心臓
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OpenHEART
HEART’s Selection  虚血性心疾患におけるステントレス治療とは:飯島雷輔(東邦大学医療センター大橋病院)
HEART’s Up To Date
[臨床研究]
  • ─臨床指標を含めた至適仕事率の検討─
    増本 枝里子, 小笹 寧子, 松下 愛里, 大島 洋平, 西川 徹, 松下 路子, 木村 剛
    2025 年57 巻9 号 p. 824-832
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     心臓リハビリテーション(心リハ)では,外来での定期的な心肺運動負荷試験(cardiopulmonary exercise test;CPX)に基づく運動処方が推奨される.健常者では嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold;AT)および最高酸素摂取量における仕事率は,年齢と性別および体重から簡易に推定が可能であるが,循環器疾患を有する患者における仕事率に関しては推定式を検討した報告は少ない.加えて,循環器疾患患者では疾患の重症度が運動耐容能と関連することが知られており,運動処方にあたっては個々の患者においてCPXを実施することが望ましい.しかし,実際には,患者の状況や施設の体制などによりCPXが実施困難な場合が多く,心リハ実施施設のうちCPXを実施可能な施設は半数に留まっているという問題がある.しかしながら,運動療法は冠動脈疾患,末梢血管疾患,大動脈疾患,心不全など,幅広い循環器疾患の治療において推奨される治療であり,CPXがなくとも実施できる簡易な運動処方のニーズが増加している.そこで今回我々は,循環器疾患を有する患者において外来で評価可能な握力とヘモグロビン値からAT時点の仕事率(WAT)の推定式を作成した.低リスクの循環器疾患を有する患者では,CPXが実施困難な環境下においても,上記の因子を用いた推定式で簡易な運動処方を実施できる可能性が示唆された.

[臨床報告]
  • 榮枝 達也, 石井 奈津子, 森田 佳明, 八百川 心, 安並 洋晃, 馬場 裕一, 久保 亨, 北岡 裕章
    2025 年57 巻9 号 p. 833-841
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     心臓MRIは多様な情報が得られるため,心筋症や先天性心疾患の診断において重要なツールとなっている.しかし,心臓MRIは撮像方法や手順が煩雑で,検査時間を要する検査である.当院においても,心臓以外のMRI件数が多いため,心臓MRIを撮像するゆとりがなく,避けられる傾向にあった.また,多職種間の連携不足やコミュニケーション不足により必要十分な撮像取得や解析ができていない状況であった.そこで今回,従来からの運用方法における問題点を検査に携わる多職種でディスカッションし,より円滑で患者の負担が少ない新しい運用方法へと変更した.その結果,検査までの煩雑さが軽減し,撮像方法が充実したことで,1年間の心臓MRI検査数は約5倍に増加した.また,プロトコルの見直しや症例に応じた適切なシーケンスの選択によって,従来の運用と同等の撮像時間でより情報量の多い検査を行うことが可能となった.そのことにより,心筋炎の診断能の向上,心筋性状評価によるリスク層別化,成人先天性心疾患の血流評価がより可能となった.

[症例]
  • 曽根 久美子, 小出 昌秋, 國井 佳文, 八島 正文, 高橋 大輔, 前田 拓也, 曹 宇晨, 塚田 友太, 西山 悟
    2025 年57 巻9 号 p. 842-848
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     症例は49歳,男性.意識障害および運動性失語が出現したことから当院へ救急搬送された.造影CT検査で左中大脳動脈末梢の途絶,両側肺動脈塞栓,心内に両心房間を跨ぐ形のmassを認め,経胸壁心エコーでは卵円孔に貫入する形でひも状の可動性の血栓様の陰影が描出されたことから,切迫奇異性塞栓症と診断した.緊急的に卵円孔閉鎖を伴う外科的血栓除去術を施行.術中所見で,卵円孔に貫入する長さ20 cm程度の血栓を認め除去した.卵円孔は縫合閉鎖した.術後の経過は良好で,リハビリが奏功して失語は改善し術後2.5カ月でリハビリ病院を退院した.本症例では凝固異常をきたす疾患は認められず,アキレス腱損傷によるADL低下が血栓症発症の要因として考えられた.切迫奇異性塞栓症の治療戦略については,その希少性からいまだ確立されていないが,本症例の経験や過去の文献から外科的血栓除去が最適な治療であることが示唆される.

[症例]
  • 豊島 慶雄, 上村 尚, 豊後 雅史, 阪下 裕司, 渡辺 健一, 田中 宏衞, 山村 光弘, 坂口 太一
    2025 年57 巻9 号 p. 849-855
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     Ehlers-Danlos症候群(EDS)は皮膚,関節,血管など全身的な結合組織に基づく遺伝性疾患であり,発症頻度1/5000から1/25000程度と報告されている非常に稀な疾患である.EDSは臨床所見に基づいて,13の病型に分類されているが,今回血管型Ehlers-Danlos症候群(vEDS)に合併した特発性の尺骨動脈瘤破裂に対して,保存的加療では改善せず外科的治療を行った1例を経験した.
     症例は45歳,女性.X-11年にvEDSと診断され,外来経過観察されていた.右前腕の腫脹と疼痛があり,尺骨動脈瘤と診断され,保存的に加療したが改善せず外科的治療の方針とした.手術は右尺骨動脈結紮を行い,術後出血なく経過し,第9病日に軽快退院となった.
     本症例では保存的加療でも改善しない,EDSに合併した尺骨動脈瘤破裂に対して,外科治療で良好な術後経過を得ることができた.EDSに対しては外科的治療も選択肢の一つとして検討すべきである.しかしながら,外科的処置の合併症率は高いため,手技の工夫も必要である.

[症例]
  • 神下 耕平, 吉田 敬規
    2025 年57 巻9 号 p. 856-862
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     症例は80歳台女性.X-13年に両側間欠性跛行を主訴に当院に紹介となった.右浅大腿動脈びまん性高度狭窄,左外腸骨動脈短区間高度狭窄,左浅大腿動脈長区間慢性完全閉塞を認め,左外腸骨動脈ならびに右浅大腿動脈に自己拡張型ステントを留置,半年後に左大腿膝窩人工血管バイパス術を施行された.X-12年に右下肢間欠性跛行の再燃があり,右浅大腿動脈に留置されたステントの閉塞を認めたために右大腿膝窩人工血管バイパス術を施行された.X年に突然左下腿以下の疼痛,動かしにくい感じ,しびれ感が出現したために近医を受診し,左膝窩動脈以下の動脈触知不可,皮膚チアノーゼがあり急性下肢動脈閉塞症の診断で当院に救急搬送となった.CT検査にて左大腿膝窩動脈バイパス閉塞ならびに人工血管の変性を認めた.心臓血管外科と協議の上,緊急経皮的末梢血管治療を施行し,最終的に人工血管内にSUPERAステントを留置した.人工血管の変性を伴う大腿膝窩動脈バイパスの晩期急性閉塞に対してSUPERAステントを留置した報告例はなく,文献的考察を加えて報告する.

[症例]
  • 道網 亮貴, 松尾 好記, 阿部 尚子, 築澤 智文, 小笹 祐, 桑原 謙典, 藤原 昌彦
    2025 年57 巻9 号 p. 863-869
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     カテーテル的血栓除去術(catheter-directed mechanical thrombectomy;CDT)は高リスクの急性肺血栓塞栓症患者に対して有効な再灌流療法である.CDT治療において肺血管床から多量の血栓を完全に除去することは困難であるが,CDTの手技成功は定義されていないため治療エンドポイントの決定にはしばしば難渋する.症例は90代女性,自宅内で心停止となり当院に救急搬送された.心原性ショック・低酸素血症を呈しており心エコー図検査では右室機能不全と肺高血圧,造影CT検査では右肺動脈主幹部と左中下葉枝にfilling defectを認め,高リスクの急性肺血栓塞栓症と診断した.強心薬と非侵襲的人工呼吸器管理下に緊急CDTを行った.頻回の血栓除去で部分的に再灌流が得られたが,血管造影で肺動脈内に血栓が多量に残存した状態で手技終了した.治療終了時には肺動脈圧は低下し,血行動態・呼吸状態ともに安定し,強心薬・人工呼吸器を離脱した.抗凝固療法を導入し合併症なく独歩で自宅に退院した.CDTのエンドポイントを明確にして手技を遂行することは重要であり,高リスク群では,手技中の呼吸・循環動態指標の改善は良好な転帰の代替指標となる可能性が示唆された.今後の臨床試験では,治療エンドポイントとなる血行動態指標に関して検証することが課題であると考えられる.

[症例]
  • 吉川 浩史, 平敷 安希博, 吉田 達矢, 上原 敬尋, 小久保 学, 橋本 駿, 植田 郁恵, 松浦 俊博, 荒井 秀典, 清水 敦哉
    2025 年57 巻9 号 p. 870-878
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     症例:105歳,女性.
     現病歴:2017年(98歳時),入所施設で胸痛を発症し,発症1時間後に当院救急外来を受診した.心電図で前胸部誘導のST上昇を認め,急性心筋梗塞と診断した.直ちに責任病変の左前下行枝#7にステントを留置した.術後ショックを呈し,輸血とカテコラミン治療を要した.心尖部を含む前壁の壁運動低下を認め,左室駆出率は38%で,第28病日に退院した.
     長期経過:退院後,施設から娘家族との同居に切り替えた.心筋梗塞発症後3年間で3回,心不全の急性増悪で入院した.左室駆出率は慢性期に改善せず,左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)に相当した.治療薬として,フロセミドの投与を行ったが,併存症等を考慮し,HFrEFに対するガイドライン準拠薬物療法(GDMT)は実施しなかった.その後,NYHA II度で外来通院を継続している.105歳時の血液検査では,eGFR 12.6 mL/分/1.73 m2,BNP 376 pg/mL,K 5.2 mEq/L.歩行可能で,認知症は認めない.外食や飲酒を家族と時折楽しんでいる.
     考察:超高齢者では併存疾患に応じてGDMTを使用しない選択も考慮し,ポリファーマシーへの配慮も重要であった.本症例は,98歳で急性前壁心筋梗塞を発症後,HFrEFで7年間経過し,105歳女性として自立した生活を維持している希少な1例として報告する.

[Editorial Comment]
[症例]
  • 賀来 文治, 宮 有佑, 東 雅也, 勝田 省嗣
    2025 年57 巻9 号 p. 881-890
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     症例は68歳男性.59歳時に安静時の胸痛を主訴に当院へ救急搬送されたが,この際に実施された冠動脈造影検査では前下行枝の中間部に心筋ブリッジが認められたものの,左右の冠動脈に有意狭窄所見は認められなかった.引き続き実施された冠攣縮誘発試験(エルゴノビンの冠動脈内注入)にて心筋ブリッジ部位にのみ高度な冠攣縮が誘発され冠攣縮性狭心症の診断を得た.冠攣縮性狭心症の診断後にCa拮抗薬と硝酸薬の投与が開始となり,以後およそ9年間におよび胸部症状は安定していた.68歳時に労作兼安静狭心症が出現したため当院を再受診された.当初は器質狭窄の進行も疑われたため冠拡張薬は継続として心臓カテーテルの再検査を実施した.その結果,左右冠動脈に有意な器質狭窄の進行は認められなかったが,引き続き冠拡張薬継続投与下で再実施した冠攣縮誘発試験(エルゴノビンの冠動脈内注入)にて前下行枝および回旋枝のほぼ全域において非常に高度なびまん性の冠攣縮が誘発された.また,これらのびまん性かつ高度な冠攣縮が誘発された部位は,59歳時に実施した際の冠攣縮誘発試験で冠攣縮が誘発された心筋ブリッジ部位に加え,エルゴノビンに対してほぼ正常な反応を示していた部位も含まれていた.本症例では冠攣縮性狭心症の診断を得てから9年経過した後に,病態の増悪を認めた.加齢は血管内皮機能障害の進行やRhoA/Rho-kinase系が亢進する因子の一つであることも報告されており,本症例では加齢とともに冠攣縮の病態が悪化して臨床上注意を要する状況に陥ったと考えられた.

[Editorial Comment]
[症例]
  • 寺田 拡仁, 南淵 明宏, 北尾 真友子, 川幡 大嗣, 中村 圭佑, 中川 博文, 奥山 浩, 根本 哲生, 阿部 亘
    2025 年57 巻9 号 p. 893-899
    発行日: 2025/09/15
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー

     心臓血管腫は原発性良性心臓腫瘍の中でも稀な疾患である.臨床症状はほとんどが無症状であるが,腫瘍の発生部位と大きさによって,心嚢水貯留による心タンポナーデ,右室あるいは左室流出路を閉塞することによる心不全症状,腫瘍が飛散することによる塞栓症状,また致死性心室性不整脈が報告されている.
     症例は,76歳男性.狭心症の精査中に偶発的に右室に腫瘤の存在が示唆されたため,精査加療の目的で当院を紹介されて受診した.造影CT検査では,右室前壁に48 mm大の腫瘤を認め,腫瘤内部に造影効果を認めた.腫瘤は全体が右室前面に突出しており,MRIでは,腫瘤内部は分葉状の形態を呈し,隔壁がみられた.術前の画像検査で良悪性の判別は困難であった.体外循環下,心停止下に摘出手術を実施したが,腫瘤は右室前面の心外膜下に隆起しており,可及的に切除し得た.摘出後の右心室前面には補強のためウシ心膜パッチを縫着した.術後の病理組織学的検索で,心外膜下右室心筋を起源とする海綿状血管腫と診断した.術後1年4カ月が経過した現在も経過は良好である.術後に診断が確定した海綿状血管腫の稀な1例を経験したので文献的考察を加えて報告した.

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