心臓
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特集号: 心臓
42 巻, SUPPL.2 号
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第22回 心臓性急死研究会
  • 伊藤 尚志, 野呂 眞人, 橋本 剛, 榎本 善成, 久次米 真吾, 中村 啓二郎, 森山 明義, 沼田 綾香, 熊谷 賢太, 酒井 毅, ...
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_5-S2_10
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は43歳, 男性. 発作性心房細動に対し2007年12月に肺静脈隔離術(PVI)を施行した. 以後, ベプリジル200mgを処方されたが, 3カ月後から自己中断していた. 2009年6月1日, デスクワーク中に心肺停止となった. 救急隊到着時に心室細動(VF)が認められ, AEDで除細動が施行された. VFの原因としてPVIが原因の可能性を示唆され, 紹介入院となった. 心電図, トレッドミル運動負荷心電図, Holter心電図, 心エコー, LP, TWAでは異常所見が認められなかった. 冠動脈造影は正常, アセチルコリン負荷試験も陰性であった. エドロフォニウム10mg負荷後の右室流出路からの心室3連早期刺激(600-210-200-200)でVFが誘発されたため, 植込み型除細動器(ICD)の植え込み術を施行した. VFの原因は不詳であったが, 副交感神経優位時の電気刺激で誘発される特異な病態の可能性が示唆された.
  • 日下 裕章, 上村 孝史, 榎本 耕治, 森久 健二, 山部 浩茂, 小川 久雄
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_11
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は39歳, 男性. 運動中に胸苦しさが出現した後に意識消失し, 自動体外式除細動器(AED)を装着したところ心室細動(VF)が確認され, 除細動1回で蘇生した. その後の近医での精査の結果, 冠攣縮性狭心症の診断でdiltiazemが導入となったが, 自己判断で内服を中断していたところ, 再び運動中に, 以前と同様の症状が出現した後に意識消失. 意識回復直後の心電図では心房粗動(AFL)が認められた. 当科紹介受診時もAFLが持続していたが, 心エコー上は器質的異常を認めなかった. 運動負荷試験を施行したところ, AFLの1: 1伝導による心拍数270/分のwide QRS tachycardiaを認め, 意識消失発作の前に認められた胸部症状と一致した. 心臓電気生理学的検査(EPS)ではVT・VFは誘発されず, 意識消失発作の原因としては1: 1伝導のAFLにより引き起こされたVFが最も疑われたため, AFLに対しアブレーションを施行し, AFLの根治が得られた. しかし, AFL以外に特発性VFも完全に否定できず, 植込み型除細動器(ICD)導入も検討している.
  • 飛梅 威, 松本 万夫, 上西 正洋, 石田 仁志, 堀田 ゆりか, 原 幹, 加藤 律史, 西村 重敬, 小宮山 伸之
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_12-S2_19
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は58歳, 女性. 主訴は動悸・息切れ. 55歳時に初回の心不全で入院. 冠動脈造影検査で有意狭窄なく, 心筋生検でも非特異的な所見のみ. HR 130/分台の頻脈性心房細動を認めたが, 低心機能と低血圧のためβ遮断薬は増量困難であり, rate controlは困難. その後, 一度DCにて洞調律に復帰したが, 2週間後には心房細動が再発・持続した. 心不全の増悪傾向を認め, 心房細動に対しカテーテルアブレーションを施行. アブレーション+電気的除細動(200J)にて洞調律に復帰したが, 洞調律維持のため, Amiodarone内服を併用. 術翌日, 洞性徐脈と著明なQT延長を認め, R on TのPVCから心室細動となり, 電気的除細動(200J)にて蘇生. 一時的ペーシングカテーテルによる高頻度心房ペーシングを施行し, 以後心室細動の出現なし. 拡張型心筋症の可能性も否定できず, 植込み型除細動器(ICD)植え込み術施行. 以後, 洞調律または心房ペーシングにて経過し, 心房細動の再発や心室細動の出現は認めず.
  • 佐藤 嘉洋, 小松 隆, 橘 英明, 椚田 房紀, 小澤 真人, 中村 元行
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_20-S2_26
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は14歳, 男性. 2005年11月ころから運動時の動悸を自覚するようになった. 動悸は数分間で自然停止し週2~3回程度出現した. 学校検診で右脚ブロック・左軸偏位の非持続性心室頻拍(NSVT)が指摘され当センターに紹介となった. ホルター心電図では日中に好発するincessant型のNSVTを32,000発/日に認め, トレッドミル運動負荷により心拍数187/分の持続性心室頻拍(SVT)へ移行した. その後verapamil 120mg/日の内服を行うも, 十分な予防効果を認めなかった. 2009年3月に施行した臨床心臓電気生理学的検査では, 右室頻回刺激により頻拍は再現性を持って誘発され, 頻拍の第1拍目は第2拍目以降と常に同一波形であり, CARTO-mapでは左室中隔を起源とし, 同心円状に興奮が伝播するfocal patternが示唆された. 体表面QRS波形に30msec先行する最早期興奮部位を焼灼したところ, repetitive ventricular responseが出現した後に頻拍は停止した. 高周波カテーテル心筋焼灼術6カ月後のトレッドミル運動負荷では頻拍が誘発されず, Holter心電図でも心室性不整脈を認めなかった. 心臓超音波検査による左室駆出率(EF)は, 術前49%から術後6カ月目には61%へと改善した.
  • 大橋 威信, 池田 尚平, 田丸 貴規, 尾上 紀子, 田中 光昭, 石塚 豪, 篠崎 毅
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_27-S2_33
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は慢性心房細動を有する47歳, 男性. 自衛隊の訓練中に突然心室細動となり, 自動体外式除細動器(AED)によって蘇生された. 入院時の調律は心房細動であった. 低体温療法によって後遺症なく回復した. ホルター心電図において心室性期外収縮(PVC)は日中に多く出現する交感神経優位型であった. また, 二方向性PVCも認めた. NASA誘導とCC5誘導にJ waveを認めた. J wave 波高−先行RR間隔関係は正相関しており, 睡眠中には覚醒時よりも右下に変位していた. 睡眠中のJ波高は時定数1,111msの指数関数によって近似することができた. トレッドミル負荷心電図検査によって, 心拍数増加とともに非持続性多形性心室頻拍がincessantに出現し, 心室細動に移行した. この間ST-T変化を認めなかった. 電気的除細動後に洞調律となり, II, III, aVF, V4~V6におけるJ waveが明瞭となった. 各種検査では明らかな器質的心疾患を認めなかった. 本症例はJ waveを有するカテコラミン誘発性多形性心室頻拍と診断し, 植込み型除細動器(ICD)植え込み術を施行した. β遮断薬とアミオダロンを投与した後, 心室細動の再発は22カ月間認めていない.
  • 坂部 茂俊, 笠井 篤信, 杉浦 勝美, 藤井 太郎, 渡邉 清孝, 大村 崇, 河村 晃弘, 世古 哲哉, 岡 紀子, 安冨 眞史, 大西 ...
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_34-S2_38
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は関節リウマチの既往ある70歳代, 女性. 2009年8月16日夜, 意識障害を主訴に当院救急外来を受診. 下痢, 嘔吐があり収縮期血圧50mmHg台, 心電図は洞調律で脈拍数76/分, 北西軸でテント状T波を示した. 血液検査では低ナトリウム(119 mEq/L), 高カリウム(7.3mEq/L), 代謝性アシドーシスがあり急性副腎不全が疑われた. 大量輸液, ヒドロコルチゾン, カテコラミン投与を開始したところ, 電解質補正中にもかかわらず心電図はwide QRSとなり, その後失神, 痙攣を伴う多形性心室頻拍が出現した. 電気的除細動を行い, 血液濾過を含む治療を継続し翌日に全身状態は安定化した. 回復後に行ったACTH負荷試験の結果から副腎不全と診断した.
    電解質異常が心室頻拍の直接原因だと考えたが, 心室頻拍を合併した副腎不全の報告は意外にも稀だった. 本症例では治療開始後急激に心電図波形が変化しており, 興味深いものと思われる.
  • 山田 真実, 菊池 幹, 吉村 仁, 折口 秀樹, 林谷 俊児, 毛利 正博, 山本 英雄, 坂本 一郎, 山本 雲平, 宮田 健二, 野間 ...
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_39-S2_43
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は53歳, 男性. 発作性心房細動のため, コハク酸シベンゾリン(300mg/日)を内服していた. 某日, 心房細動発作を自覚したため塩酸ピルジカイニド(150mg)を内服し, 飲酒した後に就眠した. 50分後に家人が来室したところ, 意識レベルはJCS300であり, 脈拍・呼吸ともに確認できなかったため直ちに心肺蘇生を開始し, 救急車を要請した. 来院時はJCS1桁で, 自発呼吸あり, 収縮期血圧60mmHg台であり, 12誘導心電図では心拍数46/分, 接合部調律, type3のBrugada型心電図であった. 冠動脈造影では特記所見を認めず, ドパミン・ノルアドレナリン投与でも低血圧が持続したため大動脈内バルーンパンピングを施行した. その後血圧上昇し, 翌日には意識清明となり心電図も正常化した. 入院4日目に施行した電気生理学的検査で洞機能・房室伝導能は正常であり, 心室頻拍・心室細動は誘発されなかった. 塩酸ピルジカイニド負荷試験ではsaddle back型のST変化を認めた. もともと正常範囲内であった血清クレアチニン値が来院時2.47mg/dLと上昇しており, コハク酸シベンゾリン・塩酸ピルジカイニドの血中濃度が高値であったことが判明した.
  • 松岡 宏治, 佐藤 圭, 宮村 有紀子, 中森 史朗, 栗田 泰郎, 谷川 高士, 野田 英毅
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_44-S2_48
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は30歳, 男性. 失神の既往および突然死の家族歴なし. 昨年の検診にて心電図異常を指摘され他院を受診, Brugada症候群が疑われたために精査を勧められたが希望されなかった. 23時ごろ自宅で食事, 飲酒後に痙攣発作をきたしたため当院救急外来を受診した. 到着時には意識レベルは改善していたが, 診察中に意識を消失, モニター心電図上心室細動を認めたため電気的除細動を施行, いったん回復するも再び心室細動となる状態を繰り返した(計3回除細動を施行). 入院後イソプロテレノ-ルの点滴およびシロスタゾールの内服を開始したが, 心室細動を繰り返した(入院後は計7回除細動を施行). 入院時には心房細動であったが, 翌朝には洞調律に復していた. 同日よりベプリジルの内服も開始した. 心臓MRIでは右室流出路の一部に壁運動異常を認めたが, 心筋の脂肪変性や線維化所見などの器質的異常所見は認めなかった. 冠動脈では有意狭窄や起始異常は認めずアセチルコリン負荷試験も陰性であった. 後日ICDの植え込み術を施行した. その後はICDの作動もなく経過している.
  • 阿部 芳久, 寺田 健, 宗久 雅人, 熊谷 肇, 佐藤 匡也, 門脇 謙
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_49-S2_53
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    植込み型デバイス管理の有力な手段として遠隔モニタリングが本邦にも導入された. 本システムを用いた病診連携により, 心室細動に対する繰り返すショック作動を回避し得たBrugada症候群の1例を報告する.
    症例は62歳, 男性. 約3年前, 検診でBrugada型心電図を指摘され, かかりつけ医を介して受診した. 失神歴や家族歴はなし. 心電図はcoved型で, 右室流出路での期外刺激(600-240-210-220ms)にて心室細動が誘発されたため1次予防としてICD治療を行った. 2008年4月から, 遠隔モニタリングのケアリンクを用いてICD管理を行った(当センターから住居まで車で1時間15分). 2008年12月27日夜間にショックを自覚したため遠隔送信を行い, 当センターを受診することなく, 心室細動に対するICDの適切作動が確認された. 同日の夕方, 再びショックを自覚し2回目の送信を行った. ICDは適切に作動しており, 電話での問診で激しい下痢が続いているとの情報を得た. かかりつけ医への受診を促すとともに, 同医にも電話で状況を説明して診察を依頼した. 受診時の血清Kは3.8mEq/Lで, 下痢の治療とK補正により4.4mEq/Lとなり, それ以後ICDは作動していない.
    遠隔モニタリングシステムは植込み型デバイスの管理に有効な手段であり, 今後の病診・病病連携の在り方にも影響を及ぼすと考えられる.
  • 小松 かおる, 関田 学, 林 英守, 佐々木 玲聡, 戸叶 隆司, 住吉 正孝, 中里 祐二, 代田 浩之
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_54-S2_58
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    60歳, 男性. 食道癌のため食道および上部胃切除, 胸骨後胸部食道挙上胃再建術が施行された. 術後14日目, 面会者との会話中に突然意識消失し, 心室細動(VF)が確認されたため, 直ちに自動体外式除細動器(AED)にて除細動を行った. 術前後の心電図でBrugada型心電図変化などの異常を認めず, late potentialは陰性, 冠動脈造影検査では有意狭窄を認めず, 心臓電気生理学的検査(EPS)でも心室性不整脈は誘発されなかった. 食道癌術後の胸骨後胸部食道挙上胃再建術では術後にBrugada型心電図変化をきたす症例があることが知られている. 同様の変化は前縦隔腫瘍でも報告があり, 右室流出路への機械的な圧迫や炎症などがその原因として推測されている. 本例はBrugada型心電図変化を認めなかったが, 胸骨後胸部食道挙上胃再建術の2週間後にVFをきたしており, その関連を考えるうえで示唆に富む症例と考えた.
  • 香川 英介, 井上 一郎, 河越 卓司, 石原 正治, 嶋谷 祐二, 栗栖 智, 中間 泰晴, 臺 和興, 大谷 尚之, 池永 寛樹, 森本 ...
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_59-S2_63
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は23歳, 男性. 12歳時に失神し, てんかんとして他院に数年間の通院歴あり. 机に座って仕事中, 心肺停止状態となり, 救急隊の到着時に心室細動を認め, 電気的除細動が計2回施行されたが心拍は再開せず, 当院に搬送された. 来院後, 心肺蘇生により心拍が再開し, 冠動脈造影上は特記すべき異常を認めず, 低体温療法を施行し, 明らかな神経学的障害を認めない程度に回復した. 心電図上, δ波を認め, 電気生理学的検査を施行, 左室のKent束に対して高周波カテーテルアブレーションを施行し, 成功した. アセチルコリン負荷試験, ピルジカイニド負荷試験は陰性で, 電気生理学的検査により心室細動・心室頻拍は誘発されなかった. 特発性心室細動の可能性も否定しきれなかったが, 本人の希望で植込み型除細動器(ICD)は移植せず, 退院した. 心肺停止の原因としてWPW症候群が考えられ, 救命し, アブレーションのみ行い, ICDを移植せず経過をみた症例を経験したので報告する.
  • 杉下 総吉
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_64-S2_67
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    過疎地での突然の心肺停止例に対して,「救命の連鎖」が円滑に機能し蘇生に成功した症例を経験したので報告する. 症例は66歳, 女性, 51歳時に経皮的僧帽弁形成術(PTMC)を施行後NYHA1度で外来通院中であった. 孫の運動会での父兄参加競技中, 家族によるビデオ撮影下で突然心肺停止をきたし, 居合わせた消防隊員2名と看護師1名による1次救命処置(BLS)を開始し, 20分後に到着した救急隊員による自動体外式除細動器(AED)の反復使用と心肺蘇生術(CPR)を続けながら発症から60分後に病院に到着し蘇生に成功した. 冠動脈造影で前下行枝90%狭窄を認め, 無症候性心筋虚血に伴う心室細動(VF)であったと思われたが, 長時間の心臓マッサージが有効であった希少な例と思われ報告した.
  • 岡崎 怜子, 小谷 英太郎, 松本 真, 遠藤 康実, 佐野 純子, 中込 明裕, 草間 芳樹, 新 博次
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_68-S2_73
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用が解禁となった2004年以降に, 救命士や市民により除細動され当院に搬送された心肺蘇生例19例(56±16歳, 男18/女1)につき検討した. 現場の心電図は不明の1例以外は全例心室細動であった. 19例中12例はAEDにより(AED例), 7例は従来の直流式除細動器により(DC例)除細動された. AED例は2005年以後増加傾向にあり, 5例が市民により, 7例が救急隊または医療従事者により除細動がなされ, 10例にバイスタンダーCPRが施行されていた. 一方, DC例は全例救急隊による除細動で, 救急隊到着までのバイスタンダーCPR施行は1例のみであった. 発症から初回除細動実施までの時間および除細動回数はAED例でそれぞれ8.2±4.2分, 1.7±1.4回, DC例で9.2±2.7分, 2.6±1.7回であり, AED例ではDC例に比べ除細動までの時間が短縮し, 除細動回数も少ない傾向にあった. 今後, 市民によるAEDの普及により, 除細動までの時間をより短縮できれば, 心室細動例のさらなる救命率の向上に寄与できるものと思われる.
  • 千賀 通晴, 藤井 英太郎, 山里 将一朗, 杉浦 伸也, 宮原 眞敏, 中村 真潮, 伊藤 正明
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_74-S2_77
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    当院で2006年11月から2009年8月の間に植込み型除細動器(ICD)移植術を施行した50例のうち, 初回イベント時に自動体外式除細動器(AED)を用いて救命された15例を検討した. 平均年齢は43±20歳, AED装着までに要した時間は平均11±4分, 蘇生までに要した時間は平均16±13分であった. 基礎心疾患の内訳はBrugada症候群3例, 肥大型心筋症4例, 陳旧性心筋梗塞2例, QT延長症候群3例, 拡張型心筋症1例, 特発性2例であった. 全例で心肺停止発生を目撃され, 13例でbystander CPRが施行された. 15例全例でAEDにより心室細動が記録され, AEDを使用して12例で洞調律化したが, 2例は無脈性電気活動に移行, 1例は心室細動が持続した. 12例は後遺障害なく社会復帰したが, 2例に軽度の記憶障害, 1例に高度の脳機能障害を残した. 心肺停止発生場所の違いが心肺蘇生に与える影響について検討したところ, 公共の場での心肺停止例(n=8)は自宅での心肺停止例(n=7)に比して, bystander CPRを施行された割合が高く, またAED装着および心拍再開までの時間が短い傾向にあった. その結果, 自宅での心肺停止例で有意に後遺症が多いといった結果であった. 心室細動症例に対する救命率向上および後遺症予防のためには, 民間レベルでの迅速な心肺蘇生処置およびAEDの使用が重要と考える.
  • 伊藤 博, 五十嵐 正樹, 坪田 貴也, 木内 俊介, 藤井 悠一郎, 吉原 克則
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_78-S2_81
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    近年本邦においてアミオダロン静注薬が発売され心室性不整脈にも適応が広まっている. 今回われわれは, 院外心室細動症例に対しアミオダロン, ニフェカラント, リドカインの3薬剤間での除細動効果を検討した. 対象は院外心室細動28例(平均年齢61±16歳)である. 使用した薬剤は, ニフェカラント10例, アミオダロン11例, リドカイン7例であった. 除細動に成功したのはアミオダロン投与6例(54.5%), ニフェカラント投与5例(50.0%), リドカイン投与1例(14.3%)であり, アミオダロン投与およびニフェカラント投与ではリドカイン投与に比べて有意に高値であった(p<0.05). 独歩退院率は, アミオダロン投与4例(36.3%), ニフェカラント投与3例(30.0%), リドカイン投与1例(14.3%)であり有意差を認めなかった. III群薬であるアミオダロンおよびニフェカラントは同様に院外心室細動症例に対する除細動効果を認めた.
  • 金本 将司, 村上 和華子, 志水 元洋, 中尾 文昭, 藤井 章久, 田中 伸明, 藤井 崇史, 福田 昌和, 平塚 淳史, 吉田 雅昭, ...
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_82-S2_87
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は25歳, 男性. 明らかな失神の既往歴や突然死の家族歴はない. 2009年7月, 就寝中に心室細動(VF)となり, 救急隊によるCPRを施行されながら当院へ搬送された. 電気的除細動を繰り返し行うもVFが持続するため経皮的心肺補助法(PCPS)を挿入し, アミオダロン静脈内投与下に除細動を行い, 洞調律に復帰した. 洞調律時の心電図ではQT短縮(QTc=320ms)を認めた. 入院当日に短い連結期(300ms)の心室期外収縮(PVC)をトリガーとして再度VFとなり, 除細動を必要とした. VFを繰り返すためアミオダロンをニフェカラントに変更したところ, QT間隔は正常化し, 以後VFの出現を認めなかった.
    10年前の心電図でもQT短縮を認め, 母, 兄弟の心電図でもQT短縮(QTc; 母320ms, 長男320ms, 三男310ms)を認め, 家族性QT短縮症候群と診断した. 現在遺伝子検索を行っているところである.
  • 間仁田 守, 金古 善明, 中島 忠, 齋藤 章宏, 入江 忠信, 太田 昌樹, 加藤 寿光, 飯島 貴司, 伊藤 敏夫, 倉林 正彦, 井 ...
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_88
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例: 20歳, 女性.
    家族歴: 父に失神歴あり. 妹にQT延長(QT/ QTc: 568/520ms)を認めたが症状はなかった.
    現病歴: 小学生時から心電図異常を指摘され, 17歳時, 心電図にて心拍数52/分, QT/QTc=508/465ms, V5~6陰性T波, ホルター心電図にて心室性期外収縮2拍/日, 運動負荷試験にて不整脈の出現を認めなかった. 2008年8月帝王切開にて出産した. 12日後の午後11時ころ授乳中に突然うめき声を上げた後に意識消失した. 心室細動を認め, AEDにて心静止となった. 蘇生直後の心エコーでは全周性に壁運動は低下しLVEF36%であった. 多臓器不全にて第57病日に死亡した. 剖検を行い, 心臓の病理解析中である. 先天性QT延長症候群(LQTS)を疑い, 本人, 妹の遺伝子検査を行っている. LQTSでは出産後, 周産期に不整脈出現の危険性が増加するとされる. 出産後に心室細動発作をきたした稀な症例である.
  • 松吉 志麻, 原 光彦, 深水 誠二, 岩澤 仁, 石川 妙, 松下 紀子, 高野 誠, 北条 林太郎, 仲井 盛, 弓場 隆生, 小宮山 ...
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_89-S2_94
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    元来健康で特に既往のない13歳, 男児. 学校の水泳大会で競技中, ターンした際に全身のしびれを自覚し, その後意識消失, 間代性痙攣ののち心肺停止にいたった. 心肺蘇生を開始し, 自動体外式除動器(AED) 1回作動, その後心肺蘇生継続にて自発呼吸再開, 意識レベル回復し前医から搬送された.
    前医受診時の心電図において右側胸部誘導でr'を認めるほかは明らかな異常はなく, QTc 440msとQT延長を認めなかった. また, 心エコーでは明瞭な基礎心疾患は認められなかった. AEDの記録にて心室細動(VF)が認められたことから, 電気的異常によるVFを生じる疾患を念頭に検査を施行したところ, エピネフリン負荷試験において著しいQT時間の延長が認められ, 先天性QT延長症候群と診断した. 同試験結果からLQT1を疑い遺伝子検索を行ったが遺伝子異常は同定されなかった. 現在運動制限, β遮断薬の内服にて経過観察中である.
    小児の心肺停止例で診断にエピネフリン負荷試験が有用であった1例を経験したので報告する.
  • 真田 明子, 池主 雅臣, 渡邉 達, 飯嶋 賢一, 八木原 伸江, 和泉 大輔, 渡部 裕, 保坂 幸男, 古嶋 博司, 相澤 義房
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_95-S2_99
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は72歳, 女性. 失神の既往, 突然死の家族歴はない. レクリエーションダンス中に心室細動(VF)をきたし, 自動体外式除細動器(AED)により停止し, 当院に緊急搬送された. 来院時検査では電解質を含め明らかな異常所見は認めず, 心電図は洞調律, QTc 450msであった. 運動負荷試験ではQT延長(QTc 442ms→453ms)はなかったが, 非持続性多形性心室頻拍(poly VT)が出現した. 心臓カテーテル検査では左室壁運動は正常で, 冠動脈造影では優位狭窄を認めなかった. 冠攣縮除外のためアセチルコリン(Ach)を左冠動脈内に100µg注入したところ, 冠攣縮は認めなかったがQTcが511msと延長しpoly VTが出現した. エピネフリン負荷試験でもQTcが630msと著明に延長し, poly VTも認められた. QT延長症候群と診断し, 心停止に対し植込み型除細動器(ICD)の植え込みとβ遮断薬を投与した.
    QT延長が明らかではなく, 失神歴や家族歴のない場合でもQT延長症候群が運動負荷や薬剤負荷により顕在化する例があり注意を要すると考えられた.
  • 大久保 公恵, 渡辺 一郎, 奥村 恭男, 小船 雅義, 芦野 園子, 山田 健史, 小船 達也, 中井 俊子, 國本 聡, 笠巻 祐二, ...
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_100-S2_105
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    著明なQT延長(LQT)に基づく2: 1房室ブロック(AVB)が先天性LQT症候群の小児例で報告されている. 高齢者のLQT症例において心房ペーシング時に2: 1AVBが見られ, 原因としてQTの著明な延長の症例を経験した.
    症例: 71歳, 男性. 心室細動(VF)精査目的で心臓電気生理学的検査(EPS)を施行. SR時のRR間隔は1,080ms, AH 94ms, HV 36ms. 右房連続ペーシングにて, ペーシング間隔(PI)545msではAH 148ms, HV 44ms, QTは528ms. PIを500msにすると2: 1HV blockとなった. 右室より単相性活動電位(RV MAP)記録下に心房ペーシングを施行. SR時のRR, RVMAPは著明に延長. PI 560msでは2: 1HVブロックであった. PIを570msにすると1: 1伝導となり, アドレナリン負荷試験ではRVMAP, QTとも延長した. 本症例に見られた2: 1HVブロックの原因として, 心室筋の活動電位持続時間の著明な延長による “pseudo” AV blockが示唆された.
  • 西山 信大, 佐藤 俊明, 高月 誠司, 神吉 秀明, 村岡 直人, 中川 聡, 三好 俊一郎, 相澤 義泰, 福本 耕太郎, 副島 京子, ...
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_106-S2_112
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    軽度低体温療法は心停止蘇生後の神経学的予後ならびに生命予後を改善し得ることが知られている. 一方で, 低体温中はQT間隔が延長するため, 蘇生後のQT延長症候群(LQTs)に対する軽度低体温療法は, QT間隔をさらに延長し催不整脈作用を呈する可能性がある.
    今回われわれは, 院外心停止からの蘇生後, 意識障害が遷延し軽度低体温療法が施行されたLQTsの3例を経験したので報告する. 2例は遺伝性, 1例は薬剤誘発性であった. 全例ともに, 体温の低下とともにQT間隔はさらに延長し, 低体温療法中に最長のQT間隔が記録された. 一方, 復温終了後もQT延長は遷延した. 1例では復温中にtorsade de pointesの再発を認めたが, 3例ともに神経学的後遺症なく回復し, 軽快退院した.
    LQTsの院外心停止例に対する軽度低体温療法により, QT間隔を延長し心室頻拍が再発する可能性はあるが, 同療法による神経学的予後の改善は期待し得ることが示唆された.
  • 柳澤 亮爾, 池田 隆徳, 米良 尚晃, 星田 京子, 三輪 陽介, 宮越 睦, 阿部 敦子, 石黒 晴久, 塚田 雄大, 柚須 悟, 吉野 ...
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_113-S2_119
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    致死性不整脈の発症直前に, 肉眼的に識別可能なT-wave alternans(TWA)を認めることがある. われわれは, 重症心疾患で入院となり, 経過中に高度なQT時間延長を呈し, その後にTWAが生じることで, 突如としてtorsade de pointes(TdP)をきたした2症例を経験した.
  • 外山 裕子, 広畑 敦, 今井 斎博, 妹尾 恵太郎, 野坂 和正, 宮本 欣倫, 吉田 潤史, 大河 啓介, 大原 美奈子, 佐藤二 慎二 ...
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_120-S2_125
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は58歳, 男性. 糖尿病にて治療中, そのほか特に既往症なし. 2008年12月感冒様症状にて近医受診. 肝障害を指摘され総合病院を紹介されたが, 心電図の胸部誘導でST上昇を認めたため, 急性心筋梗塞疑いにて当院紹介となった. 来院時高度房室ブロックと促進型心室固有調律を認め, 広範囲でST上昇, 心エコーは広範囲に壁運動低下しており, 急性心筋炎が疑われた. 緊急冠動脈造影を行い冠動脈は正常. 高度房室ブロック, 低心機能のためIABPと体外式ペースメーカーを挿入し, 急変に備えてPCPS挿入のためのシースを挿入しておいた. 翌日急にペースメーカーに乗らなくなりショック状態となり緊急でPCPS導入. 持続人工透析も開始した. 無脈性電気的活動状態が長期間続いたが, 補助循環とカテコラミン投与で血圧が60前後に維持された. 第7病日にペースメーカーへの反応が再開した. 房室ブロックは回復しなかったため恒久的ペースメーカー挿入. 低心機能のため補助循環からの離脱困難だったが, CRT-Dへのup gradeを行ったのち心臓リハビリを行い, 第100病日に独歩退院できた. 劇症型心筋炎のため無脈性電気的活動状態が持続し, 補助循環にて心拍再開まで持ちこたえた症例を経験したので報告する.
  • 宗次 裕美, 浅野 拓, 近藤 誠太, 酒井 哲郎, 丹野 郁, 小林 洋一
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_126-S2_132
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    [症例] 44歳, 男性.
    [主訴] 発熱.
    [現病歴] 1週間前より38°C台の発熱, 胸部圧迫感が持続. CRP 4.45mg/dL, CPK 519 IU/Lと上昇, 心電図上I, II, III, aVF, V2~6でのST上昇を認め, 急性心筋炎の疑いで入院となった. 第2病日の冠動脈造影で有意狭窄なく, 左室駆出率50%, 心筋生検を施行した. 第4病日に心室頻拍のelectrical stormの状態となり, 心肺蘇生(CPR)施行, 経皮的心肺補助装置(PCPS), 大動脈内バルーンパンピング(IABP)挿入となった. 左室駆出率(EF)14%と低下. 第4病日より大量免疫グロブリン療法を開始した. 末梢血では好酸球増加はなかったが, 病理組織上高度の好酸球浸潤を認めていたため, 第5病日よりステロイドパルス療法も開始した. 第8病日には血行動態は安定し, 炎症反応, 心筋マーカーも徐々に低下し, その後, PCPS, IABP離脱となった.
    [結語] 劇症型心筋炎による心原性ショックに, ステロイドパルス療法が著効した, 好酸球性壊死性心筋炎が疑われた症例を経験したので報告する.
  • 池永 寛樹, 井上 一郎, 河越 卓司, 石原 正治, 嶋谷 祐二, 栗栖 智, 中間 泰晴, 香川 英介, 臺 和興, 大谷 尚之, 森本 ...
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_133
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例: 40歳, 女性.
    主訴: 健診異常.
    現病歴: 元来健康であった. 2009年4月の健診にて徐脈を指摘され, ホルター心電図にて, 最大7秒の洞停止を認めたため, 洞不全症候群(SSS)の診断で当院紹介となった. 心臓カテーテル検査にて冠動脈は正常, 左心系の壁運動は正常であるが, 著明な右心系の拡大を認めた. 電気生理学的検査では, 右房はペーシング不能であり, 右室流出路180/分の心室頻回刺激にて持続性心室頻拍が誘発された. 当初, 不整脈源性右室心筋症(ARVC)と診断し, 植込み型除細動器(ICD)植え込みを施行した. 右房はペーシング不能であり, 心室ペーシングに依存するため, ICDリードは右室流出路に留置した. しかし, 除細動閾値不良であったため, 心尖部に再度留置するも, 今度はペーシング閾値不良であった. そのため, ペーシングリードを右室流出路に追加した. その後, 右室心内膜心筋生検で心筋線維間の間質にリンパ球を中心とした炎症性細胞の集積を認め, 慢性心筋炎と診断した. 今回, われわれは慢性心筋炎から, ARVC類似の形態に進展し, SSSを合併した症例を経験したので報告する.
  • 下山 祐人, 鈴木 太, 大倉 成美, 山田 雄一郎, 河原井 浩孝, 宇野 元規, 春田 昭二
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_134
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は, 2004年に帝王切開術の既往がある33歳, 女性. 2008年9月に第二子妊娠を診断され他院でフォローされていたが, 特に問題なく経過していた. 2009年5月11日昼過ぎより激しい頭痛, 動悸, 倦怠感を訴え前医搬送となり, ピンクの泡沫痰および心拡大, 肺うっ血を認め気管内挿管となり当院搬送. 来院後の心電図では下肢誘導のST低下, 右側胸部誘導でのR波の減高を認め, 緊急帝王切開術を施行, 出血量も多く術後8時間で血行動態不良にて大動脈内バルーンパンピング(IABP), 経皮的心肺補助装置(PCPS)を開始した. PCPSが奏効し当初はほぼ心静止の状態から16日にPCPS離脱, 18日にIABP抜去し得た. 原因として産褥期心筋症の増悪または劇症型ウイルス性心筋症が疑われたが入院時に提出した蓄尿カテコラミン3分画, 蓄尿バニルマンデル酸高値を認め, I131-MIBGなどで右褐色細胞腫の診断となり摘出にいたった.
  • 成瀬 代士久, 夛田 浩, 町野 毅, 井藤 葉子, 山崎 浩, 小澤 真人, 五十嵐 都, 関口 幸夫, 青沼 和隆, 岩佐 篤
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_135-S2_140
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    拡張型心筋症に伴う心室頻拍(右脚ブロック+上方軸型; 120拍/分)に対してカテーテル焼灼術を施行した. 前医で施行されたCARTOシステムを用いた心内膜側からのsubstrate mappingでは, 左室後側壁に13.4cm2の低電位領域を認めた. 同部位を中心に焼灼を施行したが根治できず, その後も心室頻拍が頻発した. 薬剤によるコントロールもできなかったために本院に転院した. 12誘導心電図波形解析では頻拍は既報の心外膜側起源頻拍の心電図診断基準をすべて満たしており, 頻拍の起源が心外膜側にあることが示唆された. 心外膜側アプローチによるsubstrate mappingでは左室後側壁の心尖部寄りに39.2cm2と心内膜側アプローチで記録されたものより明らかに大きな低電位領域を認めた. 低電位領域内を十字に横切るように線状焼灼をおこなったところ心室頻拍は誘発されなくなった. 術後, 心室頻拍の出現なく入院第22病日に軽快退院し, 以後8カ月間, 頻拍の再発は認めない.
    心内膜側からのカテーテル焼灼術が無効であった拡張型心筋症に伴う心室頻拍に対し, 心外膜側アプローチが有用であった症例を経験した. 頻拍時の12誘導心電図解析は心外膜側起源頻拍の術前診断に有用であった. 心外膜側アプローチによる焼灼術を治療の選択肢に加えることで心室頻拍に対するカテーテル焼灼術の成功率を改善し得ると考えられた.
  • 中谷 洋介, 水牧 功一, 福田 信之, 阪部 優夫, 岩本 譲太郎, 坂本 有, 常田 孝幸, 藤木 明, 井上 博
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_141-S2_146
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    心尖部肥大型心筋症において12年の経過中に心尖部心室瘤を形成し, 心室頻拍(VT)を合併した症例を経験した. 症例は44歳, 女性. 1993年(32歳)に心尖部肥大型心筋症を指摘された. 2000年にVTが出現したためシベンゾリンが開始された. 2005年12月にVTによるショック状態となり電気的除細動を施行された. ニフェカラント, ソタロールによりVTは抑制された. 心エコーでは1993年には認めなかった心尖部心室瘤を認め, 収縮期に左室中部で内腔が閉塞していた. 左室内引き抜き圧所見では心室中部において136mmHgの収縮期圧較差を生じていた. 右室心尖部ペーシングを施行したところ圧較差は消失した. 植込み型除細動器(ICD)による右室ペーシングを継続したところBNPは低下し, VTの再発もなく, 無投薬下での心室期外刺激でもVTは誘発されなかった. 心尖部肥大型心筋症に心尖部心室瘤を形成した場合にはVTの原因となる可能性があり, ICD植え込みを含めた積極的な治療を検討する必要があると考えられた. また左室内圧較差の消失がVTの抑制に有効であると考えられた.
  • 西井 伸洋, 永瀬 聡, 中村 一文, 幡 芳樹, 河野 晋久, 森田 宏, 草野 研吾, 伊藤 浩
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_147-S2_151
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は80歳, 女性. 平成20年6月下腿浮腫, 労作時呼吸苦, 多源性期外収縮, 非持続性心室頻拍を認め, 精査加療目的にて入院となった. 精査の結果, 不整脈源性右室心筋症と診断され, 植え込み型除細動器(ICD)植え込み術を施行し退院となった. 2009 年2月16日からリモートモニタリングを導入され, 順調にデータは送信されてきていた. 2009年3月18日早朝, 心室頻拍に対し抗頻拍ペーシングが作動し, 心室細動となった. ICD shock治療が行われたが心室細動は停止せず, 4回目のICD shockにてようやく停止した. 本人は眠っておりまったく無症状であったが, 中継機器にデータが送信され, 当科のホットライン携帯に緊急メールが発信された. 今回のイベントは, 睡眠中であったため本人の自覚症状が全くなく, 本来であれば定期受診まで判明しなかったが, リモートモニタリングにより, 非常に早期に診断, 治療が行われた症例と考えられた.
  • 重歳 正尚, 宮地 晃平, 大西 由佳里, 森 あい子, 溝口 博喜, 木村 英夫, 宮地 克維, 宗政 充, 藤本 良久, 松原 広己, ...
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_152-S2_156
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は52歳, 男性. 生来健康で, 胸痛の既往なし. 屋根から誤って転落し, 近医へ搬送された. 右上腕骨折, 縦隔血腫を疑われ, 精査加療目的にて, 当院転院搬送となった. 来院時, 心電図にて広範囲にST上昇を認めたが, 症状を伴わず, STは自然に改善した. 心エコー, 血液検査にて異常を認めず, 外傷の精査を優先した. 各検査後, 強い胸痛を訴えた後に失神した. 心電図にて心室細動(VF)を認め, 電気的除細動を施行し洞調律に復した. 一時落ち着いたが, しばらくして再び胸痛が出現, 心電図にてST上昇から心室性期外収縮の頻発をきたした後に, VFが再発した. 緊急冠動脈造影にて左冠動脈前下行枝の75%狭窄を認め, 冠攣縮性狭心症(VSA)と診断した. ニコランジル/ジルチアゼムの導入後, 胸痛の再発は認めなかった. エルゴメトリン負荷試験にて負荷陽性を認め, さらに硝酸薬を追加した. 外傷を契機に発症し, VFにいたったVSAの1例を経験したので報告する.
  • 小川 晋平, 名取 俊介, 野村 智昭, 芳賀 智顕, 羽根田 俊, 長谷部 直幸
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_157
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は63歳, 男性. 高血圧, 高尿酸血症にて近医通院中だったが, 内服中のCa拮抗薬を数日間自己中断していた. 2009年3月上旬, 12時30分頃から前胸部痛が出現し近医を受診. 13時頃, 心電図を記録中に心肺停止状態となり, そばに付き添っていた元看護師の妻が心臓マッサージを開始, 救急隊到着時の意識状態はJCS III-300, 自発呼吸は認めず. 自動体外除細動器で心室細動と診断され, DC 360J×1回で心拍再開後, 前医に搬送された. 13時20分, 前医到着時の意識は清明, 自発呼吸も認められており, 心電図も近医で認められたST上昇は回復していた. 冠攣縮性狭心症, 致死性不整脈の疑いで当院に再搬送となった. 硝酸薬の点滴, Ca拮抗薬の再開で入院後は胸痛発作は認めず, 不整脈も出現しなかった. 内服継続下でのAch負荷試験, 心室頻拍誘発試験はいずれも陰性であり, 今回は植込み型除細動器の使用は見送った. 冠攣縮自然発作の心電図が記録されている稀な心室細動からの救命例であり報告する.
  • 島田 博史, 西崎 光弘, 大坂 友希, 浅野 充寿, 村井 典史, 鈴木 秀俊, 前田 真吾, 清水 雅人, 藤井 洋之, 山分 規義, ...
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_158-S2_164
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は59歳, 男性. 心房細動にて近医通院中であった. 2008年8月23日朝7時ころ, 心肺停止状態にて発見され, 救急車要請となった. 救急隊が使用した自動体外式除細動器には心室細動が記録され, 心室細動による心肺停止と考えられた. 入院2日後には意識は改善し, 会話も可能となった. 胸痛の既往なく, 諸検査にて急性心筋梗塞や脳血管障害などは否定された. 入院後のモニターで自然停止する多形性心室頻拍が頻回に記録された. 心臓カテーテル検査では器質的冠動脈狭窄を認めなかったが, アセチルコリン負荷で冠動脈3枝ともに高度な冠攣縮および心室性期外収縮の多発を認めた. また, 亜硝酸薬投与後においても冠攣縮は容易に誘発され, 薬剤抵抗性冠攣縮が示唆された. 後日, カルシウム拮抗薬, 亜硝酸薬内服加療下で心臓電気生理学的検査を施行したところ, 右室心尖部プログラム刺激にて多形性心室頻拍が再現性をもって容易に誘発された. 以上, 本症例においては心室筋受攻性の亢進が潜在し, さらに高度な冠攣縮がその程度を増強し, 多形性心室頻拍・心室細動が発症したと考えられた.
  • 稲葉 理, 平尾 見三, 蜂谷 仁, 樋口 晃司, 田中 泰章, 柳下 敦彦, 磯部 光章
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_165-S2_171
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    冠攣縮性狭心症は生命予後が良好といわれているが, 時に致死性不整脈を生じる. 冠攣縮性狭心症による心室細動(VF)に対し植込み型除細動器(ICD)植え込みを施行した5症例を経験したので報告する. 年齢は平均54.6歳(41歳から61歳), 5例中1例が女性, 4例は早朝発症で1例は日中発症であった. 1例でBrugada症候群の合併を認めた. 4例でAch負荷で冠攣縮が誘発され, 1例では心電図でST上昇を認めたが冠動脈造影では狭窄は認めなかった. 心室遅延電位は5例中4例で陽性であった. 1例で電気生理学的検査(EPS)を実施したがVFは誘発されなかった. 4例は初発, 1例は血管拡張薬内服下でVFが出現しており, 薬物療法の確実な有効性が確認できないことを考慮し, Ca拮抗薬, ニコランジルなどの投与に加え, 全例にICD植え込みを行った. 5例の平均13.4カ月の観察で(5.58人・年), VF1回, 非持続性心室頻拍1回を認めた. 冠攣縮性狭心症によるVFに対するICD植え込みに関しては今のところ定まった見解はないが, 自動体外式除細動器(AED)の普及により, これまで救命困難であった致死性不整脈を生じ得る冠攣縮性狭心症の蘇生後症例が増加している. より予後不良な可能性のあるこれら致死性不整脈を生じ得る冠攣縮性狭心症に対するICD植え込みの適応に関して, 今後さらなる検討が必要であると考えられた.
  • 高木 祐介, 安田 聡, 高橋 潤, 武田 守彦, 中山 雅晴, 伊藤 健太, 広瀬 尚徳, 若山 裕司, 福田 浩二, 下川 宏明
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_172
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    目的: 器質的心疾患のない院外心停止の病態を明らかにすることを目的とした.
    方法: 2004年12月から2009年3月に当科で経験した院外心停止蘇生例のうち,器質的心疾患のない連続15例(男/女14/1例,平均年齢42±13歳)に対し,発症から約1カ月後にACh負荷による冠攣縮誘発試験と,心臓電気生理学的検査(EPS)による心室細動誘発試験の両者を施行した.
    結果: 全例で,冠攣縮または心室細動のいずれかが陽性であり,内訳は冠攣縮単独3例,心室細動単独3例,両者合併9例であった. 全例に植込み型除細動器(ICD)植え込みが行われ,冠攣縮陽性例では,Ca拮抗薬も併用した. 平均18カ月の観察期間で,15例中3例でICD適切作動が認められた. Kaplan-Meier曲線による解析では,1年間および2年間の心室細動再発率は,それぞれ18%,30%であった.
    結語: 院外心停止の病態は多様であり,冠攣縮と心室細動の二重誘発試験を行うことは臨床上重要であると考える.
  • 和田 匡史, 渡邊 敦之, 井原 弘貴, 池田 昌絵, 戸田 洋伸, 山中 俊明, 橋本 克史, 寺坂 律子, 中濱 一, 山田 信行
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_173-S2_179
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は51歳, 女性. うつ病に対して抗精神薬を5剤内服し治療中であった. 2009年6月21日, 2階のベランダから転落後の状況を発見されて前医に救急搬送となった. 画像検索で骨盤・眼窩底・上顎骨骨折が判明し骨盤骨折に対して緊急手術の予定となったものの, 術前心電図で著明なST変化を認め当院紹介搬送された. 当院来院時はショック状態で, 心電図・心エコー所見から急性心筋梗塞の疑いで緊急冠動脈造影を施行した. 造影の結果, 左冠動脈主幹部で完全閉塞しており, 外傷後ではあったが救命目的に引き続きIABP挿入下にPCIを行った. 左冠動脈主幹部入口部から大量血栓を認め, 冠血流改善に難渋した. 主幹部入口部に残存する解離様陰影に対してBMSを留置し, PCI終了とした.
    文献上では胸部外傷後に急性心筋梗塞を発症することが報告されているが, 本症例のように多発外傷後に左冠動脈主幹部閉塞をきたした症例は非常に稀である. 外傷による冠損傷・血栓形成の機序についての考察を交えて報告する.
  • 住居 晃太郎, 五明 幸彦, 清水 嘉人, 折田 裕一
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_180-S2_184
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例1: 49歳, 男性, 自衛隊員. 訓練で10km完走直後倒れこんだ. CPRは施行されず6分後に医師によりAED作動させると心室細動(VF)から無脈性電気活動(PEA)となった. その後, 救急隊到着し当院に搬送された. 来院時心リズムは心静止(asys)であった. ACLS施行し心拍再開後の心電図で急性前壁梗塞と診断しカテーテル室へ直行. 心肺補助装置(PCPS), 大動脈内バルーンポンプ(IABP)補助下に冠動脈造影(CAG)を施行し左前下行枝(LAD)#7に75%狭窄を認め, カッティングバルーンで拡張し手技終了. 治療継続したが心機能回復せず死亡した.
    症例2: 26歳, 男性. 激しい胸痛で当院へ緊急搬送された. 急性前壁梗塞と診断し緊急CAG施行. LAD#6に99%狭窄(TIMI2)を認めた. IABP準備中VF発生し, 速やかにCPR開始. 数回の除細動にても洞調律からVF再発した. VF持続のまま10分後IABP, 30分後PCPS挿入. PCI用の動脈ルートがとれず90分後にLAD閉塞部をバルーン拡張後, 血流再開した. 除細動にて心拍再開し, その1分後に開眼し問いかけに返答した. LADにステント留置後し手技終了. 高次脳機能は正常で18日後に退院した.
  • 青柳 秀史, 畔上 幸司, 吉村 浩司郎, 杉山 浩二, 植嶋 大輔, 前田 峰孝, 志村 吏左, 倉林 学, 沖重 薫, 高梨 秀一郎
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_185-S2_189
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は, 14歳, 男性. サッカー部の練習直後に心肺停止状態となる. 教諭が心肺蘇生法を約10分間施行. 救急隊到着後AEDを装着. 心室細動が確認され, 直流通電2回目で除細動成功. 自己呼吸心拍再開まで約23分. 搬送先の病院で低体温療法を含めた加療にて後遺症なく改善. 心室細動原因精査のため, 心臓超音波検査, 運動負荷試験, 心臓核医学検査, ウイルス抗体価検索などを施行したが, 特に異常を認めなかった. 原因究明のため当院紹介. 電気生理学的検査にて右室からプログラム刺激を施行し, isoproterenol点滴投与にても, 致死性不整脈は誘発されなかった. 冠動脈造影にて, 右冠尖から左冠動脈起始が認められ, 「冠動脈起始異常症」と診断. さらに造影心臓CTでは, 左冠動脈が大動脈, 肺動脈間を屈曲しながら走行していた. 本症は冠動脈バイパス術の積極的適応であり冠動脈バイパス術を施行. 心室細動の原因として冠動脈起始異常が考えられた症例を経験したので報告する.
  • 若月 大輔, 東 祐圭, 田辺 彩夏, 山谷 清香, 前澤 秀之, 森 敬善, 本田 雄気, 礒 良崇, 下島 桐, 清水 信行, 浅野 冬 ...
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_190-S2_196
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は64歳, 男性, 元パイロット. 早朝, 自宅で倒れているところを家人が発見し, 心肺蘇生を開始した. 救急車内でのモニター心電図で心室細動を認めた. 除細動1回で心室細動は停止し当院へ搬送された. 来院時心電図では異常所見を認めず, 心エコー図はび漫性に左室駆出率は30%と低下していたが, その後回復した. 冠動脈造影では器質的な有意狭窄, 冠攣縮を認めなかったが, 右冠動脈が左バルサルバ洞に開口している所見を認めた. 冠動脈CTでは右冠動脈が大動脈と肺動脈基部の間を走行しており, アデノシン負荷心筋血流シンチグラフィでは右冠動脈領域に再分布像を認めた. 電気生理学的検査, ピルジカイニド負荷では異常所見を認めなかった. 植込み型除細動器植え込み術を施行し退院した. 今回, 右冠動脈起始異常により心室細動をきたした症例を経験した. 本症例は60歳まで運動負荷検査を毎年施行していたが, 本疾患を事前に予測することはできず, 貴重な症例と考えられ報告する.
  • 黒川 博文, 外牧 潤, 角田 隆輔, 緒方 康博, 佐多 荘司郎, 小柳 俊哉, 蔵田 洋文, 平井 克樹, 古瀬 昭夫
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_197-S2_202
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は11歳の女児. 2009年1月7日, バレーボールの練習中に突如気分不良が出現し, 意識消失したため当院へ救急搬送となった. 搬入時ショックバイタルであり胸痛を伴っていた. 心電図上I, aVL, aVR, V2~6でのST上昇とII, III, aVF, V1でのST低下が認められ, 心エコーでは広範に壁運動低下が認められた. 急性冠症候群を疑い緊急冠動脈造影を施行した. 左冠動脈はエンゲージ困難で, 大動脈造影でも左冠動脈は描出されなかった. 検査中心肺停止となり, PCPS・IABPによるサポートを開始した. その後の造影で狭小化した左冠動脈が右バルサルバ洞から起始している所見が認められた. 血流は確保されており, 慢性期に突然死予防のため外科的血行再建術を行った.
     運動後の心肺停止時に, 冠動脈造影にて左冠動脈主幹部の血流途絶と再開を確認し得た左冠動脈右バルサルバ洞起始症の1例について, 若干の文献的考察を含めて報告する.
  • 石原 嗣郎, 古賀 徳之, 加世田 繁, 村上 昇, 藤島 慎一郎, 川副 信行, 佐渡島 省三
    原稿種別: 第22回心臓性急死研究会
    2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_203-S2_207
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は77歳, 男性. 食道癌, 肝細胞癌で加療中であった. 2008年8月21日, 右冠動脈のsegment 2からsegment 3にかけての多量血栓による急性心筋梗塞を発症. 緊急の経皮的冠動脈ステント留置術(percutaneous coronary intervention; PCI)を行った. その後, segment 6: 90%に対して待機的PCIを行い, bare metal stent(BMS)を留置した. BMS留置35日後の10月20日, 胸痛を主訴に救急外来受診. 心電図でSTの上昇を認め, 緊急冠動脈造影(coronary angiography; CAG)を行った. 造影では, segment 6に血栓性の閉塞を認め, 遅発性ステント血栓症(late thrombosis; LT)と診断しBMSを留置した. その後, 血行動態が不安定であったため大動脈内バルーンパンピング(intra-aortic balloon pumping; IABP)を挿入し, ヘパリンなどで管理を行った. しかし, IABP挿入部分から末梢にかけて急性動脈閉塞をきたし, アシドーシスが進行. 全身の循環動態は改善せず, 死亡した. 本症例は, BMSには比較的稀なlate thrombosisをきたし, 原因として担癌患者の凝固亢進状態が関与していた可能性があり報告する.
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