心臓
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55 巻, 7 号
選択された号の論文の31件中1~31を表示しています
OpenHEART
成人先天性心疾患の未来 企画:住友直方(埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科)
HEART’s Column
HEART’s Up To Date
[症例]
  • 森 真奈美, 鮎川 宏之, 山田 幸子, 室井 千香子, 西海 朋子, 宮川 祐子, 齊城 順子, 大澤 漢宇, 野原 淳, 小菅 邦彦
    2023 年 55 巻 7 号 p. 672-680
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2024/08/13
    ジャーナル フリー

     症例は67歳,女性.体重減少と左肩甲骨周囲の痛みを自覚し近医を受診.精査の結果,左上葉原発の肺扁平上皮癌および多発脳転移と診断され,当院に紹介入院となった.PET-CTで左心室に18F-FDG高集積を認め,心エコー図では左室前壁中部の局所的な壁肥厚と壁運動異常を認めた.また同部位は内腔・外膜側へ突出し,心筋転移を疑った.心臓MRIでは左室前壁中部に心筋壁の不整な肥厚があり,同部位に境界不明瞭な造影される腫瘤を認めた.進行肺癌に対しカルボプラチン,ナブパクリタキセル,ペムブロリズマブによる化学療法が開始された.化学療法施行1サイクル後に施行した心エコー図で腫瘤の著明な縮小を確認したため診断に矛盾しないと考えられた.治療開始28日後に施行した心エコー図では両心室のびまん性収縮能低下を認めた.高感度トロポニンIも高値であり,心筋炎を強く疑い心筋生検を施行した.心筋組織には炎症細胞浸潤を認め,ペムブロリズマブによる心筋炎と診断した.高用量のステロイド投与により6週間後の心エコー図では心機能の回復を認めた.肺癌の心筋転移に対してペムブロリズマブを含む化学療法を施行し,心筋炎を生じた症例を経験した.一連の診断と治療に心エコー図による評価が有用であった.がん治療において心エコー図検査を含めた経時的なモニタリングは重要である.

Editorial Comment
[症例]
  • 西尾 壮示, 辻 貴史, 許 永勝
    2023 年 55 巻 7 号 p. 683-689
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2024/08/13
    ジャーナル フリー

     症例は34歳男性.1・2回目のmRNA COVID-19ワクチン(mRNA-1273,Moderna)接種時は副反応を認めなかった.今回3回目のワクチン(BNT162b2,Pfizer-BioNTech)接種後5日目に胸痛を自覚.心電図にてST上昇,採血にて心筋逸脱酵素の上昇,心臓MRIにてT2強調画像で左室下側壁に局所的な高輝度,同部位に心筋遅延造影を認め,Lake Louise Criteriaに基づき急性心筋炎と診断し入院.NSAIDsとコルヒチンを開始し,症状再出現なく5日目に退院となった.当初は臨床経過からワクチンが急性心筋炎の原因と考えていたが,1カ月後の回復期ペア血清にてコクサッキーA群4型の抗体価が上昇しており,最終的にはコクサッキーウイルスによる急性心筋炎と診断した.mRNA COVID-19ワクチン接種後の急性心筋炎はすでに報告されており両者の関連が示唆されるが,より頻度の高い一般的なウイルス性心筋炎の可能性もあり注意を要するため本症例を報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 徳田 雄平, 田村 健太郎, 井上 知也, 佐伯 宗弘, 立石 篤史, 大島 祐, 柚木 継二, 久持 邦和
    2023 年 55 巻 7 号 p. 692-697
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2024/08/13
    ジャーナル フリー

     Calcified amorphous tumor(CAT)は石灰化を伴うフィブリン沈着が特徴の非腫瘍性腫瘤病変であり,病理学的には変性した血清成分が慢性炎症を起こして石灰化を伴っているものである.今回,可動性の強いCATを準緊急手術にて切除した1例を経験したため報告する.症例は70歳男性.糖尿病性腎症にて維持透析,間質性肺炎,膠原病の既往あり.労作時息切れ精査の心臓超音波検査にて,僧帽弁輪石灰化(mitral annular calcification;MAC)を伴う僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症,僧帽弁前尖に付着する径10 mmの腫瘤性病変を認めたため当院へ救急搬送された.可動性が強く塞栓症のリスクが高いと判断し,準緊急手術の方針とした.手術は僧帽弁前尖および腫瘤を切除し,MACを超音波外科吸引装置にて切除した後に,僧帽弁置換術を行った.術後病理学検査にて好酸性物質を背景に石灰沈着を認め,CATと診断した.経過良好で術後21日目に自宅退院した.可動性の強いCATに対し準緊急手術を行い良好な結果を得た.CATは塞栓症などの合併症を起こす可能性があり,形態によっては早期の手術介入を考慮する必要があると考えられる.

Editorial Comment
Editorial Comment
[症例]
  • 大窪 愛香, 土田 圭一, 大倉 裕二, 蟹沢 充, 吉村 宣彦, 西田 耕太, 林 由香, 田中 孔明, 保坂 幸男, 高橋 和義, 小田 ...
    2023 年 55 巻 7 号 p. 701-708
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2024/08/13
    ジャーナル フリー

     近年,免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor;ICI)は,一部のがん治療における標準治療薬として使用されている.一方で,ICIに関連した心筋炎に代表される心毒性は稀ながら発症した場合,その致命率は高い.ICIのみならず心毒性を有する抗腫瘍薬に関連した心機能障害の早期検出に,心エコーによる心筋ストレイン解析である2次元speckle tracking法(2D-STE)を用いたglobal longitudinal strain(GLS)評価の有用性が以前から知られているが,近年,心臓MRIを用いたfeature tracking法(FT-CMR)によるストレイン解析も開発され,臨床応用されている.
     症例は49歳女性.stage IVの胃癌に対しニボルマブによる免疫療法3コース後に心室細動が生じ,救命され当科へ入院した.心エコーで左室収縮機能含め異常を認めなかったが,左室心筋生検で心筋細胞の空胞変性,線維化を認め,MRIで左室心筋に遅延造影の所見があり,ICI関連の心筋炎後と考えられた.ステロイド治療は行わず,着用型除細動器導入での経過観察を行い,2D-STE,FT-CMRによる心筋ストレイン解析を行った.GLSは2D-STE,FT-CMRともに経時的に改善を認めた. 
     本症例を通して心エコーおよび心臓MRIによる心筋ストレイン解析は,ICI導入後の心筋障害検出だけでなく,薬剤中止後の心機能の回復についても有用な評価法となり得ることが示唆された.

Editorial Comment
第29回 肺塞栓症研究会・学術集会
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