ハイパースペクトルイメージングを用いて, 有色サツマイモ (アヤムラサキ, ムラサキマサリ) のアントシアニン色素の評価を行った.
(1) 分光画像の取得は, 高感度冷却CCDカメラと液晶チューナブルフィルターを用いて450~600 nmの可視光領域を1 nm間隔で分光画像を取得した. 画像処理は分光画像を画素ごとに輝度値から吸光度値に変換し, 平均吸光度二次微分値を求めてスペクトル作成を行った.
(2) アントシアニンの抽出液 (50%酢酸に24時間侵漬) の吸光度二次微分スペクトルから490~530 nmの範囲で最も吸収の強い波長をアントシアニン色素の吸収波長として選択した.
(3) アントシアニン色素の検量線は, 分光画像から求めた平均吸光度の二次微分値を説明変数, 化学的抽出法で求めた波長の吸光度値を目的変数として重回帰分析から求めた.
(4) 検量線から画素ごとの吸光度を求め, その値をカラーマッピングしてアントシアニン色素分布の可視化画像を作成した.
(5) アヤムラサキでは, 523 nmの分光画像と525 nmの抽出液に強い相関が認められた. 523 nmを第一波長として5波長で検量線を作成した結果, 重相関係数R=0.921,標準誤差SEP=0.052となり, 予測精度は良好であった.
(6) ムラサキマサリでは, 523 nmの分光画像と526 nmの抽出液に強い相関が認められた. 523 nmを第一波長として5波長で検量線を作成した結果, 重相関係数R=0.830, 標準誤差SEP=0.017であり, 予測精度は良好であった.
(7) 選択された波長域で検量線を適用し, アントシアニン色素分布の可視化画像と分布割合のグラフを作成し, 個体間の評価を試みた結果, ハイパースペクトルイメージングの有用性を確認した.
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