心臓
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53 巻, 2 号
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OpenHEART
HEART’s Selection
フレイルと循環器診療 企画:神谷健太郎(北里大学 医療衛生学部)
HEART’s Special
HEART’s Column デジタル循環器学 Digital Cardiology
  • 麻野井 英次, 宮川 繁, 澤 芳樹
    2021 年 53 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2022/02/19
    ジャーナル フリー

     慢性心不全は一旦入院治療が必要なほど重症化すると,心不全状態が改善しても入院前のレベルまで回復できない.心不全の進行をくい止めるためには,潜在的悪化を早期に検知し外来治療により入院を回避する必要がある.心不全の重症化は呼吸の乱れ(不安定化)に反映されることから,これを定量できる呼吸安定時間(respiratory stability time;RST)を開発した.無拘束非接触センサを用いて在宅患者の終夜RSTを毎日追跡できるICT遠隔モニタリングシステムを構築し,心不全の増悪を早期に検出する医師主導治験が進行中である.毎日病院のviewerに表示されるRST低下の推移から心不全の増悪を早期に検出し,外来治療が奏功したかをRSTの回復過程から即座に判定できる点が優れている.

HEART@Abroad
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HEART’s Original
[臨床研究]
  • ~TASK-AF伏見パイロットプログラム
    赤尾 昌治, 小川 尚, 安 珍守, 石上 健二郎, 青野 佑哉, 池田 周平, 土井 康佑, 濱谷 康弘, 藤野 明子, 石井 充, 井口 ...
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 53 巻 2 号 p. 156-163
    発行日: 2021/05/15
    公開日: 2022/02/19
    ジャーナル フリー

     背景:心房細動(AF)の脳梗塞予防には,抗凝固薬が極めて有効であるが,服用を継続できていないケースも多く,これには患者の疾患や治療に対する無理解が背景にある可能性がある.

     方法:TASK-AFは,AFによる脳卒中を予防するための,全国規模の疾患啓発活動である.TASK-AF伏見パイロットプログラムでは,AF患者の疾患および治療に対する理解度を評価し,その理解度と患者背景や臨床転帰との関係や,教育的介入による効果を検討した.抗凝固薬を投与されている外来AF患者238例を対象とし,初回の理解度調査のあと,視覚的教材を用いて教育的介入を行い,1年後と2年後にも同様の調査を行った.

     結果:238例の平均年齢は73.8歳で,男性が66%,平均CHADS2スコアが2.0であった.4つの理解度項目の正答率は,Q1(疾患名)40%,Q2(抗凝固薬名)57%,Q3(抗凝固薬のメリット)47%,Q4(抗凝固薬の副作用)28%であった.各項目を1点,4点満点とすると,平均は1.7点で,32%の患者が0点であった.教育的介入により,平均点は1年後に2.0点,2年後に2.1点に上昇したが,24%の患者では2年後に点数がむしろ悪化していた.患者の理解度と,フォロー期間中の脳卒中/全身性塞栓症の発症との間に関連は認められなかった.

     結論:AF患者の疾患や治療に関する理解度は乏しく,教育的介入により理解度はわずかに向上したが,その程度は軽度にとどまっており,理解度と臨床転帰には明らかな関連はみられなかった.

[症例]
  • 安田 桂, 澤村 昭典, 梶浦 宏紀, 井上 祥, 窪 友理, 梅本 紀夫, 杉浦 剛志, 谷口 俊雄, 大橋 雅子, 浅井 徹, 山田 道 ...
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 2 号 p. 164-169
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2022/02/19
    ジャーナル フリー

     症例は33歳女性.21歳頃に自覚症状のある心室性期外収縮に対して処方されていたコハク酸シベンゾリン100 mgを自殺目的で80錠内服したため,母親に連れられて救急外来を受診した.受診時の意識レベルはJCSⅡ-10で,心電図モニター上wide QRS波形を呈していた.来院後すぐにショック状態となり,心室細動に至った.心肺蘇生に反応しないため,percutaneous cardiopulmonary support(PCPS),補助循環用ポンプカテーテル(IMPELLA2.5®)を導入した.コハク酸シベンゾリン血中濃度の低下を期待して胃洗浄・direct hemoperfusion(DHP)・脂肪製剤投与などを行った.その後,血行動態の改善を認め,第4病日にIMPELLA2.5®を,第6病日にはPCPSを離脱し,第26病日に後遺症を残さず独歩退院となった.

Editorial Comment
[症例]
  • 中井 亮佑, 前田 佳真, 鴇田 雅俊, 小林 匠, 吉敷 香菜子, 上田 知実, 稲毛 章郎, 浜道 裕二, 矢崎 諭, 嘉川 忠博, 和 ...
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 2 号 p. 172-176
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2022/02/19
    ジャーナル フリー

     緒言:早産・低出生体重児における感染性心内膜炎(IE)は致死率が高い疾患である.内科的加療のみで改善を認めない場合に外科治療が検討されるが,実際に外科治療を行った報告は少ない.今回21トリソミーの早産・低出生体重児に対して外科的治療を行ったので報告する.

     症例:胎児期より胎児水腫を指摘され,前医にて在胎29週6日胎児心音低下のため緊急帝王切開で出生し,G分染法で21トリソミーと診断された.日齢20にカテーテル関連血流感染が疑われ抗菌薬治療が開始された.日齢22に血液培養検査よりStaphylococcus aureusを認め,その後も菌血症が持続し,また播種性血管内凝固症候群を合併した.日齢28に施行した心臓超音波検査にてIEが疑われ,当院へ転院となった.疣贅は径14 mmで心房中隔から左房内へかけて認め,有茎性で可動性を示した.心内奇形は認めず,卵円孔を通じて左心系へ菌が侵入したと考えられた.房室弁には疣贅を認めなかった.同日に疣贅除去術および卵円孔閉鎖術を施行し,菌血症は改善を認めた.

     結語:早産児においてIEは死亡率の高い疾患である.先天性心疾患を合併していなくても持続する菌血症がある場合は,定期的に心臓超音波検査を行ってIEの診断を見落とすことなく,適切な抗菌薬投与,遅滞のない外科的治療介入を行うことが肝要と考えられた.

  • 神尾 麻里子, 原田 顕治, 渡部 智紀, 脇 広昂, 菅野 美和, 柿沼 有子, 宮本 史雄, 岩谷 周一, 細川 俊彦, 苅尾 七臣
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 2 号 p. 177-182
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2022/02/19
    ジャーナル フリー

     80歳代,女性.慢性腎臓病のため某年3月に近医で左肘部自己血管内シャント造設術が施行され,同年11月に血液透析が導入された.当初透析は安定して施行されていた.翌年2月,透析終盤に胸痛を伴う血圧低下を認め近医に救急搬送された.緊急冠動脈造影検査では冠動脈病変は認められなかった.その後も透析終盤に同様な症状を頻回に繰り返した.精査目的に透析前と透析中の症状出現時において心エコー検査を施行した.透析前(血圧150/74 mmHg)の心エコー検査では,左室壁は肥厚し左室内腔は狭小化していた.左室駆出率は71%であった.透析終盤の胸痛発作出現時(血圧76/50 mmHg)の心電図ではV1-6でのSTの軽度上昇およびaVL,V5-6でのT波終末部の陰転化を認め,心エコー検査で左室内に収縮後期にピークを有する最大流速5.4 m/s(圧較差118 mmHg)の加速血流を認めた.除水により誘発された左室内狭窄(LVO)が胸痛を伴う血圧低下に関与していると考えられた.その後,ドライウエイトを上方修正し(44 kg→46 kg)緩徐な除水設定に変更した.以後,血圧低下や胸部症状の出現もなく安定した透析が行われている.透析中に施行した心エコー検査により,胸痛を伴う血圧低下の原因としてLVOの関与を同定し得た.冠動脈病変が否定された透析中の狭心症症状の原因としてLVOの存在を念頭に置くべきである.

Editorial Comment
[症例]
  • 櫻井 惇晶, 河野 優斗, 高江洲 悟, 矢口 知征, 清水 貴之, 能戸 辰徳, 牧野 健治, 長島 義宜, 根本 尚彦, 原 英彦, 安 ...
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 2 号 p. 186-192
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2022/02/19
    ジャーナル フリー

     症例は73歳男性,主訴は胸部絞扼感.胸痛自覚後に意識消失し,当院に救急搬送された.12誘導心電図でaVR誘導にST上昇を認めた.心室頻拍,心静止となったため,心肺蘇生を施行,VA-ECMOを挿入し,冠動脈造影を施行したところ,左主幹部(LMT)の完全閉塞を認めた.血栓吸引後,血管内超音波を施行したところLMTに動脈硬化を認めず心房細動による冠動脈塞栓症と診断し,血栓吸引のみで終了とした.最終造影はTIMI flowⅢであったがショック状態であり,IMPELLA2.5®を挿入し,ICUに帰室した.発症3時間後にCPK 16143 IU/L,CPK-MB 907 IU/Lでピークアウトした.第7病日にIMPELLA®をIABPに入れ替え,第8病日にVA-ECMOから離脱した.第12病日に抜管,第15病日にICUを退室し,第66病日に独歩退院した.しかし,退院10日後に虚血に起因する低左心機能からの機能的僧帽弁逆流症の増悪に伴い,再入院となった.MitraClip®の適応と考え,約3カ月後にMitraClip®を施行した.術後僧帽弁逆流(MR)のコントロールは良好で,3週間後に独歩退院した.左主幹部冠動脈塞栓症に対し血栓吸引,心原性ショックならびに術後低左心機能に対しIMPELLA®によるUnloadingとMitraClip®によるMRコントロールが非常に有効な1例を経験した.

Editorial Comment
[症例]
  • 片野 皓介, 布施 大望, 浅野 嘉隆, 長田 公祐, 宮部 彰, 石原 龍馬, 佐藤 由里子, 前田 備子, 水村 泰祐, 玉村 年健, ...
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 2 号 p. 194-199
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2022/02/19
    ジャーナル フリー

     症例は48歳,女性.38℃台の発熱が1週間持続するため精査加療目的に入院した.連日施行した血液培養より黄色ブドウ球菌が検出され,心臓超音波検査で大動脈弁および三尖弁に疣腫を認めたことから感染性心内膜炎と診断した.全身を精査したところ多発脳膿瘍,敗血症性肺塞栓,肝膿瘍,腎膿瘍を認めた.全身状態が不良であったため内科的に治療したが,大動脈弁破壊に伴う高度大動脈弁閉鎖不全症によるうっ血性心不全を発症したため,第44病日に大動脈弁置換術および三尖弁形成術を行った.術後経過は良好で6週間の抗生剤治療後,全身の膿瘍も縮小した.術後1年が経過したが感染の再燃なく経過良好である.治療に難渋した,基礎疾患のない黄色ブドウ球菌を起炎菌とする両心系感染性心内膜炎の1例を経験したので報告する.

  • 樺山 翔平, 大下 千景, 上田 智広, 越智 誠, 寺川 宏樹
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 2 号 p. 200-207
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2022/02/19
    ジャーナル フリー

    症例は68歳男性.9年前より拡張型心筋症および糖尿病の合併にて薬物治療を受けていた.201X年7月中旬にその年3回目の心不全にて入院.ドブタミン(DOB)3γおよびフロセミド80 mg静脈投与にもかかわらず,腹水が改善しなかった.長期入院となり第57病日の9月上旬に当院に転院した.転院時,体重77 kg,DOB投与下で血圧90/63 mmHg,脈拍数57/分,うっ血,腹水を認めた.血液検査ではeGFR 10.3 mL/min/1.73 m2と低下を認め,BNPは4164 pg/mLと上昇し,心エコー検査では左室駆出率27%と低下していた.DOB増量などの薬物管理を行うも収縮期血圧は70-90 mmHgが持続し腹水は減少しなかった.第40病日より血液透析,持続血液濾過透析,限外濾過を開始し状態を安定させたうえで,第53病日に腹膜透析に移行した.体重は61.4 kgと減少し,第104病日に自宅退院となった.腹膜透析は,拡張型心筋症の難治性心不全患者の腎代替療法として有用と考えられた.

Editorial Comment
[症例]
  • 小野田 幸男, 稲岡 一考, 竹内 真, 笹井 英雄, 深尾 敏幸, 藤木 亮次, 小原 収, 吉長 正博, 谷本 貴志
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 2 号 p. 209-215
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2022/02/19
    ジャーナル フリー

     極長鎖アシル-CoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症は脂肪酸β酸化異常をきたす先天代謝異常症であるが,成人期の予後に関しては不明な部分も多い.我々は,VLCAD欠損症の兄妹例を経験し,うち1例は,心臓MRI検査にて,遅延造影を認めない早期の拡張型心筋症と考えられる所見を得られた.

     症例1:4X歳,男性.主訴は全身筋硬直,労作時呼吸困難.既往歴は13歳時に,プールにて全身筋硬直が出現.その後も同様の症状が続き,精査されたが原因不明であった.4X-3歳時に妹(症例2)の診断が契機となりVLCAD欠損症と診断されていた.現病歴は4X歳時に労作時呼吸困難感が出現し,VLCAD欠損症による拡張型心筋症を除外するために心臓MRIを行った.結果は軽度の左室拡大,びまん性の収縮能の低下を認め,遅発型VLCAD欠損症による早期の拡張型心筋症と考えた.

     症例2:3X歳,女性,主訴は全身筋硬直,筋痛.現病歴は6歳時に,プールにて全身筋硬直が出現したが安静で軽快.その後,飢餓などで同様の症状を認めるも安静で軽快していた.3X-5歳時に,VLCAD欠損症と診断された.現在,心合併症は認めていない.

     成人期において,心臓MRIで軽度の左室拡大と収縮能低下を認め,遅延造影も陰性であり,他の高血圧性疾患などもなく,遅発型VLCAD欠損症例による拡張型心筋症と考えられた症例は,これまで報告されていない.新生児マススクリーニングの普及に伴い,無症状や軽微な症状の遅発型VLCAD欠損症例の発見も増加してくると思われるが,成人期における拡張型心筋症併発の可能性も念頭に入れておくことが重要である.また原因不明の心筋症をみつけた場合,VLCAD欠損症を鑑別しておく必要がある.

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