン心筋症の再発はなく,高血圧,糖尿病の増悪なく経過している.今回,初回は一次性たこつぼ症候群と診断したが,再発時に褐色細胞腫による二次性たこつぼ症候群と診断した1例を経験したので報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 鈴木 伸章, 田口 亮, 村田 賢祐, 服部 薫, 畠山 正治, 伊東 和雄, 楠美 智巳, 福井 康三
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 52 巻 9 号 p. 1044-1048
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2021/10/05
    ジャーナル フリー

     症例は70歳男性.高血圧で近医に通院中であった.1カ月前から腹部不快感があったが,急に腹痛が出現し,耐え難い激痛が2日間持続した.近医を受診し,内服薬で保存的に経過をみていたが,症状の改善がみられず,精査目的に当院の消化器内科へ紹介となった.CT検査,内視鏡検査などを施行したが,消化器内科的処置を要する異常は認めなかった.8日後のフォローCTで,PAU(penetrating atherosclerotic ulcer)の拡大と大動脈周囲の血腫の増大を認めたため,当科へ紹介となった.準緊急で腹部大動脈人工血管置換術を行った.術中所見ではCTでPAUが存在していた部位に2 cm大の大動脈壁全層の欠損部を認めた.PAUによる腹部仮性大動脈瘤は稀であるが,早期の診断と症例に応じた治療方針を検討することが重要である.

  • 山本 篤, 安達 永里子, 新庄 祐介, 中川 陽一郎, 岡部 佳孝, 加藤 千恵子, 小見 亘, 佐伯 隆広, 懸川 誠一, 笠島 史成, ...
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 52 巻 9 号 p. 1049-1054
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2021/10/05
    ジャーナル フリー

     症例は65歳の男性.2016年某月10年以上持続している心房細動に対しカテーテルアブレーション治療希望あり紹介.同年両側肺静脈電気的隔離および左房後壁隔離術を実施し電気的除細動で洞調律に復したが,翌日には再発した.ベプリジル100 mg追加し数カ月経過観察したが無効であった.2017年某月2度目のアブレーションを実施(ベプリジル併用).肺静脈の電気的隔離は既完成であり,電位残存の後壁再焼灼,僧帽弁峡部の伝導ブロック,左房底部や前壁の異常電位部位への通電を追加し除細動にて洞調律化した.しかし,2カ月後には心房細動再発し洞調律化なく持続した.抗凝固薬継続への不安が強く2018年某月に胸腔鏡下左心耳切除術を実施.翌月電気的除細動を実施し,洞調律化が得られた.以後1年以上これが持続されている.左心耳が心房細動の起源あるいは維持に何らかの関与をしていた症例と考えられ報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 賀来 文治, 大島 央, 井ノ口 安紀, 北川 直孝, 勝田 省嗣, 林 研至, 津田 豊暢, 高村 雅之
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 52 巻 9 号 p. 1057-1066
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2021/10/05
    ジャーナル フリー

     症例:56歳女性.家族歴:母が40代でペースメーカー植込み.母,兄,母方の叔母,叔父,祖母が突然死.現病歴:42歳時に完全房室ブロックおよび心房性不整脈を認め,他院でDDDペースメーカーの植込み(心室は右室心尖部ペーシング)が実施され,43歳時に当院へ紹介となった.初診時の心胸郭比45.7%,BNP 45 pg/mL,左室拡張末期径49 mm,左室収縮末期径32 mm,心室中隔壁厚10 mm,左室後壁厚8 mm,左室駆出率64%(Teich法).51歳時に非持続性心室頻拍を認め,53歳時に遺伝学的検査を行いラミンA/C遺伝子異常(LMNA, c. 339dupT, p.K114XfsX1)を見出した.経年的に心縮能の低下(53歳時 カ室駆出率50%,56歳時 カ室駆出率39%)とBNPの上昇を認め,56歳時に心不全で入院となった(BNP 299 pg/mL).入院後にDDDペースメーカーからCRT-Dへアップグレードを実施した.両室ペーシング治療開始後も左室駆出率の改善は認められなかったが,心不全は小康状態となり,BNPも110-180 pg/mL台へ改善した.

     考察:ラミンは核膜の裏打ち蛋白で,核膜の保持やDNA転写に関与する.ラミンA/C遺伝子異常により,伝導障害,心房-心室性不整脈,心機能低下が経年的に進行する.伝導障害を伴う心機能低下例では,同遺伝子異常の存在も念頭に置き診療に当たる必要がある.また,拡張型心筋症のうちラミン遺伝子異常を有する症例は特に予後不良であるとともに,共通した疾患特異性がある.このため,拡張型心筋症に対するより良い治療戦略を考える上でも,原因遺伝子の判別は重要であると考えられた.

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