色素を前五寸静脈 (ACV) と大腿静脈 (FV)に注入した時の色素希釈曲線の時間因子, 濃度因子を比較し, 末梢注入部位としての優劣を検討した. 逆流, 短絡のない 32例で生食水 8ml の flush を行なう方法で, 両静脈に交互にインドサイアニングリーンを注入し, イヤーピース希釈曲線を記録した. (1) FV 注入にくらべ, ACV注入で下降脚の時定数 (ts), 平均循環時間 (t) は有意に長く,最高色素濃度 (Cp)は有意に低値を示した. (2)出現時間(ta), 上昇時間 (Tap), 最高濃度時間(tp), 濃度面贋に関しては両群で有意の差はみられなかった. (3)再現性に関しては, ta, tp, t は平均値でほぼ 5%以内に一致し, Cp, 濃度面磧はより変動大きく, tsで最もパラツキが大であった. しかし各因子について両注入群間には差は見られなかった. 以上から, ACVと FV注入では心拍出量測定には差はないが, 前者で下降脚の変形を生ずる場合があり, これは左一右短絡,逆流の過大算出に導く危険のあることを指摘した.
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