心臓
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9 巻, 3 号
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  • 吉武 克宏, 松尾 準雄, 永沼 万寿喜, 小池 一行, 清水 興一, 森川 征彦, 岡田 了三
    1977 年 9 巻 3 号 p. 195-200
    発行日: 1977/03/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    先天性心奇形の右心耳の形態的変化について手術操作が加えられていない剖検心を対象に調べた.右心耳の形態を次の5つに分類した.1)右心耳の前稜線が大動脈を軽く包みながら前方に走る型(I型).2)前稜線が上大静脈入口部付近で屑をいからせたように挙上する型(II型).3)右心耳の先端が前方から圧縮されたような型(III型).4)前綾線が肩を垂れたようにト垂する型(IV型).5)右心耳が大血管の左へ位置し左心耳と並ぶ型(左側並列心耳),
    I型は正常心,心室中隔欠損症,II型は完全大憩照転位症,III型は部分的大血管転位症(両大血管右室起始症およびTaussig-Bing奇形)II型は,心内膜床欠損症,左側並列心耳は大甑管転位を伴う複郵心奇形にそれぞれ特徴的に多く見られた.
    次にこの右心耳の形態学的変化の発生機転について解剖学的および胎生学的に検討を加えて見た.
  • 中野 博行, 神谷 哲郎, 森 忠三, 馬場 清
    1977 年 9 巻 3 号 p. 201-211
    発行日: 1977/03/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    小児期特発性心筋症の14例(うっ血型7例,肥大型7例)について,左室容積,左室圧および左室圧容積関係のそれぞれについて分析を行い,本症の左室特性を検討した.うっ血型心筋症では,左室容積の著明な拡大と左室駆出率の著しい低下がみられ,さらに左室重量が増大していた.肥大型心筋症では,左室駆出率の軽度増大と左室重量容積比の高値が認められた.左室圧分析では,うっ血型,肥大型ともに,同程度にVpm,Vmaxの低下がみられ,肥大型心筋症における収縮能の異常が指摘された.本症の左室拡張期特性は,GaaschおよびMirskyの方法によってそれぞれ検討した結果,両型ともに拡張期特性の低下を認めた.臨床的な重症度との対比では,うっ血型心筋症が左室駆出率と,肥大型心筋症が左室重量とそれぞれ一定の関係を示した.
  • 福嶋 孝義, 東 健彦
    1977 年 9 巻 3 号 p. 212-221
    発行日: 1977/03/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    血流抵抗は,しばしぼ電気回路におけるインピーダンスからの類推で.
    Z=(圧力勾配)/(平均速度)=R+jwL
    と表現され,Rは粘性抵抗に,Lは慣性抵抗に対応していると考えられていた.しかし,血流の粘性抵抗と慣性抵抗を流体力学的に求めた結果,Lは血液の見かけの質量と解釈されることが明らかになった.また,血流の粘性抵抗値としてRを用いるとき,大動脈血流(α>10)では誤差が20%以上にも達することを見出した.
    一方,臨床的にも重要性の指適される血管壁ずり応力が,一般式で与えられることを示した.ここにRは血管半径,ΔPは距離l垂れた二点間の圧力差であり,Uは血流平均速度の瞬時値である.いずれもin vivoにおいて計測しうる量である.この式の誘導によって生体内血管壁ずり応力を測定する道が開けた.
  • 永沼 万寿喜, 松尾 準雄, 吉武 克宏, 常本 実, 太田 喜義, 島田 宗洋
    1977 年 9 巻 3 号 p. 222-231
    発行日: 1977/03/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    TGA(I)-46例(II)-28例,(III)-16例(IV)-1例の91例の自然歴,BASの効果,病型別および年齢別血行動態,肺血管病変,手術成績について検討した.最近では自然死亡は極めて少なくなった(5.4%).BASの効果はTGA(I)(II)でみると有効率75%であった.TGA(I)ではPp/Ps 0.75以上の肺高血圧を示すものは15.3%にすぎなかった.TGA(III)では1例を除いてすべて0,70以上の肺高血圧を示した.RPUはTGA(II)で加齢と共に上昇がみられた.肺血管病変はTGA(I)でPDA合併例は年齢にかかわらずH-EIII~IV度を示した.TGA(II)では6ヵ月をすぎると殆んどH・E III~IV度を示した.最近TGA(I)の手術死亡率は10%前後となった.TGA(II)でも最近8ヵ月の1例が生存した.本症は三尖弁狭窄,僧帽弁狭窄,三尖弁閉鎖不全,大動脈縮窄,大動脈弓遮断の合併があり,これらについて術前充分に熟知することの重要であることを述べた,また現在我々の行っている治療指針を表で示した.
  • 特に遠隔時大動脈吻合部の発育について
    石澤 栄次, 佐藤 哲雄, 田所 正路, 鈴木 康之, 田中 茂穂, 泉井 亮, 佐藤 尚, 垣畑 秀光, 加納 一毅, 福田 守邦, 吉田 ...
    1977 年 9 巻 3 号 p. 232-238
    発行日: 1977/03/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    乳児の心室中隔欠損と肺高血圧症を伴うpreducal coarctationの1例において肺動脈絞掘術と動脈管結紮術を行い.さらにlong narrowsegmentよりなる大動脈縮窄に対してはBlalock-Park手術法で大動脈の再建を試みた.
    4年後の心カテーテル,心血管造影検査では大動脈吻合部の著明な発育を認あ,またほとんど有意の吻合部圧差を証明しなかった.本例においては2期的に肺動脈絞掩の除去と心室中隔欠損孔のパッチ閉鎖が行われ,術後1年の現在満足すべき経過をたどっている.
    Blalock-Park手術は自家動脈による再建法であり,発育期にある乳幼児に対しては有用な方法と考えられる.
  • 佐藤 健司, 小原 秀一, 塚口 功, 安井 浩一, 中田 健, 玉井 正彦, 小林 芳夫, 小塚 隆弘
    1977 年 9 巻 3 号 p. 239-244
    発行日: 1977/03/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    正常な房室大血管関係をもつ両房室弁交叉症(criss-cross heart)の1例を報告する.心室中隔欠損,左肺動脈低形成,動脈管開存を合併していた.特徴ある心血管造影所見を呈し,右下側に形態学的左室,左上側に形態学的右室があり,心室中隔は上下の心室間にほぼ水平方向の陰影欠損として認められ,大動脈は右前方に,肺動脈は左後方に位置し,見かけ上は{S,L,D}であるが心房心室関係および心室大血管関係はいずれも正常で,両房室弁を流れる血流が交叉する両房室弁交叉症となっていた.形態発生学的にbulboventricular loopが心臓長軸を中心にして心基部に向って時計方向に,さらに心臓前後軸の回りに後方からみて時計方向に異常回転した結果と考えられ,Andersonの命名法によれぽ,Solitusconcordant(l-rotated)-normalと表現できる.
  • 中村 千春, 坂下 勲, 松川 哲之助, 山崎 芳彦, 吉野 武, 浅野 献一, 古島 芳男, 春谷 重孝
    1977 年 9 巻 3 号 p. 245-250
    発行日: 1977/03/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    47歳女子の中隔側を除く左房壁全域に及ぶ高度の石灰沈着を伴った僧帽弁狭窄症に対し人工弁置換術(MVR)を施行した.しかし術後の症状の改善が少なく,心不全を生じやすい状態が持続した.この原因として石灰化castによる左房壁のcomplianceの低下を推測した.この観点からMVR後3年8ヵ月に石灰化castの剥皮摘除術を施行した.これにより初めて自他覚症状の改善が得られた.
    従来,リウマチ性弁膜症に合併する石灰化左房はまれな合併症とされていたが,最近では病悩期間の長い,重症例にも積極的に開心術(外科的治療)を行うようになっており,今後本症合併別に遭遇する機会が多くなると思われる.そこで,本症の一自験例を報告するとともに本症の血行動態に及ぼす影響や外科治療上の問題点に関して若干の考察を加えた.
  • 新村 一郎, 原口 寿夫, 横山 修三, 柴田 利満, 佐久間 かほり, 河野 光紀, 松本 昭彦, 佐藤 順, 近藤 治郎, 熊田 淳一, ...
    1977 年 9 巻 3 号 p. 251-258
    発行日: 1977/03/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    12歳,女児.術前にはきわめて重篤なうっ血性不全と多彩な頻拍不整脈を呈していた.動脈管開存と僧帽弁閉鎖不全を伴った大動脈弁性狭窄の診断のもとに緊急手術を施行したところ,大動脈弁には異常なく,Discr磯型弁下狭窄であった.手術は表面冷却兼循環冷却のもとに動脈管結紮,僧帽弁輪形成,弁下狭窄物の切除が行われた.術後心カテーテル,心血管造影では軽度の圧差(26mmHg,術前は126mmHg)とわずかな僧帽弁の逆流が認められた.術後経過は順調で,術後7ヵ月経過の現在も強心剤,利尿剤の服用を続けているが,元気に日常生活を送っている.
  • 仁村 泰治, 別府 慎太郎, 永田 正毅, 玉井 正彦, 松本 正幸, 松尾 裕英, 川島 康生, 小塚 隆弘, 榊原 博, 阿部 裕
    1977 年 9 巻 3 号 p. 259-267
    発行日: 1977/03/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    それぞれ発生部位の異なる3例の右心腫瘍のUCG所見を吟味し,診断にとって普遍的に有用な情報を抽出せんとした.これらは第1例が右室腔をほとんど占めた右室腫瘍,第2例が右室への嵌頓のない右房腫瘍,第3例が腸骨静脈に発生し大静脈を経て右房右室まで進展した腫瘍という症例であった。これらの症例のUCGを検討し,さらに吟味を加えた結果,右心腫瘍の超音波診断のためには次のような所見に注目すれば良いようである.睡瘍自体のエコーは線状,斑状,層状,袈状などの幡のあるエコーで,右心腔内あるいは右室壁そのものの肥厚の形で認められる.このエコーが心周期に応じて速かな運動を呈するか,ビーム方向や心周期によりその幅が大きく変化することが特徴的である.右房腫瘍の嵌頓例では,三尖弁エコーは矩型パターンを呈し,心室中隔は奇異性運動を呈す.
  • 和泉 徹, 服部 晃, 田村 康二, 松岡 松三, 青木 洋二
    1977 年 9 巻 3 号 p. 268-276
    発行日: 1977/03/01
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    うっ血型特発性心筋症にみられた,特異な電顕像を報告した.症例は,45歳男性で,体動時の息切れ,浮腫を主訴に来院した.
    胸部X線では,心陰影拡大,肺うっ血,両側胸水を,心電図では,1,aVL,V1,2のQS型,心房細動,完全房室ブロックを示した.左室拡張末期圧は.軽度上昇し,左室造影では,駆出率0.39で,低収綱生共動収縮を示し,冠動脈造影では,異常を示さなかった.今野一榊原による心内膜心筋生検法で,組織片を得た.光顕では,心筋肥大,むら毛状変性,間質の増加がみられ,本例は,関口らのいう,非家族性,心筋変性~線維化,うっ血型特発性心筋症と診断された.電顕では,(1) 血行力学的負荷による思われる筋原線維の走向異常.(2)心筋代謝異常の反映と思われるミトコソドリア封入体,クリスタの層状変性.(3)心肥大,心不全に付随したと思われるライソソームの出現.がみられた.
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